私は休暇を利用して、とある旅館に泊まりに来ていました。

本来、その旅館とは別の旅館に泊まる予定だったのですが、その旅館で何かしら事故が発生したようで、宿泊できなくなってしまったのです。そこで急遽、別の旅館に予約を入れることにしたというわけです。

その旅館での初日の夜、私は目が覚めてしまい、少しの間だけ起きてもう一度眠ることにしました。夢を見ていた気がしますが、何の夢だったかは思い出せません。そして、またしても目が覚めてしまいました。

時計を見て驚いたのは、先ほど目を覚ました時に眠り始めた時間とほとんど一緒だったのです。見ていた夢の長さからかなりの時間が経っていると思ったのですが、仕方なくもう一度眠ろうとしましたが寝付けなかったので、少し体を動かしてからもう一度眠りました。

しかし、その夜は眠れども眠れども時間が進まず、眠っているはずなのに起きている時間も長いという、感覚的におかしくなりそうな夜を過ごすことになってしまいました。翌朝、旅館の従業員にそのことを話してみることにしました。

そ の従業員は、私に1枚のおふだをくれました。寝るときに枕の下に入れておけば大丈夫と言われましたので、その日の夜は言われた通りに枕の下におふだを入れ ておいたのでぐっすり眠ることができました。翌朝、例の従業員におふだの返却とお礼を言い、なぜおふだで安眠できたのかを聞いてみることにしました。

どうやらその町には昔から寝ている人に悪さをする妖怪のようなものがいるらしく、その影響で私は眠っている時間を長く感じてしまい、実際にはほとんど寝付けずに体に負担をかけてしまっていたようです。その妖怪らしきものは寝てもすぐ起きる様子を見て楽しんでいるのだとか。
し かし、例のおふだには一種の「虫除け」みたいな効果があると言い、それで昨晩はぐっすり眠ることができたのだそうです。ちなみにその従業員は、もし2日連 続で悪さをされると妖怪らしきものの影響で死んでしまう人もいるのだ、と笑いながら言っていました。シャレにならないと乾いた笑いをしながら私はその人が 去っていくのを見送りました。

ただ、実際に元々の宿泊先の旅館ではそれが原因で事故が起こったということを、その従業員は去り際に話していました。