俺がまだ学生で、実家でスネかじっていた頃の話。
微妙にスレ違いかと思うんだが、怖くもない話だし。
でも未だに俺自身、心霊的な物とやらを、
頭っから肯定出来る程に出来た人間でもないと言う事で、
出来ればここで話させてくれたらと思う。

まだ俺が不良学生だった頃のある冬に、父親が倒れた。
俺は知らなかったが、しばらく前から不調は訴えてはいたらしい。
病院で母親が聞いて来た話をまた聞きした所だと、
珍しい血管の病気だった。

よく聞く血栓とか梗塞とかではなく、
バカな俺ではどんな病気なのかさっぱり解らなかった。
足の付け根部分を入り口に、細いワイヤー?(失念した)を血管に通し、
それを頭部まで行かせて、なんとかかんとかと言う手術をする事になり、
命に関わると言われた。

勿論助かるのを祈ったが、最悪の事態も覚悟して、
これからの事とか色々考えた。

ある日煮詰まった俺はそんなこんなを、
大学で知り合った友人の1人に相談してみることにした。
同期だけど凄く落ち着いて世間知のある奴で、
俺の頭じゃ考えつかないような、
いいアドバイスを貰えるんじゃ無いかと思ったんだ。


学校から駅までの帰り道に友人に話した。
「大変だな」とか「大丈夫さ」とか、
普通に相づちを噛ませながら話を聞いていた友人だったが、
途中から無口になってきて、

ちょっと顔を覗くと、何だか難しい顔をしている。
友人に相談するにはヘビーな話題だったのか?と思ってたら、

突然「今からお前んち行っていい?」と言い出した。

帰り道でもないのに、真剣に相談に乗ってくれるつもりなんだとじんとした。
ただ、俺んちに着いた時の、そいつの値踏みするみたいに家を眺め渡した行為が、
意外と言うか不似合いと言うか、ちょっとむっとしたけど。

「大学辞めたらどうなるか」とか、「辞めないで済むには」とか、
そんな縁起でも無い話をしてる間も、
やっぱりそいつは難しい顔をして、言葉が少ない。

何か言いにくい事を、言うか言うまいか悩んでる風。
「もう何でも言ってくれよ。俺も色々覚悟決めなきゃならんし。
 こんな暗い話、他の奴らにホイホイ相談も出来ないし、
 お前のアドバイスが聞きたいんだ」
とか何とか言った。

それでもまだ言いあぐねたから、何回か促して、それからやっとソイツは話し出した。

「お父さんは、生き霊に、憑かれてる」

ゆっくり、切る様に言った

「・・・はぁ!?」

一体全体コイツは何を言い出したんだ?

そっちよりの人だったの?とか聞いたと思う。

冗談じゃないんだよこっちは、とか笑いながら。
「俺も冗談じゃないよ。
 言う必要ないから黙ってたけど………実は俺、陰陽師なんだよ。
 つか、俺んちが代々そうなんだ」

さすがの俺も、怒るか笑うか決めかねて黙ってたら。

「ま、信じなくてもいいよ。
 でも、もし俺が親父さん助けてあげられるかも知れないなら、
 どうする?」

「そりゃ助けてくれって言うさ。でも」

「解った」

話は遮られたが、俄かに信じられる訳もなし、
好奇心やらなんやらで、根掘り葉掘りしようとした。

しかし、そいつの行動は早かった。

立ち上がるなり部屋を出て、ザックの中から、
白い枯れ葉みたいな物や、塩や、水らしき物、
パワーストーンみたいのや、コンパスやら、
他にも何なのかもよく分からない色々なもの取り出しては、家の中を歩き回った。

短刀まであってびっくりした。

俺もついては出たが、友人は初めて来た家のはずなのに、
説明も聞かずに歩き回り、意味の解らない行動を取り続ける。
目が痛いほど枯れ葉を燃やしてみたり、お札みたいな物を書いて貼ったり。
俺は今夢みてるんじゃないかな?とか思っていた。

家の外周にも何か一回り施して、
また何かを小さく唱え、終わったようだった。


その間返事もしなかったので、
やっと「今何をしてたの?」と聞いたら、

「家の中浄化して、今出来るので一番強い結界を張らせて貰った。
 次は親父さんに会わせて」

俺もまだ何といっていいものか解らないし、
俺に輪をかけて頭の固い父親に、する話が話だしで
何かもじもじにやにやしながら友人を紹介。

「陰陽師なんだって」と言う前に、
すぐに俺は友人に病室から追い出された。

その部屋でオヤジと友人が交わした話は、
友人の方から後で聞かされた。

友「オヤジさんは、確かに今生きている人間から何らかの強い恨みを買っていて、
  そいつの憎悪の念で、今の原因不明(医者にもそう言われた)の病気で、
  抜き差しならない所に来ているようだ。

  しかも結構長い期間、この生き霊のアタックにあってる。
  随分前から具合は悪かったと思われるんだ。
  仕事が巧く行かないとか、そういう事も含めて。

  生き霊の持ち主は多分、自分がオヤジさんの元に、
  生き霊飛ばしてるなんて知らないと思う。
  すごく恨んでいるのは間違いないけど、
  マイナスの念の暴走とでも言えばいいかな。

  もう怒鳴られるの覚悟で『心あたりありますよね』と聞いたよ。
  最初は、俺がこんな若造(当時友人23歳・俺21歳)だし、息子の友達だし、
  何をバカなって笑われたんだけど、
 『心あたりはありますよね?』と聞いたら、
  だまっちゃったから、やっぱり何かあったみたいだね」

俺「……それ、女だよね」

友「なんで?」

俺「中坊ん時親父に誘われた水族館で、
  親父の会社の女に会った事がある。
  そん時は解らなくて、年取ってきて理解が行ったけど、
  あれは不倫相手だよな。
  女の方は連れもいなかったし」

友人はそれにはもう答えなかったし、親父とどんな話をしたかも語らなかったが、
俺にとってはそれが返事となった。

とっくに物心ついた子供に、
偶然を装いながらも合わせる程深い間柄だった2人が、
その後何かの事情で別れた。

決して若くはなく、はっきり言えば母親より冴えなかったと記憶している女が、
父親を殺しかねない程に恨むには、充分な理由だっただろう。
母親は知っていたのだろうか。
これは未だに、どちらにも聞いた事は無い。

俺「随分前からアタック受けてるって話だけど、
  生き霊の本人は長い間父親を恨んでて、
  今も恨みの塊で、幸せじゃ無いって事なんだね」

友「そうとは限らない。生き霊って結構簡単に飛ぶんだ。
  昔の友達とかを、『あいつどうしてるかな』
  って思い出したりしただけとかでも、人によっては飛ぶ位。
  講義受けながら学食の事考えたら、学食に飛んでたとかね」

俺「嘘くせー。俺は今、冗談が通じる心理状態じゃねーぞ?(笑)」

友「それに…一度生まれた物は、簡単に無くなったり出来ない」

結果から言うと、親父の手術は成功し、
心を入れ替えたかの様に日頃の摂生を敢行、
定年も無事迎え、今は楽々隠居の有閑老人だ。

友人はあの時病室で、父親の病室にも浄化と結界を施し、
後日、父親専用の式神入りの、自分で磨きだして作ると言う、
勾玉型のパワーストーンで出来た御守りなる物を渡し、
俺経由で、家族それぞれにも同じ仕様の物をくれ、扱いを教えた。

それぞれ石も違い、封入されている式神も違うらしい。

男共のには女性の式神が、女共のには火鳥の様な存在の式神だそうだ。
(形の似ている鳥はいるが、実際には存在しない。手塚治虫のとは違う)

母親は子供を産んでいるので、
ただの御守りしか作れないとか謎発言もあったが、
名前を2つつけ、例え家族でも恋人でも、裏の名前は人に話してはけない事。

大それた事は出来ないが、何かお願いをする時はその名前で呼ぶ事。
時々は式神本体をイメージし存在を信じる事。

その他も制約は色々あるし、正直自分含め家族も信じているのか疑わしいが、
今も全員常に携帯しているのだから、我が家もいい加減と言えばいい加減。
迷信と言われる事にまで信心深さを発揮する土地柄、
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