飲み屋で仲良くなった飲み友だちの警察官に聞いた話。
老人が突然失踪したって家族から電話があったから、その家に行ったそうだ。
どうせ惚けて徘徊してるんだろうってタカをくくって赴いたんだが、事情を聞くと家族の話が実に奇妙で変なんだそうだ。
まず、その老人は七〇歳の誕生日に失踪したんだが、前から自分は七〇歳になったら天狗になると家族に公言してたらしい。
ハア?って感じなんだけど、そのおじいさんの父親もその父親も、長男の話によると七〇歳の誕生日にいなくなっているらしい。
その老人の部屋に入ったら、黒い烏の羽根みたいなのが十羽分くらい散乱していて、部屋のまん中にどんと子供が入れるくらいの空っぽのたらいがあったので
「これはなんですか?」
と聞いたら、嫁が昨日(失踪する前の日)突然爺さんが米を一斗炊いてくれって言ったんで、炊飯器で何回かに分けて炊いて、その中に入れてやったそうだ。
で、それがきれいに米粒一つなくなくなっていたんだそうだ。
それで、昨晩なんだけど、爺さん部屋でどんちゃん騒ぎがあったという。
もう大勢で騒いでる感じだったらしい。
「それは見たんですか?」って聞いたら、
「おじいちゃんから『何があっても決して部屋を覗くな』って言われたので、見ませんでした」との答え。
どうもからかわれてるような話だけど、家族は皆真剣でウソをついてるようには思えない。長年の経験でわかるらしい。
仕方がないので、一応行方不明者として捜査願いを本署に連絡して、鑑識呼んでその羽を持ち帰った。
結局、その老人は発見されなかったとのこと。
羽は烏の仲間との鑑識結果だったらしい。
「俺も警察入って十五年だけど、不思議だよなあー」と笑ってた。
(了)
老人が突然失踪したって家族から電話があったから、その家に行ったそうだ。
どうせ惚けて徘徊してるんだろうってタカをくくって赴いたんだが、事情を聞くと家族の話が実に奇妙で変なんだそうだ。
まず、その老人は七〇歳の誕生日に失踪したんだが、前から自分は七〇歳になったら天狗になると家族に公言してたらしい。
ハア?って感じなんだけど、そのおじいさんの父親もその父親も、長男の話によると七〇歳の誕生日にいなくなっているらしい。
その老人の部屋に入ったら、黒い烏の羽根みたいなのが十羽分くらい散乱していて、部屋のまん中にどんと子供が入れるくらいの空っぽのたらいがあったので
「これはなんですか?」
と聞いたら、嫁が昨日(失踪する前の日)突然爺さんが米を一斗炊いてくれって言ったんで、炊飯器で何回かに分けて炊いて、その中に入れてやったそうだ。
で、それがきれいに米粒一つなくなくなっていたんだそうだ。
それで、昨晩なんだけど、爺さん部屋でどんちゃん騒ぎがあったという。
もう大勢で騒いでる感じだったらしい。
「それは見たんですか?」って聞いたら、
「おじいちゃんから『何があっても決して部屋を覗くな』って言われたので、見ませんでした」との答え。
どうもからかわれてるような話だけど、家族は皆真剣でウソをついてるようには思えない。長年の経験でわかるらしい。
仕方がないので、一応行方不明者として捜査願いを本署に連絡して、鑑識呼んでその羽を持ち帰った。
結局、その老人は発見されなかったとのこと。
羽は烏の仲間との鑑識結果だったらしい。
「俺も警察入って十五年だけど、不思議だよなあー」と笑ってた。
(了)