177 :本当にあった怖い名無し:2007/05/25(金) 11:04:49 ID:vXN3Fb5U0
次男の判決はさほど重くはならなかった。
動機が母親を助けるためだったのと、周りの証言や、もしかしたら嘆願書も出ててたかもしれないらしく、
刑は思いのほか軽くすんだそうだ。 

次男の刑が確定したその日、おばさんは家の木で首を吊って自殺した。 
Aは学校にいたため、事件が起こったことは、家に帰るまで知らなかったらしい。 

その家では、2年ほどの間に3人も人が死んでしまった。
あの事件が起こった後は、その家には誰もいないはずなのに、
それ以来その家の前を通るのを止めて、大回りして家に帰るのを選んだそうだ。
自宅の玄関からも見える家なのに。 

事件から5年くらいが過ぎた頃、あの家の次男は刑期を終えて戻ってきた。 
近所の家を謝罪してまわり、礼を言いながらまわっていた。 
Aの家にも訪ねきた。父親が対応して、「苦しかったね。これから頑張るんだよ」。そう声をかけていた。 

元からの次男の性格を知る近所の人達は優しかった。
次男も一生懸命に働き、以前の暮らしを取り戻そうとしていた。 
次男の妻も真面目で、主人が逮捕された後も別れることなく、帰って来る日を待ちながら家を守り続けていた。 

2年後、そんな2人に子供が出来た。
近所の人たちはみんな喜んでいた。生まれてくるまでは。 
産まれてきたのは男の子だった。でもその子は心臓に障害を持っていた。 
それから次男は、その子の手術のために、今まで以上に働いた。子供を助けるために。
それでも間に合わなかった。 
男の子は生後半年で、この世を去ってしまった。 

それから2ヶ月後、奥さんは焼身自殺をしてしまった。 
後を追うように、次男はあの木で首吊り自殺をした。 
近所中に重い空気が流れて、やがてよくない噂が流れ始めた。 


178 :本当にあった怖い名無し:2007/05/25(金) 11:06:09 ID:vXN3Fb5U0
あの木があると、これからも良くないことが起こるのではないか。木を切り倒したほうがいいのでは。
みんなが口々に、木のせいにし始めていた。 
それでも、誰も木を切ろうとはしなかった。 

しばらくして、自殺したおばさんの遠縁にあたるという男2人がやってきて、
「自分たちがこの木を処分します」と言ってきてくれた。 
念のためにと2人はお払いをしてもらい、それからチェーンソーを使ってあっさりと切り倒してくれた。
かなり大きな木だったこともあり、倒した後に細かくするのに時間がかかってしまい、根の部分は後日にするということだった。
それから数日が経っても、根が掘り返されることは無かった。 

木を切り倒した人の一人は、酒に酔い3メートル程の側溝に頭から落ちてしまい、脳挫傷で死亡。
もう一人は、噂では農作業中にトラクターが横転し、下敷きになり死亡したと聞いたそうだ。 
Aが高校を卒業して町を離れる頃にも、まだその根は残っていたそうだ。 

俺とAが出会ったのは、同じ専門学校でのことだった。Aとはそれ以来の付き合いになる。
Aは俺とは違い、頭も良く性格も良かった。
そんな奴だから、就職にも困ることはなかった。俺と違い、Aはすぐに就職した。 
Aが就職してからも、俺たちの付き合いは続いた。
会うたびに女のことで説教をされていた事を、今でも思い出す。 

就職して3年ほど経過した頃だろうか。それはあまりにも突然だった。 
Aの父親が心臓発作で他界した。
Aが言うには、病気など患った事など無かったから、もの凄くショックを受けたらしい。 
Aが実家に大急ぎで帰ったとき、すでに二人の兄が帰って来ており、通夜の準備に追われていたそうだ。


179 :本当にあった怖い名無し:2007/05/25(金) 11:07:06 ID:vXN3Fb5U0
それから数日が経ち、葬儀も終え、3人は久しぶりに実家で酒を飲んだそうだ。 
その時に長男が、二人の弟に語りかけた。
「二人ともあの家の木を見たか?」 
そう言われてAは、次男と顔を見合わせて「何のこと?」。長男に聞き返した。 
「根っこだけ残ってた木のことだよ」
そう言われて二人は、あの木のことかと思い出したらしい。
長男は続けた。
「もう更地になってるんだよ。そして、あの木の根を掘り出したのが親父なんだ」
それを聞いて、Aの中で眠る忌まわしい記憶が蘇ってきた。 
次男はいきなり、怒気を強めて長男に食ってかかった。 
「ふざけるな。じゃあ親父は、あの木に祟られて死んだっていうのかよ。
 ただ掘り返しただけで祟られるのか。馬鹿げてるぞそんなもん」 
しばらくみんな黙っていた。

Aは疑問に思ったことを口にした。
「何で親父は木の根を掘り返したんだろ。兄貴は何か聞いてない?」
その問いに対して、二人の兄は首を振るばかりだった。 
長男は首を振りながら、
「掘り返した理由は俺にもわからん。だけど掘り返した後、親父は突然死んだ。
 どうしても俺には、偶然には思えないんだ」 
次男は、「兄貴やめてくれないか」。そう言って話を遮ろうとしたが、それでも長男は話を続けた。
「昨日さ、夢に親父が出てきたんだ。
 俺を見ながら、何度もすまないすまないって言うんだよ」 
それを聞いた次男は、「何で兄貴の所だけに出て、俺たちの所には出ないんだよ」。
Aを見ながらそう語りかけた。
その問いに対して長男から出た言葉に、二人とも驚いたらしい。
「次は俺なんじゃねーの。だから親父は、俺に謝りに来たんだろ」 
二人はそれを聞いて押し黙った。
その日はそれ以上、そのことを3人とも語ろうとはしなかった。 
その後、長男の言った一言によって、3人は今まで以上に連絡を取り合うようになったそうだ。







180 :本当にあった怖い名無し:2007/05/25(金) 11:08:23 ID:vXN3Fb5U0
父親の死後1年9ヶ月経った頃、突然長男と連絡が取れなくなった。 
次男からもその連絡が来た。家に電話をしても、嫁さんすら出ないとの事だった。 
次男は不審に思い、長男の勤める会社に電話したそうだ。
会社から返ってきた言葉は意外だった。1ヶ月ほど前に突然退社したと聞かされた。

 二人はすぐに長男の自宅に向かった。
何度呼び鈴を鳴らしても、誰も出てくることはなかった。
不審に思ったのか隣の住人が出てきて、話を聞いてくれた。
すると隣の人は笑いながら、「3人で旅行に出かけるって言ってましたよ」。そう教えてくれた。 
二人にはどうしても納得がいかなかったらしい。 
何で俺たちに何も告げずに出かけるんだ?あれだけ密に連絡を取り合ってたのに。

それからすぐに二人は、行きそうな場所として実家に向かった。
主の居なくなった家にたどり着いたが、そこにも3人の姿は無かった。 

それから2日後、二人の元に警察から連絡が来た。 
長男一家が事故死したと言う知らせだった。 
事故の原因は、先に書いた通り不可思議なものだった。 
葬儀が終わっても二人は押し黙っていた。 

しばらくして二人は、長男一家の家の整理に追われた。 
家の片付けをしている時に、Aは長男が残したであろうメモ帳を見つけた。
そこには奇妙なことが書いてあったらしい。 
『俺が何をした』
その言葉が、何ページにもわたって書き綴られていたそうだ。


181 :本当にあった怖い名無し:2007/05/25(金) 11:09:48 ID:vXN3Fb5U0
最後のページには、
『俺と○○そして○○これで3人だ。もう終わりにしてくれ。』
次男とAの名前が書かれていた。
それが最後のメモだった。
次男にそれを渡し、Aは押し黙った。 
それを見た次男は、「兄貴は神経質すぎたのかもしれない」。
そう言い終えて、次男も黙りこくってしまった。 

Aは心底おびえたそうだ。
馬鹿にする次男を無理にさそい、祈祷師やらその手の除霊専門の所を、何カ所も回ったらしい。 

細かく書けば、本当に凄い量になってしまう。だからかなりはしょってるから、勘弁して欲しい。 

長男が亡くなって2年経ち、次男が事故死した。 
そしてその話を俺は聞かされた。 
呪いと言われても、俺にはどうしてもピンとこなかった。 
その話を聞いた後、俺はAに話し出した。 
「なあA。もしさ、呪いが存在していたら、俺は絶対に祟られてるよ。 
 お前も知ってるよな。俺が今まで、色んな女にしてきた仕打ち。
 お前が知らない話だってある。それこそ、いつ夜道で刺されてもおかしくないくらいだ。
 刺されないにしても、相当恨まれている事は確かだと思う。
 現実に呪いが存在するんなら、俺はもう死んでるはず」
でも俺がどんなに語ろうが、Aの周りでは不可解な事が起きているのは事実。
俺自身が一つずつあれやこれや説明しても、納得するわけもなく、話は平行線を辿るだけだった。 

Aは俺と話した後に、すぐに所持していた車を処分した。
「車で事故なんて嫌だし」
Aは苦笑いしながらそう言っていた。 


182 :本当にあった怖い名無し:2007/05/25(金) 11:11:40 ID:79Ddwri60
それからしばらく、何事もなく過ぎていった。
その間も、俺とAはちょくちょく会っていた。会って食事したり飲みに行ったりしてた。 

しばらく会ってないなと気になりだしたときに、Aから連絡がきた。 
『病院にいて暇だから、見舞いにでも来てくれよ。話もあるし』
それを聞いて俺はすぐに病院に向かった。 

病室に入りAの姿を見たときは、もの凄くショックだった。 
別人かと思うほどやせ細ったAがそこにいた。 
動揺してることを悟られたくなかった俺は、「個室なんてえらい豪勢だな」と笑って語りかけた。
するとAは、「俺これでも結構金持ってるんだよ」。笑いながら答えてくれた。 

俺は病気のことは全く無知だからよく知らないが、進行の早い癌だと説明された。 
余命3ヶ月。あまりにも突然の宣告だった。 
Aは話を続けた。「呪いだよ」。そう言い放った。
俺はすぐさま「あるわけ無い」と食ってかかった。
Aも言い返す。
「じゃあ偶然にも俺たち家族は、こんなにも短期間の間に全員が死ぬのか!」
Aの目は怒りに満ちていたと思う。 

話すうちに冷静になったAは、「お前に頼みがあるんだ」。
「俺は出来ることは何でもしてやるから」そう言った。
今になれば、その言葉は言うべきでは無かったと後悔している。

Aの頼みとは、彼女の事だった。 
Aは学生の頃から、Bという女と付き合っていた。
Aの彼女だから、俺もよく知っている間柄だった。
本当に良い子なんだ。Aにはお似合いの彼女だった。 
「Bの事なんだけどさ。お前、あいつを口説いてくれね」 
それを聞かされた瞬間、俺は呆気に取られた。 
Aが言うには、病気のことを彼女に話した所、「今すぐに結婚するんだ」って言われたらしい。
呪いのことは、気が引けるらしく言えなかったそうだ。 
まー言ったところで、聞く耳もつ女では無いと思うが。 



参に続く→【呪い系】呪いの連鎖  其の参

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