975 :膝の上1/3:2006/05/28(日) 22:53:41 ID:6MuWSflF0
その友人と知り合ったのは、研究室が同じだったのがきっかけでした。
初対面の私に、「アンタさ、取り憑かれやすいだろ」と言い放つブッ飛んだ人物で、
普通なら「何だ?この電波人間は」なのでしょうが、私には笑えない。

自慢じゃないが、私は憑かれやすい。
幼少期から祖母に、「お前は『いらんモノ』連れて帰ってくるから」と、外出時に必ずお守りを渡され、
忘れた日には、井戸ん中落っこちてるの発見されたりとか、身内一同、謎の疱瘡発生とかしょっちゅうでした。
年と共にマシにはなりましたが、今も体調が悪いと油断できません。
幸か不幸か、自称『見えるが祓えない』友人に興味を持たれ、いろいろ連れ回されるハメになる。
そんな話。

2回生の7月、件の友人と、石鎚山の麓にある史跡に行った帰りの出来事。
一通りレポート用の写真やメモをとって、「さぁ帰ろうか」という時に調度雨が降り始め、
急いでローカル線の停留所に駆け込みバスを待った。
「傘を持って無かったけど、屋根着きの停留所で良かった」と私がこぼすと、
「・・・良くない。開城戦のあっちゅう跡や言うから楽しみにしてたのに。何も無いに――」
と、ふてくされた顔。相変わらずの土佐弁訛りはカワイイ。

雨がシトシト降りからザーザー降りなった頃、ようやくバスが着き、急いで乗り込んだ。
その時ふと、おかしな光景を目にした。


976 :膝の上2/3:2006/05/28(日) 22:55:20 ID:6MuWSflF0
バスの入り口の直ぐ前の席(乗り口が後ろ、降り口が運転席にあるバス)に、女の人と少女が2人座っていた。
ただ座ってるのではない、妙なのはその座り方。
他の席が空いているにも関わらず、座っている女性の膝(ヒザ)の上に、もう一人が腰掛けているのだ。
雨のためかびしょ濡れだ。13歳位の女の子だ。
濡れるし重いのによくあんな事するなぁと思ったけども、
ジロジロ見るのも悪いので通り過ぎ、前の方の席に進んだ。
クーラーは効いてるみたいだが、嫌な蒸し暑さだった。

席に着き、さっきの様子を話そうと思った矢先、友人がこう言った。
「ビックリするかもしれんけど、黙ってじっとしち」
「は?」
言うなり友人は、私の膝の上に座ろうとする。
「何やってんだ」
当然驚く。
「いいから座らせろ!あと、次のバス停で降りるよ」
「え?」

 ○○
 ノ|ノ|
.|| ̄|

「・・・」
「・・・」
「あの」
「しっ!」
「ねえ」
「黙っとき」
・・・どうやら発言権は無いようだ。

次の駅でひっぱられて、そそくさとバスを降りた。


977 :膝の上3/3:2006/05/28(日) 22:57:18 ID:6MuWSflF0
辺り一面田んぼで、屋根の無いベンチだけのバス停である。雨はさっきよりヒドい。
もちろん私は、「忘れ物でもしたん?雨降ってんのに、何でこんなトコで降りんだよ!」と怒ったが、
友人は、
「アレ見たろ」
「は?」  
「ヒザの上に乗ってたヤツ」
「何や、さっきのが霊やって言うんか?ハッキリ人の形してたのに」
(普段憑かれやすい私だが、『視る方』はカラッキシなのだ)
「アレはな、たぶん、自分の気に入った人のヒザの上に座って、 降りる時いっしょについて行くんや」
「ついて行くって?」
「気に入られたらしい。オマエの方じ~~っと見てて笑いよった。
 そしたら、スッとコッチ来たんよ。
 ああ、ヤバいなと思って、アレが座る前にウチが先に座ってね。
 んで、言ってやった。
 『コイツの膝は私のだ。お前にはやらん』って」
「私のって('A`)・・・」
「そしたら、恨めしそうに後ろ戻ってっち。
 後ろの女の人には悪いけど、ハッキリ見えてたからね。アレは相当ヤバい奴だ。
 良かったな。憑いて来なくて」
「・・・良くない」

次のバスが来るまで30分も雨に降られ続け、カメラもメモもおじゃんになり、次の日38℃の熱で寝込んだのだ。
あの事があってから、バスや電車に乗る時、荷物をヒザの上に置くのが習慣になっています。

風邪引いたせいで、またややこしい事になるんですが、
・・・それはまた別の機会に。





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