909 :おばさんの話1-4 :2009/10/13(火) 22:13:38 ID:IRudXKkl0
俺の両親は仕事人間で、あまり家にいなかった。 
その代わり母の親友の女性が、住み込みのベビーシッターとして俺達兄弟の面倒を見てくれていた。 
そのおばさんが、家事の合間によく童話を語って聞かせてくれたんだが、 
話し方とか本当に上手で、まるで役者のようだったんだ。

さて、俺が小学校の頃は怪談がブームで、怖い話を知ってる奴ほど人気者だった。 
だから、おばさんが友達の前で怖い話を披露してくれれば俺は・・・と思いついて、 
お話し会を開いてと頼み込んだが、頑固に断るんだわ。
考えてみると、頼めば日本昔話から外国民話まで聞かせてくれたおばさんが、
ブームである怪談だけは一度もしてくれたことがない。
今思うと自分勝手だが、当時の俺にはそれがひどい不合理に感じられて、そりゃあ執拗に食い下がったわけさ。

あまりのしつこさに参ったのか、おばさんはしぶしぶ一つの話をしてくれた。 
こんな前置きをして。
「本当に邪悪なものや禍は、 何をきっかけとして寄ってくるかわかりません。 
 一度ねらわれたら、来る者を避ける術は無いのです。 
 これは理不尽にも、狙われてしまった人の悲劇です」 

今から2,30年前の夜のこと。 
その夜、田中さんは熱があり、会社からの帰り道を頼りなく歩いていた。 
途中、お墓の横の道を通り過ぎる時、黒い動物らしきものと目があった。 
不審に思って目を凝らすと、それはパッと姿を消した。 
田中さんは熱のせいでおかしなものを見たのだろうと思って、それきりそのことは忘れてしまった。 


910 :本当にあった怖い名無し :2009/10/13(火) 22:14:40 ID:IRudXKkl0
数日後の夜。田中さんの家に電話が来た。 
『もしもしカヨコさん?そちらにお邪魔してもいいですか?』
田中さんの家にカヨコさんはいない。 
間違いですよと答える前に、
『明日はいらっしゃい』と誰かが答えた。 
ぎょっとしたが、その後すぐに電話は切れてしまい、
田中さんは混線か何かだと自分を納得させ、そのまま床に就いた。 

数日後の夜、田中さんがテレビを見ていると、また電話が鳴った。 
「田中です」と応える声に重なるように、『もしもしカヨコさん?』と昨日の声がする。 
『先日はお邪魔できずにごめんなさい。そちらにお邪魔していいですか?』
悪戯は止さんか(゚Д゚)ゴルァ!!と田中さんが言う前に、『明日はいらっしゃい』と誰かが答え、すぐに電話は切れた。 
意味不明な電話に不気味さは感じたものの、まだそれほど気に病むことはなかった。 

翌日の帰宅途中。墓地沿いの道に差し掛かると、不思議なことに墓地の中が妙に気になる。 
自分でもなぜか理解できないまま、田中さんは当てもなくグルグルと墓地を散策した。 

電話は再び掛かってきた。
またも訪問できなかった事を詫びる誰かに、カヨコさんは『明日はいらっしゃい』と答える。 
田中さんは叩きつけるように受話器を置く。


911 :おばさんの話3-4 :2009/10/13(火) 22:16:23 ID:IRudXKkl0
その頃から田中さんは、電話のベルに異常な恐怖心を覚え始めた。 
だが田中さんが家の電話線を引っこ抜くと、電話は職場にかかってくるようになった。 
営業先で「田中様、お電話です」と不審そうに取り次がれることも、果ては公衆電話が鳴りだすこともあった。 
どこへ逃げようともそいつは田中さんを追いかけて、執拗に電話を鳴らし続ける。 

一方で、夜の墓地散策は日課のようになっていった。 
電話の回数に比例するように、墓地へ行かなくてはという思いが強まっていく。 
彼は毎夜宛てもなく墓地を彷徨い歩き、長い時間、供養塔の前に佇むこともあった。 

ある週末のこと。
挙動不審の田中さんを心配して、普段から親交のあった隣家の旦那さんが彼を自宅に招いた。
田中さんがこれまでの出来事を隣家の夫婦に話すと、旦那さんは、
「不思議なことがあり、それが不気味だと感じたら、後は鈍感でいることが一番いいんだよ」
と変な自論を持ちだし、気分転換にうまいものでも食いに行こうと誘ってくれた。 

では出かけようかという時、電話が鳴った。 
旦那さんが応答したが、様子がおかしい。 
奥さんと田中さんが受話器から洩れる声を聞き取ろうと、旦那さんの横に頭を並べた瞬間、 
彼らのすぐ後ろから発せられた、低いはっきりとした言葉。 
「今日は、連れて、いらっしゃい」
「カヨコさんがここにいるんだ!!」
逃げるように表へ駆けだす田中さん。慌てて追いかける夫妻。 
暴れる田中さんと彼を落ち着かせようとする夫婦目がけて、突進してくる車。 


912 :おばさんの話4-4 :2009/10/13(火) 22:17:32 ID:IRudXKkl0
旦那さんは即死、奥さんは重傷で顔半分に大火傷。 
田中さんも全身を強く打って、数日後に死亡した。 
身寄りのない彼は、無縁仏として供養塔に合祀されたらしい。 
結局、田中さんと彼の体験を共有した夫婦には禍が寄って来て、何一つ理解できない歳の坊やだけが無事だった。 

「人外の悪心とは、ひたすら関係を避けることだけが逃げ道です。 
 私はあなたが生まれてからは、お宮参りの時も、七五三の時も、 
 あなたがこれから先、おかしなものに気づきませんように、気づかれませんように、とお願いしたものです。 
 なのに、自分から関わろうなんて、とんでもないことですよ」

文は拙いが、実際のおばさんの話しぶりは迫力たっぷりで、
俺はしばらくの間、怖い話を避けまくることになった。 

だから追及もできなかった。 
おばさん自身、事故で旦那さんを亡くし、自分も顔に傷を負った事実との関連を。 
しかもおばさんは大分前に亡くなり、その一人息子はある意味天涯孤独の身。
死ねば無縁仏の可能性もないとは言えないわけなんだ・・・。 

まあ、全てはただの偶然なのかもしれないけど(´・ω・`)ネ。


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