29 本当にあった怖い名無し 2012/05/01(火) 08:14:57.17 ID:YSGKGk/pO
10年近く前の話だが書かせてもらいます

もう高校を卒業する間近の話だ
進路も決まり、進学では無く就職する事になった私は毎日暇を潰す事だけを考えていた

そんなある日友人から近くの山の麓にある廃寺に行こうと誘いがあった
何度か行った事はあったがこの暇をどうにかしてくれるならと連いて行く事にした。

メンバーはAとAの彼女Eとその友達のKだ。
Aの彼女とは面識はあったがKとは初対面だった、意外とタイプでテンションもかなり上がり、
4人でワイワイ騒ぎながら歩いて行った

廃寺まではそう遠くなくすぐに到着した
何度か来た事があるとはいえ夜の廃寺などいいもんではなく、4人とも一気に静まり返った

A 「何度か来たがやっぱり雰囲気わりーよな」
私 「まあなーいいもんではないわな、廃寺だもんよ」
E 「私は初めてだよ、本当に何か嫌な感じだね…Kは来た事あるんだよね?」
K 「うん、彼氏と来た事あるよ」

なぬっ彼氏など聞いてないぞとなり、上がっていたテンションも急降下、帰りたくなった私は自分勝手に言った
私 「もう良くね、ある程度見たし、帰ろうや」
A 「そうだな、結構遅いし帰るか」
と帰る準備を始めてた時に突然Kが「何か階段みたいなのがある」と言いだした
見てみると地下の貯蔵庫的な所に続く階段だった

今までは気付かなかったが確かに階段があった

ここでやめておけばいいのに好奇心旺盛な私はテンションを急上昇させ、
入ってみようと皆に言いましたが、AもEもやめた方がいいと嫌がっていた
だがKは「私は行く!!」とノリ良く言い、じゃあ二人で行く事となった

AとEはもしもを考え上で待つ事になり懐中電灯を持ち二人で階段を降りて行った

階段は余り長くなく、すぐに降り終わり、そこには10畳程のやはり貯蔵庫というか倉庫があり、
本やら何やら無造作に積まれてあっただけだった

私 「何だ、つまんねーの、古い本とかばっかじゃん」
K 「本当、何かお宝的な物期待したのに」
お前は金目の物が目的かいっ!!と思いながら物色していると一番奥に壁に直接埋められた仏壇のような物があった
K 「あっ金庫発見!!」
いやいや、諦めかに仏壇じゃね…と思いながらKを無視し仏壇の前まで行った
仏壇の開き中央には何枚かお札が貼ってあってあり、これは無いわと触れずに行こうとすると空気嫁!!
と言わんばかりにKがいきなり力任せに仏壇を開いた
お札はビリビリと破れ埃を巻き上げながら仏壇は開きは開かれた
仏壇の中は何も無い?と思いましたが隅の方に腐った桐箱が置いてありました
Kがおもむろに桐箱を取り出し、蓋を開けると中には丸い鈍く光る玉が入っていました

玉を見た瞬間に背筋に寒気が走り、一瞬気が遠くなるような感じがした

Kは何とも無いのか「キレーイ、これ私が開けたから私のだからね」と嬉しそうに玉を見つめていました

私 「馬鹿ッんな所に入ってたんだから良い物のはずないだろが早く戻せ」
K 「もー怖がりだなー私君は…何とも無いって」
と笑顔でスタスタ一人で上に上がって行きました

本当に大丈夫なのか?と思いましたが何もあるわけないか!と歓楽的に考え、私も上へ上がっていった

上に上がった瞬間AとEから声を合わせたように「遅い!!!」と言われました、
思った以上に長い時間下にいたらしく、時刻は2時を過ぎようとしていた

流石にヤバイと思い大急ぎで4人とも帰り、その時は帰る事だけを考え、玉の存在など忘れていました

そしてまた暇に追われる毎日に戻り、丁度一週間が過ぎようという時にまたAから連絡来て、
この前のメンバーで家で飲もうとなりました

Aの家に行くとすでに私以外は集まっていて、すでに飲み始めている最中でした
A 「おーっお疲れ、遅かったじゃん」
E 「久しぶりって一週間位か」
K 「私君お疲れー一週間ぶりだねー」
一瞬Kと気付きませんでした、一週間でこれほど変わる物かという位変わっていました、
ナチュラルな化粧は厚く濃ゆ目に、黒ロングの綺麗な髪はギャルみたいに盛られていた
私 「Kかっ!?めちゃくちゃ変わったな」
K 「まあねー」
Kは元々テンション高い感じでしたが前以上にテンションとノリが上がっていました
私 「何だよ、良い事あったのかよ、えらい上機嫌じゃん」
K 「良い事って言えば良い事かも」
と含み笑いをしているKに少し不気味さを覚えました

そして4人で飲み始め就職や進学、たわいのない話を飲みながら話しをしました

私 「Aは家業を継ぐんだよな?EやKはどうすんの?」
Aは実家がお雛様や子供用の刀や鎧などを扱う老舗の店をしてました
E 「私は地元の大学に行くよ、Aの家の手伝いしながらね」
AもEも高一から付き合ってて、ずっと結婚するとか言ってるバカップルだ、当たり前の返事が返ってきた
K 「私はねーしたい事があり過ぎてまだわかんないんだ、でもね、何しても上手く行く気がするから大丈夫だよー」
その時はKの返答は自信家なんだな、と思える位の物だったが、ずっと話して行く内にKの言葉全てに違和感を感じ始めた

Kの言葉には自信が満ち溢れてる、いや、異常なまでに自信過剰なのだ
自信があるのは悪い事では無いが行き過ぎてる気もしてるなと考えた時にあの「玉」の事を思い出した

私 「そういやKあの時の「玉」どうしたんだよ?しっかり返したのか?」
A 「何だよ「玉」って?」
私 「いや廃寺の地下に降りた時にKが持って帰っちゃったんだよ、お札とかあったから、良い物じゃないだろ?」
A 「札!?何を持って帰ってきてるんだよ、Kそれどうしたんだよ?」
K 「金庫開けたの私だしあれ私のだよ、今も持ってるし」
そう言って鞄から「玉」を取り出した、気のせいか「玉」は前と輝き方が違く見え、前以上に気が遠退く感じがした

A 「何だよ、それ?普通じゃなくね?一瞬気分悪くなったし」
どうやらAも私と同じ感覚を感じたようだった
K 「そんな事ないよ、逆にこれ持って帰った日からいい夢ばかり見るし、良い事ばっかだよ」
話しを詳しく聞くと、「玉」を持ち帰った日から毎日小さな頃から持っていた様々な夢が叶う夢だけを見るようになり、
学校の成績、評価も上がり、雑誌に送った自分が書いた物が載ったりと色々良い事ばかり起こるらしい

なるほど、Kの自信はここからかと思った、だから今までの地味な格好も変え、過剰なまでに自信に満ち溢れてたんだなって

A 「ちょっと見せてみろよ、良い事悪い事抜きにしても普通じゃないだろ?」
そういってKから「玉」を取って観察し始めた
A 「石や金属じゃないな表面に塗ってあるのは恐らく漆だ、ただそれだけじゃないな何か混ぜてある」
家業の関係上、漆など詳しいAはまじまじと「玉」を観察していた

A 「駄目だ、俺じゃわかんねー親父に見せたらわかるかもしれないけど」
そう言って「玉」をKに返した

その後もしばらく話しながら飲み、そろそろ遅くなったし解散となり、帰ろうとしてる間際に玄関でAが言いました
A 「K!!良い事ばかりかもしれないけど普通じゃない事はわかってんだから、すぐに戻せよ」
K 「大丈夫だって、私が成功したら皆にこれを貸したげるから」
そう笑顔でおどけて見せた、それがKの見せる最後の笑顔となった


それからは「玉」の事もすっかり忘れ普通の生活に戻っていました
2週間程たって夜暇過ぎたので散歩がてらコンビニに行く途中Eと会いました

私 「おすっ今日は珍しく一人?また喧嘩したのか?」
E 「フゥー皆いつも一緒にいるとしか思ってないね、まあいいけどさ、そういや最近Kに会った?」
私 「いや、飲んだ日以来見てもないけど、どうかした?」
E 「ここ一週間程前から連絡取れないんだ、学校も来てないし、心配しててさ」
私 「そっか、病気してんのかもしれないし、今度3人でKん家に行ってみるか、Aに伝えといて」
そう言ってコンビニに向かった
コンビニで買い物を済ませ、帰る途中ふとあの「玉」を思い出した
あんな変な「玉」誰が何の為に作ったんだろ、親父にでも聞いてみるか、そう思い自宅に着いた私は親父に聞いてみた

私 「親父、山の麓の廃寺とか知ってる?」
親父「知ってるが、何かあったのか?」
私 「いや、最近友達が変な「玉」見つけてさ、良い事ばかり起きるって、少し変でさ」
親父「知らんなー、俺が小さい頃にはすでに廃寺だったし、気になるならAの祖父ちゃんにでも聞いてみろ、わかるかもな」

まあ次にAん家に行った時にでも聞いてみるか、そう思った時にAから電話があった
A 「本当にヤバイ、すぐに俺ん家来てくれバタバタな」
それだけを言いAは電話を切った
凄い剣幕でしたから本当にヤバイ何かあったと自転車に乗りすぐにAの家に向かいました
Aの家は結構近いので5分程で着き外で待機してたAとEに何があったか聞きました

私 「なんだよヤバイってまさか妊娠した何て事じゃねーよな?」
A 「ふざけてる場合じゃねーよ、Kが持ってた「玉」あれは絶対良い物じゃない」
意味がわからず聞いてた私にAは「説明は後でするから、とにかくKの家に急ぐぞ」と3人自転車でKの家へ向かった

道中ある程度の話は聞きました、やはりAもEからKの状態を聞き「玉」の事が気になり、
祖父ちゃんなら知ってるかもと聞いてみたそうだ
A 「祖父ちゃん廃寺知ってるだろ、何か変な「玉」見つけたんだけど、何か知ってる?」
祖父「廃寺…山の麓のか!?何であんな所に行った!!?「玉」はどうした?今も持ってるのか!?」
いつも面白い祖父ちゃんからは考えられない真剣な表情だったそうです
A 「俺が持ってるんじゃないよ、友達が…」
言いかけた瞬間「すぐに持って来い」と言われ私に連絡したという事でした

あの祖父ちゃんがと私も同じ気持ちになり無言でひたすらKの家まで自転車を走らせました
Kの家に到着すると、同時に家から何かが割れる音と女性の叫び声が聞こえました

これは本当にヤバイんじゃないかと玄関へ急ぎチャイムを鳴らしたが返答は無く、
鍵は開いていたので緊急という事で勝手に上がりKの部屋に向かった

ドアを開けた瞬間、心臓が止まるかと思った、Kの家族は全員Kの部屋にいた、
その中心には髪を振り乱し、ブツブツ何か喋り、左手に刃物を持つKの姿がありました…
その姿に元のKの面影はありませんでした

余りの状況に3人共微動だに出来ず立ちすくんでた、そんな時にKの姉が
K姉「何してんのよ、あんた、本当にお願いだから、そんなの渡して」
そう言い近寄ろうとした瞬間、Kが凄い勢いで叫びながら刃物を振り回した
幸いK姉には当たらなかった物のそんな状況で迂闊に近付け無い、私達3人は言葉で訴えかけました
私 「何してんだよ、危ねーだろ、何があったんだよ!?」
E 「K、お願いだから、そんなの置いて話そ?」

私達3人はKを諭すように話しかけましたが、Kはまるで聞いてないみたいに俯きブツブツ独り言を言っていました

よく聞くとKは「私には何も無いどうしようも無い」とただ呟いているようだった

誰も身動きが取れず緊迫した状況でしたが遂にKが行動し始めました
Kはまるで男のような叫び声で自分の右腕を刺し始めたのです


皆唖然とし、場がまるで凍りついたように静まりかえりました

ですが次の瞬間にはEの悲鳴と共にKの家族全員でKを取り押さえにかかりました、
でもKは家族など全く意にかえさず「こんなの意味ない、いらない」と何度も自分の右腕を刺し続けました

私は余りの状況の異様さ異常さに体が固まったように動けませんでした…
だが、そうしてる間もKは自分を刺し続け部屋を自分の血で染めていました

余りにも夥しい光景に現実感を持てない私は顔面蒼白になりながら只々立ちすくむだけでした、
まともな思考も出来ず助けを求めるようにA達を見るとAもEもK家族と共にKを取り押さえていました

それに感化され「これは今現在、現実に起きてる」そう頭が認識し現実を取り戻しのか自然と私も取り押さえに加わりました

Kはこんな細い体のどこにこんな力があるのかと思わんばかりの凄い力で振りほどこうと暴れていました
皆必死にKを取り押さえ続け数分程経ち、やっと振りほどくのをやめたかと思えた瞬間囁くような声で
「いらない、私何ていらない」と呟き自分の顔を数度深く切りつけ後に腹部を深く刺しました…
K姉は泣き叫びながらKの横で座り込み、K母は血だらけになりながら必死に腹部を抑え、K父は救急車を呼んでいた
Kの腕は皮だけで繋がってるかのようにぶら下がり、顔は確実に傷が残るだろうと思える位深く、
腹部からは夥しい程の量の出血で、部屋は正に地獄絵図のようでした
私達3人は何も出来ずに震え立ちすくむ中、救急車は到着し近所からの通報もあり警察も来ていました、
Kは救急車に搬送され家族は付き添いとし全員着いていき、私達は事情を聞く為に警察署に行きました

事情聴取という程の物ではなく、簡単な質問をされ、最近のKの様子はどんな物だったか等の近況を話しすぐに帰される事になりました
未成年という事で3人共保護者を呼ばれ私は親父、Eは母親、Aは祖父ちゃんが迎えにきてくれ、警察署を出た時でした、
Aが私の方に来てポケットから件の「玉」を取り出し私に見せ「明日、俺ん家に来てくれ」とだけ言い祖父ちゃんと帰って行きました
親父には色々聞かれましたが適当に返答しながら家路に着き、
今だに現実、非現実とも思えないような感覚を感じながら、その晩は眠れず気がつくと朝を迎えていました

私は顔を洗い、気を引き締め、全てを聞く為にAの家へ向かいました


丁度Aの家の前でEと鉢合わせた

私 「おす、Eも早いな仕方ねーか昨日があんなだったし」
E 「うん、全然寝れなかったから」
やはりEも寝れなかったみたいだ、あんな事があった後だから無理は無いと思った
私 「Kの様子とか聞いたか?」
E 「ううん、朝一番に病院に行ってみたけど、面会謝絶だったし、皆聞ける様子じゃなかったから…」
私 「そっか…」

二人で話していると家の裏の工場からAと祖父ちゃんが出てきて、私達に気付きこちらにやって来た
A 「二人共早いなもう来てたのか、まあ上がれよ」
そう言ったAの左頬は心なしか赤く腫れていた

Aの家へ上げてもらったが案内されたのはAの部屋じゃなく祖父ちゃんの部屋でした
A 「祖父ちゃん今風呂入ってるから少し待っててくれ、飲み物持ってくるから」
そう行って部屋を出て行き二人部屋に残された
昨日帰り際Aが「玉」を持っていた事である程度予想はしていた、Aは何かわかっててKの家に行った事を、
Aは祖父ちゃんから何か聞いていたが私達には話さず、もしくは話せなかった事があると

私は張り詰めた緊張感の中に少しの懐疑心を持ち二人を待った

5分程経ちAと祖父ちゃんは二人揃って部屋に来た
祖父「おおっ私、久しぶりだな、元気してたか?」
私 「久しぶりって、最後に会ってから一ヶ月も経ってないけどね」
祖父ちゃんは「そうだったか?」と笑いながら座布団に座った
祖父「さて、話す前に…」と言いながら立ち上がり、私とEにゲンコツした
E 「いっいったーー」
私 「何すんだよ、いきなり、本気だっただろ今!?」
祖父「その位で済んで良かったと思え!!一歩間違えたらKという娘みたいになってたかもしれなかったんだぞ」

そう言われ私達は黙るしかなかった
少しの沈黙が流れたが、Aが沈黙を破った
A 「俺達が悪い事したのはわかってる、でも私もEもアレがどんな物かもわかってないんだ、説明してやってくれないか、二人も一応当事者だしな」
祖父は溜息をつきながら静かに話し出した


あの「玉」が出来たのは昔、正確な年などはわからないらしいが相当古くから在るものらしい

昔、まだ睡眠中に見る夢などのメカニズムなど解明される以前の時代に(宗介)という青年が夢を説き明かそうとしていたそうだ

夢には本人が知りえない人物や物が出たり、それらが実在したりする時もある、夢には隠された力があり、
隠された力があるなら人の為に役立てたいと、様々な人の夢の話を聞きながら町から町にと流れていた

流れる旅の中、宗介はとある集落に辿り着き、いつものように人々から夢についての話を聞き回っていた

集落の人達から話を聞いて数日が経ったある日、その集落の長の使いという人物が現れた
是非あなたの話を伺いたいという誘いの話だった

宗介はそれに了解し、長の屋敷に行き、長と話をしていた
どうやら長の一人娘が毎晩悪夢ばかりを見てろくに睡眠も取れてない、それをどうにか出来ないかという話だった

宗介は今まで自分が得た知識で人助けになるならと、今でいうセラピーみたいな事を施し、
数日後には娘は悪夢など全く見なくなり、長は大変喜び宗介を気にいったようだった


集落の者を使い宗介の為の家をこさえ、宗介にここに住んでもらいたいとの事だった
宗介は悩んだが集落の人達の暖かい歓迎を受け、それに承諾し、集落の一員となった

元々の人柄もあり宗介は集落の人達から人望を集めていた、一人娘もセラピー以来宗介に心を開いており、
長もいずれは娘の婿として迎え、この集落をまとめてもらいたいと考えていた

だかそれを気にいらない人物がいた、長の使いで使用人の男だった、元々野心家で使用人になったのも一人娘を自分の物とし、
いずれは自分が集落の長になるつもりだった

だから、宗介の存在がどうしようもなく疎ましかった、その為どうにか出来ないかと考えていたある日、
他の使用人が一人娘の話をしているのを偶然聞き、それを利用しようと考えた

一人娘は毎晩色欲の夢ばかり見るという話だった、完全な箱入り娘だった為使用人以外の男と会話すらした事なく、
年齢的にも考えておかしくはない歳だった

普通に考えて娘は宗介に好意があったのは間違いない、決して悪い事ではない、だがそれも言い方一つで悪い方に向かわせれる
使用人は長にこう話した
「最近一人娘が色夢ばかり見るのは長の地位目当てに一人娘を自分の物にする為に宗介が仕組んだ事だ最初からこのつもりで近付いた事だと」と


長は憤慨した、そんな事しなくてもいずれは長の地位を継がせるつもりなのに、
そんな形で今までの信頼を裏切るなんて、絶対許せる事ではない

長は宗介を呼び出し宗介を責め立てた
宗介は身に覚えがないと訴えたがまるで聞き耳を持たなかった、密告人は長年付き従った使用人、それに加え夢を操れる人物など宗介以外に考えられなかったからだ

長は宗介に2週間の猶予を与え、その間に色夢をやめさせないとただではおかないと言った
宗介はどうにかしようとあらゆる手を尽くしたが全て逆効果だった、何せ娘からしたら慕っている人物が目の前にいるのだ、色夢は止む所か膨らむばかりだった

その間に使用人は集落の人々にも宗介の話をし、ある事無い事を言い回し、宗介の人望を消し去った
今まで暖かかった人達は嘘みたいに冷たく、宗介を避け、宗介は孤立した
今までは周りの人の手伝いなどをし食料分けてもらっていたがそれすらも無くなった

宗介は絶望した、今までの周りの人々の信頼関係は崩れさり、食う物も無く、宗介はひたすら追い込まれついには狂った…

狂人と化した宗介は悍ましい事を考えた、夢は頭の中で見る物、ならば頭の中を直接見ればいいと
普通に考えればまるで意味の無い事だが、狂った宗介にはそう考える自体に意味が無かった、ただひたすら夢だけを考え追い求めた

旅人を襲い、狩りに出た集落の人を襲い、頭を割り脳を取り出し家で食い入るように見続けた

そして10日が過ぎようとしたある日変わり果てた宗介が屋敷に現れ、一つの「玉」を差し出した
これがあれば色夢など消え、更に良い夢をだけを見れると言い残し宗介は去っていった

宗介の言い残した通り娘に「玉」を持たせると、色夢などあっさり無くなり、自分に取って都合の良い夢ばかり見るようになった
これを良しとし、宗介を許し、全てが丸く収まったように思えたが、もちろんそれでは済まなかった

一週間も経たない内に事は起こった、Kのように一人娘は自分の体を傷付け自害したのだった


その異様さに長は宗介が渡した「玉」が原因と思い探したが「玉」は一向に見付からなかった
宗介も集落から姿を消し一向に行方は掴めなかった

そして本当の悪夢が集落を襲った
集落全体「玉」が見せる夢が感染し始めた

皆一様に都合のよい夢を見て、ある程度の期間が来たら一人娘のように体を切り刻み自害した
長は畏れた、これは宗介が起こした呪いだと…

呪い等に全く知識の無い人々は夢を畏れ、次は自分かもしれないと夢を見る事を避けるように眠れない日々を過ごした

その異様さに長は宗介が渡した「玉」が原因と思い探したが「玉」は一向に見付からなかった
宗介も集落から姿を消し一向に行方は掴めなかった

そして本当の悪夢が集落を襲った
集落全体「玉」が見せる夢が感染し始めた

皆一様に都合のよい夢を見て、ある程度の期間が来たら一人娘のように体を切り刻み自害した
長は畏れた、これは宗介が起こした呪いだと…

呪い等に全く知識の無い人々は夢を畏れ、次は自分かもしれないと夢を見る事を避けるように眠れない日々を過ごした

そんなある日集落に旅の僧侶が乞食(こつじき)に来たが、集落の状況を察知し長の屋敷に訪れた
長から事情を聞き、恐らく「玉」を見つけどうにかしない限り、この状況を切り開く術はないと告げました

僧侶は長と集落の者数人を引き連れ宗介の家へ向かった
宗介の家は一度調べたと言ったが、間違いなく「玉」は家にあると僧侶は言い、宗介の家を調べた

やはり何もないと思われたが、僧侶は床下を掘ってくれと言い集落の人、数人で床下を掘った結果、
大事そうに4つの「玉」を抱える腐乱した宗介の死体が見つかったのだった

僧侶は禍々しく光る「玉」を見た瞬間に吐き気を抑えるように口を抑え皆にこう伝えました
僧侶の友人の人形技師に至急来るように伝えてくれと、それまでこの家に誰も近付けてはいけないと
そして数日が経った晩に人形技師が集落に訪れ、僧侶と話し、宗介の家に入って行きました
明くる日の朝二人は家から出てきました、4つの桐箱と共に

そして僧侶は宗介の家で行われた事を「玉」がどのように作られたかを長達に話しました
それは悍ましい所業でした

人の脳を凝縮し、人骨の灰と血を混ぜ凝縮した脳に塗り固め、漆に宗介本人の血を混ぜ、
一塗りする度に自分の体に傷を付けて行きました、一塗り一塗りに最上級の憎悪を込めて、
決して憎悪を減らさないように体を傷付けてまで、そうして「玉」は完成しました

僧侶は「夢魅」と言う外法だと言いました、どこで宗介が知ったかはわからないがとても危険な邪法との事でした
この「夢魅」にも完成度と決まりが有り、完成度は見た目の輝きで決まりは必ず4つ作る事でした

低い順からの玉、「肆の玉」「参の玉」「弐の玉」そして最密度、最高完成度の者を「壱なる玉」というとの事です


僧侶と人形技師は直接呪いのかけられた集落の者ではない為、「壱なる玉」と「弐の玉」は影響が強すぎる為持てないとの事でした
僧侶は札を貼った2つの桐箱を渡し、絶対に一目につかない場所に保管し絶対に開かない事を約束させ、
僧侶と人形技師は「肆の玉」「参の玉」を持ち集落を去りました

僧侶は故郷に帰り寺に地下を作り、人形技師は倉に地下をそれぞれ作り決して出さないように隠し生涯封印してきたのでした

私はそこまで聞き終わり一息つきました

一気に話された事を頭の中で整理し、自分自身でわかった事をわからない事を祖父ちゃんに聞きました

私 「つまりあの廃寺が僧侶の寺で地下が「夢魅」を隠した場所だったわけだろ?なら人形技師の倉も近くなのか?」
祖父「ああ近くだ、っていうかその人形技師が俺の何代も前の先祖ってわけだな」
A 「えぇっそうなの?てか言えよ」
祖父「お前に言ってどうにかなるか?」
Aは拗ねたように黙りこんだ
祖父「あの離れの倉が例の倉だ、しっかり毎年鍵を変えて補強してるから安心しろ」
祖父「あの寺も廃寺になる時に坊主にしっかり管理して、持って行けと言っただがな、怖くなったんだろうな…」
何故か自分自身の不始末のように祖父ちゃんは暗い表情でした


A 「てか、廃寺の「夢魅」はどうなるんだ?祖父ちゃんが2つ持つのか?」
祖父「いや、2つ同じ所には保管出来ないし、今は桐箱を作り直して札を貼ってるし、知り合いの住職に頼んであるから心配いらんぞ」
皆、安心して一息ついた所でずっと黙ってたEが口を開いた
E 「あのKは…命が助かったら元に戻るんですよね?」
祖父「いや、気の毒だか、命が助かってもどうにもならんな、あれから逃れた術は聞いた事がない」
E 「そう…ですか…」
Eはそう言って小さく泣いていた

Kはその3日後に病院で息を引き取りました…

祖父ちゃんがKの葬式後に言いました「Kちゃんは本当に気の毒だったが、お前達は生きてる、
Kちゃんの分まで精一杯生きる事が最大の供養になる」その言葉を胸に今日も全力で生きてます

~終~

長文、駄文で大変申し訳ない
全部呼んでもらえた、ありがたいです



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