モッツァレラ人@特選怖い話:2019/09/23 18:22 ID:5Jv1BLS.

これは私が前に住んでいた地域で起きた
恐怖体験についてのお話です。場所はお伝え出来ませんが、○○村と致しましょう。皆様のお気に召すか分かりませんが……お聞きください。

私が昔住んでいた○○村は、近隣の町から見ても、ド田舎でした。辺り一面田んぼで、よく言えば自然が多く、美しい場所でした。
人口はたいして多くなく、子供も少なかったわけで、私が通っていた小学校の全校生徒は僅か十人ほどでした。
小さい頃の私は、肝っ玉が小さく、臆病者した。ですから、怖い話もなるべく聞かないようにしていたんです。
あるとき(私は十歳でした)、私は一人で下校していたんです。その日は友達が風邪を引いて休んでおり、その子といつも一緒にいた私はボッチになってしまいました。一人で夕暮れ時に下校していると、向こう側から誰か歩いてくるんです。一面田んぼでしたから、余計にその人が目立って、「ん?」と思いました。
私の下校路は、基本的に田植え用の麦わら帽子だったり、長靴だったりを履いてる人をよく見かける道でした。だから、その人は帽子も被っていなかったし、長靴も履いているように見えず、「珍しいな」と思ったのです。
向こう側から私の方へと歩いてくるわけですから、当然お互いの距離は縮みます。それで、すれ違う、と思った時に、その人は私の横で止まったんです。
それで、私の方を振り向いて、
「アレが、くるよ」
と言ってきました。
「アレってなに?」と聞くと、何も答えてくれませんでした。
その人はそのまま、何も言わずにどこかへ行ってしまったんです。
「なんだったんだろう」と思いましたが、そのままその日は帰りました。

次の日、友人のAちゃんの風邪が治って、学校に登校してきて、昨日の夕方の出来事を話したんです。
それで、Aちゃんが「どんな格好してたの?」と聞いてくると、これがなぜだか答えられなかったんです。明らかに帽子も、長靴も身につけていなかった。けれど、どんな顔をして、どれくらいの身長で……などなにも思い出せなかったんです。
好奇心旺盛なAちゃんは、「その人に会ってみたい」と言い出して、私は不思議と思い出せないことに、だんだん怖くなってきたのに、結局その人を見よう、という結論に落ち着いてしまいました。

放課後一緒に帰って、その人と会った場所で二人で待ってました。
ずっと待ってたんですが、現れなかったんです。もうそろそろ帰ろう、と話し合っていると、その時でした。向こう側から来たんです。その人が。
Aちゃんは興奮してましたが、私はとても怖かったことを覚えています。
その人が私たちの隣に来ると、こう言いました。
「アレが、きた」
昨日は「アレが、くるよ」だったのに、今日はとうとう来てしまった。
その人は、そのまま通り過ぎると思って、私たちはその場に立ち尽くしていました。そのまま前を通り過ぎる、と思ったその時、その人は震え始めたんです。
いえ、なんと表現したらいいのか……壊れた人形のような、首をガクガクと震わせ、体全体もそれに呼応するように大きく跳ねていました。
「アレが、ア、ア、アレ、アレ、アレが、きたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきた」
と、ずっとそうしているものでしたから、私たちら怖くなって、全力疾走で家へと帰りました。もちろん、後ろなど振り返らずに。
今思えば、家に帰ってから家族か誰かに相談すればよかったんです。でも、しませんでした。怖くてそれどころじゃなかったからです。
家族は私の怯えっぷりに「どうしたの?」と何度も聞いてくれましたが、私はなにも答えず、その日はすぐに布団に潜り込みました。

さらにその翌日、私とAちゃんは昼休みに二人で話してたんです。もちろん、昨日のことについて。
「昨日のこと、誰かに言った?」と私が聞くと、「ううん、誰にも言えなかった」と返事が返ってきました。
まあ、そりゃそうだろうな、と思ったわけです。それで、昨日のようなことは懲り懲りだと、今日は違う道から帰ろうと提案したんです。
しかし、Aちゃんは違いました。
「もう一回だけ、あの道で帰ろう」と言ってきたんです。
私は驚いて、
「嫌だよ、怖いもん」と返しましたが、1回だけ、今回で終わり、と何度も言われて、私の方が折れました。
Aちゃんは好奇心旺盛で、一度気になると自分で確かめたくなる質でした。
Aちゃんはその人とコンタクトを取ってみたいと思ったのでしょう。私も止めればよかったと、何度も思いました。

その日の帰り道、二人でまた待ちました。けれど、私はこの時、もう怖くて仕方なく、震えっぱなしでした。
「怖いよ、やっぱりやめない?」
と何度もAちゃんに言いました。しかし、Aちゃんは、怖いからこそ知りたいんだ、みたいなことを言って、また、「怖かったら先に逃げていいよ」とまで言ってきました。
昨日のあの人は、目の前で震えるだけで私たちに何もしてこなかったので、今回も危害は加えないだろうと踏んでいたようです。
道の脇の方で、道の内側を向いて待っていると、その人は、やっぱり来ました。
向こう側から歩いてきて、距離を詰めてきて、この時の私は心臓が張り裂けそうでしたね。
それで、真ん前まで来ると、その人は止まりました。
そして、こう言いました。
「アレが、たべにきたよ」
と言った瞬間、また震え始めたんです。
アレとは何か? たべにきた、とはどういうことか? 訳が分からず、けれどもう限界を迎えていた私は逃げ出してしまいました。
走って、走って、足の遅い私がようやく……五十メートル程でしょうか。それくらい離れた時に、Aちゃんのつんざくような叫び声が聞こえたんです。
驚いて振り返ってみると、その人が、Aちゃんを『食べていた』んです。
どう形容すれば良いのか分かりません。その人――――いえ、人なのか、もはや分かりませんが、ソレは間違いなく、『口のようなもの』でAちゃんを捕食していました。少なくとも、私の目にはそのように写ったんです。

そこから先は、どのように帰ったのか分かりません。分かりませんが、気がついたら家中ドタバタ騒ぎでしたね。
後に聞いた話では、私は家に帰ってくるなり、出迎えてくれた祖母に、
「アレが、来た!アレが、Aちゃんを食べちゃった!どうしよう、どうしよう!私、私……逃げちゃった……」
と何度も言っていたようで、それを聞いた祖母は今まで見たこともないような怖い顔をして、私の頬を引っぱたき、
「どこでAちゃんは食べられたの!?」
と聞いていたらしいです。
私が場所を伝えると、急いで近隣の住民を連れてその場所に行ったらしいですが、そこには、もう何もありませんでした。
(私には当時五つ上の兄がいて、その兄が教えてくれました)

怖いのは、その後です。
次の日の朝に、私が祖母に
「Aちゃんは、どうなったの?」
と聞くと、こう言われました。
「Aちゃん? どこの子? そんな子、いたかしら?」
初めは何を言っているのだろうと思いましたが、母に聞いても父に聞いても、友達に聞いても、誰もAちゃんを知らないんです。
いえ、まるで、最初からAちゃんなどいなかったかのように、Aちゃんが座っていた席も、ロッカーも、名簿からも無くなっているんです。
ならば、と思ってAちゃんの家に行ってみると、
「Aちゃん? えっと、どこの子かしら?私の家に子供なんていないのですが……」
と言われました。
もう、わけが分かりません。
私だけが、Aちゃんを唯一知っているのです。

それから直ぐに、私は引っ越しました。
理由は父の転勤という事を母から聞きましたが、私は違う気がします。
たぶん、アレが関係しているんだと思います。
それから、アレがどうなったのか、○○村がどうなったのかを、私は知りません。○○村のことは、家族内でも禁句になってしまったのですから。
ですが、どうしても気になって、中学生の時にこっそり、両親が持つ電話帳を盗んで○○村に住む祖母に電話をかけました。
以下は「私」と『祖母』の会話です。

「もしもし、久しぶり。いきなりごめんね。でも、聞きたいことがあって」
『うん』
「私が引っ越したのって、アレが関わってたの?父さんも母さんも、何も話してくれなくて」
『ああ、そうだよ。アレが、次はアンタのところに来ると思って、引っ越してもらったの。私たちが住んでいた家も恐らく嗅ぎつけていただろうから』
「アレって、何だったの?」
『誰も知らない。どんな奴なのかも分からない。でも、○○村で昔から伝えられているのは、アレは化け物で、食べられてしまったら最後、存在を消される……なんて大それた話だよ。もちろん、本当のことだけれどね。昔に言っていたAちゃんって子も、恐らく食べられたんだろう?』
「うん。私だけが、覚えてるの」
『そう。まあ、もうアンタに危害が加わることはないから、安心おし』
「う、うん……」
『それから、もう○○村に関わっちゃいけない。そして、私のところにも電話をかけてきちゃいけない。分かったね?』
「え、うん……分かった。ありがとう」

そうして、電話は終わりました。
翌年、私がリビングに置いてあった電話帳を見てしまったことがありました。片付け忘れたんでしょうね。
そこには、祖母の電話番号が載っていませんでした。どこにも。




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