928:名無しのオカルト 2009/03/23(月) 18:26:52 ID: ID:IrGv8t+x0

知り合いの話。

彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。


「知り合いにですね、個人で大陸から色んな物を輸入していた人がいたのです。
 山師っぽいところがありましたから、深い付き合いはしていませんでしたけど。
 干物だのドライフラワーだのって扱いにして、日本じゃ承認されていない生薬を
 こっそり持ち込んでるって噂も聞きました」

「ある時、この人に変な飲み物を見せられたんです。
 個人輸入したという緑茶で、いわゆるダイエット茶って奴だったらしいです。
 とある山奥でのみ採取される御茶だそうで、凄い薬効があると言って、大層自慢
 していましてね」

「『自分の体型変化をよく見とけ!』
 そう言って笑ってました。
 いや、僕は飲みませんでしたけど。
 得体の知れない薬なぞ服用してから、誤治になったりしたら笑えませんし」

数ヶ月後、知り合いに再会した彼はとても驚いた。
プックリとした丸い身体が、ガリガリの痩体に変じていたからだ。
あの時の茶を飲み続けた成果だと言う。

929:名無しのオカルト 2009/03/23(月) 18:28:16 ID: ID:IrGv8t+x0

(続き)
「その痩せ具合、絶対おかしいです。危ないですよその御茶は」

必死で説得する彼に向かって、知り合いは静かに微笑んでいたという。

『大丈夫だって。身体の具合もすこぶる好調なんだ。
 目覚めも寝付きもいいしな。ただ・・・』

「ただ、何ですか?」

『猿に付きまとわれるのが鬱陶しいだけだ』

何でもあの茶を飲み始めてから、猿のような影が見えるようになったのだという。

『飲んで一息ついてるとさ、いつの間にか目と鼻の距離にいるんだよ。
 ボンヤリとしてて猿っぽいとしか表現できない、黒い影がね。
 眼だけがギラギラと真っ赤に揺らいでるけど、ただ傍らにじっとしているだけ。
 手を出してくる訳でもないから、放っている』

知り合いは何でもないことのように言い放ったらしい。

「思うに、あの茶葉には何らかの幻覚作用があったんじゃないですかね。
 劇的に痩せてしまったのはその副作用でしょう。そう、副作用。
 ですからアレは本来、ダイエットなどに使われる物ではないと思うのです」
というのが彼の推測だ。




930:名無しのオカルト 2009/03/23(月) 18:29:32 ID: ID:IrGv8t+x0

(続き)
その猿って本当に幻覚だったんですかね?

私がそう問うと、必死で肯定する彼だった。
「当たり前です、幻覚に決まってます。そうじゃなきゃ怖いじゃないですか」

その後、その知り合いとは連絡が取れなくなり、今に至っているらしい。
「健やかでいてくれれば、それで何も言うことはないのですけどね」

彼はそう言って、小さな溜息を一つ吐いた。





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