1 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 21:20:40 ID:Z2h+o0gXP
妖怪にまつわる忘れ去られた伝綺
地方の伝説から身近に伝わる妖しい話、体験談でもいいです。
妖しい雑談でもいいんです。
どこかノスタルジックで面妖な、そんなオカルトなスレです。


3 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 22:21:21 ID:Z2h+o0gXP
「東京の外れの百体地蔵寺の宵祭り」

こないだ、百体ばかりの地蔵が野ざらしに祀られた寺で献灯会があった。
日の沈む頃、人々は祈りを託した蝋燭を手に持ち、地蔵の前に置いていた。
闇のなかで点々と小さな焔が揺れ動く光景は、どこか幻想的であった。
宵の口になると、広場ではインドや東南アジアに伝わる面妖な音楽と濃厚な線香の香りが流れ祭儀に使う極め細やかな意匠を施した装飾品を身に纏った一人の男が、舞台で剣を片手に舞い踊っていた。
ダンビラのような剣を、流れるように颯と翻す様は神々しかった。

踊りの舞台も終わった頃、いよいよ宵も深くなり、雨も降りだした。
雨宿りで人が集まったお堂の中では、誰しも見覚えのないような、妖しい映画の上映会があった。
抑揚のない古風な民謡が延々と流れ、紙粘土で作られた白い狐と老人が、まごまごと聞き取れない口調で会話をしていた。

にわかに場面は切り替わり、夕焼の山道で白い狐が赤い口を覗かせ人に襲いかかる。
湿気と寒気が同時に襲いかかり、汗が止まらなかった。
人々が固唾を飲んで映画を見守るお堂の中では、扇風機だけが必死に首を動かしていた。
雨のお堂で観る分には雰囲気と相まって面白そうな映画ではあったが、結局最後まで何の映画かはわからなかった。

民家の囲炉裏で、白い死に衣装を身に纏った老人が横たわる布団の前で、三人ほどの住職が三味線をだんだらと弾くシーンを背に私は、赤いほおずきの枝を片手に、宵の百体地蔵寺をあとにした。

ほおずきの枝を、暗い夜道で、ぼんぼりのようにかざして帰路につくなか今宵は、終始妖しい光景のひろがる夢のような夜であったと、しみじみと思いかえしていた。

祭りの中では、妖しい光景が今なお広がっているのです。
夏は祭りの季節。
心のうずく季節ですな。



4 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 23:11:01 ID:Z2h+o0gXP
『その猫の名、ぽんぽこ』

余談だが、献灯会の最中に一匹の妖しい虎猫が通り過ぎた。
本物の虎じゃないかと思われるほどのその見事な虎模様には、本当にその動物が猫なのか?という疑惑を抱かせるほどの違和感があった。
そして首を低く屈めて地面を這うような動きは、猫ではなく野生の狸特有の動きだったのだ。

人々は、「あれなんや」 「ほんとに猫か」「虎だ、タヌキだ」と口々に物珍しそうに叫んでいて、百体地蔵の前で揺らめく火の海を眺めていた虎猫は、人々の視線が気になったのか、そそくさと狸のような動きでもって藪の中へ逃げてしまった。

本物の虎と虎猫の模様の機微を解せずに変化した若狸が、都会の喧騒から逃れようと、あの妖美な祭りを観覧しに来ていたのではないのか。

祭りは、人だけではなく妖怪変化の心をも惹きつけるのであろう。



6 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 09:39:22 ID:O1psoXlyP
『日本南方にある山域地方の伝奇』

日本の南方(みなかた)の、とある地方には皇円上人の生まれた寺や、八十もの霊場のある修験道盛んな山域を中心として神代より文化を育んできた町がある、当時は村であった。
知名度としては、名もないこの地方ではあるが、ここには古より語り継がれる伝奇が少なからず残っている。

際限のない戦乱と一揆の、中世の頃の話である。
その山域の麓の神社には今でも大きな池が残っている。
その池には悲しい歴史があり、かつてこの地域を支配していた大野氏とよばれる一族が戦乱のなかで敵勢に敗れた際、追い詰められた大野氏の奥方“四十九人"が身を投げ果ててしまった。

無念を抱く大勢の魂は未だに成仏しきれずに、この池を彷徨っており、その姿が地元民に目撃されてか、
現在では心霊スポットとしてよくよく噂されている場所である。

毎年、春には池の見わたす限りに桜の花々が咲き乱れその満目の桜吹雪は、四十九人の魂を安らげているのであろうか。



8 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:48:29 ID:O1psoXlyP
『お酒にまつわる不思議な伝奇』

わが地方に密かに語り継がれる伝奇のなかに、お酒にまつわる奇譚がある。
これは、酒をお猪口に注ぐこと数回にして、ようやく酔いがまわる頃に体験する、ちょっとした不思議な話である。

酒に酩酊し始めた状態で、そのお猪口の水面をじっと眺めているとたまに、記憶の奥底に眠る思い出の心象風景などが、ぼんやりと霞んで見えることがある。

心象風景であるから、田園、山々、古き町の賑わい、と見る人によって、様々な光景が映し出されはするものの田園の畦道、山々のけもの道、町並の街道、といった具合に、全ての風景には必ず「道」が存在する。

その心象風景のなかの「道」に、朱色の着物を着た一人の麗しき女性の歩いてゆく姿が見受けられたならばそれは、今宵はいい酔いが回ってくるという験(しるし)なのだそうだ。
「いい酔い」とは、二日酔いにはならず、終始気分の良くて尾を引くような後味の悪さすらない、そんな 酔い のことだ。

しかしながら、この女の正体は今だに誰にもわからずじまいである。 醸造の神か、はたまた妖かしか



13 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 16:18:40 ID:bLMm3bHCP
九州は球磨地方、この山々を越えた先にある湧水の里にて語られている一つの伝奇がある。
この山奥に流れる溪(たに)は、碧々と澄みわたりて、たいそう妖麗な趣きであることから“天より降りし川" という意味の名を冠され、ここら一体は無何有郷さながらの平家伝説の里めいた風情が今なお残っている。

この溪を山深くまでのぼっていくと、一箇所だけ大穴を穿ったような渓流の窪みがあり、その淵の底はとても深いのである。
この場所は、鱠ヶ淵(なますがふち) と呼ばれている。


『流木奇譚』

清流だけに棲まう珍しい魚と、妖しい静謐さのただよう 鱠ヶ淵の水底には、ある奇妙な形をした流木が沈んでいる。
実はそれは流木ではなく、河童の甲羅の朽ち果てたものであるというのだ。
現在は、川の主ほどの大きさの大鯰の寝床となっている。



14 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/04(水) 01:14:16 ID:ls3ZwKZzP
「地獄巡り」

大分県の山の湯のひとつに鉄輪(かんなわ)とよばれる湯治場の里あり
この地方は 山奥に八大地獄を構えたり
乳白色の白池地獄 瑠璃の青を薄く溶かした海地獄
濃い猩々非の血ノ池地獄 灰神楽さながら鈍色の熱気の吹き荒ぶ鬼石坊主地獄
これらの地獄絵巻図 山奥の風景を妖しく彩る
地獄の辺りにて 地響きは常のこと ときおり地の底で唸る轟音は 鬼の慟哭ならんや
この八大地獄には 大きな蓮の沼の 一つ混じりてあり
この沼にて 極彩色の蓮の花々の 百花繚乱に狂い咲く光景は 極楽浄土か人外境か
花から花へと乱れ飛ぶは 赤漆と紫金の糸とんぼ
それらの羽ばたき 扇のごとくして 風をはこび 花の匂いも 舞いも舞いうた 踊りも踊う
陶酔と乱舞の歓楽境を目前に うつし世の平常は儚く色あせにけり



18 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/05(木) 18:55:16 ID:ILJPwIPmP
「山の落語家」

肥後の北にある“神楽の里"と呼ばれる地方の、山奥の池まで菱(ヒシ)の種を採りにいった時のこと。
池の中に入り菱の種を手で掬っていると、池のほとりから蝉の鳴き声に混じって人の唸るような声が聞こえてきた。

驚いてその方向に目を遣ると、苔むした岩の上で落語家のようなウシガエルが、え゛ー、え゛ー、と低い声で鳴いていたのであった。

演目の一題でも噺(はな)してくれるのだろうかと、池の中でじっと待ち構えていたが、岩苔の座布団に座った仏頂面の落語家は、依然として低い声で唸りながら、時折思い出したかのように前足で顔の汗を拭う仕草を繰り返すばかりであった。



29 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/08/08(日) 09:05:49 ID:tnY8QquuP
正岡子規の『夢』

先日徹夜をして翌晩は近頃にない安眠をした。
その夜の夢にある丘の上に枝垂れ桜が一面に咲いていてその枝が動くと赤い花びらが粉雪のように細かくなって降ってくる。
その下で美人と袖触れ合うた夢を見た。病人の柄にもない艶(えん)な夢を見たものだ。

(明治三十二年一月)


30 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [] 投稿日:2010/08/08(日) 22:13:10 ID:tnY8QquuP
近所にある大きな寺の横の路地裏の、じめじめした石積みの壁からシダ植物が幾つも生える、昼なおうす暗い細道を過ぎると、廃墟となった民家が軒を連ねる寂しい裏通りに差し掛かる。
そこには一軒の古めかしい木造の映画館が建っていた。

既にとうの昔に廃墟と化しており、今では半分以上が崩壊して草はぼうぼう、入ることすら儘ならない無残な状態となっている。
ここの前を通る度に、十数年前にこの映画館で出くわした正視するには忍ぶほどの、ある奇怪な光景をまざまざと思い出す。

『映画館の奇怪な風景』


まだ私が小学生だった頃
学校の帰り道に友達と興味本位でこの建物を探検することになった
中は、どこにでもある廃墟と変わらない荒れ具合で、殊更おかしな雰囲気ではなかった
友人が映画館の奥の方に構えた座敷部屋の、堅く閉めきったその扉を開けるまでは……
その友人の叫び声を聞いて、慌てて飛んできたとき、常軌を逸したような気違いじみた光景が目に飛び込んできた

奥座敷の畳の床一面に、ぎっしりとモノクロのポルノ写真が散らばっていたのだ
さらにおかしなことに、着物姿の女が乳を曝け出している写真や淫売が男と激しく交わっている写真のどれも、異様に古い年代物ばかりであった
とうの昔に廃墟となったといえども、二十年ほど前のことである

当時でさえモノクロの写真は珍しかったであろうに、どこでそのようなものをたくさん手に入れたのか、それらの写真は、さらに奥の部屋につながる廊下にまで溢れかえっていた。
あまりの気味の悪さに、友人と こけつまろびつ映画館を後にして以来、あの場所には踏み込んでいない
今では、映画館の見る影もなくなった跡地に、かろうじて「バタリアン」と読み取れる映画の看板が血が乾いたような赤錆にまみれて不気味に佇んでいるだけだ



31 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/09(月) 00:49:31 ID:zM8cfCiEP
それでは…。

長崎のとある島にて伝わったお話。

ある日、島の侍が小さな洞窟の中に白い大蛇がいるのを見つける。
大蛇は誰にも自分の事を言わないように頼むが侍は討伐隊を作らせ退治してしまう。
大蛇は恐ろしい断末魔とともに侍に向かい七代先まで呪ってやると言い絶命。
その後、侍の家系は不具の子や病気などにより本当に七代目で滅んでしまったそうな。

とんからりのぷう。



32 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/09(月) 00:54:02 ID:zM8cfCiEP
結構端折ったので分かりづらいかも知れないけど
長崎の民俗史にも載ってたものです。



33 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/08/09(月) 10:30:05 ID:pOALbVP0P
神代の昔、「白」という言葉は厳密に色彩を指すものではなく神秘性のもつ、或いは怪異的な性質のもつ眩ゆさを指すもので、白鹿、白蛇といったぐあいに、神聖なもの 神の使いと畏れらるものは「白」という言葉をもって表現されていたそう

ちなみに、肥後の古墳の一つに、裏山ほどの頂上にひっそりと構える塚がある
遥か昔にこの土地を災害から護ったとされる聖なる犬一匹が埋葬されておるのだ
その神の使いも例に洩れず、生前の姿はたくましくて大きな白犬だったそうだ
こぼれ話であるが、その犬にちなむ名の氏姓を授かった一族が、この土地で代々と栄華の地位に就いていることも、やんごとなき妖しい験(しるし)の功によるものかな



35 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [] 投稿日:2010/08/11(水) 17:42:58 ID:lDzLyIPUP
『妙見山』

大阪府は能勢町にある妙見山は、日蓮宗の霊場として名高い
この地でひっそりと語り継がれるは、この奇妙な話

すっかり宵も深まったある晩、暗く静まり返った妙見山の山間いを走り、終点駅へと辿りついた一本の最終電車の中に、ひょっとこ、能面、白狐などの様々なお面をつけた大勢もの人々が、揃いもそろってうつむいたまま、微動だにせず座っていた。

気味悪いながらも、駅員は終点に着いたことをそれらの乗客に知らせると、みな一斉に立ち上がり、何も言わぬまま外の闇の中へと消えてしまった。



36 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/08/12(木) 10:01:43 ID:0XEEQlKnP
たまにはこのスレの説明でも。

神秘、目に見えないもの、本来それらがオカルトの本質であるとするならば 怖さ という意味合いは若干派生的なものである。
このスレは、 面妖さ というオカルトの基層部分に目を向けている。
このような基層部分の芯は、物事としてはっきり捉えられないもどかしさと、微細なる筆先で心をくすぐるようにしか思い描けない曖昧さのため 怖さ に比べて娯楽性には乏しい。

「恐怖」が独立に近いかたちでカテゴライズされいわば看板となって、今日びのオカルトの敷居を取り除く大事な役割を担っている。

恐怖心なるものは、原初的な機能として人々の中に防衛本能と一緒に あらかじめ格納されているので恐怖心や怖いもの見たさの好奇心をくすぐるといった面白みは、老若男女問わず幅広く共有できるものでありやはりそれらの貢献がオカルトの娯楽性を高めている大きな要素のひとつであることには違いない。

幽霊や妖怪の類は、実体がないにもかかわらず、人々の際限ない恐怖心や好奇心を原動力にして それらのイメージを描くことが容易に成せる業のためたとえ目撃が希少になっても、まだまだ時代の終焉をむかえることは無く、淘汰もされないのである。



37 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/08/12(木) 10:07:22 ID:0XEEQlKnP
幽鬼魍魎を一緒くたにした、その基層部分に流れている独特の「面妖さ」というものは、伝綺 奇譚などに比較的色濃く描かれるが、とはいっても 怪異モノノケの存在をさらに薄く溶かしたものであるため、色彩として侘び寂びの色に近くそれはオカルトの実相を成すものではあるが、正直捉えどころのないものばかりであることには変わりはない。
時代淘汰の対象につねに晒され、すでに多くのものが、その波に飲まれてしまっている。

奇談伝奇が時代の中に取り残されつつある今、「面妖さ」のもつ概念や世界観は、それらを歴史や記憶から再び掘り起こし地道に積み上げてるとこによってようやくこの時代に生きる人々の共通のものとなるのである。



53 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/23(月) 17:10:30 ID:uMPl4z9B0
皆のように雰囲気のある文章は描けないが高校時代に後輩から聞いた話をひとつ。
後輩の通っていた小学校には不思議な言い伝えがある。

言い伝えの舞台となるのはその小学校の近くにある小さな空き地だ。
学校の裏地にある階段を上ってゆけばたどり着くのだそうだが、その空き地には夕方以降足を踏み入れてはいけないよと、後輩達は教師や地域の大人に口うるさく言われ続けていた。

なんでもその空き地、入ると化かされるのだそう。
出口が分からなくなって同じ場所を何度もぐるぐるまわったり気分が悪くなったりするらしい。
その土地で昔何かがあったとかそういう系の話はないが、とにかく今でもその小学校に語り継がれているのだそうだ。


・・・・・オチのない話ですまない。
小学校って結構不思議な言い伝えとか入ってはいけない場所とかあったりするよな。



54 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/23(月) 23:56:04 ID:73GPMTH40 [1/1回(PC)]
>>53
あるある


うちの小学校の端っこには古い井戸が取り壊されずにずっと残ってる。
幽霊は出なかったけど、ずいぶん前に女の死体が発見された。
片腕だけが異様なぐらい細長かったらしい。
結局身元すらわからないんだと地元の消防団に所属する父から聞いた。

不気味というか謎だらけなので今だに壊せないそうだ。
学校の怪談というよりも学校の七不思議の一つ



55 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/24(火) 00:27:46 ID:7Da57OHc0 [1/1回(PC)]
地方で語り継がれている民話とか伝説とか言い伝えとかいっぱい聞きたい。

みんな書いてちょ。



56 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/24(火) 18:21:17 ID:4X+mo9RW0 [1/2回(PC)]
それなら自分の知っている民話をば。

今は昔、鹿児島県の指宿というところになかなか子供のできない夫婦があった。
夫婦は指宿にある池田湖という湖に毎日通っては
「どうか子供ができますように」
と祈っていた。

ある時、夫婦の祈りがかなったのかかわいらしい娘が生まれた。
夫婦は大変喜び娘を大切に大切に育てた。
しかし、娘は足が不自由で歩くことができなかった。

そのうち娘は7歳になった。

この地方では七歳になったおなごん子(女の子)は花タンゴと呼ばれる小さな桶を持って湖へ水を汲みに行くという祭りがあった。
運んできた水は神や仏にお供えし、子供たちの健康を祈るのだ。
娘は黙って縁先から祭りを見ていたのだが突然自分も花タンゴを担ぎたいと言いはじめた。
母親は、娘の好きにさせてやろうと思い花タンゴをそろえてやった。
娘がタンゴの天秤棒を肩にかけた途端、なんと娘がすくっと立ちあがったのである。
あっけにとられる夫婦に娘はにっこり笑いながら
「水汲みにいっきもんで(いってきます)。あたいのあとをけっしてついてきやんな」
と言った。

娘はそのまま花タンゴを担いで五回も六回も水を汲みに行った。
母親はあまりの不思議さに、七回目の水汲みに出かけた娘の後をこっそりついていった。
なにも知らずに水を汲もうとしている娘を見ていると、母親はじっとしていられなくなり思わずそばに駆け寄った。

娘は母に見つかったと知ると悲しげな顔になり、そのまま湖の中に入って行った。
母親は必死に止めようとしたが娘はすでに青々とした水底に沈んでしまったあとだった。
母親が悲しみに暮れていると突然水面が泡立ち七本の角を生やした大蛇が現れてこう言った。

「来年の今日、親孝行しにもどってきもんで。」

しかし、母親はあまりの恐ろしさに
「いや、もうもどってくんな。」
と夢中で叫んだ。
それを聞いた大蛇はさみしそうに湖へと戻っていった。
それから湖は七日七夜激しく波立ち、雨のごとくしぶきを上げていた。
八日目にすっかり静まり返った湖面には花タンゴがふたつ浮いていたという。

池田湖といえばネッシーならぬイッシ―が有名だが、古くから神の御池として龍神信仰があるらしい。



57 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/24(火) 18:31:11 ID:lDPVHn3W0 [1/1回(PC)]
>>56
大蛇可哀想だな‥
大蛇は、自分の所に祈りに来ていた夫婦の望みを叶えるために、自ら夫婦の娘として生まれてきたんだな
蛇だから歩けなかったんだね

つーか母ちゃん、幾ら怖くても「もうもどってくんな」はないだろ‥



59 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/24(火) 18:52:29 ID:4X+mo9RW0 [2/2回(PC)]
>>57
こういう異界のものと人間が交流する話って結局人間の身勝手で離別する話が多いよな。

まぁ母ちゃんのショックも分からなくはないが・・・・。



60 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/24(火) 21:16:36 ID:ZfFyUkyG0 [1/1回(PC)]
昔は異界のものと共存してたのかもね。
河童とかいたずらするやつもいれば人間を助けてくれるものもいて。

こういう話もっと聞かせて。



61 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/26(木) 19:37:29 ID:G8mXFqme0 [1/2回(PC)]
岡山県の昔話。

『まどうとおおかみ』

昔、山村に魚を売りに行く商人がいた。
山村では魚は重宝するため商人はあちらの山へこちらの谷へと忙しく働いていた。

さて、この山には昔から狼が住んでいて腹が減ったら人を襲うこともあった。
しかし、狼よりも村人に恐れられているのはまどうという化け物である。
なんでもこの山に巣食っているというのだが噂を聞くばかりで実際にその姿を見た者はいないのだった。

今日も商人はいつものように大きなかごに魚を入れてきつい山道を登る。商人は峠道近くの道に差し掛かった時、ふいにかごを地面におろした。
あたりは藪だらけで生き物の姿は見えないが、藪の向こうで狼がこちらに耳を澄ませていることを商人は知っていた。
商人はかごの中から生きのいい魚をよりだして、
「おおかみさまどうぞ!」
とさけんで藪の中に魚をほおり投げた。これが商人の毎日の日課であった。

その日は商売に手間取り、山道を家へと引き返す頃にはもうすっかり日が沈んでいた。
ふと見ると山道の両側に挟み込むようにして狼がまちぶせている。
「おや、おおかみさま。どうなすった?」
商人が近寄ると、二匹の狼は商人にとびかかろうと身を低くした。
「おれを食おうとして待ち伏せていたのか。毎朝魚をやってきたのに、やはり狼は狼なんだなぁ。」
商人はもはやこれまでと覚悟を決め、道に座り込んだ。

そのとき、おどろおどろしい山なりが山々に轟きわたった。
とたん、二匹の狼は商人に飛びかかり体の上に覆いかぶさった。

「おらぬぞぉ。商人がおらぬ。ついさっきまでみえとったのに狼しかおらぬ」
不気味な声が山に響いた。『まどう』の声である。商人は狼の体の下でちいさくなって震えているしかなかった。
やがて一陣の風がどうっとあたりを揺らし、まどうは山の向こうへ消えていった。
「おおかみさまがいなかったらおれはまどうに殺されていた。ありがとうよ。」
商人は狼に礼を言うと、急いで山を降りた。

それ以来、商人はいままでにも増して山の狼を敬うようになったという。



63 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/26(木) 23:15:38 ID:QtukkQZJ0
>>61
もののけ姫のオオカミが浮かんだ。

日本は何でオオカミ全滅させちゃったのかなあ。



64 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/27(金) 00:43:31 ID:p6M2jN62P
オオカミは人を襲うことはほとんどないんだよな。たしか。



65 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/27(金) 08:38:22 ID:SlkTm5it0
むしろ畑を荒らす猪とかを食べてくれるから敬われていたんだよな。



67 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/27(金) 14:35:25 ID:3bVeOFgX0
狼が人を襲う事が少ないって説は、根拠になっていた記録のいい加減さがばれた事と、最新の観察結果から、近年見直されてる
でも、それは主に西欧での話で、日本の場合は家畜の害が理由とはいえ、絶滅させるほどではなかったよなあ……

これだけじゃなんなので、祖母から聞いた小ネタを
年老いても健脚の祖母は、半径四キロほどの活動域を基本、全て歩きで踏破していて、範囲内の抜け道とかは家族の誰より良く知っている
でも、そんな祖母が一箇所だけ絶対に行かない場所がある

それは昭和初期に作られた橋で(今は二代目)そこを通ると大幅にショートカットできるのに、わざわざ遠回りして歩いて行く
理由を聞いたら答は「馬の首」が出るから、だった

子供の頃、その橋にお化けが出るという噂が広がったのだが、祖母はそれを信じなかったのだそうだ
ある日、対岸の親戚の家に祭りに呼ばれた帰り、一緒に行った従姉妹は怖がって遠回りしたが、祖母だけはその橋を渡ることにした
すると、もうすぐ橋を渡り終えるというところで、いきなり川の方から何かが飛び出してきて祖母の方へ向かってきた
よく見るとそれはぼんやり光る「馬の首」で、祖母は家に着くまで、嫌というほど追い掛け回されたそうだ

なぜ、そんなものが出るのか、他の人は何を見たのかなどのサイドストーリーは何も無い
ただそれだけの話なのだが、普段は何事にも動じない祖母が、怖がる唯一のネタなので昔、本当にそこで何かあったのだろうと思っている



74 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/09/04(土) 16:13:43 ID:w+oUEEZPO
小さい頃祖父から聞いた話。


旅人が山中の家に一夜の宿を乞うた。
主人は泊めるのは構わないが、近隣の者に不幸があって夜は家を空けなければならない。
夜更けまでには帰ってくるので留守を預かってほしいという。
旅人は泊めてもらえるのならば、と頼みを受けた。

主人が出かけてしばらく、旅人は囲炉裏端に座っていたが、奥の部屋で、すーっ、ことん。と音がした。
襖を引く音だったが、奥の部屋どころか家には旅人しかいない。
しばらくするとまた、すーっ、ことん。またしばらくするとすーっ、ことん。
恐る恐る奥の部屋を覗いてもやはり誰もいない。

音はその後もえんえんとつづく。旅人は怖くなったが、夜の山中に飛び出すこともできず、囲炉裏端で布団をかぶって震えていた。
どれほどたったか、主人が帰ってきた。旅人が主人の留守にあったことを話すと、主人は笑って言った。
「そりゃあ「すーっことん」です。音がするだけで何も悪さはしませんよ」


これ、どこかの民話なのか祖父の創作なのかも分からないんだ。地元の民話集めた本でも見たことないし。
誰か似たような話知らない?

それにしても今思うとなんかまぬけな名前。



77 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/09/15(水) 11:44:58 ID:uG08PIMcP
>>74
一連の動作が名前になったのか
「うとうやすたか」みたいだね
(奥州は外ヶ浜にいたとされる幻の呼子鳥
親鳥が「―うとう」と鳴くと、子の鳥が「―やすたか」と鳴く)

「すーっことん」って事は、毎回きちんと後閉めしてんのかねえ
山の厳しい寒さの間も、その存在の疎ましさを懸念させないところもいい
人と、姿の見えない妖怪が共存している世界って、なんか惹かれる



91 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/29(水) 06:13:45 ID:BhIs5gaE0
江戸時代の奇譚ならこれが一番好きだな。

天女の接吻

松平陸奥守忠宗の家来の番味孫右衛門という男が自宅で昼寝していた所、天女が降りてきて接吻した。
不思議な夢を見たものだと誰にも話さずにいると、その日より孫右衛門の口中から匂いの玉を含んだような良い香りがするようになり、周囲の人々は不審に思った。
その香りは孫右衛門が死ぬまで一生消えず香り続けたという。

話者:佐藤助右衛門重友     大田南畝の「半日閑話」より



92 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/29(水) 11:28:50 ID:Dmf9yn000
こんなのでもいいのん?

鎌倉~室町あたりの話で、とある武士が怪我をしている大ガラスを見つけた。
気の毒に思った武士はそのカラスを手当てしてあげたが、そのかいなくカラスは死んでしまった。
その武士はカラスをねんごろに弔ったそうだ。

その後その武士は戦に出た際、敵に囲まれて孤立してしまった。
そのとき、黒塗りの鎧をきた見知らぬ武士が数人現れて助太刀してくれたので、敵中を突破することができた。
武士は礼をいい、名を尋ねると、黒塗りの武士は、
「私はあなたが弔ってくれたカラスの子です。父を弔ってくれた恩を返すべく、一族郎党を従えて参上しました。」
というと見る間に姿をカラスに変えて飛び去った。
カラスは親に対し餌を運ぶなどと血のつながりを大切にするので、そのような義理堅い行為に出たのだそうだ。



93 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/09/29(水) 14:41:07 ID:Ub20Ejwu0
八咫烏のことだったりしてw



97 : 自治スレでローカルルール他を議論中[] 投稿日:2010/10/10(日) 12:14:29 ID:T7m6WwD8P
日向神ダム湖から少し下った山あいの神社での出来事です

――朱塗りが所々剥げた赤い鳥居がいくつも連なる石段の奥にありました
秋の始まりを告げる赤い彼岸花がいっせいに咲き乱れ、夏の残り香さえもすっかりと消え失せていた次第です

行き止まりには、二つの大きな奇岩が立ちふさがり、互いを支え合うように折り重なってできた空洞部分に、小さな本堂はありました
社祠は木の格子戸で閉じられており、木の枠越しに見える中の様子は、昼でもなお暗く、あたかも薄暗いもやが蟠っているようで少々不気味でした
顔を近づけると、つんと線香の匂いが真っ先に鼻をついたのを覚えています

がらんとした祠の真ん中には、箱のようなものがぽつんと祀られており、四体の白い狐の像が、それを取り囲むようにして守っていました。
その狐達はみな、微笑んでいるのか睨みをきかせているのか判然としない曖昧な表情を浮かべ五燭台の上に立っていた数本の蝋燭も、どれもどろどろに溶けて奇怪な塊と化しておりなんとも浮世を隔てたような妖しげな光景が、その社の中に広がっていたのです――

その様子を、なんとか写真に収めようと、カメラで撮りまくったのですがそれがいけなかったのでしょうか。
それからというもの、本堂で見た不気味な“もや"が頭蓋の中で渦巻いて腐食するような、そんなぼんやりとした感覚に襲われ始めました。

お祓いに踏み切るまでのたった数日の間に、些細な携帯紛失から大怪我寸前の転倒事故など、意識の朦朧さによって引き起こされた厄介事は数知れず。
みなさんも神仏に対しては失礼のないよう、心がけてくださいねえ。
このご時世でも憑かれますよ……いとも簡単に。



101 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/11(月) 11:52:31 D:0hJERQGA0
1914年(大正3年)7月12日に当時の日本橋区東中通り (中央区京橋の辺り)にある美術店松井画博堂の二階で恒例の怪談会が催された。
主な出席者は泉鏡花、岡本綺堂、谷崎潤一郎、市川左團次、市川猿之助、松本幸四郎、黒田清輝などそうそうたるメンバー六十余名で夜の7時から坂本紅蓮洞を皮切りに各自の怪談話を語り始めた。

そして夜も更けてきて参加者も少なくなってきた頃に見知らぬ男が現われ
「幕末の志士、田中河内介について語りたい」
と言い出した。
参加者はすぐにOKを出しその男は会場で語り始めたのだがその内容は
「これは(寺田屋騒動に参加した)田中河内介が最期にはどうなったのかという話なのだがこの話を語ると災いが起こるという事で今まで封印していた。しかし今となってはこの話を知る者は自分一人しかいなくなったし、文明開化の世の中なのだからもう大丈夫だろう」
という事だった。



102 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/11(月) 11:53:54 D:0hJERQGA0
参加者は興味を持ってこの男の話に耳を傾けていたのだがこの男の話は肝心な所でいつの間にかループして元に戻ってしまいいっこうに先に進まない。
そのうち残った参加者たちも急用ができたり色々な用事で一人、二人と序々に会場から居なくなってしまった。

国文学者池田彌三郎の父もこの怪談会に参加していたのだが、彼も電話が掛かってきたという理由で店の一階に下りてそのついでに一服していると二階の会場から何か騒ぎが聞こえてきた。
彼が二階に上がってみるとその男が倒れていたのだがその場にいた参加者に話を聞くと参加者がその男から一瞬目を離した隙にこうなってしまったのだという。
結局その夜のうちにその男は死んでしまい田中河内介の最期を語る事は無かった。

この話は怪談会に参加した長田幹彦、鈴木鼓村、喜多村緑郎が書き残して戦後になってからも徳川夢声や池田彌三郎が紹介しているのだが、その男の年齢や風体、死亡日時など細部で異なる所がある。
ちなみに京都から薩摩に移送される途中で薩摩藩に暗殺された田中河内介に関する呪いの話は検索すると色々と出てくる。



103 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/11(月) 18:57:17 ID:E6Xg/+lv0
>>101-102
牛の首のような話だな。面白かった。
田中河内介に関する呪いググッてみるわ。



105 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 10:01:41 ID:jwuUKF140
俺の好きな新潟の怪談民話

昔(江戸時代くらい)新潟の田舎に子供のいない若い夫婦が住んでいた。
そしてそこに旅の六部(修行僧)が訪ねてきて一晩泊めてくれという。
夫婦はその六部を泊めてやる事にしたのだが夜中に六部を泊めた部屋をこっそり覗いてみると、その六部は大金を持っていてそれの勘定をしていた。
夫婦はそれを見て六部を殺して金を奪う事を決意、そしてそれを実行した。

それからしばらく経ってからその夫婦に男の子が産まれた。
そしてある月の奇麗な夜、嫁が赤ん坊を抱いて外でその子をあやしている最中に
「今夜は月が綺麗だねぇ」
と赤ん坊に話しかけるとその赤ん坊は男の声で
「俺を殺した晩もこんな月だったな」
と喋った。

そしてそれからその年も暮れて大晦日の日となった。
夫婦が大晦日から正月にかけて食べる鮭をどんな風にさばいたらいいのかと二人で話をしていると、そばで寝ていた赤ん坊が
「俺を殺したときみたいにザックリと首を切り落とせよ」
と喋りだした。
夫婦はそれを聞いて恐怖のあまりお上に自首したという。


六部殺し伝説は全国で色んなバージョンがあるみたいだけど新潟は昔から大晦日の夜にご馳走を食べる習慣があるからこんなバージョンになったのだと思う。



106 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 19:48:43 ID:Iv9zkrRY0
>>105
都市伝説でも似たような話があるよね



107 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 22:44:45 ID:RhAmYXdeP
夏目漱石の夢十夜にもあるね



112 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/26(火) 22:38:20 ID:3daEegQe0
そういや、日本怪談集の著者である山田野理夫は
「怪談とは人の夢と苦悩から生まれた幻談であり、ここにはあふれるほどの人の世の詩情があり、慕情がある。愛と死と美と――伝承されるこれらの話の中に、私たちは人の心のおりなす一種あやしい美しさを
感じとらずにはおれない」
と言ってた

人の世の詩情や慕情の渦巻くなかに、伝承に見受けられる古きよき怪異は今もまだ残ってると思うから、体験談でもかまわんよっ
人々に忘れ去られた怪異も見つかるかもしれん



122 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/11/08(月) 18:20:05 ID:YNd6aKdH0 [1/1回(PC)]
少し民俗学的な方向へと話が行って退屈な書き方になってしまいますが、もしよければ…

生→死→生死混合(新生再誕)という円環的生命観は日本創生の昔ばなしである“神話"の
その聖地である熊野三山に起こった熊野信仰と、その遠野の伝記に見る死生観がどこか通じているところに、昔ばなしの根底に聯綿と漂う日本古来の死生観のノスタルジアを感じられずにはいられません


〈以下、池田教授の本より熊野信仰についての叙述を引用します〉

「熊野権現は浄不浄、貴賎、男女を問わず
戦乱の生地獄を見た貴族、上皇、武士などの、あらゆる人の心を引きつけてやまなかった。
熊野へ肉体を極限まで駆使し、そこで精神的死を迎え
魂の変容を遂げて再生し、再び元の場所に帰還する。
日本人の常世信仰とは、元来、生と死が一体となった他界のことを指していました。」


古来からの常世信仰に仏教思想が加わり、観音菩薩の浄土に往生してそこで永遠の生命をいきようとする熊野特有の信仰に変質していったようです
それが日本の死生観の核となりました
文学性の高いといえるのは、そのような深みもあってでしょう
昔ばなしにも色々とありますが、言外の部分に奥深いものが潜んでいたりもします
それもまるで妖怪のように



123 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/09(火) 02:15:54 ID:K5i724No0
じいちゃんが子供の頃に体験した奇談なんだけど

ある晩、小便のために外の厠に赴くと家の外に火の燈灯がいくつもゆらゆらと揺らめいて一瞬「人魂かな」と思ったが、どうも違うらしい
小径を歩いてたのは、葬式の行列で裏山に吸い込まれてくところだった
「たれが死んだんじゃ」
と興味津々で家の外に出て、しばらく眺めてた
小さな村なのに、知ってる顔ぶれが誰一人もいなかった

だんだんと不気味に感じてきたとき最後尾の着物の女性が立ち止まってゆっくりと振り向きざまニィっとお歯黒で塗りつぶされた歯を見せて少年にやさしくほほえみかけた
女の目から一縷の涙がこぼれていた

じいちゃんは驚いて家に飛び込んだという
この話は、
「奇妙さのあまり誰にも言いづらかった」
と話している
結局のところ、あれは誰の葬式なのか
女が何故ほほえみかけてきたのか
人か妖怪かどうかさえもわからないままだ



125 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/10(水) 23:34:01 ID:GVBAlD4Q0
昭和の初め、和歌山の山奥に男が薪拾いに出かけた
いつもの行動範囲より少々奥に分け入ると、森の中にぽっかり開けた空き地に出た
中央に大きな岩棚があったので、座って弁当をたいらげ一休みしていると森の中から2mを超える大きな男が現れた

獣の皮を纏い、背中に薪を背負った大男の顔には額に大きな目が一つだけ
男が驚いて見ていると、隣に腰かけた大男が口を開いた
「煙草があったら一本くれんか?」
持っていた煙草を差し出すと美味そうに一服する大男

「こんなところに何しに来た?」
と尋ねられたので、薪拾いに来たことを話す
「どこから来たのか」
と尋ねる男に
「お前たちが入ってこれんような、ずーっと先の方から来た」
「今日は久々にこんな場所まで足を運んでしもうた」
その後、しばらく話しこんだ後、それぞれ元来た道へと帰って行った
後日、何度かあの岩棚を目指したが、一度もたどり着くことはなかった



127 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 17:05:36 ID:Oe4l4kXd0
山女ってのもいるね。
山人にさらわれた里の娘と聞くが



129 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/12(金) 01:02:09 ID:yUxBfan20
一本ダタラとは違うの?



130 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/11/13(土) 04:11:57 ID:8tq++UGPP
この話は、とある男と女に降りかかった奇妙な出来事を伝えたものです。
こんな事ってほんとにあるのだろうか?と思う、そんな話です。
出典は、今昔物語です。


今は昔、京の都から東へ下る男がいた。
途中、その男は、にわかに激しい淫欲を生じ、女が恋しくなった。
半ば狂いそうになるなか、大路の傍の垣根の向こうにある大根畑へと足を踏み入れた。
時分は神無月、大根はみずみずしく肥えて、その男の淫欲をさらに刺激してしまった。
その中の一本を引き抜くと、穴を穿ち、交わって淫欲を満たした。
用済みの大根を捨てると、男はふたたび東国へと続く路へと戻ってしまった。

そののち、畑の持主の女が大根畑へやってきて収穫していたところ穴の開いた奇妙な大根が藪に打ち捨ててあるのを見つけた。
半ばしなびていたものの、勿体無いと思い、その場で食べてしまった。

そののち、女は懐妊し、やがて男児を産んだ。
「まだ男の人にさえ近づいたことは無いのに。あの大根のせいかしら」
と悩み倦んだもののどうすることもできず、女の手一人で子供を育てるほかなかった。

一方で、男、ひさしぶりに京へ戻ろうと、従者を連れて再び大根畑の路へとさししかかる。
男は従者に
「昔ここで大根と交わって淫欲を満たしたのだ」
とおもしろおかしく語っていたところ偶然にも畑仕事していた女の耳に入り、女はすぐに男のあとを追って
「これこれの理由で妊娠した」
伝えた。

男は女の話を荒唐無稽に思ったものの、女の辛辣に話す仕草をみて、せめて女の子供を一目見ようと
家まで赴くと、なんと男児は男の面影に瓜二つ。
「斯様なことがあるものか」
と京へ戻るのをやめて、女を妻に娶り、ここで一生暮らすことにしたのだった。


“されば、男女は、たとえ交わらずとも、身に内に淫水(精液)が入れば、斯様に子供が生まれるものだ――
と、かくは語り伝えた由である"


139 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/11/26(金) 01:34:58 ID:6aRQr8LuP
このスレがまだ残っていたとは。いちお燃料投下を。


『巨人の屍』

風がおどろおどろしく吹き、海も酷く荒れた夜に、某の郡の東南の浜という所に死人が打ち寄せられた。
死人の身の丈は五丈あまりもあった。
横臥した体は半ば砂に埋れていると申すのに、こちら側からは、向こう側の騎馬の人が手にした弓の先端しか見えなかった。以て、その大きさが知れよう。
その死人は首から断ち切れていて、頭を失っていた。また、右の手、左の足も無かった。

恐らくは鰐などが喰い切ったものであろう。五体が揃っていたならば、驚くべき巨人であったに違いない。
また俯せの姿で、半ば砂に隠されていたため、男女いずれとも知れなかった。
但し、身体の形や肌つきから察すると、女のようでもあった。
国の者共が、これを見て驚き呆れ、大騒ぎした事は申すまでもない。



140 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/11/26(金) 01:37:41 ID:6aRQr8LuP
また、陸奥の海道という所でも巨人の死体が上がった。
国司の某と申す人がその噂を聞き、使者を派遣して見聞かせた。
砂に埋れて男女の別は付け難いが、恐らくは女であろう――と、この使者は見たが、折から見物に出ていた有識の僧などは、
「この世界の内に、かかる大いなる人の棲処ありとは、仏も説き給うてはおられぬ。思うに、阿修羅女などにやあらん。身体つきなどたいそう麗しきところを見れば、或いは左様の者ならん」
と推量した。

さて、その死人は、数日を経る程に腐乱が進み、周囲十町二十町の辺りは人も住み得ぬ始末で、皆逃げ出した。臭気に耐え難かったのである。

(「常陸国××郡寄大死人語」より)


※とある未確認海洋生物のこと
屍体を女性だと推定した理由は、肉付きが海獣のように富んでいたからではないでしょうか。
90年代後半にタスマニアに打ち寄せられた未確認生物の屍体となんとなく似ている気がするのです。




141 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/11/26(金) 01:40:23 ID:6aRQr8LuP
『笛を聞く大蛇』

助元という男が、職務懈怠の廉(かど)にて、左近衛府の地下牢に召し籠められた。
「この地下牢には大蛇が徘徊すると聞くが」
と恐れをなしていたところ、果たして夜半に至り、大蛇が現れた。
その頭は祇園の獅子頭の如く、その眼は銀の提の如く、その舌は三尺ばかりもあり、今まさに大口を開けて、害を成さんと迫ってきた。

助元は心神も失せんばかりであったが、震え慄きながらも腰に手挟んだ笛を抜き出して「還城楽」の“破"を吹いた。すると大蛇は近寄ってとどまり、首を高く持ち上げて笛を聞く素振りを見せた。暫しの間、聞き入っていたが、やがて立ち去ったという。

(「古事談」第六・亭宅諸道ノ十二より)


※助元が寺生まれであったかどうかまではわからない。



145 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/12/05(日) 15:24:30 ID:8/DG6RAt0
うちの叔父さんの話
代々鼠の金縛りというのがある家系とかで、叔父さん本人は伊勢湾台風かなんかの時に畳を積み上げた
上に寝ているときになったそうだ。
金縛りの間中天井から覗く鼠と目が合っているんだって。
鼠が目をそらさない限り解けないらしい。 理由は不明。

父の話
中学校から帰って学帽を脱いだら、頭の天辺がざっくり切れていて血だらけに。
学帽に血は染みていたけど、切れ目も何もなく まあ、カマイタチらしい。と。

私の話
昨晩風呂に入ろうとして、かけ湯をしたらひざが痛い。
見ると、膝頭が真横に3㎝ほど猫の爪で抉られたようになっていて血が流れていた。
あわててさっきまで履いていたジーンズを見たら、薄く血は付いていたけど傷は無し。当然ぶつけたなどという事も無く。ただ、カマイタチだとしたら、父のように剃刀ですっぱり傷なら納得するが、、、
なぜか未熟なイタチを想像してちょっと笑ってしまったよ。



146 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2010/12/07(火) 12:48:49 ID:32Jfiv8BP
>>145
江戸時代の「巷街贅説」に鼠に関する話が載ってます。
ある家の主人が、日頃から不殺生で暮らしており、鼠を猫の手から逃がした事がきっかけで、後年、老朽化による家屋倒壊の寸前に、鼠達が行列をつくり、滑稽踊りや念仏踊りのような仕草でもって腹太鼓を打ち鳴らし、家の者全員の興味をくすぐって外に誘き出した結果、一家は一命を取り留めたという話です。

鼠は本来、地震や家屋倒壊を予知する能力にいくぶん長けているようでして伊勢台風の際に、家屋倒壊の危機を察してか、叔父さんを助けようとしたのかもしれない、鼠の発する危険信号を察知して欲しいが為に、金縛りによって自分の存在を気づかせていたのだとしたらいくらか合点がつきましょうが、この場合は、家系として鼠の金縛りがあるが為に、話はもっとややこしいのでしょうね……。



147 : 145[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 17:29:28 ID:0o7DrQaK0
>>146
父方の家系は養子・養女が多く、父亡き今ではややこしかろう理由も聞けません。没交流ですし。
ただ、ニュアンスとしては「鼠は恐ろしいモノ」でした。
もしも こちらから目をそらそうものなら、そのまま獲って喰われるというように私は受け取りました。
先述の通りで、私と叔父に血の繋がりが無いので自分では確認できないのが歯がゆい処です。



148 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/12/07(火) 21:17:05 ID:eriiDeV80
鼠の金縛りという話は昔から聞くけど不思議な話だなと思う。

俺の祖父が死んだときに「絶対に爺さんが安置されている部屋に猫を入れるな」と言われた。
そして爺さんの枕元には先祖伝来の日本刀が置かれたんだが猫が亡者を操るなんて事が本当にあったのかな?
ちなみに爺さんは見捨てられてた二匹の子猫を拾って自分の子供のように可愛がっていて、その猫が爺さんの部屋に入りたがるのを婆さんが泣きながら止めていた事を思い出す。



161 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/01/01(土) 21:59:00 ID:JD3zskvn0
かなりうろ覚えの話なんだが。

ある男が倉庫の前を偶然通り掛かったときに倉庫のシャッターの前で必死で鳴いている猫を見つけた。
その猫はその男を見つけると何か言いたそうにずっと鳴いていてそれでその男はこの倉庫に何かあるのか?と耳を澄ませたそうだ。

すると倉庫の中から子猫の泣き声が聞こえてきたのでこの男は倉庫の管理人に連絡して頭を下げてシャッターを開けて貰った。
すると子猫が飛び出してきてシャッターの前にいた猫と一緒に逃げるように走り去ってしまった。

それから数日後、その男が出勤しようと玄関に行って靴を履くと何か違和感を感じる。
その男が靴を脱いでその違和感の元を確認してみたら靴の中には五百円玉が入っていたそうだ。



162 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2011/01/04(火) 13:51:12 ID:BXMm98xnP
猫可愛や、御返しの小判



163 : 奥野の伊奈 ◆LABYNTzdKY [sage] 投稿日:2011/01/04(火) 14:28:28 ID:BXMm98xnP
『あやしのざわめく滝』

近場のお寺巡りの際に山奥に分け入り、道外れの石段を赤い手摺づたいに降りて行くと、小さな滝に辿り着いた。
滝の頂きには真っ赤な火焔に縁どられた不動明王像、下の岩塊にしつらえた古祠は御霊の降るような侘び景色。少ない滝水のちょろちょろと流れ落ちる音が、何者かのささやき声に聞こえることから、この滝は「騒(ざわ)めきの滝」と呼ばれている。

そもそも此処は山の八十八霊場のひとつで、時雨どきは靄も沸き立つ森の深く。
昔年より人煙まばらなこの滝で囁く者とは一体、山の幽鬼か狐狸変化の類いであろォか。
この滝を横切った先には、また石段が続き、左手に聳える岩壁では穿ちた空洞に数体の石菩薩が坐している。
階段の麓に、霊場巡りの修験者が仮寝をする草臥れた庵が佇み、その脇の水飲み井戸に置いてあった筈の石の竜神様は疾うに消え失せて、跡には一円硬貨だけがまばらに落ちているもの寂しさ。




オカルトランキング