294 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/03/10(土) 19:13
小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら、痩せてガリガリの子猫が庭にいた。
両親にせがんで家に連れて帰った。思い切り可愛がった。
猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来てくれるようになった。
いつも一緒に帰っていたけれど、六年生の林間学校に泊りがけで行っているときに、車に轢かれて死んでしまった。
もう、猫は飼わないと思った。

年月が過ぎ、私は就職してバス通勤をするようになった。
仕事がうまくいかず、やめようかどうしようか迷っていた。
バスを降りるといつも我慢していた仕事の悩みが噴出して、泣きながら暗い夜道を歩いていた。

そんなある日、バスを降りて歩いていると、少し先に白い猫がいた。
その猫は振り返りながら、距離をとりながら私の前を歩く。
坂を上がり、いくつもの曲がり道を曲がって行く。私の家に向かって。
家の前に出る最後の曲がり角を曲がると、その猫の姿はなかった。
数日そうやって、猫に先導されるように家に帰る毎日が過ぎた。

ある日、いつものように待っていてくれる猫を見て気が付いた。
しっぽをぱたん、ぱたんとゆっくり上げて下ろす仕草。
小学生の時に飼っていた猫と同じ。思わず猫の名を呼んだ。
振り返った猫は一声鳴いて、また家に向かって歩いた。
涙が出てしかたがなかった。心配して出てきてくれたんだね、ありがとう、ごめんね。
大丈夫だから、もう、安心しているべき所に帰ってね……。
後ろ姿に向かってつぶやいた。

最後の曲がり角を曲がる前に猫は振り返った。
近づいて撫でたかったけど、近寄ったら消えてしまいそうで、もう一度つぶやいた。
ありがとうね、大丈夫だからね。

そして、猫は曲がり角をまがった。
なぜかふと後ろが気になって振り返ると、白い小さな塊がふっと消えて行く所だった。
そこは、林間学校に行って帰らない私を待ち続けて、猫が車に轢かれた場所だった。




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