14 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:39:48.24 ID:GR+krUva0
廃寺(1)
自動車学校に通っていた頃の話し。
就職必須要項で免許が要る。
高校卒業間近で、どこの自動車学校も混んでいて、
距離の近い自動車学校には入れなかった。
家からほどよく遠い学校に通ったのだが、
送迎バスが苦手で、帰りは電車を使うことが
マイフェイバリットになっていた。
ほどよく田舎の車校、市電の駅までも民家がまばらに
田んぼ道をテクテク歩く。
マイクロバスで、見ず知らずの他人と
ぎゅうぎゅう詰めで帰る苦痛を考えれば、
寂しげな田舎道も楽しいもの。
就職する3月末までに免許を取るから冬の寒い時期。
高校が終わってから車校に行くので、
帰りは8時とか9時くらいになる。
夕闇迫る田舎みち、電車の時間まで無人駅のまわりを
ふわふわ歩いて時間をつぶす。
区画整理されていない道ばかりで、
思わぬ場所に出ることもある。
今思えばかなり不審人物であった。
15 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:40:18.05 ID:GR+krUva0
廃寺(2)
その日も、帰りの電車を待つ間、ふらふらと散策をしていた。
山の向こうがかすかにオレンジ色に見える夕暮れ時。
新たなルート(なんのルート?)を開発すべく、
また人の気配のない方角へ歩いていた。
舗装されていない農道に入り、その道がショートカット出来ない
一本道だと分かった頃には星が見え始めた。
このまま進めば国道には出るのだろう。
しかし、まだ先は長いように思えた。引き返すのも癪だし、
このまま進んでこの道の向こうを開拓しよう。
若気の至れり尽くせりである。
そのままズンズン進んでいくと、道は山の裾に沿って、
予想に反して国道より離れて行き、
民家もまばらとなり、寂しいことこの上ない。
なんとか、なんとか、国道方角に出ないものかと祈りながら
山から突き出た林を越えると寺があった。
外塀はボロボロで瓦も落ちて、
人の手が入らなくなって随分経つ感じだ。
“もしかして呼ばれてしまったのか?”と背筋が寒くなった。
一歩踏み出すたび、震えが来るほど怖気がたった。
視界の端に本堂を見て、中もそうとう荒びれているなと思い。
それ以上何も考えないよう通り過ぎた。
16 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:43:56.93 ID:GR+krUva0
廃寺(3)
そのとき風が吹いて、“ギーッ”と扉が開く音がしたわけだ。
古典中の古典的な状況に“マンガじゃねーんだから!”と腹が立つ。
でも現実は笑っちゃうくらいオーソドックスでスタンダードだった。
見た目に200%廃寺の建物から“チーンッ”と鐘の音がした。
同時に、かすかではあるが念仏と木魚の音がし始めて、腰が抜ける。
暗くて見えなかったが、よく見ると山側に石塔が林立している。
五輪塔?、円柱?、墓のようにも思えたが、それに気がついた時、
やっぱり“呼ばれたんだ”と確信した。
自分の意志とは関係なくからだが震える。
じっとり汗をかいている上に、風が冷たくなってきたからだ。
さらに、ありがちな事に線香の匂いまでするようになった。
やばい、やばい、ヤバイッ!!
ありったけの気力で逃げようと、走って逃げようとした。
いきなり転んだ。
右足をつかまれている・・・・。
白い手が、すーっと伸びてる。
その先は何もない。
冷たい手だけが自分の足をつかんでいた。
「・・・ヒッ!・・・」
17 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:45:26.98 ID:sdZnh1T70
笑えるのかな わくわく
18 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:46:57.68 ID:GR+krUva0
廃寺(4)
気がついたとき、青い回転灯がくるくる眩しかった。
「・・・おい!大丈夫か?おーい!」
ボランティアの防犯パトロールに助けられたらしい。
「こんな所でなんしとったの?」
「事件か事故に遭ったんか?」
「痛いところ無いか?」
しばらく口もきけずに「・あ・うあぅ」してた。
あまりの朦朧ぶりに、重大な事件と思ったおじさん達は、
「警察呼ぶから、安心しいや。」「救急車が先や!」と言い始めた。
自分は事が大きくなるのを恐れて、
涙流しながら、鼻水垂らしながら、ブンブン頭を振った。
それをさらに勘違いしたおじさんは
「安心しや、安心しや、もう大丈夫。もう安全や。」と
車からタオルケットを持ってきて、肩から掛けてくれる。
確かに寒かった。震えていた。
「・・ちがう、違うんです、ぁぅ」
「もう何も心配せんでええ。おいさん達がついとるけぇ。」
必死になだめるおぢさん。
「・・・そうじゃなくて、オバケが、ぁぅ」
「犯人か!」
(ちがーーーーーうッ!!)
まあ、そらそうなるだろう。
片田舎の廃寺のかたわらで、女子高生がひっくり返っていたら
そういう方角に考えて当然だ。
もう性的犯罪被害者です。
19 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:49:19.07 ID:GR+krUva0
廃寺(5)
そうこうするうちにサイレンが聞こえて、
腫れ物を触るかのような手厚い保護を受けて、
あれよあれよという間に救急車に乗せられて、
病院に着いたら無実の性暴行診療を受けて、
その頃には冷静に話せるようになっていたのだけど、
顔から火が出るとはこういう物なんだろう。
恥ずかしさと申し訳なさで縮こまって、
真っ赤な顔で、「違うんです」「幽霊が・・・」
と事情をのたまわり、頑なに診療を拒むわけですよ。
医者の目線を追っていくと、
痛くは無いけれど右足につかまれた跡が・・・
「辛いのはわかるけれど、ちゃんと治療しないと・・・」
(ちがーーーーーーうッ!!これは・・・涙)
すべての状況が言い逃れできない。
ああ、夜間救急の先生って男の人しかいないの?
生涯初めてとなる御開帳がこのような形で訪れるとは、
さっきの恐怖より今の恥ずかしさが完全に勝って、
そのせいでフラッシュバック的なトラウマにもならず、
(病院の方がトラウマになったw)
警察官にも繰り返し聞かれたけど、
「・・・幽霊なんです。」とはっきり言ったら、
あきれられた、駆けつけた父と母には泣くほど怒られて、
怖い思いをしたのに、気絶するほど怖かったのに
そのことは何度思い出しても平気だった。
ショック療法?
20 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:54:25.16 ID:GR+krUva0
廃寺(6)
この事があった後は、
ぎゅうぎゅう詰めのマイクロバスで帰るようになった。
しばらくして、父が教えてくれた。
あの寺はそうとう古い時代には近隣の総本山みたいな寺だったと。
明治初期の廃仏毀釈運動で廃寺となってしまったらしい。
ただ、墓だけは掘り起こすことをしかねたらしく、
そのままになっていたんだと。自分が見た五輪塔や石柱(円柱)は
やっぱりお墓で、形が古かっただけ。
人の背丈ほどもある大きなものだったから、何かの碑かと思った訳だ。
よく知っているなぁと思ったら、
あのときのパトロールの人に聞いたらしい。
その人かどうか分からないけれど、
病院を出るとき
「ちゃんと御祓いしてもらいなさい。」と言ってくれた。
そして、事情がわかったパトロールのおじさん達が
「まあ、なんともなくて良かったわ、」うんうんて感じで
「ほんでもびっくりしたぞ。」
「何事もなくて良かった良かった。」
「まーびっくりしたわな、女の子がパンツ丸出しで寝とるんやもん。」笑
(これ以上傷口を拡げないでーーーーーーッ!!)
御祓いもしてもらい、特に霊的障害もございません。
あざも残っていません。
今となっては笑い話ですが・・・。
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廃寺(1)
自動車学校に通っていた頃の話し。
就職必須要項で免許が要る。
高校卒業間近で、どこの自動車学校も混んでいて、
距離の近い自動車学校には入れなかった。
家からほどよく遠い学校に通ったのだが、
送迎バスが苦手で、帰りは電車を使うことが
マイフェイバリットになっていた。
ほどよく田舎の車校、市電の駅までも民家がまばらに
田んぼ道をテクテク歩く。
マイクロバスで、見ず知らずの他人と
ぎゅうぎゅう詰めで帰る苦痛を考えれば、
寂しげな田舎道も楽しいもの。
就職する3月末までに免許を取るから冬の寒い時期。
高校が終わってから車校に行くので、
帰りは8時とか9時くらいになる。
夕闇迫る田舎みち、電車の時間まで無人駅のまわりを
ふわふわ歩いて時間をつぶす。
区画整理されていない道ばかりで、
思わぬ場所に出ることもある。
今思えばかなり不審人物であった。
15 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:40:18.05 ID:GR+krUva0
廃寺(2)
その日も、帰りの電車を待つ間、ふらふらと散策をしていた。
山の向こうがかすかにオレンジ色に見える夕暮れ時。
新たなルート(なんのルート?)を開発すべく、
また人の気配のない方角へ歩いていた。
舗装されていない農道に入り、その道がショートカット出来ない
一本道だと分かった頃には星が見え始めた。
このまま進めば国道には出るのだろう。
しかし、まだ先は長いように思えた。引き返すのも癪だし、
このまま進んでこの道の向こうを開拓しよう。
若気の至れり尽くせりである。
そのままズンズン進んでいくと、道は山の裾に沿って、
予想に反して国道より離れて行き、
民家もまばらとなり、寂しいことこの上ない。
なんとか、なんとか、国道方角に出ないものかと祈りながら
山から突き出た林を越えると寺があった。
外塀はボロボロで瓦も落ちて、
人の手が入らなくなって随分経つ感じだ。
“もしかして呼ばれてしまったのか?”と背筋が寒くなった。
一歩踏み出すたび、震えが来るほど怖気がたった。
視界の端に本堂を見て、中もそうとう荒びれているなと思い。
それ以上何も考えないよう通り過ぎた。
16 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:43:56.93 ID:GR+krUva0
廃寺(3)
そのとき風が吹いて、“ギーッ”と扉が開く音がしたわけだ。
古典中の古典的な状況に“マンガじゃねーんだから!”と腹が立つ。
でも現実は笑っちゃうくらいオーソドックスでスタンダードだった。
見た目に200%廃寺の建物から“チーンッ”と鐘の音がした。
同時に、かすかではあるが念仏と木魚の音がし始めて、腰が抜ける。
暗くて見えなかったが、よく見ると山側に石塔が林立している。
五輪塔?、円柱?、墓のようにも思えたが、それに気がついた時、
やっぱり“呼ばれたんだ”と確信した。
自分の意志とは関係なくからだが震える。
じっとり汗をかいている上に、風が冷たくなってきたからだ。
さらに、ありがちな事に線香の匂いまでするようになった。
やばい、やばい、ヤバイッ!!
ありったけの気力で逃げようと、走って逃げようとした。
いきなり転んだ。
右足をつかまれている・・・・。
白い手が、すーっと伸びてる。
その先は何もない。
冷たい手だけが自分の足をつかんでいた。
「・・・ヒッ!・・・」
17 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:45:26.98 ID:sdZnh1T70
笑えるのかな わくわく
18 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:46:57.68 ID:GR+krUva0
廃寺(4)
気がついたとき、青い回転灯がくるくる眩しかった。
「・・・おい!大丈夫か?おーい!」
ボランティアの防犯パトロールに助けられたらしい。
「こんな所でなんしとったの?」
「事件か事故に遭ったんか?」
「痛いところ無いか?」
しばらく口もきけずに「・あ・うあぅ」してた。
あまりの朦朧ぶりに、重大な事件と思ったおじさん達は、
「警察呼ぶから、安心しいや。」「救急車が先や!」と言い始めた。
自分は事が大きくなるのを恐れて、
涙流しながら、鼻水垂らしながら、ブンブン頭を振った。
それをさらに勘違いしたおじさんは
「安心しや、安心しや、もう大丈夫。もう安全や。」と
車からタオルケットを持ってきて、肩から掛けてくれる。
確かに寒かった。震えていた。
「・・ちがう、違うんです、ぁぅ」
「もう何も心配せんでええ。おいさん達がついとるけぇ。」
必死になだめるおぢさん。
「・・・そうじゃなくて、オバケが、ぁぅ」
「犯人か!」
(ちがーーーーーうッ!!)
まあ、そらそうなるだろう。
片田舎の廃寺のかたわらで、女子高生がひっくり返っていたら
そういう方角に考えて当然だ。
もう性的犯罪被害者です。
19 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:49:19.07 ID:GR+krUva0
廃寺(5)
そうこうするうちにサイレンが聞こえて、
腫れ物を触るかのような手厚い保護を受けて、
あれよあれよという間に救急車に乗せられて、
病院に着いたら無実の性暴行診療を受けて、
その頃には冷静に話せるようになっていたのだけど、
顔から火が出るとはこういう物なんだろう。
恥ずかしさと申し訳なさで縮こまって、
真っ赤な顔で、「違うんです」「幽霊が・・・」
と事情をのたまわり、頑なに診療を拒むわけですよ。
医者の目線を追っていくと、
痛くは無いけれど右足につかまれた跡が・・・
「辛いのはわかるけれど、ちゃんと治療しないと・・・」
(ちがーーーーーーうッ!!これは・・・涙)
すべての状況が言い逃れできない。
ああ、夜間救急の先生って男の人しかいないの?
生涯初めてとなる御開帳がこのような形で訪れるとは、
さっきの恐怖より今の恥ずかしさが完全に勝って、
そのせいでフラッシュバック的なトラウマにもならず、
(病院の方がトラウマになったw)
警察官にも繰り返し聞かれたけど、
「・・・幽霊なんです。」とはっきり言ったら、
あきれられた、駆けつけた父と母には泣くほど怒られて、
怖い思いをしたのに、気絶するほど怖かったのに
そのことは何度思い出しても平気だった。
ショック療法?
20 :本当にあった怖い名無し:2011/11/09(水) 03:54:25.16 ID:GR+krUva0
廃寺(6)
この事があった後は、
ぎゅうぎゅう詰めのマイクロバスで帰るようになった。
しばらくして、父が教えてくれた。
あの寺はそうとう古い時代には近隣の総本山みたいな寺だったと。
明治初期の廃仏毀釈運動で廃寺となってしまったらしい。
ただ、墓だけは掘り起こすことをしかねたらしく、
そのままになっていたんだと。自分が見た五輪塔や石柱(円柱)は
やっぱりお墓で、形が古かっただけ。
人の背丈ほどもある大きなものだったから、何かの碑かと思った訳だ。
よく知っているなぁと思ったら、
あのときのパトロールの人に聞いたらしい。
その人かどうか分からないけれど、
病院を出るとき
「ちゃんと御祓いしてもらいなさい。」と言ってくれた。
そして、事情がわかったパトロールのおじさん達が
「まあ、なんともなくて良かったわ、」うんうんて感じで
「ほんでもびっくりしたぞ。」
「何事もなくて良かった良かった。」
「まーびっくりしたわな、女の子がパンツ丸出しで寝とるんやもん。」笑
(これ以上傷口を拡げないでーーーーーーッ!!)
御祓いもしてもらい、特に霊的障害もございません。
あざも残っていません。
今となっては笑い話ですが・・・。