【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

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カテゴリ: 【殿堂入り】



※”裏S区”のアナザーストーリーです。先に是非「裏S区」を一読ください!

余計な話になりかねないのでスルーしてください。
それと偽者、もしくは自作物と思われてる方もスルーしてくださいね。(かなりの長文ですので)
作家志望でもないけど、なれるならなりたいです。

また、これから書くことは、俺の体験とは全くの”別物”です。
(俺はこの事件以降、霊的体験皆無ですので。それと、信用してる友人ですが、この話が信用できるかは不明)

アクマで聞いた話の為、本当かどうかは不明。(俺の体験だと本当と言い切れるが、人の体験なので)
自分の体験をS区出身の友人に話したところ、彼が(仮にKとする)俺に酷似するような体験があると言い出したので聞いた話。


まずはKについて。中学からの付き合いで、高校は俺が引っ越すまでは一緒。
ただし、引っ越す前までに、そこまで仲良かったわけでもない。大学時代になって再度仲良くなった。
霊的な体験談多数。
しかし本人曰く、「全然怖くないことばっかり、あんな事件があったし」それ以外にも変な体験が多い。
例1:大学時代にストーカー(女)に付きまとわれる。
(ただし、このストーカーは異常者であり、Kをストーカーしてるというより、Kが住んでいた部屋への異常なまでの執着心。これは怖かった)
例2:かなり有名な殺人事件が、借りていた部屋の近くであり、Kの家に、殺されているはずの人間が出てきて(夢まくらの様な感じ)、その次の日に事件が発覚。
犯人の自供から、死んだ時間と現れた時間が一緒だったとの事。(本当かどうかは不明)
例3:風俗に行って、風俗嬢にいきなり耳を噛まれる。
その際に耳元で、「あーああーあーあー」と言われたとの事。(意味不明、耳に噛まれた痕あり)
例4:以上の事から、K自体に何かがとり憑いてる可能性があるため、神社に御祓いに行くも拒否される。
これはうそ臭い。神職にある者が助けを断るとは思えない。が、Kの彼女の話からすると本当の事らしい。
(意味不明、理由も不明)

そんな感じの奴。ただし、実際に話を聞くと全てに置いて真実味がある為、嘘ではないと思います。
話をもどします。

S区って言うのはかなり大きくて、目の前に海、後ろに山がある。
S区の目の前の海を正面と捉えており、山を越えて広がる場所が裏S区。もちろんこちらもそれなりに大きい。
ただ、裏と名前がついたり、差別観的な名称からも分かるとおり、S区と裏S区ではかなり文明が異なる。
裏S区にはまず電車が通っていない。
電車に乗って隣町(S区から見ての話だが)に行く際にも、わざわざ車かバスでS区に出てきて、電車に乗らなければならない。
たかが隣町に行くだけに3、40分以上かかってしまうのである。
だから裏S区出身者は、あまり外(自分の地域以外)に出たがらない。
その為か、かなり身内に対しての思いやり、連結力というのは強く、子供の起した事件に関しても、一々親がしゃしゃり出てくる。
ただし、こういう地域に限り絶対にある、『排他的』なものに関してもかなり強い。

例えば、俺が高校の時にAに苛められたときに、殆どの奴らが俺に対して手を差し伸べる事は無かった。
俺は生まれも育ちもS区なのだが、クラスの半数以上が裏S区出身者の為、裏S区の奴等に関しては、傍観とか無視とかとも違うくて、『そこに俺は居ない』って本気で思ってる感じ。
また、S区の奴等にも友人が居たが、彼らは裏S区の人間を怖がっている為か、俺に手助けをしたり庇ったりして、何か自分に火の粉がかかるかも、という事を嫌がってる感じで無視。
まぁ、俺の中でも一番仲が良かったAの突然の奇行にビビッてたし、他に助けを求める気も無かった。
また、裏S区は本当に田舎な為、未だにヤンキーと言われる奴等が多く、たばこやお酒は当たり前で、シンナーまで吸ってる奴も居た。
(流石に俺の高校には居なかったけど、S区出身者で裏S区の学校に通ってる奴からの情報。
また、その高校はお世辞にも頭が良いとは言えないため、そういう奴等が集まるのは必然かも)

ただし、ここで俺が疑問に思ったのが、俺がAに苛められてる時に何も無かったようにしていた他の裏S区出身者には、俺についてるモノが見えなかったのか?
それとも、それが見えたからこそ、Bさんが言った「通常は無視をする」っていう感じだったのかは不明。
ただ、後者のほうの様な気がする。
そうでなければ、教室の後ろでいきなり殴られたりしてるのに、笑顔で飯食べたり、会話を楽しんだりなんか出来るわけない。
S区出身者の奴等でさえちらちら見てたのに、全く無いモノのように振舞えるわけが無いから……。
まぁ、どっちにしろ気持ちのいいものではない。

それと追記として、俺の高校のときのクラスの、5分の1の苗字がAと同じ。
別に親戚とか従兄弟とかではないみたいだけど、昔に遡ればそういう関係なのかもしれない。
けどこれは不明。
(俺が転入した先の高校にも、この苗字のやつが学年に3人ぐらい居たので、ただ単にこの地域に多いだけかも)
この家系の奴等だけしか見えないとしても、裏S区の奴等に言えばモノを理解し、俺を無視ぐらいはするだろう。

ここでKの話にもどる。

ある日Kが、裏S区の友人(G君とします。彼とは一度も話した事はありません)宅に、初めて泊まりに行った時の話。
KはS区出身と書いたが、本当は小学生の時に引っ越してきた。
それまでは福岡県の都会に居たらしく、ここに来たときにかなりの田舎だと思ったそうだ。
俺からしたらS区は、田舎でも都会でもない所謂普通の町だったけど、Kからしたら田舎らしい。
別に畑や田圃が広がってるわけでもないし、コンビニまで歩いて30分なんて場所も皆無な場所。
(むしろコンビニは多いと思う)
まぁ、そんなKだから、高校に入って裏S区の知り合いが出来て遊ぶ範囲が広がっていき、裏S区の奴の家に泊まりに行くことになって、初めて裏Sを見ることになる。
初めて向かう際に足に使ったのがバスだったが、そのバスを待つ時間が40分に1本ぐらいの割合。
(高校の放課後の時間帯でそれ。朝や夕方5時以降から7時までは20分に1本。
それ以降は1時間に1本とかそんな感じ)
しかも、隣町の都会に電車で出るよりも時間がかかる。
それだけでもかなりショックだったらしく、グダグダ文句を言ってたんだそうだ。
ただ、値段がかなり安い為、(もし隣町の都会にバスでいくと300円以上かかるが、それ以上時間がかかるのにも関わらず160円ぐらい)
裏Sの出身者はそのバスを結構用いてる為、Kがグダグダ文句を言ってる時に、前に座ってたおばさんがまず咳払いをし始めて、それを合図かのように、その周りの2、3人がちらちらKを見てたそうだ(被害妄想っぽいけど……)

その後、裏Sの田畑が広がるだだっ広い場所に出ていき、ポツンポツンと家が見えてきたところで、Kはバスを降りた。
バスの通り道はそのまま住民の主要道路となっており、そこしか大きな道はない。
その為、辺鄙を通り越したような感覚になる。
その時にすごく嫌な匂いがして顔をしかめてると、Gが「どうした?」と聞いてきた。
(めんどくさいので、「……らしい」とか、「……だそうだ」を多少省き、Kの話とします)
以下会話。

K「この匂いなん?めちゃめちゃくせーよ」
G「なんの匂いよ?ちゅうかお前、人の家の近くに来てめちゃめちゃ失礼やのぉ」
K「いや、なんやろ。なんか匂うやろ?わからんの?」
G「あ~、お前これ家畜の臭いやろ。牛とか豚とか飼っとるけん、そのにおいよ。気にすんな。
あ、それとお前、さっきいらん事文句いうなや、後で俺が言われるやろうが」
K「いらんことって?ちゅうか遠いもんは遠いやろ。
しかも怒られるって。あんなおばさんとか無視しとけや。全然知らんおばさんやし」
G「いや、お前が知らんだけやけね。
俺とかは結構見かけたりするし、うちのオカンとかと知り合いかも知れんやろうが」
K「まぁまぁ、俺は関係ないけいいけん。しかも俺が言ったんやけ、お前が気にすんな。俺が怒られるだけよ」
G「あー、それと、お前うちに来たときに変なこと言うなよ。匂うとか臭いとか。おとんにぶん殴られるぞ」
K「言わんよ。さすがに」
G「いや、まじめに聞けって。うちのおとんメチャメチャ怖いけん、絶対怒らせんなよ」

ここまで来て、さっきまでのGの不真面目さが消えてて、Gの父親の怖さを凄く強調するので、Kはかなり緊張してきた。
その後Gの家に向かうことになったけど、バス停からさらに10分近く歩いてやっとつく。
さすがに文句言おうかと思ったけど、家の前に来たことで、Gの両親に聞かれたら困るしと思い、何もいわなかったそうだ。
ただ、この時点でKはもう帰りかったらしい。
理由は3つ。
1、臭いがひどすぎる。
家畜の臭いは今まで嗅いだ事の無いぐらいの臭いだそうで、トイレの臭い匂いみたいな感じ。
2、家が凄い怖い。
木造の平屋の様な家で、日本家屋的なものらしいけど、家の色が『黒』。
別に真っ黒って意味ではないけど、黒っぽい感じ。
(これはAの家もそうだったけど、ただ薄暗い。
都会育ちの奴には明るいのが当たり前だったから、とかそんな感じではく、木目調の色合いが、なんか『黒い感じのもののみで』って感じ)
3、お札びっしり。
家の玄関の扉をあけたら、靴を脱ぐ前の壁にお札びっしり。
(Aの家でも同じ感じだったが、葬式だったからと思ってたが、Gの家は不明)

この3つのうち一番嫌だったのは、もちろん匂い。
2に関しては、外面が黒かろうが、中に入れば普通だったので気にしないから。
3に関しても、家の玄関の側面の靴置き場のみなので、家に入れば特に問題なし。
ただ、匂いだけはどうしようもない。
家の中だから安全という感じでもなく、少しはおさまってるだけで臭いものは臭い。
靴を脱いで居間に居たGの母親にあいさつをして、Gの部屋にむかったところ、Gの兄貴が居たらしく、一緒に色々と遊んでたそうだ。
Gの母親もかなりいい人で、わざわざおやつやジュース等を持ってきてくれた。
その際に、「K君ちゅうんか?ほうか、Gと仲良くしいや。ね?」と言われたそうだ。
その後Gの兄が、「今日の夜は一緒に遊ぶか?」と聞かれた為、GもKもOKを出して遊ぶことになった。
ただし遊ぶと言っても、徒歩10分以内にあるものはバス停のみ。
何をするのか?とも思ったそうだが、Gが「うちの兄貴おもしろいけん、いっしょあそぼうなw」と言われたので、楽しみにしていたそうだ。

その後ぺちゃくちゃ話をしてると、Gの父親が牛舎から戻ってきて、「おい、G、友人つれてこい。挨拶させんか」と聞こえてきたので、少々緊張気味にあいさつ。

あいさつも普通におわり、「おう、よろしくの。Gと仲良くしとけの」と言われ、「飯準備するけ手伝え」の一言で、K、G、Gの兄で用意をしてたそうだ。
その時に「キーーーーーーー」って言う小動物の鳴き声に、Kは焦ってビクっってなりながら、窓の外、庭を見たそうだ。
そこでGの父親が、鶏の頭を切り皮を剥いで、調理用にしてたそうだ。
Kはめちゃめちゃビビッたらしい。
生まれて初めて、自分が食べるものを『家』で『殺める』事に焦ったのと同時に、Gの父親がニヤニヤ笑いながら振り向いて、「うまいもん、食わせてやるけんのぉ。自家用やからうまいぞ」の言葉に動きが止まった。
まぁ、確かに理解は出来てても、さすがに目の前で見るとちょっとヒク気持ちはわかる……。
でもK曰く、飯はめちゃめちゃ上手かったそうだ。
そのときには、匂いにも多少は慣れてるのと、料理の際の良い匂いに部屋中が包まれる為、気に留めなくなる。

ここで食卓中の会話。

G父「どうや?うまいやろうが?ほとんど家で作っとうけんのぉ」
G兄「いや、うちの飯はうまいんは、おかんの手がかなりかかっとるけんのー」
G父「お前にゃ聞いとらん。どや?K。うまいやろ?」
K「あ、めちゃめちゃうまいっす」
G父「おう、S区に住んどったら全部スーパーとかやろうけど、自家製ちゅうのは味が全然ちがうけんの」
K「そうですよねー。うまいです」(何故か『S区よりもうまい』を強調してたとのこと)
G母「それはそうと今日、Hちゃん(G兄の友人)のおばちゃんが怒っとったよ。
あんたらバスで何か言うたろうもん」
K「あ、すみません。俺が道が長いって文句言うてもうて」
G「まぁ、悪気はないけん謝っとって」
G父「おい、G。お前一緒におっていらん事いうな。Kもこの辺に遊びに来るときに文句言うたらいけんぞ。
夜中に××××がくるぞ」
(よく分からないけど、俺の体験に出てくるような名前らしい。本当かどうかは不明。
K曰く、俺のと同じとのことだが、俺は名前を良く覚えておらず、Kも適当に俺にあわせてるのかも)
G兄「はは、ちゅうか俺ら子供やないし、そんなじゃもうこわがらんて」
G「んなこというてG兄、結構信じとるやん。Hさんの兄貴がおかしくなったときも、ビビッて言いよんたやん」
K「……」(何の話か全く意味不明な状態)
G兄「あ?あほか。あいつの兄貴はシンナー吸いすぎなだけって」
G父「シンナーすっただけであそこまでなるか、ぼけ。っていうかお前等、シンナーなんか吸ったらぶっ殺すぞ」
G兄「いや、俺は吸ったことないし、すうきもないって」
K「××××ってなんすか?」
G父「!?。お前はよそもんやから知らんでええわ。
それとお前、その名前二度と口にすなよ。よそもんが言うていい事と悪いこともわからんのかのぉ」
G母「お父さん。K君も知らんでいいよんやけ、そんなん言わん。そんな言い方したりせんよ」
G兄「K。気にせんでええけん。だけどそれは、この地域の年配者には言うなよ」
K「あ、なんかすいません」

こんな感じの流れで、いきなりGの父親が怒り始めたらしい。
それで、飯食ったらすぐにGの部屋に行って、再度GとGの兄に、「その名前はかみさんみたいなもんやから、言うたらいけん」と念押しされたらしい。
まぁKからしたら、かなり居づらい場所になってしまったらしくて、Gの父が、「さっきはすまんのー。あんま気にすんな。おい、K、風呂入って来い。きもちいいけん」
と言いに来てくれて、やっと変な居心地の悪さから解放されたそうだ。

まぁ風呂も普通に入って、Gも風呂上がって、寝る時間になるまで、適当にゲームしたり話したりして時間つぶしてた。
その時にGの兄が友人を呼んで、「一緒に遊ぶか?」って聞いてきたので、それから外に遊ぶことになった。

田舎ならではというのと、その地域の特色というのも合間ってか、その辺りは本当に不良が多く、暴走族の真似事をするやつらが結構多い。
GもGの兄貴もバイクを持っており、Kを連れて皆と遊びに行くことになったそうだ。

それから数分後に用意ができたので、Gの後ろにKが乗って、Gの兄貴についていくことになったらしいけど、そこで外に出たときに、Kが『異常』に気付く。
GもGの兄貴にも『異常』では無いけども、Kにとっては異常以外の何モノでもない。
まぁ、都会と田舎の違いかもしれないけど、街灯が全くない。
今のご時勢に、舗装されてない道もそうだけど、街灯が無いと言う事が、Kからしたら『異常』。
恐怖でしかなかったらしい。
夜の9時ぐらいのため辺りは真っ暗。
別に田舎なら当たり前だろ、って言う人も居るだろうけど、俺もこの状況は知っているから言える。
宮崎県のど田舎(失礼)の村に行ったときの、商店まで車で30分、自動販売機まで歩いて20分の場所に行ったときでさえ、凄く遠くにだけど、街灯が見える。
田畑だけが広がってる場所なだけに、少なくとも対面にある光ぐらいは見える。
けどこの地域は、(裏S区全体がそうではありません)
田畑が広がっていて、向こうまで見渡せるだけの視界があるのに、街灯は見えない。
闇が光を吸い取ってる。それほどの地域。

その『異常』にかなり怖がりながら、バイクでずっと進んで、5分ぐらい行ったところの広場の様な場所で、Gの兄の友人が5、6人集まっていた。
Kが挨拶したら、結構気さくに話してくれる人たちだった。
ただし、ヤンキーと言われる部類のファッションとしゃべり方。全員裏S区出身者でG兄の幼馴染。
そこでやる事は特に無く、タバコ吸ったり、酒のんだり、Kにバイクの乗り方を教えたり、って感じで遊んでた。
その時にもう一台バイクが来たらしく、降りてきて早々に、「まじ、兄貴うぜぇ。あいつまじおかしすぎ。意味分からん」と言いながら降りてきた。(彼がH)

再度会話。
(G兄の友人は6人いるが、重要人物を友人A、Bとする。他は話には加わってるが特に必要ないので)

G兄「おぉ、H。おっせぇぞ」
H「おぅ、だれかそいつ?なんしよんか?あー?」
G兄「Gのツレよ」
K、G「あ、どうも」
H「ほうか、アッー!あいつマジうぜぇー!」(地面を蹴ったり、つばを吐いたりしながら)
友人A「うっせぇのー、来てすぐに、なんなんか?どうしたんか?」
H「あいつ狂っとるわ。まじ、どっか病院入れーよ」
友人A「またか?ほんと、どうしようもないのぉ」
友人B「××××さんがきたんちゃう?」
G「こんなこわい場所で、いらん事言わんでくださいよー」
H「いや、来たんやって~。おれのオカンがいいよるわ」
G兄「ほなお前もみえるんちゃうん?」
H「いや、何がみえるんかも全然わからんし、ちゅうか小便ぐらいトイレでせぇや、いきなり居間でもらしよるん。
あほやけ、まじで」
友人A「なんじゃ、そりゃ。むちゃくちゃやね」
H「しかも笑わないけんけね。もう、うぜー。目の前であんなんされて笑えるかって」
G兄「笑っとったんやろ?」(ニヤニヤしながら)
H「あたりまえじゃ。こわかろうもん」(こちらもニヤニヤ状態)
友人B「じゃぁ、おばちゃん今度やるん?それともつれていくん?」
H「家じゃせんやろ。どこに行くかわからんし」
友人B「ほな、奥さんはどうするん?やるん?」
H「いや、せんやろ。あんだけおかしかったら別れたいやろおし。それに普通のときにも殴られたりしとんに」
G兄「あそこん奥さんの母親もせんの?」
H「いや、もうしんどるし」
友人A「ほしたら、Yのばばぁにでもお願いでもするんやろうね」
G兄「うゎー、めんでぇー。あそこしょっちゅう(結構)通りよるけんめんどいわ」
H「今から行くっちいいよったけん、俺もいかないけん」
友人B「ほしたら、言って来いや。俺らもいこうか?」
友人A「そやね、ひまやし」

ここで、友人A、B、G、G兄、K、Hはそこに行くことに。他のメンバーは帰宅。

H「あいつらは怖がりやし、名前が○○家やけのぉ(Aの苗字)みえるんやろ」
G兄「お前もやん」(Hの苗字もAと同じ)
H「しらんし。こわくもねぇし、あのクソアニキがシンナー吸いすぎておかしくなっとんのに」
G兄「俺はみえるけん、信じるわ」(ニヤニヤ)
H「うそつけや、お前は違うやん。俺にはみえるけどね」(ニヤニヤ)
友人A「みえんやろ。お前は。俺もやけど。あいつらはしらんけど」
G兄「まぁ、いいや。いくぞ」

そんな話をしながら、Yという人の家に向かったらしい。
Kが意味が全くわからなくてGに聞いたところ、Yという人は霊媒師みたいな人で、Hの兄は霊にのりうつられてると両親や他の大人に考えられてる為、そこに連れて行くとのこと。

ちょっと話はそれるけど、これまでの話で霊関係なのか、その風土によるものなのか、それとも家系的なものなのか、わからないけど
俺の体験談でもあるように、この地域では精神異常者が結構出ていたために隔離されて、部落、集落となった。
と言う事。
それと、この地域には有名な精神病院が一つあるけども、まぁ、場所的に閉鎖的な為に建てられてる感じ。
だから、この地域の人はかなり反対したらしい。
(それでなくても差別的なのに、そんな場所に精神病の患者を集めるような収容施設なんて、嫌でしょうがないだろう)
この2つの事がらもあり、この地域で精神を病んだ場合は、病院とかよりも、まずは霊的な現象、事象と思われて、霊媒師等にいく場合が多い。
それと裏S区はかなり広い場所なので、全てがそうとはいえないけども、俺の高校に来る裏Sの奴等の家の近くには、本当に寺も神社も全くない。
(もしかしたらあるのかも知れないけど、俺が知る限りでは無いです)
ただし、神社の代わりの様な場所があり、そこは墓地も含んでいる。
肝試しをする場所として俺らの地域では凄く有名で、地蔵とかそういうのの代わりに、風車と小さな石塚がたくさんある。(水子地蔵の様なもの)
つまり、信仰が異なってるため、精神異常者も霊等のせいであり、病とはかけ離れてると考えられてる。
今のご時勢に、と思うかもしれないけど、それがそこでの事実。

その後、K達はYさんの家に行ったそうだが、Hさん以外は大人にメチャメチャ怒られて家に帰された。
でもその時に、Kはめちゃめちゃ怖かったらしい。
怒ってるって表現は、皆同様のものだと思う。目を吊り上げて、顔を少ししかめたような感じで。
でもこのときの怒ってるは、かなり奇怪、奇妙な感じ。
笑いながら注意する感じ。怒られてるほうも、笑いながら怒られてる。
Kだけあっけにとられて、キョロキョロ辺りを見渡してるって感じ。
それは怖いとか、恐れるとかのものとかけ離れてる存在。
あり得ないもの、見てはだめなもの、って感じのモノ。

その後、何があったわけでもなくGの家に帰り、「今日見たことは絶対誰にも言うな」とGの兄に念押しされ、寝る事になったらしい。
ただKは、変なのに関わってしまった、っていうのと、Gの部屋の電気を消した後の真っ暗さ、カエルなのか虫なのか、それとも家畜なのかわからないようなものの鳴き声。
そして極めつけは、その日の夜に起こった金縛り。
それら全てに、ココに来た事への後悔を押し当てられた。
金縛りにあったからと言って、別に霊が出た訳でもない、目を薄めにしたら、自分のおなかの上におばあさんがとか、お経が聞こえた、とかも無かったらしく、ただの金縛り。体が動かないだけ。
ただし、ナニカの鳴き声。それだけでもう十分に恐怖だった。
そして、金縛りが途切れる瞬間に聞いたのがGの寝言。というか、Gが寝ながら笑ってたとの事。
金縛りが途切れたのは、意識が睡眠状態になった瞬間らしい。というか、寝ただけだと思う。

次の日の朝、朝飯の用意がしてあり、Gの両親は不在だった。
Gのアニキは、その時間に起きる気なしだったらしく、GとKで朝食をとり、これからどうするかを話してたらしい。
それから一本の電話があり、GがGの兄を起しに行って、Gのアニキが誰かと変わり真剣に話しをしてる。
Gはソワソワしだして、その電話が終るのを待ってる状態。
そして電話が終了した後に、Gの兄がKに対して「今日はもう帰れ」っていきなり言い出した。
Kはかなりびっくりしたらしく、Gのほうを向いたら、Gの兄がGに、「Hのアニキが死んだけん、通夜と葬式の用意するっち」と言って部屋に戻っていった。
Gも、ちょっと悪いって感じの言い方で、「すまんが今日は帰って。そういう事情やから」とのことで、Kは帰ることになった。

そして家に帰る準備をして、Gの兄に挨拶をしバス停に向かった。
バス停でバスを待っていたときに、Gの知り合いのおばあさんも一人待ってた。
バスが来るまでの間、GがKに色々事情を話してたらしい。

以下会話。

G「わりぃね、急に」
K「いや、いいよ。っていうか、マジでびっくりするわ。昨日の今日で」
G「うん、っていうか、お前家に帰るバスの中で、Yさんの家が見えると思うよ。そこの前通る時笑えよ」
K「は??なんて???」
G「いや、その前通る時に笑顔でもいいけん、笑って通れよって」
K「いや、人が死んどるんやない???あほかお前。笑えるわけないし」
G「いいけん、この地域の人らは、個人が死んだときに笑顔で送り出そう、っていう感じなんよ。
だけ死んで悲しそうな顔しとったら、霊が憑いてくるけん」
おばあさん「ほっか、そん子はこっちの子やないんか?いらん事こっちにきたりしたら大変なことになんぞ?」
G「あ、うん。昨日とまりきとったんやけど、今朝H君の兄ちゃんが亡くなったんや」
おばあさん「そりゃ、そりゃ。Yんとこ行ったんか?あ?それやったらあかんな」
K「いや、でも笑うのはおかしいやろ。ちゅうか普通に考えて、呪われるとしたら普通は笑ったほうが怖いし」
おばあさん「きさんはあほか??この地域の神さんと、きさんとこが一緒と思っとったらくわれるんぞ」
G「おばあちゃん、そんな怒らんでもええやろ、知らんのやし」
おばあさん「知らんかったで死ぬんで?死んだら終わりやろうが」
K「あ、はい。わかりました。笑えばいいんですよね?」(少しビビッたらしい)
G「うん、すまんけど、おねがいやわ」

こんな感じのやり取りがあったらしい。
その時にKは、もう絶対に裏S区に行かないって決めたとの事。

それからバスが来てGと分かれて戻る際に、Gの笑い方がめちゃめちゃ怖かったらしくて、(目は笑ってないけど笑ってるって感じ)
直ぐにGが見えない位置に座った。
それからが『恐怖、混沌、異常』そんな感じの世界観をバスが包みこむ。

まずバスに、K以外におばあさんを入れて7人座ってる。
ただ、Kが座ろうとしたときに、後ろに座ってたおばさんが「ちっ」っていう舌打ちをした。
その後、斜め後ろに座ってる人や、前のほうに座ってる人に睨まれてる。
そんな感じの雰囲気。
凄く嫌な気がしてたので、下を俯いたままで座ってたら突然、「あはははははははは」
「はーはははははははははは」
「はははは」
って、バスに乗ってる人が笑い始めた。

もう、Kはパニック。
何があったのかもわからないし、自分を睨んでたりとかしてたことがそんなに面白いんか?
って感じで、顔真っ赤にして涙目になって俯いてた。
その瞬間に、後ろのおばさんに肩をポンポンって叩かれて、後ろをキッ!って睨み返したら、そのおばさんの異様な怖さに萎縮しまくったらしい。

ケタケタケタ笑ってるのに目は怒ってる。
(理解不能でしょ?
目が怒ってるのに笑うこと事態が、あり得るのかどうかもわからんけど、一回試しに鏡に向かってやってみて。
目が笑ってないのに、顔と声だけ笑ってる状態っていうのは、めちゃめちゃ怖いから)
「ははははははあはは」ってずっと声がでてて、目が怒ってて、ナノに顔は笑ってる状態。

その直ぐ後に、バス停で待ってたおばあさんがクィって顎で場所を指して、直ぐに気付いたらしい。
窓から見える家に、喪服姿の人がいっぱい集まってて、皆笑ってる。
本当にケタケタって表現がぴったりな感じで、そこに居る十数人がケタケタケタケタ笑ってるっていう状況。
Gの両親やGの兄貴、友人、Hもいたらしい。
もちろん目から涙をながしながらの人もいるし、怒ったような人もいるけど、顔は笑顔。
Kは唖然として笑えなかったらしいけど、再度後ろのおばさんに肩をバシって叩かれて、どうにか笑顔を作ったらしい。
異様で異常。バスの外も中も笑顔だらけ。普通の人の形をした全く違うニンゲン。

霊にとり憑かれない為、霊を追い払う為、そう言われても納得できないぐらいの恐怖。
寧ろ、この人達自体がとり憑かれている感じ。
バスの外から聞こえて来るのには変な笑い声も混じってるらしく、「ギギギギギギギギギギギ」というバスのゆっくり進む音に紛れ込んでる、「あははははは」や「ギャガヤギャガ」って感じの変な声。
「ギィッギッギギギギギギアハハハハギギギギハハギャギャアアハハ」っていう奇怪なコエ。
(これはKの頭が混乱してて、こう聞こえたんじゃないかと思う)

それが1分ぐらい続く。
その1分がかなり長くて、Kが言うには、「世にも奇妙な物語ってあるやん?あれでよく異次元とか、そんな感じで言いよるけど、あーいう状態。
こそソレそのものやね。っていうか、現実世界であそこまでするか?そりゃこっちでは、避けられるんけんね。
それを避けれるように、あの人等を避けるのは当たり前やろ」との事。(意味不明)

その後、その家をずっと後ろになってから皆が笑いを止めたので、Kも笑うのをやめた。
そしたら、バスの運転手に向かって前のおじさんが、「~ちゃん、ちゃんとゆっくり言ってくれてありがとね」と言い出し、運転手も「いや、しょうがないけんねー。××××さんつかれたらたまらん」とか言い出したらしい。
つまり、1分間もそこを通るのにかけたのは、運転手もその部落のモンで、それを理解しててゆっくり、というか黙祷代わりに、1分間もかけてそこを通り過ぎた。と。
それに気付いた瞬間に、Kは怖さでブルブル震えてしまって、バスの中で泣き始めた。
「人前で泣くのはアホよ」とかかっこつけてるKが泣いたらしい。
K曰く、「そこにヒトはおらんかったけね」との事。
そこに居る全員、Kと同じニンゲンとは異なるモノだったらしい。
(いやいや、ありえんやろ?って思ったけど、Bを知ってる、又見た限りでは、分かる気もする)

その後、バスがS区のバス停についた瞬間に、家から一番離れてる場所ではあるけども、それ以上そのバスに乗ってるだけで恐怖心が増したため、降りて歩いて帰ったらしい。

数日後、KはGとは全く遊ばなくなり、あえて避けてたら、Gが怒り出し学校で喧嘩になった。
その後、殴りあいに発展して、先生に呼ばれて話合いをすることになったとの事。
ただし、Kは避けてはいたが、手を出したわけでもなく、文句を言ったわけでもないので、Gが悪いということになり、先生はGに謝れと詰め寄ったらしいが、Gは文句を言いながら謝らずにそのまま家に帰っていった。

その時にKは、裏S区の怖さを再度身にしみる出来事が起こる。
それは上記にも書いてるけど、「子供の喧嘩に一々親が出てくる」。
KとGの喧嘩で話合いだったのにも関わらず、次の日に一々Gの親と母が来て先生に詰め寄り、Kを呼んで再度Gとの話をさせろ。
それから、そこにその二人も立ち会う、との無茶苦茶な要求。
でも、先生が情けないやつなのか、それともそちら側のニンゲンなのか、それを了承。

以下会話。

先生「いや、昨日はいい加減な話になってしまったから、ちゃんと話合え、な?」
K「え?昨日話たじゃないですか。俺は別に何もしてないのにGが殴ってき……」
G母「うるさいねぇ!お前の話聞きたいで来とんやない!」
G「いや、Kが無視して俺を追い詰めたけよ」
K「はい?俺そんなことしてませんし、っていうか、もう良いですよ。ごめんなさい」
先生「ん、喧嘩両成敗って感じでね。Gも。ほら」
G父「Kに最初に会ったときに、言ったと思うけどのぉ。覚えとらんか?お?」(にやにや笑ってたとの事)

ここでKは、G父、G母の、最初の言葉を思い出したらしい
「Gと仲良くしとけ」「Gと仲良くしいや」
この言葉を聞いた時は、普通の親の挨拶と思ってたけど、色々考えなおしたら明らかにおかしい。
普通は「Gと仲良くしてね」。若しくは「二人とも仲良くしいや」。
でもこの家庭では、「Gと仲良くしとけ」
そんなに違和感が無いことかも知れないけど、よくよく考えれば明らかに自分優位。
それを再度強制なのか強要してるGの父は、話が通じるとは思わない。と思ったらしい。
そしてKが、「もうGは謝らなくてもいい。俺が無視したのかも知れない。
でもGとは仲良くなれない。ごめんけど関わらないでほしい」
との事を言って、最後に再度謝って全てを終えたらしい。

ただ帰る時に、Gの家族がケタケタ笑ってたところを見たときに、再度恐怖心が自分を襲い、それ以降、裏S区のニンゲンとは話もしなくなったとの事。

以上がKの話。

本当かどうかは一切不明だけど、Kという友人は信用できるので、俺は本当だと思う。
それと、この年になるまで『裏S区の人間は怖い』と大人に言われているのは、暴走族や不良がかなり多く、又、精神病が近くにあるため、良くある噂で、『患者が外を歩き回ってて殺人事件が多い』とか、精神病院の施設の中に、多数の患者が無残な死に方を強いられているとかの噂により、怖がられてると思ってたけど、この年になり色々事情が分かってきて、何故裏S区と言われているか、そして怖がられているかが、かなり分かってきた。
それ(色々な事情の事)が、差別をされるだけの事情になるのかどうかはわからないけども、それが原因で恐れが生まれて避けられている、と言うのはどうしようもないような気もする。
又、この年齢になってからだけど、裏S区についての怖い話、奇妙な話、奇怪な言い伝えをかなり聞くようになっていた。
(高校時代は全く知らなかったような事です)

今現在は新S区と名前を変えて、新興住宅や大型マーケット等も段々建ってきてるけども、その地域だけは未だに街灯も無く、葬式や冠婚も独自のやり方でされており、就職もそこの住民は、そこの地域にある職業についてる。
(酪農、農業、漁業って感じ。もちろん、普通に就職する人もいますので悪しからず)

ただKの話と俺の話では、『××××』と呼ばれる存在が異なっている。
AやBさんの話では悪霊。Gやその家族からしたら神さま?
この違いが、どういうことを表してるのかは不明。
名前が思い出せればいいのかも知れんけど、経験上では思い出さないに越したことはないんだと思うので、一切思い出す気はない。
この地域の奴等に聞く度胸もないし、言わないと思う。
一応九州地方にある地域なので、わかる人もいるかも知れませんが、当たってても何も言いません。

ただし、AとBさんの話と、Gさんとの認識の中に重なる点があり、又、Hのアニキの死が本当の話なら、××××が何から生まれるか。何なのか。
は、風土的なもので、大体の予想もつくかと思います。
(まぁ俺の中での予想なので、本人達はどういう教えを受けてるのかは微妙)

それと追記として、Kの話に出てくる人の一人が、とり憑かれたのかは不明だが、Kが高校2年になった時に死んだらしい。(これも俺には真実は不明)
誰かはわかると思うが、Gの兄貴。何故死んだかは本当に不明。
ただKが高校2年以降に、同学年の結構な人数が休んで、葬式に参加する事件があったらしい。
俺は既にこのときには転入していたので、そんな事も知らないし、Gとも別に仲良くなかった為知らない。

ただ、何故『誰かはわかると思うが』って書いたかというと、Kの話の中に矛盾な点があるので。(アクマでKの話どおりなら)

1つ目は、Gの兄は見えるべき人ではないのに、見えてたということ。
○○家(Aの苗字)の家系は見える可能性が高い。
それは俺の経験でもわかるけど、家出届けとかにあいつ等と書いたりと普通に出来る家系であり、BさんやCさんにもわかったみたいだし。
それと、Gの兄とHと友人等とGとKで、Yの家に行く時の会話上からも、何となくそんな感じがする。
つまり、Gの兄は見えてた。見えるべきではないのに、見えてた。

2つ目は、Hの兄の葬儀の際にGの兄が居たとのこと。
これはあり得ない。Kがバスに乗るまでの間Gの兄は家に居たし、それ以降はGの兄を見かけてない。
もしKが俯いてた時にバイクが通ったなら、聞こえたはずだ。
なぜなら、外でケタケタ笑ってる音や、「ギギギギギギギギイギギギギ」って言う音に、「あはははははは」の混じったコエも聞こえるのであれば、バイクの音は聞こえてるはずだから。
なのに、Gの兄は笑ってた。ケラケラケタケタと、Hの兄の葬儀の場で笑ってた。

駄文で申し訳ないです。
またかなりの長文になってしまい、わざわざ読んで頂いた方ありです。

ただ何度も言いますが、これは俺の体験談とは全くの別物です。含まれては居るものの"別物"です。
Kからの話を聞いてのことが軸になってるため、本当かどうかもわからないので、聞いたままこんな感じで記述してます。

それと、差別意識を増すために書いてるのでは無いので、その辺は憂慮してくださいな。




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※この話を読むと、呪われるといわれています。自己責任でお願い致します

507:おじゃま道草<1>1/2:02/05/2613:58
7年前の6月、夜10時ごろ、自宅の電話がなりました。
いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。
ミュージシャンの馬場君からでした。

「どうもオカシイ、口では説明できない。夜分申し訳ないが、来てみてほしい」とのこと。
馬場君はバンドの合宿所として、川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。
いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。

そして、出かけようと玄関にでた瞬間、目の前のドアを誰かがいきなりノック。
開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。
馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、
「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」
と言い出しました。

とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。
その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。
茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、
「何かあったな」
とピンときたといいます。
馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。
茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、今回は今までとは違うように感じる、という点で意見が私と一致しました。


508:おじゃま道草<1>2/2:02/05/2613:58
車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然
「うわぁーーっ」
と声をあげました。
話を聞くと、
「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、“来るな!”のポーズで立ちはだかった」

と言うのです。
彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、「仁王」と表現しましたが、後日写真集を見せて確認したところ、明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。

初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。
馬場君を駅で拾い、車中で
「何事か」
と問うと、
「格安で二階家、いい物件だと思ったがどうもオカシイ。とにかく来て、見てから意見を聞かしてくれ」
と言います。

到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、雑木林に三方を囲まれた、10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。
囲まれていない開いた方の、道路に面した角にたっており、築10年位でした。
車を降りると、まず私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。
梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。


509:おじゃま道草<2>1/3:02/05/2613:59

「はまったな」

その場に立った時の素直な感想でした。

その家の外見で気になった点を挙げてみましょう。
・全ての敷地内の雑草が外側へ向かって伸びている。
・敷地内の南西の角に3本の木(高さは2階の軒とほぼ同じ)がある。
・3本の内、南よりの1本は立ち枯れになっている。
・分譲住宅なので、周囲の家屋と同時期の築のはずだが、それだけが傷みが大きい。

隣の住人が網戸ごしにこちらを覗いているのを気にかけながら中へ。

「むさ苦しいところだが、まあはいってくれ」

馬場君のさそいに、玄関へ一歩。

「く、くさい、何だ?」
……というのが内部を見た第一印象でした。
茅野君は開口一番、
「猫、飼ってるのかな?」
私もそれに相槌をうつと、馬場君は、
「うちには居ないが、周りには何匹かいるよ。匂う?やっぱりなあ。いくら掃除しても、抜けないんだよね」

玄関から上がってすぐ左が階段。
玄関(西)から正面(東)へ真っ直ぐに廊下があり、突き当たり右(南東)がダイニングキッチンで、左(北東)が浴室。
私たちは、上がって右手(南西)のバンドの練習室に通されました。

「す、涼しい。いや、寒い。エアコンは?……な、ない!窓は?……閉じてる」

窓の外に妙に目立つものが……よく見ると枯れ木でした。


510:おじゃま道草<2>2/3:02/05/2613:59

「この部屋が1階では一番まともなんだ」

マネージャーの女の子が茶を入れている時、やっと馬場君が話を始めました。

馬場君の話の概要は、・1階で寝るとうなされることがある。
・2階に全員が居る時、1階から話し声が聞こえる。
・1階から上がってくる足音がしたのに誰も来ない。
・引っ越してきた時、押入の中にケース入りのゴルフクラブ一式が残されていた。
・台所に行くのをみな嫌がる。
といった現象なのですが、猫について次の様な体験を話してくれました。

「昨日、2階に居たら1階で物音がしたんで、買物に行ってたヤツが戻ってきたかな?と思って下へ降りてきたんだ。
そしたら、玄関のドアは開いてたんだけど、誰も居ない……
よく見ると、近所の猫が入り込んでたんだな。
ところが、そいつがなかなかつかまらない。
ちょっと掴むと、必死で引っ掻いて抵抗する。この引っ掻き傷、見てみなよ。
そこで、窓を開けてやったんだな。
ところが、追い回したけど猫は窓を無視するんだね。
そして、そのうち猫が玄関へ走ったんだ。
やった、出てくぞ……
そう思ったら、猫が変な行動をとったんだ。
玄関に降りるやいなや、ビタッと立ち止まって急に向きをかえたんだね。
そして俺の足下をぬけて階段上がって、2階の窓から屋根越しに逃げたんだ。
でさぁ……その、玄関での行動なんだけど、本当に変なんだよね。
何か目の前に恐ろしいものでもいて、あわてて引き返した……という感じなんだ。
俺に追いかけられるよりは、よほど怖そうだったよ」



511:おじゃま道草<2>3/3:02/05/2613:59
この話を聞いた茅野君は、
「その猫、何かに操られてたんじゃないかなぁ」
とコメント。
私はその話の間も、廊下を猫が行ったり来たりしている様な感じがしていました。

「その猫はたまたまそうなっただけで、普段は生きていない猫がうろうろしているみたいだね」

私がそう言うと、すかさず茅野君は、
「うん、今も廊下をふっと影が通った様な気がしたよ」
と意見が一致。
しかし、大切なのは、さっきの茅野君のコメントです。
私は茅野君の勘(感)を生かすつもりで、彼にたずねました。

「でも、本体は猫じゃないな。台所へ行ってみる?」


「いいや、今はよすよ。明後日は休みだから、明るいうちに来よう」


この後、馬場君からもう少し話を聞き、新曲のデモを聞かせてもらい、台所には足を踏み入れず、午前2時ごろ帰途につきました。


515:おじゃま道草◆yjBaPtjU:02/05/2617:11
茅野君を送った後、私は自宅へ戻りました。

「ん?誰も居ないはずの弟の部屋でひとの気配がする……」

電気をつけて覗くと……やはりいない……

「来たな……」

私は「くるな!」と強く念じ、気配が消えたのを確認してから床に入りました。

明けて、すぐ私はフィルムを現像に出しました。
その日の夕方には仕上がりますから。

職場へ行くと、弟(大輔)からの伝言がありました。

「今晩、帰る。友人を呼ぶ。酒、買っておいてくれ」

弟は職場が遠いので、その近くに下宿しており、およそ月に1度、衣替えに戻っていました。

私は仕事の帰りに、上がったプリントを引き取りました。
持ち帰るとまず、ネガで現像ムラや光線洩れ、傷などをチェックし、それからじっくりプリントを調べました。
枯れ木がとても目立ち、何枚かのカットに気持ちの悪い印象を与えていました。
と……よく見ると、そのうちの1枚に……
南西の角のブロック塀に小さい赤い光点(豆電球でも点いているかように見える)が写っているものを見つけました。
同アングルの他のカットにはなく、そのカットにだけ写っていました。
ネガにもきちんと写っており、物理的な処理の過程で出来たミスとは考えられません。
赤……一般に負のエネルギーです。
小さな光点……強い霊体です。
色の感じからも判断して……
結論……祟りじゃーーっ!


517:おじゃま道草<3>2/3:02/05/2617:13
ちょうど写真を見終わった頃、大輔が友人の榎本君を連れて現れました。
そして、私がテーブルの上の写真を片付けようとすると……

「何写したの?」


「お化け……じゃ」


「へぇーー、どれ?見せて……家?……お化け屋敷?」

そのうち、私と大輔とのやりとりを見ていた榎本君が身を乗り出してきました。

「見せてもらっていいですか?」

彼が写真を捲っている間に、大輔が彼について教えててくれました。
学生の頃の剣道部の仲間だそうですが……何と彼は霊感が強く、それを見込まれ、密教系の寺院でアルバイトをしている……という変り種だそうです。
彼によると、
「こういう赤いのって、神仏の罰てぇことがあるんです。強いなあ……
うかつなことは言えないので、これ、2・3日預っていいですか?
師匠に相談して見てもらいます。僕だったら、ただですから……」

ネガがあるので茅野君には焼き増して見せればよい、ということで、私は例のカットの他、数枚を榎本君に預けました。


518:おじゃま道草<3>3/3:02/05/2617:13
榎本君は遅くまで飲み、その日は一泊して帰りましたが、大輔は馬場君の家に興味を示し、翌朝……

「今日、茅野さんと行くんだろ?俺、明日も休みだからつきあうよ」
と言いだしました。

「あぶねぇぞ……憑かれるぞぉ~」


「武道やってるからかも知れないけど、おれ、そんなの平気だよ」


約束の正午に茅野君が現れ、私たちは3人でB宅へ向かいました。
私は例の猫が気になっていたので、途中、鰹節のパックを買っていきました。

519:おじゃま道草<4>1/3:02/05/2617:13
馬場君宅へ着くと、ちょうどバンドの練習中でした。
すぐに終わると言うので、待つ間に建物の周囲を調べることにしました。
林が切り開かれ、宅地として分譲された場所のようでは在りましたが……
近くには古そうな農家が点在しています。

「わざわざ木を切らなくても農地があるのになぁ」

私はだんだん土地の成り立ちが気になり出しました。
そして、しばらく歩き回るうち、
「ん?水の気配がする……」
。池か井戸か……溜まった水のようです。
場所は限定できませんが、どこかにあったと思われます。
そのうち馬場君宅が静かになり、女の子(船井さん)が呼びに出てきました。

中へ入ると、まず使わない皿を2つ貸してもらい、1つには水を入れ、もう1つには鰹節をのせました。
猫の気配がもっとも多い階段の下に、それらを置きました。
そして、しゃがんで手を合せると、「ここにとどまるな、去りなさい……」と念じました。

それから5分位後でしょうか……練習室でお茶を飲んでいると、廊下の方から、
「ニャン」
という鳴き声がしました。

「また猫がはいってきたか?鰹節狙ってるんだろう」

馬場君が立ち上がって、廊下を覗きました。

「ありゃ、いない。今ないたよなぁ……」

馬場君が首をかしげながらもどり、また元の雑談になりました。
そしてその後、猫の気配はぱったりと途絶えました。

ところが、この猫供養が、本体をつついたようです……


520:おじゃま道草<4>2/3:02/05/2617:14
さて、3人でキッチンへ……
6畳の広さがあるダイニングキッチンでしたが、だれもそこで食事を取らないため、テーブルなどの家具もなく、広々としていました。
まずは写真撮影……

「ん?なんだぁあれは……」

柱の上部に、貼っていた紙を剥がしたあとがある……
きちんとはがさずびりびりになって、中央部が残った状態です。
黄ばんでいて古そう。
しかも、そこだけでなく、部屋の四方に同じものがある……
御札で何かを封じた……しかし破れた……
最も剥がれていないものに近寄って見てみると、真ん中が妙に黒い……
絵?……黒犬。御嶽山か……?

「足がちくちくする……いるな」

私は茅野君へ向かって、
「何か感じない?」


「何か足がひりひりするよ」


「そう……俺と同じだね。どの辺がひどい?」


「この流しの前のあたりかな」


「そうだろう……」

またしても意見が一致。
それまで黙していた弟の大輔が口を開きました。

「すごい……殺気がある。
目を閉じると、今にも誰かが斬りかかって来そうな気配があるよ。
それに、昔痛めた腰が痛くなった。弱いところをつついて来るみたい。
この感じ……修学旅行で関ケ原へ行った時以来だな。
普通は俺、こういうの平気なんだけど……ここは別だよ。何がいるんだぃ?」


「ここで「見る」と危ないな。帰ってからな」



521:おじゃま道草<4>3/3:02/05/2617:14
私は、これは猫のようなわけには行かないな……無理だなと思い、馬場君に転居を勧めることにしました。
そして、私がもう2,3枚写真を撮ろうとすると、茅野君が
「何か気持ちが悪くなりそうだから、向こうで御茶飲んでるね」
と言って台所をでました。

「俺もそうするよ」

大輔も同じことを言いだしたので、私も出ることにしました。

練習室へ戻ると、馬場君が横になって寝ていました。

「明け方までかかってバンドスコアを書いたって言ってたからね。
でも、何か安眠してるようではないみたいね」

船井さんがタオルケットを馬場君にかけながらつぶやきました。


524:おじゃま道草<5>1/2:02/05/2618:38
しばらくすると、うつ伏せの馬場君がうなされ始めました。
なにやら寝言で、
「うん、うん」
といっています。

「あれ?」

よーーく馬場君の方を見ると……何か気配があります。
彼の上に、影の様なモノがのっているようです。
私は茅野君に、
「どう思う?」
と意見を求めました。

「これ、金縛りじゃぁないの?押さえ付けられてんのかな?」

茅野君の直感は当てになります。私は確信しました。

「馬場君は、意思が強く、行動力もあり、覚醒時は強い……
したがって、疲れてうとうとしている様な弱い時につけこんで憑依してくるんだ」

船井さんが
「起こそうか……」
と、馬場君の肩をゆすりました。
でも起きません。相変わらずです。

「あっ、ちょっと待って、もし意識が飛んでいたらマズイ。帰還に失敗するかも……無理に起こさないで」

私は、強く揺すろうとした船井さんを制しました。
その時、茅野君が……

「あれぇ……何か動いたよ。馬場君の背中の上……」
と言い出しました。
そして馬場君の背中の上、30cmほどのところに、手をもって行こうとして……

「おーーーっ」

彼は、あわてて手を引っ込めました。

「ああ、ぞっとした……ちょっと、やってみなよ」

私にも促します。
なんと、茅野君にも見えたのです。

「やばいな。俺たちも影響をうけてるな……」

私はそう思いながらも、彼に倣いました。


525:おじゃま道草<5>2/2:02/05/2618:38
そおーっと手を出す。
動いている影の輪郭を抜け、突っ込む……
ひんやりとしています。冷蔵庫に手を入れたときのようです。
それでもヤツは動こうとしません。
そおーっと手をひっこめる。
冷たさは消えます。ヤツはうごきません。

「ねっ、冷たいだろ?」
と、茅野君が同意を求めてきました。

「隙間風なんか通ってないよね……やっぱり居るんだね」

彼はいつになく真顔です。
私は乗っているヤツがいまだ退こうとしないので、除霊九字を切りました。
そしてそれが効いたのか、ヤツの気配は消えました。
いや、一時的に退いただけですが……
切った後、馬場君を揺すると、彼はすぐに目を覚ましました。
起きるなり彼は、
「ああーーっ、疲れた。おれ、うなされてなかった?
揺すったでしょ。分ったんだけど、夢がさめないんだ。
これで4回目かな。同じ夢見たのは……
2階じゃ見たことなくって、いつもここで寝た時にだけ見るんだ。
おれ、何か寝言を言ってた?」

と、目をこすりながら一気に話しました。

「うん、うん……っていってたよ」

船井さんが答えると、
「そうか?おれ、うんう……って……自分では首を振ってたつもりなんだけどなぁ……聞いてもらえる?」

そう言って、馬場君は夢について語り始めました。


526:おじゃま道草<6>1/2:02/05/2618:39
馬場君が見た夢の要旨は次のとおりでした。

「気がつくと座敷に座っている。
広い座敷で30畳ほどはある。電燈もなく、造りも古い。時代劇のセットのようである。

しばらくすると少女が現れる。5,6才で可愛らしい。
赤っぽい振り袖を着ている。七五三参りに行く姿のよう。髪もキチンと結ってある。
時代劇でなら、武家の娘という役がら。
少女が、「おにいちゃん、あそんで」とせがむ。
遊んであげたいが、自分はここを動いてはならない。動くと帰れなくなるかも知れない……という不安感がある。
そこで、少女に「外で遊んできなさい」と勧める。
しかし聞き分けない。
「あそんで。あそんで」と繰り返しせがむ。
しかたがないので、少しだけこの場所で……と思うと、それを察したのか少女はニコッとして、持っていたお手玉を差し出す。
さて、どうしようかな。そう考えながら、受け取ろうとする」



527:おじゃま道草<6>2/2:02/05/2618:39

「と、その時、座敷の奥の方から、「遊んでいてはイケマセン」という母親らしき声が響く。
その途端、少女の笑顔は消える。
蒼白となり、自分(馬場君)の陰に隠れようとする。
「呼んでるよ。行かないと叱られるよ」と言うと、少女はおびえ始め、今にも泣き出しそうである。

そしてついに、母親が座敷のはずれから姿を現す。
和服を着込み、すらっとしている。
初めは遠くではっきりしないが、近付くにつれ、綺麗な顔だちであることがわかる。
優しそうな母親じゃないか。そう思って後を振り向くと、少女は消えている。
あれ?不思議に思いながら、母親の方を向く……
先ほどの顔だちはかき消え、なんと般若になっている。
恐怖に捕らわれ、にげなきゃ……そう思った時、夢からさめる」


馬場君が話を終えた時、バンドのメンバーが2階から降りてきました。
ライブの打ち合せに皆で出かけるそうです。
腰をあげて私たちも帰る支度をはじめると、天井から……いや、2階から、タッタッタ……と誰かが走り回る様な足音がしました。
全員聞こえたようで、一瞬、皆動きを止め、顔を見合せました。

「聞こえた?これで2度目だな?今、2階には誰もいないよなぁ」

馬場君が言うと、メンバー全員がうなずきました。
茅野君がすかさず、
「大人だとドスッドスッという足音になるから、あれは子供だな。
実際、2階で子供が走り回ると、あんな足音になるよ」
とコメント。
しばらく皆沈黙し、次の音を待ちましたが、もう足音は聞こえませんでした。

皆が出かけ、私たちも帰路につきました。

528:おじゃま道草<7>1/2:02/05/2618:40
自宅へ戻ると、写真などをもとに背後関係を見てみました。
1階を歩き回っている「本体」は、千数百年前の怨霊です。
(何であるかは伏せておきます。
土地へ縛られてはいますが、出張して動くこともあるのでうかつに波長があうと危険ですから)
本来はこの土地のものではなく、因縁を背負った不幸な一族に執り憑いた状態でやってきた悪霊のようです。
一族を惨死に追込みながら、強烈な結界を形成し、自らを土地に呪縛してしまった形となりました。
負の結界はその吸引力により、捕まえられるものは何でも取り込んでしまいます。
写真の中には、犠牲となった浮遊霊などが多数みられました。
そしてその中に、決定的な取り込みがあります。
ある時、気がおかしくなった住人がいて、とんでもない大変なことをしでかしてしまいました。
屋敷を増改築する際に道祖神が邪魔になり、なんと石仏を井戸に投げ込んでしまったようです。
現代ならまだしも、普通の昔の人がそんなことをするはずはありませんから、余程狂った状態だったのでしょう。
オマケにその井戸は、その後そのままの状態で埋められてしまいました。
榎本君が神仏の罰かも知れないと言っていましたが、正にその可能性は大です。
「本体」を核とする結界内で、井戸の石仏が新たな強い核と化し、いわば二重ブラックホールを形成していることになります。
例の少女は、これらの吸引にひっかかってしまった、もっと新しい一族のひとりです。
今から百数十年前のものだと思われます。
母親が怨霊にやられたため、苦しい目にあったようです。
病気になり他の場所で亡くなりましたが、念だけはここに残りました。
例の猫は、その娘が可愛がっていた猫です。


529:おじゃま道草<7>2/2:02/05/2618:40
いずれにしても、浄化できるような代物ではありません。1日も早く転居すべきです。
私は電話で馬場君にその旨を伝えました。
しかし彼等は、転居の際に持ち金を使い果たしたらしく、すぐには越せないとのこと。
彼等も重なる不穏な現象に嫌気がさしていたが、お祓いなどでおさまるのならば……と思って、私に相談をもちかけたもようです。
私が
「だめだ……」
と告げると、
「そうか、やっぱりね……」
と納得し、出来るだけ頑張ってバイトをして金を貯め、急いで転居することを約束してくれました。

その後2ヵ月ほどで彼等は転居に至りますが、その間に随分と失うものがありました。
霊障が原因の人間関係のもつれです。

さて、私たちの方ですが、やはり霊障を免れることは出来ませんでした。


530:おじゃま道草<8>1/3:02/05/2618:40
翌日の晩、榎本君から連絡がありました。次の様な内容です。

あの後バイト先へ行くと、師匠が彼の顔を見るなり
「どこ行ってきたの!」
ときつい口調で言った。
そして、彼を本堂へ連れて行くと、
「祓うからそこへ座って。自分の背後は見えにくいものだからなぁ」
といって除霊をしてくれた。
浮遊霊がついてくることはよくあるが、普通は寺に居るうちに自然に落ちてしまう。
わざわざ祓ってくれるのはめずらしいことである。
その後、
「かなり危ないことに関わってるね。やめなさい……」
と言うので、預っていた写真をみせ、知っていることを話した。
師匠の鑑定の結果は……


531:おじゃま道草<8>2/3:02/05/2618:41

「お地蔵さまが抜魂をしないまま捨てられ埋っている。
その下には水脈があり、お地蔵さまは泥にまみれている。
その結果、この土地には仏罰がくだっており、その後、性質が逆転して怨霊の住み家と化した。
また、惨殺された者がおり、その殺傷因縁が凄じい。
意識を飛ばしただけで、その怨霊が斬りかかってくる。
ある部屋にお札が貼ってあるが、まったく効果なし。
命懸けで対峙すれば怨霊はなんとかなるかもしれないが、仏罰の方は手の施しようがない。
ここに関わるのは命を捨てる様なものである。
自分なら頼まれても絶対に拒否する。
出てきたもの憑いてきたものを、祓ったり追い返したりすること、即ち除霊は可能だが、浄霊は難しい。
ましてや土地の浄化などとんでもないことである。
そっとしておくしかない。障らぬ神に祟りなし。
一日も早く手を引かないと命にかかわる。
日本で有数の祈祷師であっても、現状では無理だろう。
そこ一帯を穿くり返して整地する覚悟があれば、可能性が見えなくもないが……
それにしても、わざわざ命をかけて浄化するメリットが見当たらない。
それに、この土地がそのようになってしまったそもそもの原因は、日本史以前にまで遡る。
もちろんそれを調べる必要性はない。
この様なスポットは所々に存在するので気をつけよ。
しかしながら、この様な土地に引き摺り込まれたのには、やはり何等かの因縁がある。
部外者にとっては考えようによってはいい経験だが、当事者つまり住人にとっては死への誘いである。
因縁を自覚しないと、またどこかで引き寄せられるであろう。
引っ越しの際にはすべての家具に荒塩をふり、出来るだけ早期に除霊の祈祷を受けなさい」

というものである。
死人がでない内に、手を切ったほうがよい。


532:おじゃま道草<8>3/3:02/05/2618:41
榎本君はこの他にも、自分の考えなどを教えてくれました。

この内容は茅野君にも伝えました。
そして、もう行くのはよそう……という話になったのですが、実際には問題が持ち上がり、1週間後、もう一度だけ足を運ぶことになります。
それはさておき……しばらくは悪影響が続きました。

私の自宅で最も頻繁だったのは、弟の部屋です。
誰も居ないはずなのに人の気配がする。ぼそぼそと話し声が聞こえたこともあります。
何等かの関連がある浮遊霊のようでした。
電灯をつけたり、「帰れ」と念じたりするとすぐに消えました。
週に1,2度そんなことがありました。

また、私が行(読経)をしていると、背後に気配がする……
しかも、鳥肌が立つような気配がする……ということが数回ありました。
これは「本体」(親玉)でなく、付属霊(手下)のようです。
気合いを入れて行を続けるとその内に消えました。
お帰り願っただけで、決して浄化しようとしたわけではありません。
この様な付属霊だけならなんとかなるのですが、手を出すと芋蔓式に出てきますから、いずれ「本体」と接触しかねません。
浄化などとんでもないことです。

悪影響は茅野君にも及びました。
彼が仕事から帰ってうとうとしていると、自分が畳の上に座っている感じがしたそうです。
いやーーな感じだと思った時、周りの様子が見えてきました。
どうも、馬場君が語った夢の中に出てくるあの座敷のようです。
茅野君は、少女が現れ、やがて恐ろしい母親が出てくることを予想しました。
ところが……その気配はありません。
これは夢だから覚めなくては、しばらくそう考えているうち……
ついに……座敷の奥の方から近付いてくる足音が聞こえてきました。
般若面の母親か……
彼は筆舌し難い恐怖感を覚えたそうです。
しかし、現れたのは母親ではありませんでした。

「……!」

この時点で茅野君は、「それ」が「本体」であることを知りませんでした。
でも彼は見てしまったのです。「それ」を……
「それ」はだんだん近付いてきました。
彼は恐ろしさのあまり、
「神よ仏よ……お爺ちゃん!」
と助けを請いました。

「うわっ・・・・!」

危機一髪、祈りは通じたようです。彼はなんとか夢から覚めることができました。


534:おじゃま道草<8>4/4済みません分割目測誤りました(汗:02/05/2618:42
茅野君はすぐに私に連絡をくれました。
聞いてみると……
彼が話す特に「本体」の描写は、私が想像していたものよりリアルでした。
(その描写については、記述を控えます。ご容赦ください>ALL)
私が
「「それ」が「本体」だよ」
と伝えると、彼は
「げ!例の斬りかかってくるヤツ?マジかよ~」
と、しばらく絶句してしまいました。
でも有難いことに、彼がこの夢を見たのはこれっきりです。

私の見解と茅野君の描写を合せると……
オソロシイ……今でも思いだしたくないくらいです。
(実は、私自身が書くのを嫌がっているのです……m(__;)m)


535:おじゃま道草<9>1/3:02/05/2618:43
悪影響は身体にも現れました。
私自身では、妙に肩が重い、指先が痺れる、などの症状がでました。
もちろん、透き通った「お客さん」がその原因です。
普段なら弾き飛ばすし、乗ってきても振り落してしまうのですが、仕事帰りに電車で居眠をしていたり、疲れてうとうとしている時を狙ってくるので、つい背負ってしまいました。
このタイプは浮遊霊ばかりなので、落とすのは簡単……とは言っても、落とすまでは吐き気を伴った肩こりに悩まされます。
この肩こりがもとで体調を崩してしまうと、ヤツらの思う壷ですから、健康管理には妙に神経質になってしまいました。
また、めったに遭わない金縛りにも、その当時だけは続けて2,3度見舞われました。

弟の大輔には、昔痛めた腰の傷みが復活しました。10年以上前の症状の再発です。
彼には元々ある因縁があり、その影響で腰痛を患ったのですが、ヤツらはそこにつけこんできました。
弱点をつつき回すのは、ヤツらの常套手段です。
腰が痛いと言う大輔をうつ伏せに寝かせ腰を診ると、そこだけが吸熱されていました。
「お客さん」を祓い落とし、気の通りを促すと傷みが消える。
数日するとまた痛みだすので、自宅へ戻って私に気の流通を修復させる。
つまり、しばらくは痛んだり直ったりの繰り返しでした。
これは、皆があの土地と縁を切るまで続きました。
しかしながら、彼はそのことをきっかけにして、自分の弱点と因縁をはっきり認識したようです。
それ以来、彼はたいへん謙虚なものの考え方をするようになりました。


536:おじゃま道草<9>2/3:02/05/2618:43
さて、茅野君ですが……
怖い思いをしたわりには、影響が最も軽かったようです。
軽い肩こりと鼻づまりで済みました。
彼には強い守護の力が働いているためです。

で、最後のお呼出……
馬場君宅へ2回目に行った1週間後のことです。
私の自宅へ茅野君が寄っている時に、大輔が榎本君を連れて帰宅しました。
当然、榎本君を囲んだ「お化け屋敷からの撤退」という臨時作戦会議になりました。
結論は、
「影響下から離脱したら、綺麗さっぱり縁を祓い落とす」
ということです。
そして、もう関わらないぞ……と決心した時、電話が鳴りました。
馬場君からの連絡でした。
「状況が悪化したのですぐに来てくれないか。家の中の様子も不穏だし、バンドが分裂の危機にあるんだ」とのこと。
もちろん、断るつもりでしたが、馬場君の頼みは強く……つまり断り切れず……
茅野君と私の二人で出かけることになりました。
大輔と榎本君は、何かの時に備えて待機です。


537:おじゃま道草<9>3/3:02/05/2618:43
出発に際し、榎本君が警告をしてくれました。

「あるものが見えてて、それはとても危険なものです。
しかし、見間違い、勘違いをしやすいものなので、何であるかを言う訳にはいきません。言うとかえって危険です。
知らないで行けば、おそらく見た瞬間にそれだと気付きます。
それは動かない物体です。気をつけてください。
そうだ、よく効くお守りがあるから貸してあげましょう」

彼が言う物体が何であるかは、私にはわかりませんでした。
借りたお守りは茅野君が身につけ、私は水でシャワーを浴びて気を引き締め、夜9時ごろ車で出発しました。

538:おじゃま道草<10>1/3:02/05/2618:44

「こりゃぁ、あの土地に呼び寄せられてるな。
おいで~~、おいで~~って、手で招いてるみたいだな。
たぶん馬場君も魅いられていて、俺たちを引き摺り込む手先になってるんだよ。
何が危ないかって……そりゃぁ最も用心が必要なのは、行き帰りの車の運転だな。
簡単に体を切り刻むとしたら、交通事故がいちばん手っ取り早い……」

そう話しながら、私は安全運転に集中しました。
助手席の茅野君も真顔です。
ときどき助言をしたりして、彼自身もハンドルを握っているつもりで注意を払ってくれました。
馬場君宅に近付くにつれ、緊張感が高まりました。茅野君も同感のようです。
彼の言葉を借りると、
「敵陣深く乗込んで行く……てぇのは、映画だとわくわくするんだが……違うんだよなぁ。
背筋がぞくぞくするのは同じなんだが、緊張感がすごいね。神経がバリバリに張りつめてる。
ずっと鳥肌が立ちっぱなしだよ」

といった感じでした。

そして、もう2,3分で到着……というところで通行止。
工事中につき迂回せよ、とのこと。

「ありゃぁ。よりにもよって、こういう時に工事しなくても……」

茅野君は不平をいいましたが、こういう時にこそこういった障害が出てくるものなのです。

「コの字型の迂回路が書いてあるよ。注意して行こう」

私は矢印のとおり、ハンドルを右に切りました。
順路に従って進むと、前方に交差点。迂回路を示した地図にあったとおり左折。
その先をもう一度左折すれば、いずれもとの道と交差するはずです。

300mほど進むと、舗装が跡切れ、砂利道になりました。

「あれぇーー。やばいかな」

私は警戒しました。
しかし、少し行くとまた舗装路に戻りました。
で、ほっとして前方を見ると……路肩に白い車が止っています。


539:おじゃま道草<10>2/3:02/05/2618:44
嫌な感じがしたので、私はスピードを落とし徐行しました。
嫌な感じはさらに増しました。

「何か違うな、戻ろうか……」

私がそう言うと、茅野君も同意しました。
道幅が狭いので、Uターン出来る場所を探すと……
前方のその白い車の先は、少し広くなっているようです。
私はそのまま車をすすめ、白い車に4,5mの所まで近付きました。
そして、ライトを上向きにして車を照しだしました。
廃車のようです。フロントグラスが割れ、車体には蔦が絡んでいます。
そのとき、背筋をぞーーっと冷たいものが走りました。

「これは!」

近付かない方が良いようです。
私がブレーキを踏もうと思った瞬間、茅野君が
「うわっ、ダメ!止って!戻ろっ!」
と叫びました。
茅野君も同じものを感じたようです。

「バックで戻るぞ!そっちの路肩、見てて!」

私は車を後退させ、そのまま砂利道を抜けました。
そして、舗装路にもどると道幅も少し広がり、なんとかUターンすることが出来ました。

来た道を逆に戻ると、途中で別の迂回路を見つけました。
未舗装なので路地と勘違いし、さきほどは見逃していたようです。
道を確かめていると、通行止の方から地元のものと思われる軽トラックがやってきました。
そして、その道へ入って行きました。

「それ、ついて行くぞ」

1分ほどついて走ると元の道へぶつかり、まもなく馬場君宅が見えました。

着くと、まず先ほどの道について馬場君に尋ねました。
図を書いて、例の廃車の位置を示すと……

「あれ?その道、高速道路にブチ当たって行き止まりのはずだよ。
高速の壁とか、見えなかった?おれは、行ったことないけど……
でもさぁ、その辺の道って、両脇が畑だったりするからな。
路肩が崩れたりすると、ハマルかもなぁ……」

馬場君にはわからないようです。
すると、バンドのメンバーの後藤君が口をはさみました。

「その廃車の先……道……ありました?
俺、バイクでそこの道に入り込んだことがあるけど、廃車で行き止まり……その先は薮になってたはずですよ。
昼間だったから辺りもよく見えたし……
でも、へんだなぁ、その廃車のところのおよそ10mだけが舗装、いや、アスファルトでなくコンクリート敷きだったな……
あ、そうそう、近くに廃屋がありませんでした?
見るからにお化け屋敷ってやつ……そうか、夜だと判らないか……
でも、確かに嫌な感じの場所ですね。墓でもあるのかなぁ?」



540:おじゃま道草<10>3/3:02/05/2618:45
私は榎本君の言葉を思い出し、電話を借りました。

「あ、大輔?榎本君と代って……あ、榎本君?もしかして、例の物体って車?」

「ええ、ありました?
僕に見えたは、白い車が止ってる所です。物凄い霊気があるから、近付くと捕まるかも……
でも、すぐわかったでしょ。
え?そんなに近くまで行ったのですか?わぁ……危なかったですね。
そっちにいると、見る力が弱まるか曇るかするんで、気をつけて下さい。
あえて言わなかったのはね、白い車ってどこにでもあるから、全部に気を取られると見落す可能性があって、かえって危険だと思ったからなんですよ」


残念ながら?この場所の真相はわかりません。
この後、確かめる機会がなかったからです。
また、そうしようとも思いませんでした。
馬場君宅と関係があるのは、間違いなさそうです……

霊障を受けないように気持ちをしっかりさせていたつもりですが、土地の邪気は強く捕まりかけたようです。


541:おじゃま道草<11>1/3:02/05/2618:45
バンドの他のメンバーが夜食の買出しに出た後、馬場君が話し始めました。
彼が訴えたこの1週間の間に起った現象は、次のとおりでした。

1:3日前の雨の時、近くに落雷があり、その影響でシンセサイザーとシーケンサーのデータがとんでしまった。
特にシンセは完全に駄目になり、買い換えねばならない。
とりあえずはレンタルでしのぐが、余計な出費であり、引っ越し費の積み立てが滞る。
場合によっては、来月のライブを諦めねばならない。

2:ギタリスト兼アレンジャーの葉山君が、ある人妻(郁恵さん)とデキているが、その影響で音楽への熱意が別の方向へ向いている。
どうも、他のバンドに声をかけられているようだ。
(注:郁恵さんの写真があったので見せて貰ったところ、すごいすごい、なかなかの因縁持ちでした。
その内の不要な1枚をもらい受け持ち帰って、榎本君に見せたところ……

「この人の目……人間ではない……操られてますね」
という感想が返ってきました。
あとで判ったことですが、馬場君宅を仲介したのは、郁恵さんに紹介された不動産屋でした。
入れ替わりの速い物件は礼金で稼げるのかな?!)


542:おじゃま道草<11>2/3:02/05/2618:45
3:1階では寝ないので例の夢は見なくなったが、2階で寝ていると胸の上に重みがかかってくるようになった。
それほどの重みではなく、目を開けると消える。
あの子供ではないか?(注:当たり!)

4:蒲団を敷いた後しばらく1階に行き、用を済ませてもどったところ、蒲団の中に誰かが居たように感じた。
シーツを触ってみると、寝汗をかいた後のようにほのかな湿り気が残っていた。

5:階段を上ったり下ったりする音が2度聞こえた。2回とも深夜2時ごろだった。

6:家の周囲を歩き回ると、足を掴まれるような感触がして歩みが遅くなる。
ぼうっとしていると、いつの間にか足が釘付けなってしまい、はっと我に返るとその場に立ち尽くしていた。

……ということが、バンドのメンバーのそれぞれに数度ずつあった。


543:おじゃま道草<11>3/3:02/05/2618:46
私は馬場君に、
「とにかく命にかかわることだから、引っ越しを第一優先しろ。
死んでからでは音楽活動もできないぞ。
ここにいる内は、全てが裏目裏目にまわるから何も成功しない。
おれももうここには来ないぞ。来たら最後かもしれん。
今度会うのはお祓いに行く時だからな」

と釘を刺しました。
そしてさらに30分ほど引っ越しの際の諸注意をし、帰途につきました。

立ち去る際、家から10mほど離れたところで九字を切りました。
振返ると、例の立ち枯れの木が妙にゆらゆら揺れていました。

この後、2ヵ月を待たずに彼等は転居、つまり脱走に漕ぎ着けました。
幾らかは借金が残ったそうですが、大事に至らずに何よりでした。
しかし、バンドは解散しました。
葉山君は別のバンドへ参加し、馬場君とベーシストの後藤君は、新たなバンド結成へと動きだしました。

ここで気になることがあります……
葉山君と郁恵さんを除いた関係者全員が、わたしの目の前でお祓いを受けました。
しかし、その2人だけは別の所(神社らしい)に行って祓ったそうです。
その後、彼等とは縁がないので、きちっと切れたのかどうかはわかりません。
まあ、悪い噂も聞こえては来ないので、死んだりはしていないでしょう。
問題は、葉山君がどれほど郁恵さんに食われるか……です。
ナンマンダブ……

完!


544:おじゃま道草これで終わり:02/05/2618:46
この話の読後、よく周囲で「浮遊霊」が動くことがります。
ですが、それは大方この話とは関連がないものです。
意識を「相手」ではなく自分自身に向ければ、簡単に切れます。
言い方を変えれば、「気にしなければ消える」ということです。
しかしながら、一応気の弱い方のために……オマジナイを。
自分の気力を強める効果があります。

次の言葉を3回唱えるか、心の中で強く念じてください。


「ギャーテイ、ギャーテイ、ハーラーギャーテイ、ハラソーギャーテイ、ボージーソワカー」






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田舎に住む祖父は、左手小指の第一関節の骨がありません。
つまむとグニャリと潰れて、どの角度にも自由に曲がります。
小さい頃はそれが不思議で、「キャー!じいちゃんすごい!なんで? なんで?」と、無邪気にはしゃいでいました。
祖父はニコニコしながら、「ありゃー!可愛い孫に、じいちゃん骨抜きじゃー」などと冗談めかして誤魔化していました。
でも私が小学校に上がるくらいの頃、その本当の理由を教えてくれました。
以下、祖父(正夫)の語り口です。

この村の山の上に古い神社があるだろう。
あれは、いわゆる御霊神社というやつなんだ。
御霊神社とは、謀反の疑いなどをかけられ殺された実在の人物が祀られているもので(太宰府天満宮などもそれに当たる)、『御霊信仰』の元は『怨霊信仰』とも言われている。
つまり、その人物が祟り神にならないように鎮めるための神社だな。
この村で祀られている神様の名前は、○○(忘れましたが、何とか磨呂みたいな長い名前)と言うが、わしら年寄りの間では、『朽縄(くちなー)様』と呼ばれている。
朽縄様は、蛇や女の姿に化けて村に降りて来ることもあるという。
そのため、この村では蛇は神様の化身として畏れられ、決して殺してはいけないとされていた。
また、朽縄様は骨を司る神様として崇められており、妊婦や小さな子連れで参拝すると、子が丈夫な体に育つと言われていた。
しかし困ったことに、朽縄様は大層荒々しい性格をしている。
昔、村でも悪評高い放蕩息子が、自分に素っ気ない態度をした娘の家に嫌がらせをした。
それが何とも質の悪い嫌がらせで、蛇を生きたまま枝に串刺しにし、娘の家の畑に並べて刺したらしい。
娘の家族は顔を真っ青にし、「何と…罰当たりなことを…」と震えながら、血の海で息を引き取った蛇の亡骸を庭に手厚く葬った。

数日後、男に罰が下った。
全身の骨という骨がギシギシ痛み始め、三日三晩、寝床で悶絶した。
「痛い、痛い!骨が焼ける!」と訳の解らない言葉を叫び苦しむ男を、両親は必死に看病した。
男の体は、なるほど確かに全身の骨が溶けたかのようにぐにゃぐにゃに変形し、頭も腕も自力で持ち上げられない状態だった。
医者も「こんな奇病は見たことがない。本当に祟りかもしれません」と頭を抱える中、4日目になって男が忽然と姿を消した。
一人で起き上がることなど到底不可能な状態のため、両親は不思議に思いながらも近くの野山を探した。
件の娘の家の畑でソレを見つけた。息子の形をした奇妙な物体。
ぐにゃぐにゃと手足をあり得ない方向に曲げ、遠くから見ると踊っているようにも見える。
ひたすら、ぐにゃぐにゃ蠢いている息子のようなモノに、恐る恐る両親は近付いた。
息子の顔は、目鼻などのパーツが全く重力に逆らえず、皺々になって垂れ下がっていた。
垂れた目や口のせいか、その表情は哀しげな、泣いているようなものだったという。
そしてその姿を見た両親もついに頭がおかしくなってしまった。

(有名な『くねくね』と似ていますが、同一かは分かりません。
ちなみに、祖父の田舎ではこの現象を『蛇化(じゃんげ・俗語ではカカシ)』と言って、朽縄様の祟りとして畏れられ、やはり見てはいけないものと教わってきたそうです)

…とまあ、それくらい恐ろしい神様なのだが、何とじいちゃんはその朽縄様に会ったことがあるんだ。
それはわしが今のお前と同じくらいの歳のことだ。
その日、わしは友人の寛治と昼間2人で山に入り、蛇の脱け殻を探していた。
この地方では大層縁起の良いものとして喜ばれ、大人に渡すと偶に食べ物をくれることもあったからな。
脱け殻を探すのに夢中で、わしらは気付かぬ内に例の神社の鳥居のところまで来てしまった。
普段から「子供だけでは絶対に近寄ってはならん」と、きつく言われていたところなのに。
正「寛治ー、もう鳥居のとこまで来てしもーたぞ。これ以上はまずかろう」
寛「そうじゃのー。ぼちぼち引き返さねばのー」
そんな会話をしていた矢先のことだ。前から女が近付いて来た。
女は村の女が着ているような野良着ではなく、白っぽい浴衣のような着物を着ていた。
わしは言い付けを破ったので怒られるのではと思って、寛治に耳打ちした。
正「やばいぞ。素直に謝るか? それとも逃げてしまうか?」
寛「…?? お前、何を言うとんじゃ? 誰ぞ来とるんか?」
寛治はキョロキョロしたり、目を細めて遠くを見据えるようにしているが、どうやらその女はわしにしか見えんかったらしい。
とうとう女の顔が判別できるくらいの距離に近付いて来た。
…おかしい。
そこで明らかに異形のモノだと判った。
まず何よりおかしかったのが、女の目だ。蛇の目だった。
小さな目が左右に離れて配置され、あの爬虫類独特の、ナイフの刺し傷のような縦に細く閉じた瞳孔をしていた。
鼻は細く、口も小さい。全体的にほっそりした姿態をしている。
わしは蛇に睨まれた蛙のように、その場で固まってしまった。
寛「おい、どうしたんじゃ? はよ帰ろうな」
寛治の声が何だかえらく遠くに感じる。
女はその蛇の目をパチパチさせると、急に細長い手足を…あり得ない方向に曲げ始めた。
まるで糸の切れた操り人形のように、はたまたゴム人形のように、ぐにゃぐにゃと出鱈目に関節を曲げるのだ。
更に最も不気味だったのは、女が首を横に傾けたかと思うとそのままどんどん曲げ続けて、ついには胸の前で頭をまるっきり逆さまにしたことだ。
完全に人体の理を無視した体勢だ。
わしは悲鳴こそ上げなかったものの、全身の血の気がスーッと消えて震えが止まらなかった。
女はわしのその反応を確認するかのようにニタニタ笑って、その逆さまの顔でわしを覗き込み(手足がぐにゃぐにゃに曲がって、ちょうど顔の高さが合っていた)、「お前、見えてるだろ?」と聞いてきた。
わしは馬鹿だったから、思い切り首を振って「見えてない!!」と涙声で叫んだ。
すると女はますます愉快そうに目を細めて、「なーんだ、見えてるじゃないか。生意気なガキだな」と言ってきた。
わしはもう足がガクガク震えて、涙でぐちゃぐちゃで、隣で寛治が何か喋っているがそれも耳に届かないような状態で、「ごめんなさい…。ごめんなさい…」と目を瞑って謝った。
すると女はわしの目と鼻の先でガクガクと全身を震わせ、元の人の佇まいに戻り、ニターっと楽しそうに笑って「お前、今夜迎えに行くから待っとれ」と、わしの左手を撫でながら言ってきたのだ。
そしてゆらーっと踵を返すと、鳥居の方に戻って行ってしまった。

わしは大ベソをかきながら急いで寛治と山を下り、畑作業をしている家族にこのことを話した。
父と母は、わしの話を聞くそばからみるみる顔が青くなっていき、すぐに神社の神主様が家に呼ばれた。
神主さんに先刻見たものを詳しく話したところ、やはりたちまち険しい顔になって、「左手を貸してごらん」と怒るような口調で言われた。
例の女に撫でられた左手を神主さんに渡すと、五指を一本ずつつまんだり引っ張ったりして、丹念に調べられた。
「…小指の先を持ってかれとる」
神主さんは険しい表情を崩さず、そう言って手を離した。
『えっ?』と思って自分でも触ってみると、確かに小指の第一関節から上がぐにゃりと柔らかい。
言われるまで気付かなかった。
「坊やが見たのは、間違いなく朽縄様ですね。
ここ十数年、その姿を見たという人間はいなかったもんで、油断しておりました。
どうやらこの子は…朽縄様に気に入られたみたいです」
『気に入られる』という言い回しに幼いながらも違和感を感じたが、その思いを父が代弁してくれた。
「気に入られたって、どういうことですか!?
朽縄様の怒りに触れたら、カカシ(先述のくねくね?)にされるんじゃないんですか!?」
神主は静かに、しかしよく通る声で答える。
「いや、今回は体の一部を持ってかれとりますから…。カカシにはされんでしょうが…いや、しかしやはり厄介ですな。
朽縄様は小指の骨を抜いて、この子に目印を残したんでしょう。恐らく、今夜にでも迎えに来るつもりで…」
神主さんの声を父のしゃがれた声が遮る。
「迎えに来るって…息子はどうなるんです?」
神主さんがためらいながら続ける。
「要は…朽縄様の一部になるということです。簡単に言うと…食われてしまうんですよ。
自分の姿を見られる者には、相応の力があるし、また波長も合う。
その力を取り込んで、より一層強力になるおつもりでしょう」
わしはあの蛇の目をした女に、自分が頭からバリバリ食われることを想像した。
それだけで恐ろしくなって声を上げて泣いた。
「いや、しかし気を落とすのはまだ早いですよ。
私が朽縄様と直接お話してみますから。
…ですから、ご主人たちは今から言うことをよく聞いて下さい」
それからわしは、ずっと母親の膝に突っ伏して泣いていた。
神主さんは、わしの左手小指に何か麻紐と小さなお札のようなものをグルグル巻いて帰って行った。

夕方になり、続々とわしの家に大勢の人が集まった。
大勢の人と言っても、専らわしと同年代の子供たちと、その親が殆どだ。もちろん寛治も来た。
そして父と母の手で、その子供たちの左手小指に、わしと同じような麻紐とお札が巻き付けられた。
神主さん曰く、「朽縄様の目を誤魔化すため」だそうだ。
麻紐を巻き付けると、両親はその子らの親に何か話しながら頭を下げて、家に帰していた。

後になって「何の話をしていたの?」と聞くと、
「あんたがすぐ見つからないように、協力をお願いしたのよ。
今晩、みんなの家を朽縄様が訪ねるそうだけど…殆どの人には、それが見えないみたい」
と母が答えてくれた。
「みんな食べられちゃうの!?」と、わしがまたベソかいて聞くと、
「ううん。小指の骨がある子供は大丈夫だって。
でも麻紐をしておくと、骨があるのか無いのか、分からなくなるそうよ。
だから、あれを明日の朝まで絶対に外さないようお願いしたの。
もしも正夫をわざと隠していることがバレたら…朽縄様が怒ってしまうんだって」
母は安心させるために包み隠さず話してくれたのだろうが、わしは余計に不安になった。
『誰かが紐を外したら、そいつ、カカシになるんかな?』『わしの紐、間違って外れんやろか…?』とな。

そして夜が訪れた。
朽縄様はいつどこにどんな姿で現れるのか見当も付かないと言う。
わしは少しの物音で緊張の糸が張ったり弛んだりしていた。
夕飯もあまり食べられんかった。
飯の後、父親と一緒に風呂に入った。
―――風呂の戸を開けた瞬間…心臓が一瞬で凍り付いた。
…風呂釜の中に女が居た。
こちらに後ろを向けて湯に浸かり、長い髪が湯船にユラユラと海草のように漂っている。
昼間見た白い浴衣を着たまま入っている。
間違いない。朽縄様が目の前にいる。
わしはとっさに風呂の戸を閉め、ガタガタ震えだした。
父はすぐに察してくれた。
「逃げたらバレてしまうぞ。
…絶対に目を合わすなよ。見えてることを悟られるな。
父ちゃんが守ってやるから、普通にしとけ」
小声で耳打ちし、父親に抱き抱えられて風呂に入った。
再び風呂の戸を開けた時、わしの顔の真正面、文字通り目と鼻の先に女の顔が来ていた。湯船から上がっていたのだ。
ずぶ濡れの女の、爬虫類のような小さな目がわしの顔をジッと見据える。
間近で女の声が耳に響く。
「お前、見えてるだろ?」
昼間と違い、女の顔は笑っていない。既に何軒か巡ってイライラしていたのだろう。
わしは聞こえないふりをして父に目を向ける。
普段あまり笑わない父がニッコリ笑顔を作り、「おいおい、小便したくなったからって、裸で出ていく奴があるか。出すならここで出したらええぞ」と、必要以上に大きな声で話し掛けてくれた。
わしも泣きそうな顔のまま無理やり笑顔を作り、コクコクと父ちゃんに頷いた。
汚い話だが…本当に父の腕の中で失禁していた。
それからわしは極力普段通りに体を洗ったり、湯船に浸かったりしていたが、その間も女は「おい、見えてるだろ? 本当は見えてるんだろ?」と執拗に、わしの顔にその不気味な顔を近付けてきた。
最後に、女はわしの左手をゆっくり撫でて(ここでまた漏らした)、不満そうに「チッ…」と舌打ちして消えた。
わしは汗と涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったが、幸いにも風呂場だったため誤魔化せたようだ。
女が消えてからもわしはガタガタ震えており、その日は始終、父と母に交代で抱いてもらった。

翌朝、協力してくれた村人たちと全員で山を上り、神社を訪れた。
朽縄様の姿を見たという者は、結局わし以外にはおらんかった。
神主さんは疲れ果てた様子だったが、笑顔で「もう大丈夫です。朽縄様の、坊やへの執着は失せました。小指の紐とお札を外しても構いません」と言ってくれた。
これまでも何十年かおきに同様の事件が起こっており、この方法で切り抜けてきたという。
しかし中には目眩ましの子供が紐を外してしまったり、当人が見えていることを見抜かれて神隠しに遭う者もいたらしい。
ちなみに朽縄様に食われる時は、大蛇の姿で丸のみにされるらしい(神社には、その様子が描かれた絵巻物も残っている)。
村人たちから歓声が上がり、寛治は泣きながら「よかったー!よかったなー!」と喜んでくれた(しかし子供だけで神社に近付いたことで、わしらは後日げんこつを食らった)。

「あれから五十年…わしの左手小指は、成長してからもずっとぐにゃぐにゃのままだ。
朽縄様の姿も、それから見ることはなかった。
大人になってから病院で検査したが、医者は首を捻るばかりで…。まぁ生活に支障は殆どないから良いけどな」
そう言って、祖父は幼い私に、
「だから絶対に、あの神社に子供だけで近付いたらいかんぞ」
と、怖い顔を作って言い聞かせてくれました。

あの時、小指に巻かれた麻紐とお札は、御守り袋に入れて今も大切に保管しているそうです。
祖父は今も元気に村(今は郡)の老人会などに出かけては、新しく入った女性会員さんに、
「ありゃー。わし、あんたに骨抜きにされてしもたわー!」
と小指を披露しているそうです。
祖父曰く、鉄板ネタだそうです。






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781: 1:2013/11/30(土) 00:21:54.99 ID:x3LZufvH0
はじめて投稿します。

先日亡くなった暗子(仮)が実は生きてて、暗子を助けようとしていた陽子(仮)が行方不明になった。
ということがありました。
ここに投稿していいのか悩みましたが、個人的に大変府に落ちなかった&怖かったので書かせていただきます。
心霊系の話ではないし、かなり長くなる、そして最後の結論はでていない(決定的)なので、
苦手な方はスルーしてください。
本当に長いので夜中の投稿失礼します。



782: 2:2013/11/30(土) 00:23:33.96 ID:x3LZufvH0
今年の夏頃、高校の連絡網で暗子が亡くなったと知らせが入った。
私と陽子を含めた3人は高校の時の同級生。
高校入学当時人見知りだった私に、気さくに話かけてくれた陽子。初めてできた友達だった。
陽子は本当に元気いっぱいで、明るくて、正義感の強い子。クラスのムードメーカー的存在だった。
私達の住む町は何年か前にA村とB町が統合したもので、私と陽子はB町の子。
A村の山の麓を開拓し、できたのがB町。
B町ができてすぐに私の両親はB町に引っ越してきた。
陽子は高校になってB町に越してきた子だった。

783: 3:2013/11/30(土) 00:24:26.15 ID:x3LZufvH0
私は子供のころから「A村には行くな」と両親に良く聞かされていた。
中学校になるとA村の子と同じ学校に通うのだが、そのときも両親は「A村の子とは仲良くするな」と言っていた。
なのでB町の子はA村の子とは話さなかった。
A村出身の同級生は4人。暗いオーラというか、何か不思議な感じのする子たちだった。
でも陽子だけはA村の子とも分け隔てなく話していて、その子たちの中でも暗子とは特に親しくしていた。
私も陽子を仲介として暗子とだけは話すようになった。

でも高校を卒業して、暗子は県外に行った。
成人式も同窓会も1度も参加していなかったので、卒業してから1度も連絡を取ることはなかった。
また、あんなに明るかった陽子も大学生になって、原因はわからないが軽い精神病といった感じになり、
なかなか連絡を取ることがなかった。

784: 4:2013/11/30(土) 00:25:15.38 ID:x3LZufvH0
私は県内の大学を卒業し、B町にある小さな店で仕事を始めた。
仕事に慣れてきた今年の夏頃、高校の連絡網で暗子が亡くなったとの一報を受けた。
まだまだ24歳。まさかこんなに若くして友人が亡くなるなんてと大変ショックを受けた。
ただ、葬儀については行くべきか大変迷った。
連絡をくれた友人も、
『連絡は回しているけど葬儀には参加しない』『親がA村には行くなというから行けない』と言っていた。
私はすぐに陽子に連絡しましたが、連絡は取れず。
散々悩んで葬式だけは参加することにした。

葬儀に来ているB町の子はやはり私だけだった。
知らない人ばかりに話したことのないA村の同級生4人。正直行ったことを大変後悔した。
それに葬儀もいくつか変だなと思ったことがあった。

785: 5:2013/11/30(土) 00:26:25.48 ID:x3LZufvH0
一つ目は、喪主の方の名前が暗子の名字とは異なっていたこと。
もしかすると何か理由があるのかもしれないが、喪主は暗子の親ではなかったのでは…と思った。
二つ目は、なぜか棺・ご遺体共になかったこと。
普通は遺影と棺とその中にご遺体、そしてご遺体に向かってお焼香という形だと思うが、
棺はなく、皆遺影に向かって歌いながらお焼香をしていた。
最後、三つ目がお経。
お経は色々な種類があるが、普通お坊さんが唱えるものだと思う。
しかし暗子の葬儀では、椅子に座っている参加者ほぼ全員が何か暗い歌のようなものを歌っていてた。
そして皆一様に口角を無理に上げているよな、笑っているような表情であり、大変異様だった。
私はお焼香を済ませて逃げるように会場を後にした。

それから何か月かして、暗子のことも私の中で整理がついた頃、陽子から連絡がきた。
電話の内容は、『暗子を待っているのだけど、3時間待ってもでてこない』というものだった。
暗子は亡くなっているのに何をいっているのだろうと思い、
「暗子は亡くなったよ?誰と間違えているの?」と聞くと陽子は、
『それが亡くなったのは嘘で、暗子は生きとったん。
 暗子が生きていると証明するために実家に連れて行ったけど、家に入ったっきり暗子が出てこんとよ』
と状況を説明してくれた。

786: 6:2013/11/30(土) 00:27:04.26 ID:x3LZufvH0
陽子の話をかいつまむと、
・先日、暗子から連絡が来て会った。
・暗子は実家と全く連絡を取っておらず、久しぶりに地元に帰ってきていた。
・そこで「用事で役場に行った際自分が亡くなっていると役場の人間に言われ、どうしたらいいのか」と相談された。
・悩んだ末、暗子母に暗子を会わせることに。
・親と不仲な暗子を説得して暗子家まで連れてきたが、一言もしゃべらずに暗子は暗子母と家に入っていった。
・そのまま3時間がたった。
・家に入ろうと思ったが、見張っている?おじさんがいる。それに人も沢山いて怖いから入れない。
といったことを説明された。
正直ほとんど意味がわからなかったが、とにかく陽子が困っているのはわかったので、
あと1時間ほどしたらそちらに向かうと伝えて、暗子の家の場所を聞いて電話を切った。

バタバタと店を閉めて陽子にこれから行くと連絡したのだが、繋がらない。
仕方がないので、暗子の家に向かっている時に陽子から電話がきた。
『……おーいぃこれが…ザワザワザワザワ…門閉めろーぃちが……ザワザワ…』
出てみると、周りで誰か複数人が遠くから大きな声で話しているような音が聞こえるだけで、
陽子の声は聞こえなかった。
何度か呼びかけたが、応答がないまま電話は切られてしまった。

787: 7:2013/11/30(土) 00:27:47.66 ID:x3LZufvH0
それから5分くらいして暗子の家に到着した。もう空は暗かった。
暗子の家はほとんどなにもない所にあった。
広い庭を挟んで右側に立派な木造の平屋。左側にアルミ板のようなもので作った簡易的な倉庫。
その奥に何か高い建物があった。
右側の平屋の前には立派な門があり、そちら側に向かって歩く。
すると左側の倉庫の前に人影のようなものが見えた。
よくよく見てみると、その人は倉庫の前で丸く大きな石の上に座って、ずっと前の平屋を見つめていた。
門の部分に呼び鈴が見つけられなかったので、その人に話しかけに行こうと庭に入った。
かなり広い庭で、撒き石がしてあったので、歩くと音がするのだが、
その人は一度もこちらを見ることなく、ずっと平屋を見つめていた。
少し近づいたところで「すみません」と声をかけたが反応なし。
ふと、その人が見つめている平屋に目をやった。
その時、陽子が怖いから入れないと言っていた意味が分かった。。。
その人の目線の先…平屋の外廊下…そこにずらっと何十人の人間が並んで正座していた。
その人達もまた私に一瞥も触れることなく、ずっと倉庫の前の人と見詰め合っていた。
皆一様に口角を上げ、笑いながら。

異様な光景に全身に一気に鳥肌が立った。
気づいたら無我夢中で帰っていた。
帰りながら、あの暗子の葬式のときの異様なお経が小さく聞こえた気がした。
陽子の車は見つけられなかった。

788: 8:2013/11/30(土) 00:28:26.46 ID:x3LZufvH0
ここから後日談になります。

その後、陽子と暗子に何度か電話したが、二人ともつながらなかった。
ただ、暗子からは、
『巻き込んでごめんね』
『稿シ ,嗤口ォ餌 喰 (改行)口無シ虫ノヤマ 嚆 ナク ^』
という2通のメールがきた。(原文まま。多分文字化け?)
それ一通のみで、その後連絡が来ることはなかった。
何度か暗子の家に行こうとしたが、どうしても怖くて行くことができなかった。
陽子の家には何度か行ったがいつも不在だった。
全く進展がなく、まさか何か事件に巻き込まれているのではと不安になっていた。

そんな中、先日、精神病で入院していた父が帰ってきた。
そこで陽子の現状を知ることになる。
なんと陽子は父と同じ精神病棟に入院していたのだ。
精神病棟では、自傷行為や他人に怪我をさせたりすると隔離された病棟に移されるのだが、
父が自傷行為をした際、その隔離病棟で陽子と会ったと言っていた。
私は驚いた。
確かに心の病にかかっていたとは言っても、日常生活に影響がでるほどのものではなかったのになぜ入院?
父に陽子の状態を聞いたが、「全く近づけるような状態ではなかった…」ということしか教えてもらえなかった。

789: 9:2013/11/30(土) 00:32:19.20 ID:BgszJIC/0
そして昨日の夜。暗子の葬儀の夢を見た。
その時いたA村の子。暗子を入れて4人しかいなかったはずのA村の子。
でもそこには4人のA村の子がいた。
よくよく思い出してみると、葬儀に行った際『○○高校名簿』という本があって、
○○高校の同級生はそこに名前を書くことになっていた。
私が5番目に書いたので、確実に4人のA村の子がいたのだ。

それがとても気になって、目が覚めた後、意を決してA村の暗男(仮)に電話した。
暗男とは話したことはなかったが、3年間同じクラス。
そして暗男は陽子のことが好きだった。
暗子と陽子について聞けるのは暗男しかいないと思ったのだ。

電話した時はつながらなかったが、先ほど連絡が帰ってきた。
『久しぶりですね』と言う暗男に対して、
率直に暗子と陽子について知っていることはないかなど、色々質問を投げかけたのだが、
『すみませんすみません』と謝られるばかりで何も答えてくれなかった。
葬儀のとき4人A村の人がいたが、1人多いのは誰かとも聞いたが同様だった。
そして、
『もう行かなくてはいけないので……そしてこの件についてはもう触れないでください。
 今のあなたはただ欲求を満たしたいだけだ。とにかくA村には近づかないでください。
 そして、何かあれば笑ってください』
と言われた。
「笑うって何?それって陽子と暗子に関係あるの?」と咄嗟に聞き返すと、
『笑うとイエンガミは消えます。時間がかかっても消えます。
 イエンガミ…知りませんか?きっとあったことがある。気になるなら調べえ』

790: ラスト:2013/11/30(土) 00:32:52.81 ID:BgszJIC/0
結果結論としては何も言えないのだが、
私の予測ではエンガミ=笑神、イ=異として、異笑神ではないかと思ってる。
もちろんイエンガミ事体聞き間違いかもしれないが。
そう仮説してみると、暗子の家にいた石の上の人はイエンガミではないかと思う。
それと陽子、そして暗子が何に関係があるのかはわからないが、村の人が暗いオーラだったのは、
笑っていなかったからではないかと。
そして、子供のころからA村は生贄が続いていると噂されていた。
もしかしたら暗子が生贄で、陽子も何かしらその儀式に巻き込まれたのではと勝手に想像している。

明後日、暗子の家に行ってみようと思います。
何かあるかもしれないから、その前に書き込みさせていただきました。
オチもないのに読んでいただいてありがとうございました。
何か情報があれば教えてください。






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876 866 sage 2005/10/14(金) 16:25:05 ID:c2L+VjQX0
「かんひも」について

僕の母の実家は、長野の山奥、
信州新町ってとこから奥に入ってったとこなんですけど。
僕がまだ小学校3、4年だったかな?
その夏休みに、母の実家へ遊びに行ったんですよ。
そこは山と田んぼと畑しかなく、民家も数軒。
交通も、村営のバスが朝と夕方の2回しか通らないようなとこです。
そんな何もないとこ、例年だったら行かないんですが、
その年に限って、仲のいい友達が家族旅行でいなくて、両親について行きました。

行ってはみたものの・・・
案の定、何もありません。
デパートやお店に連れて行ってとねだっても、
一番近いスーパー(しょぼい・・)でも車で1時間近くかかるため、
父は「せっかくのんびりしに来たんだから」と連れて行ってくれません。


877 866 sage 2005/10/14(金) 16:30:08 ID:c2L+VjQX0
唯一救いだったのは、隣の家に、
僕と同じ年くらいの男の子が遊びにきていたことでした。
あの年頃は不思議とすぐに仲良くなれるもので、僕と、K(仮にKくんとします)は、一緒に遊ぶようになりました。
遊ぶといっても、そんな田舎でやることは冒険ごっこ、近所の探検くらいしかありません。

1週間の予定で行って、確か3日目の夕方くらいだったと思います。
午後3時を過ぎて、日が落ち始めるころ。
夏とはいえ、西に山を背負っていることもあるのでしょうか。
田舎の日暮れっていうのは早いもんです。

僕とKは、今まで入ったことのない山に入っていってみました。
はじめは、人の通るような道を登っていたのですが、気がつくと、獣道のような細い道に入っていました。
「あれ、なんだろ?」
Kが指差す方を見ると、
石碑?が建っていました。
里で見る道祖神ののような感じで、50センチくらいだったでしょうか。
だいぶ風雨にさらされた感じで苔むしていました。


879 866 sage 2005/10/14(金) 16:36:06 ID:c2L+VjQX0
僕とKは良く見ようと、手や落ちていた枝で、苔や泥を取り除いてみました。
やはり道祖神のような感じでしたが、何か感じが違いました。
普通の道祖神って、男女2人が仲良く寄り添って彫ってあるものですよね?
でもその石碑は、4人の人物が、立ったまま絡み合い、顔は苦悶の表情?そんな感じでした。

ぼくとKは薄気味悪くなり、「行こう!」と立ち上がりました。
あたりも大分薄暗く、僕は早く帰りたくなっていました。
「なんかある!」
僕がKの手を引いて歩き出そうとすると、Kが石碑の足下に何かあるのを見つけました。
古びた、4センチ四方くらいの木の箱です。
半分地中に埋まって、斜め半分が出ていました。
「なんだろう?」
僕は嫌な感じがしたのですが、Kは、かまわずに木の箱を掘り出してしまいました。


881 866 sage 2005/10/14(金) 16:39:47 ID:c2L+VjQX0
取り出した木の箱はこれまた古く、あちこち腐ってボロボロになっていました。
表面には何か、布?のようなものを巻いた後があり、墨か何かで文字が書いてありました。
当然、読めはしませんでしたが、何かお経のような難しい漢字がいっぱい書いてありました。

「なんか入ってる!」
Kは箱の壊れた部分から、何かが覗いているのを見つけると、引っ張り出してみました。

なんて言うんですかね。
ビロードっていうんでしょうか?
黒くて艶々とした縄紐みたいなので結われた、腕輪のようなものでした。
直径10センチくらいだったかな?
輪になっていて、5ヶ所、石のような物で止められていました。
石のような物はまん丸で、そこにもわけのわからん漢字が彫り付けてありました。

それはとても土の中に埋まっていたとは思えないほど
艶々と光っていて、気味悪いながらもとても綺麗に見えました。



884 866 sage 2005/10/14(金) 16:45:31 ID:c2L+VjQX0
「これ、俺が先に見つけたから俺んの!」
Kはそう言うと、その腕輪をなんと腕にはめようとしました。
「やめなよ!」
僕はとてもいやな感じがして、半泣きになりながら止めたのですが、
Kはやめようとはしませんでした。
「ケーーーーー!!!」
Kが腕輪をはめた瞬間に、奇妙な鳥?サル?妙な鳴き声がし、山の中にこだましました。
気が付くとあたりは真っ暗で、
僕とKは気味悪くなり、慌てて飛んで帰りました。

家の近くまで来ると、僕とKは手を振ってそれぞれの家に入っていきました。
もうその時には、気味の悪い腕輪のことなど忘れていてのですが・・・。


885 866 sage 2005/10/14(金) 16:49:09 ID:c2L+VjQX0
電話が鳴ったのは夜も遅くでした。
10時を過ぎても、まだだらだらと起きていて、母に「早く寝なさい!」としかられていると。
「ジリリリーーン!」
けたたましく、昔ながらの黒電話が鳴り響きました。

「誰や、こんな夜更けに・・・」
爺ちゃんがぶつぶつ言いながら電話に出ました。
電話の相手はどおやらKの父ちゃんのようでした。
はたから見てても、晩酌で赤く染まった爺ちゃんの顔がサアっと青ざめていくのがわかりました。

電話を切ったあと、爺ちゃんがえらい勢いで寝転がっている僕のところに飛んできました。
僕を無理やりひき起こすと、
「A(僕の名)!!おま、今日、どこぞいきおった!!
  裏、行きおったんか!?山、登りよったんか?!」
爺ちゃんの剣幕にびっくりしながらも、僕は今日あったことを話しました。

騒ぎを聞きつけて台所や風呂から飛んできた、
母とばあちゃんも話しを聞くと真っ青になっていました。
婆「あああ、まさか」
爺「・・・・かもしれん」
母「迷信じゃなかったの・・・?」
僕は何がなんだかわからず、ただ呆然としていました。
父も、よくわけのわからない様子でしたが、
爺、婆ちゃん、母の様子に聞くに聞けないようでした。


889 866 sage 2005/10/14(金) 16:52:27 ID:c2L+VjQX0
とりあえず、僕と爺ちゃん、婆ちゃんで、隣のKの家に行くことになりました。
爺ちゃんは、出かける前にどこかに電話していました。
何かあってはと、父も行こうとしましたが、母と一緒に留守番となりました。

Kの家に入ると、今までかいだことのない嫌なにおいがしました。
埃っぽいような、すっぱいような。
今思うと、あれが死臭というやつなんでしょうか?
「おい!K!!しっかりしろ!」
奥の今からは、Kの父の怒鳴り声が聞こえていました。
爺ちゃんは、断りもせずにずかずかとKの家に入っていきました。
婆ちゃんと僕も続きました。

居間に入ると、さらにあの匂いが強くなりました。
そこにKが横たわっていました。
そしてその脇で、Kの父ちゃん、母ちゃん、婆ちゃんが
(Kの家は爺ちゃんがすでに亡くなって、婆ちゃんだけです)
必死に何かをしていました。

Kは意識があるのかないのか、
目は開けていましたが、焦点が定まらず、
口は半開きで、泡で白っぽいよだれをだらだらと垂らしていました。

よくよく見ると、みんなはKの右腕から何かを外そうとしているようでした。
それはまぎれもなく、あの腕輪でした。
が、さっき見たときとは様子が違っていました。


890 866 sage 2005/10/14(金) 16:54:36 ID:c2L+VjQX0
綺麗な紐はほどけて、よく見ると、ほどけた1本1本が、Kの腕に刺さっているようでした。

Kの手は腕輪から先が黒くなっていました。
その黒いのは、見ていると動いているようで、まるで腕輪から刺さった糸が、
Kの手の中で動いているようでした。

「かんひもじゃ!」
爺ちゃんは大きな声で叫ぶと、何を思ったかKの家の台所に走っていきました。
僕は、Kの手から目が離せません。
まるで、皮膚の下で無数の虫が
這いまわっているようでした。

すぐに爺ちゃんが戻ってきました。
なんと、手には柳葉包丁を持っていました。
「何するんですか!?」
止めようとするKの父ちゃん母ちゃんを振り払って、爺ちゃんはKの婆ちゃんに叫びました。
「腕はもうダメじゃ!まだ頭まではいっちょらん!!」


891 866 sage 2005/10/14(金) 16:56:19 ID:c2L+VjQX0
Kの婆ちゃんは泣きながら頷きました。
爺ちゃんは少し躊躇した後、包丁をKの腕につきたてました!
悲鳴を上げたのはKの両親だけで、Kはなんの反応も示しませんでした。

あの光景を僕は忘れられません。
Kの腕からは、血が一滴も出ませんでした。
代わりに、無数の髪の毛がぞわぞわと、傷口から外にこぼれ出てきました。
もう、手の中の黒いのも動いていませんでした。

しばらくすると、
近くの寺(といってもかなり遠い)から、坊様が駆けつけて来ました。
爺ちゃんが電話したのはこの寺のようでした。

坊様はKを寝室に移すと、一晩中読経をあげていました。
僕もKの前に読経を上げてもらい、その日は家に帰って、眠れない夜を過ごしました。


892 866 sage 2005/10/14(金) 17:00:31 ID:c2L+VjQX0
次の日、Kは顔も見せずに、朝早くから両親と一緒に帰って行きました。
地元の大きな病院に行くとのことでした。

爺ちゃんが言うには、腕はもうだめだということでした。
「頭まで行かずに良かった」と何度も言っていました。
僕は「かんひも」について爺ちゃんに聞いてみましたが、教えてはくれませんでした。

ただ、「髪被喪」と書いて「かんひも」と読むこと、あの道祖神は「阿苦(あく)」という名前だということだけは
婆ちゃんから教えてもらいました。

古くから伝わるまじないのようなものなんでしょうか?
それ以来、爺ちゃんたちに会っても、聞くに聞けずにいます。

誰か、似たような物をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけるとありがたいです。
あれが頭までいっていたらどうなるのか・・・?

以上が、僕が「かんひも」について知っているすべてです。
失礼しました。


129 本当にあった怖い名無し sage New! 2005/10/16(日) 20:55:25 ID:p7i1wmxX0
こんばんは。
前スレの「かんひも」の866です。
大勢のみなさんにお気に召していただいて、ありがとうございます。
でも、みなさん「かんひも」についてはご存知ないようですね。

僕も、書き込んでから、改めて気になり、この土日で、母の実家まで行って、自分なりに調べてみました。
残念ながら、爺ちゃんはすでに亡くなっているので、文献と、婆ちゃんの話からの推測の域をでませんが・・・
この年になって、久しぶりに辞書を片手に、頑張ってしまいました。

結論から言うと、
どうやら「かんひも」はまじない系のようです。
それも、あまり良くない系統の。

昔、まだ村が集落だけで生活していて、他との関わりがあまりない頃です。
僕はあまり歴史とかに明るくないので、何時代とかはわかりませんでした。

その頃は、集落内での婚姻が主だったようで、やはり「血が濃くなる」ということがあったようです。
良く聞くように、「血が濃くなる」と、障害を持った子供が生まれて来ることが多くありました。
今のように科学や医学が発達していない時代。
そのような子たちは「凶子(まがご)」と呼ばれて忌まれていたようです。
そして、凶子を産んだ女性も、「凶女(まがつめ)」と呼ばれていました。


131 129 sage New! 2005/10/16(日) 20:58:32 ID:p7i1wmxX0
しかし、やはり昔のことで、凶子が生まれても、
生まれてすぐには分からずに、ある程度成長してから、凶子と分かる例が多かったようです。
そういう子たちは、その奇行から、やはりキツネ憑きなど、禍々しいものと考えられていました。
そして、その親子共々、集落内に災いを呼ぶとして、殺されたそうです。
しかも、その殺され方が、凶女に、わが子をその手で殺させ、
さらにその凶女もとてもひどい方法で殺すという、いやな内容でした。。
あまり詳しいことは分かりませんでしたが、
伝わっていないということは余程ひどい内容だったのではないでしょうか?


132 129 sage New! 2005/10/16(日) 20:59:46 ID:p7i1wmxX0
しかし、凶女は、殺された後も集落に災いを及ぼすと考えられました。
そこで、例の「かんひも」の登場です。

「かんひも」は前にも書いたように、「髪被喪」と書きます。
つまり、「髪」のまじないで「喪(良くないこと・災い)」を「被」せるという事です。
どうやら、凶女の髪の束を使い、凶子の骨で作った珠で留め、特殊なまじないにしたようです。
そしてそれを、隣村(といっても当時はかなり離れていて交流はあまり無かったようですが)の
地に埋めて、災いを他村に被せようとしたのです。
腕輪の形状をしていたものの、もともとはそういった呪詛的な意味の方が大きかったようです。
また、今回の物は腕輪でしたが、首輪などいろいろな形状があるようです。

しかし、呪いには必ず呪い返しが付き物です。
仕掛けられた「かんひも」に気がつくと、
掘り返して、こちらの村に仕掛け返したそうです。
それを防ぐために生まれたのが道祖神「阿苦」です。


133 129 sage New! 2005/10/16(日) 21:00:36 ID:p7i1wmxX0
村人は、埋められた「かんひも」に気づくと、その上に「阿苦」を置いて封じました。
「阿苦」は本来「架苦」と呼ばれており、
石碑に刻まれた人物に「苦」を「架」すことにより、
村に再び災いが舞い戻ってくるのを防ごうと考えたのではないでしょうか。

そして、その隣村への道が、ちょうど裏山から続いていたそうです。
時の流れの中で、「かんひも」は穢れを失って、風化していったようですが、
例の「かんひも」はまだ効力の残っていたものなのでしょうか?

僕の調べた範囲で分かったのはこのくらいです。
また、詳しい方などいましたら、ご教授願います。

最後に。
婆ちゃんに、気になっていたものの聞けなかったKのその後を聞きました。
Kは、あれから地元の大きな病院に連れて行かれました。
坊様の力か、そのころにはすでに髪は1本も残ってなく、
刃物の切り口と、中身がスカスカの腕の皮だけになっていたそうです。

なんとか一命は取り留めたものの、Kは一生寝たきりとなってしまっていました。
医者の話では、
脳に細かい、「髪の細さほどの無数の穴」が開いていたと・・・。

みなさんも、「かんひも」を見つけても、
決して腕にはめたりなさいませんよう。
長距離ドライブ及び、徹夜の調べ物でふらふらの上での書き込みなので、
誤字脱字、読みにくい箇所はお許しください。

とりあえず、分かったことをお知らせしたかったもので・・・。

136 本当にあった怖い名無し sage New! 2005/10/16(日) 21:22:36 ID:F3G2bUi90
かんひもの話、非常に興味深い
が、少し気になったことが……

>>129からの説明のうち、>>132-133の部分で、

>仕掛けられた「かんひも」に気がつくと、
>掘り返して、こちらの村に仕掛け返したそうです。
>それを防ぐために生まれたのが道祖神「阿苦」です。
>
>村人は、埋められた「かんひも」に気づくと、
>その上に「阿苦」を置いて封じました。
>「阿苦」は本来「架苦」と呼ばれており、
>石碑に刻まれた人物に「苦」を「架」すことにより、
>村に再び災いが舞い戻ってくるのを防ごうと考えたのではないでしょうか。

とあるんだが、この村人ってのはどの村の村人なんだろうか
「村に再び~」というところから考えると、かんひもを作った村のほうか?
しかし>>132を読むと、かんひもは隣村に呪いを擦り付けるための物だと書いてあって、
話が上手くつながってない気がするんだよな……

137 あなたのうしろに名無しさんが sage New! 2005/10/16(日) 21:30:21 ID:qOnhfDHA0
俺もそれは感じた。
阿苦の存在意義がイマイチわからんな。
とりあえず乙>129

138 129 sage New! 2005/10/16(日) 21:31:08 ID:4yudFh43O
あ、分かりづらくてすみません。
「村人」は、作った方の村人で、阿苦を設置したのは、まじない返しに遭ったときの話です。        
なぜか、急にパソコンが落ちてしまって、携帯からの書き込みなので、読みづらかったらすみません。

139 博 sage New! 2005/10/16(日) 21:34:13 ID:LJg3O2sXO
>>136
村をAとBに置き換えろよ。分かりやすくなるから。

A(かんひもを作った)
B(かんひもを仕掛けられた)
AがBに仕掛ける
Bは気づきAに仕掛け返す
Aはそれに気づき呪詛返しを防ぐため道祖神を配置

ってことだから”その村人”てのはAのこと。


140: 博:2005/10/16(日) 21:35:33 ID:LJg3O2sXO
と思ったら既にレスが。無駄骨。



141: 129:2005/10/16(日) 21:41:01 ID:4yudFh43O
140さん、ありがとうございます。助かりました



143: 本当にあった怖い名無し:2005/10/16(日) 21:46:06 ID:jiDgjC4w0
ここでコーヒーブレイク。

何故、近親婚をすると子供が先天的に異常を持って産まれるやすくなるのか。
我々動物は子孫を作る遺伝情報のうち、どこかに欠陥を持っている。
その欠陥は個体によりバラバラ。んで受精した時に、自分の欠陥情報の部位は相手が正しい遺伝情報を持ってれば正常な子ができる。
同様に相手の欠陥情報も、自分が正しい遺伝情報を持ってれば大丈夫なわけ。
しかし欠陥情報がお互い同じだと欠陥をカバーできず、欠陥のまま産まれてきてしまう。
親や兄弟等、近い間柄だと持ってる欠陥も同じである確率が高いから、
近親婚をすると先天的に異常を持って産まれてしまうというわけだね。


144: 本当にあった怖い名無し:2005/10/16(日) 21:53:14 ID:ndBVbhGL0
>>143
分かりやすい説明乙。



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