【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

当サイト「怪談の森」は古今東西の洒落にならない怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!

カテゴリ: 呪い




779 :本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木) 23:47:13.13 ID:R2WoTcRq0

親父の三周忌も過ぎたんで、親父と山の話を書いてみるよ。ぜんぶ実際にあったことだ。

 

同居していた親父が精密機械の会社を退職して2年目のことだった。
けっこうな退職金が出て年金もあるし、これからは趣味の旅行三昧でもするのかと思っていた矢先に、
高校時代の友人から投資詐欺にあって、退職金の三分の二くらいを失ってしまった。
その友人は指名手配になったものの消息不明。

 

 

779 :本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木) 23:47:13.13 ID:R2WoTcRq0

もともとタイ在住だったんで、もう日本にはいないだろうと警察では推測してるような口ぶりだった。

 

俺にしてみれば、まあ借金をこさえたわけではなく、元々ある親父の金を失ったのだし、
まったくあてにもしてなくて、親父が好きに使ってくれればいいと思っていたんで、それほどショックはなかったんだが、
親父の落ち込みようはひどかった。

 

金額よりも、古くからの友人に裏切られたことのほうがこたえたんだろうと思う。

 

それからは何も手につかない様子で、家でぼうっとしてることが多くなった。
その親父が急に「山に行く」と言い出したんで嫌な感じがした。
旅行はするものの、それはパックの海外旅行がほとんどで、山登りとかには縁がなかったからね。

 

俺の女房も「自殺でも考えてるんじゃないか」と言うし、
それで親父の予定の日がちょうど休みだったんで、俺もついていくと言ったら、
なんか複雑な顔をしたけれども、しばらく考えて「いい」と答えたんで、俺の車で出かけることにした。
親父から聞いた目的地は隣県で、かなり時間がかかるんだが、
山へ入るのは4時過ぎじゃないとだめだと言うんで、昼過ぎに出発した。

 

 

780 :本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木) 23:48:28.47 ID:R2WoTcRq0

3時間ほどでその町に着いたが、一言でいえばものすごい田舎。

 

その町外れまで来て、森の前の小さな神社のわきの空き地に車を停めた。
ちょっと意外に思ったのは、そこには十数台車が駐車されてて、中には高級外車なんかもあったことだ。
それから森に入って小径を歩き始めた。

 

この間中、親父は押し黙った気まずい雰囲気だったが、
それまでも山に行く目的とかは一切話してはくれなかったんで、せめてと思って山の名前を聞いてみた。
すると親父は「・・・松ヶ山」とぽつりと答えた。

 

小一時間ばかりで、細い山の登り口のようなところに出たが、
そこは注連縄のようなものが張ってあるし、『私有林につき入山を禁ず』という木の立看板もあった。
看板の上のところに、鮮やかな赤字で梵字のようなものが書かれていた。

 

そのときは6月で4時過ぎていたけどまだ明るく、
山は森にさえぎられてわからなかったけど、そんなに高いところではないという感じがあった。
登山道には古い木の板が埋められていて、傾斜もきつくはなく、登りやすかった。
60過ぎの親父でもそれほど息は乱れてない。

 

10分ほど登ってくと、前に人影が見えてきた。

 

どうやら女性の二人組で、しばらくして追いついたが、高校の制服を着た女の子とその母親らしい女性だった。
母親のほうは洋装の喪服のようなものを着て、ヒールの高い靴で歩きにくそうだった。
親父が何も言わないままその二人を追い越したんで、俺も体を傾けて「お先します」と小声で言って前に出た。
その二人もやはり押し黙ったまま後ろになってついてくる。

 

それから20分ほど登ると、ヤブを切り払ったようなちょっと広いところに出た。まだ山頂ではない。
そこの大きな木を回ると洞窟の入り口が見えた。やはり御幣のついた注連縄が上から垂れ下がっている。
高さ3~4mくらいのくぼみで奥は相当深いようだ。

 

 

781 :本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木) 23:49:07.60 ID:R2WoTcRq0

おぼろげながら洞窟の数十m奥に人の姿が見える。数人並んでいるみたいだ。

 

親父は「ここで待っててくれ」と言って、洞窟の中に入っていった。
俺が近くの朽ち木に腰掛けてタバコを吸ったりしていると、先ほどの母子が追いついてきて中に入っていった。
それから40分ほど待ったが、その間に出てきたのが8人、様々な年代の人たちで女性も2人いた。
どの人も白い布で包んだ箱を大事そうに持っていた。
そして親父が出てきたが、やっぱり白い布の箱のようなものを持っている。

 

出てくるなり俺の顔を見て、「・・・やっとひとつ済んだ」と言う。
俺が「その箱は何だい」と聞いても、答えてはくれなかった。
もうだいぶ暗くなっていたんで、急いで空き地まで戻って車に乗った。まだ車は数台残っていた。
親父は後部座席に乗って、大事そうに箱を抱えて黙っていた。

 

家に帰ると、親父はそれから二階の隠居部屋にこもって、食事も部屋まで持ってこさせるようになった。
そのくせ夜はひんぱんに外出する。
しかも、それまでなかったんだが自分の部屋に鍵をかけるようになった。
夜の9時頃に家を出て0時過ぎに戻ってくる。
何をやってるかわからないが、靴や手が泥だらけになっていて、いつも帰ってきては入念に手を洗っていた。

 

めずらしく親父が夕方出かけたとき、部屋の鍵が開いていたんでちょっとのぞいてみた。
すると机の上がかたづけられていて、そこに仏教風でも神道風でもない祭壇がこさえられている。
あえていえば古代風といった雰囲気で、埴輪のようなものがある。
それに囲まれてあの白包みの箱があり、その前には10cmくらいの細い骨が積み上げられていた。
俺は近寄って、悪いとは思いながらも箱をそうっと取り上げてみると、箱は意外に重く、なんだか生暖かい。
振ってみるが音はしない。粘土のようなものが詰まっている感触がある。
耳をあててみると、かすかにだが「とき、とき、」というような音が聞こえてくる
そのとき下で親父が帰ってきた音がしたので、あわてて部屋を出た。

 

 

782 :本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木) 23:51:32.60 ID:R2WoTcRq0

その夜、俺は家の中でタバコを吸わないように家族に言われてるんで、外の通りでタバコを吸っていると、
耳もとで「お前、あの箱にさわっただろう」と、ぼそっとつぶやく声がして、
驚いて振り向くと親父が立っていて、
「いいよ、もう済んだから・・・これで全部終わったから」
そう言って、まだ60代なのにひどくよぼよぼした感じで家に戻っていった。

 

その2日後の新聞に、親父をだました友人が海外で惨殺されたという記事が出た。
詳しい記事ではなかったが、ナイフで刺されたというようなことが書いてあった。
その後警察も家に来たが、犯人はわからず金も戻ってはこなかった。

 

それから6年後に親父は肺炎で死んだが、
いよいよ危ないと医者に言われて病院についていたときに、ふと意識が戻ったように目を開けた。
そのとき俺は「親父、あの松ヶ山って何だったんだ」と、ずっと気になってたことを聞いた。
すると親父は、鼻に酸素の管を入れられた状態で少し笑い、
「松ヶ山じゃない、順番が違う・・・古い遺跡・・・後のことは墓場に持ってく」
途切れ途切れにそれだけ答えると、眠ったようになってしまった。
そしてそれから4日して息を引き取った。

 

話はこれで終わり。
それから気になって自分で調べたこともあるが、ちょっとここでは書けない。

 

 

783 :本当にあった怖い名無し:2012/11/30(金) 00:13:13.95 ID:UWGsY7fI0

>>779
>ぜんぶ実際にあったことだ。

 

せめて松ヶ山の場所と正式名称を教えてくれ
それくらい明かしても問題ないだろ?

 

 

784 :本当にあった怖い名無し:2012/11/30(金) 00:18:47.75 ID:Xpb7ircW0

>>783
場所は鳥取。山の名前は投稿でわかるように書いてある
ただし正式名称じゃない
行かないこと






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443 :1:2009/08/27(木) 02:18:37 ID:qAzyC9Vy0
 
これ信じてもらえるかどうか分からないし、書こうかどうか迷っていたのだが… 

丁度1年ほど前、俺と友人のTとOは、Oが「ニコ動に釣り動画つくってうpしようぜwww」と言ってきたので、
買ったきり殆ど使っていなかったOのビデオカメラを持ち出し、俺の親の車を借りて山の中へ出かける事になった。
誕生日の関係で、18になっていたのが俺だけで、免許を俺しかもっていなかったから。 

どんな釣り動画かというと、俺とTが録画しながら心霊スポット探索をして、
ほんの一瞬女装したOが画面内に映りこみ、俺とTはその事に全く気付かないまま動画をうpという設定。
今考えるとほんとうにしょうもない内容だが、当時の俺達はノリノリだった。 
ただし3人ともビビりだったため、ほんとうの心霊スポットでは無く、ただそれっぽい山の中へ行き、
そこで録画する事になった。 

午後4時頃に出発し、適当に山道を走らせていると、いい感じに舗装されていない林道を発見した。 
その道を少し進むと開けた場所があり、何かの資材置き場のようになっていて、俺達はそこに車を止めると、
まず周辺で演出に使えそうな場所はないか、Oが隠れ潜めるような場所はないか、色々と探し始めた。 

30分ほど辺りを探し回っていると、俺は資材置き場の先の森の中に、ボロボロの小屋があるのを発見した。 
TとOにその事を話し、俺が「ここで良いんじゃね?」と聞くと、
Oはさいしょ「ここに1人で待機って気味悪りぃよ…」とゴネていたが、
俺とTは「言いだしっぺはお前だろwww」などとからかい、
「まあ待機と言っても10分くらいだから」とOを宥めて納得させ、
完全に暗くなるまで車の中で待機する事にした。

車の中でゲームをしたり話をしながら2時間ほどが過ぎ、辺りは完全に真っ暗になった。 
そして、OがTの姉貴の部屋から無断で持ち出してきた服に着替える間に、
俺とTは、適当にでっちあげた心霊スポットの話をしながら、あちこち撮影を始めた。 


444 :2:2009/08/27(木) 02:19:26 ID:qAzyC9Vy0
 
まず10分ほどそんなこんなで録画をし、Oも準備が出来たということで、本命の釣り部分の撮影を開始した。 
俺とTは笑いをこらえながら必死でビビる演技をしながら、Oの隠れている建物へと近付いていったのだが、 
あと10mくらいまで近付いた時、
Oが突然「やばいやばいやばいやばいやばい!」と叫びながら、小屋の影から飛び出して来た。 
俺とTは最初ぽかーんとしていたが、Oがあまりにも必死な形相なため、俺達もつられて全速力で逃げ出した。 
広場の車のところまで来ると、Oは自分がまだ女装している事すら気にせずに、
「早く車出せって!ここはやばい!早く逃げねーと!」と、俺を運転席に押し込んで、自分は後部座席に乗り込んだ。
俺とTは何がなんだか解らなかったが、ひとまず車を発車させ、もと来た道を戻り始めた。 

暫らく車を走らせ、もう少しで舗装した道路に出る辺りまで来た頃、異変が起きた。 
車の天井に、何かが落ちてきたようなドン!という大きな音がした。 
俺は親の車を傷つけたら洒落にならないため、一端車を止めて何が起きたのか見ようとすると、
Oが「止まるな!確認なんて後で良いからとにかく走らせろ!ここはやばい!」と、
俺が外へ出るのを止めたため、仕方なく走らせようとしたとき、
助手席にいるTが俺の腕を引っ張りながら、「おい…あれ」と、助手席側の窓を指差した。 
Tの指差しているところみて俺は絶句した。 
森の中から、大勢の人がこちらへ向かって歩いてくる。 
人数は20人くらいはいただろうか。
全員下を向いてうつむいたまま、ゆっくり歩いているはずなのだが、見た目以上のスピードで車へと接近してくる。
俺は全身の毛が逆立つような感覚に襲われ、全身に嫌な汗が流れ始めた。 
ただ人が歩いてくるだけなのだが、俺にはそれが物凄く恐ろしいものに見えた。 




446 :3:2009/08/27(木) 02:20:23 ID:qAzyC9Vy0
 
俺は車を急発進させ、後は3人とも無言だった。 
暫らく走っていると、遠くにドライブインらしい明かりが見えた。 
俺はTとOに「とりあえずあそこに入るか…」と言い、
2人は無言だったが、そのままドライブインの駐車場に車を止めた。
そこであらためOに事情を聞くと、ようやく自分が女装している事を思い出したのか、
「とりあえず着替えさせてくれよ」と言った。 
そこで3人とも緊張感が解けたのか、車内の空気が正常に戻った。 

3人とも落ち着いてきたため、ドライブインの自販機でコーヒーなどを買い、
そこでOに、あらためてあの時何があったのかを聞いてみるた。 

Oの話をまとめると、
Oは俺達が来るまで小屋の裏手で待機していたのだが、小屋の反対側から人の声がしたため、俺たちだと思い、
予め打ち合わせしていた小屋の窓のところに移動して、俺達が来るのを待っていたらしい。 
しかし、いつまで経っても俺とTがこないため、一端道の方へと顔を出した。 
すると、道の真ん中にぼさぼさの頭のおばあさんが立っており、こちらをニヤニヤと笑いながら見ていたとか。 
Oはちょっと気味悪かったが、お婆さんにそこにいられると段取りが狂うため、
「すいませーん、ちょっとの間で良いので、どいていてもらえませんかー?」と聞いたのだが、
お婆さんはにやにやとOを見て笑っているだけで、何の反応もない。 
Oはちょっとむかついて、お婆さんのすぐ近くまで行き、
「ちょっと、2~3分でいいからどいていてくれよ!」と、強い口調で言ったらしい。 
するとお婆さんは、にやにやした表情のままOの腕を掴み、そのまま森の奥へと連れて行こうとしたとか。 
Oは「何するんですか!」と言って抵抗したが、老人とは思えないほど強い力で引っ張られ、
ずるずると奥のほうへと引き摺られていった。 
そして、森の奥のほうからは、大勢の人がOのほうへと向かって歩いてきたとか。 
Oはそこで身の危険を感じ、お婆さんを蹴りで突き飛ばして、そのまま俺達の方へと逃げ出し、
途中で俺達と合流したという事だった。 


451 :4:2009/08/27(木) 02:33:57 ID:qAzyC9Vy0
 
それが人だったのか、それ以外のものだったのか、Oには分からなかったらしいが、
とにかく、普通ではない集団であったのは間違いがなかったと思う。
なぜなら、俺達が戻る途中でみた集団も、なんと説明したら良いのか、とにかく異様な雰囲気がしていたから。 
何か釈然としない状況ではあったが、動画作成にも事実上失敗し、時間も時間だったため、
その日はこのまま解散となった。 

それから夏休中、俺とTとOは何度かつるんで遊んだりしていたが、
あの日の事はなんとなく3人とも話せずに過ごしていた。 

そんなある日、俺が友達と朝までカラオケをして、午前5時頃に自転車で家への帰り道を走っていると、
大通りの道の反対側にOをみつけた。 
Oは両手でお盆をもっているようで、良く見てみると、
どうやらお盆の上に、水か何かの入ったガラスのコップを乗せているようだった。 
俺は、あいつ何やってんだ?と思い、「おーいOどうした~?」と呼びかけたのだが、
聞こえていないのか全く反応が無い。 
そのままOは十字路を曲がるとどこかへ行ってしまった。 

その日の午後2時頃、俺はOからの電話で目を覚ました。 
Oが言うには、『電話では説明が難しいからとにかくうちへ来て欲しい』と言う。 
Oの家につくと、Tもいた。
そして、Oは俺とTにまずこれを見てくれと言い、あの日録画した動画を見せた。 
その動画を見ていて、Tが「どういう事だ?なんだこれ?」と言い出した。 
俺も口には出さなかったが、Tと同じ感想だった。


453 :5:2009/08/27(木) 02:35:12 ID:qAzyC9Vy0
 
なぜかというと、俺達は確かにあちこちを録画して回ったはずでその記憶もあるし、逃げ出したときの記憶もある。
当然3人とも記憶に不一致は無い。 
しかし、動画内で俺達はなぜかずっと車の中におり、ビデオカメラは後部座席に固定されている。 
動画が流れ始めて20分くらい、なぜか俺達が無言のまま座席に座っているところが映し出されていた。 
動画が20分を過ぎた頃、後部座席にいたOがドアを開け、やはり無言のまま外に出ると姿が見えなくなった。 
そしてそこから5分ほど過ぎた頃、俺とTもドアを開けると外に出て、
動画には誰もいない映像がそこから10分ほど映されていた。 
動画の中で、俺達は一言も会話をしていなかった。
聞こえてきていたのは、ドアを開ける音や、外からかすかに聞こえて来る虫の声のみだった。 

そこで一端Oが動画を止め、俺とTに「どう思う?」と聞いてきた。 
俺は「どう思うと聞かれても…なんだよこれ…」と答えるしかなかった。
動画の中で俺とTとOは、俺達の中にある記憶とは全く違う行動をしている。
そんなものどう答えたら良いのかなんて分からない。Tも当然同じ意見だった。 

Oは「そうだよな…でさ、この後の映像も変なんだよ…」と言い、停止していた動画を再生し始めた。 
暫らく誰もいない車内と、フロントガラス越しに見える外の景色が映っていたのだが、
更に4~5分すると、車の前方の方に人影が見えた。 
その人影はどんどん車の方へと向かってきており、暫らくするとそれが、
ぼさぼさの髪のおばあさんである事が分かった。
Oはそこで、「こいつだよ、こいつ!俺の腕掴んで引っ張ったの!」と少し興奮気味に言い出した。 
そのお婆さんは、暫らく車のボンネットに手を着くと、にやにやと笑いながら車内を見ていたが、
すぐにもと来た道へと戻っていった。 


454 :6:2009/08/27(木) 02:36:11 ID:qAzyC9Vy0
 
おばあさんが見えなくなった直後頃、動画に変化があった。 
急に俺達が騒いでいる声が聞こえ始め、
「やばいやばい!」と叫ぶOと、何が起きたか解らないまま動揺している俺とTが映し出された。
それは本当に唐突で、まるで車の付近にずっと待機していて、急に慌てる演技をし始めたかのような不自然さだった。
そこからの映像は、車を発進するまでしか録画されていなかったが、間違いなく俺達の記憶にある映像だった。 

しかし、一つ不思議な事があった。
Oは録画直前に女装したはずで、元の服に着替えたのはドライブインについてからだ。 
しかし、なぜか動画内のOは普通の服のままだった。一体Oはどこで服を着替えたのか… 
何もかもが不自然でおかしい。
俺達の記憶と全く違う内容の動画に、3人とも完全に混乱してしまっていた。 

動画を全て見終わってから、Oは「でさ、今日のことなんだが…」と話し始めた。 
「昨日の夜に寝てさ、今日気が付いたらなぜか○○川(地元の比較的大きな川)の橋のところで、
 お盆の上に水の入ったコップを乗せて立っていたんだよ。俺そんなことした記憶全く無いのに…」

俺は今朝の出来事を思い出し、TとOにその話をした。 
Oに話しかけたが、全く気付く様子がなかったという事を。 
それからOはこう続けた。 
「それでさ、わけわからないまま家に帰ってきたら、急に“あの動画を見なければいけない”という気持ちになって、それで見たらあの状態だったからさ…
少し悩んだけど、お前達にも見せたほうが良いと思って呼んだ訳」
そこでTがこう言った。

「この動画のフラッシュメモリーさ、このままにしておくのヤバくね?
 お払いとかしてもらったほうがいいんじゃないか?」

俺とOもそれには同意見で、
早速近所のお寺に、ビデオカメラと問題の動画の記録されたフラッシュメモリーを持ち込み、
和尚さんに事情を話した。 
和尚さんは半信半疑で俺達の話を聞いていたが、動画を見せると暫らく考え込み、
「このカード暫らくあずからせてくれないか?」と言って来た。 
俺達はこんな気味の悪い物をもう手元に置いておきたくなかったので、
二つ返事で同意すると、フラッシュメモリーを和尚さんにあずけ、携帯の連絡先を伝えると、
お寺を後にしてその日は解散した。 


456 :7:2009/08/27(木) 02:36:57 ID:qAzyC9Vy0
 
翌朝、俺は混乱していた。 
朝目がさめると、昨日のOと同じようにお盆の上に水の入ったコップを乗せ、○○川の橋の上に立っていたから。 
そして、その横には放心状態のTもいた。 
Tは何度か呼びかけても返事がなかったが、肩をゆするとハッとした顔をして俺の方を振り向き、
「俺今何してた?ここどこ?????」と言い出した。 
俺は昨晩家の布団の中で寝て、それから今まで起きていなかったはず。
Tも同じ状況だったにも関わらず、気が付いたらここにいたらしい。 

俺は気味が悪くなり、ひとまずOに電話をした。 
Oは寝起きで最初寝ぼけていたが、事情を話すと俺の家まで来てくれた。 
そして、3人で相談してもう、一度昨日のお寺へ行って事情を話す事にした。 

お寺に着くと事情を分かっていたからか、和尚さんはすぐにあってくれた。 
3人に起きた事を和尚さんに話すと、和尚さんは腕組みをして暫らく考え込んでいたが、
何か思い出したかのように暫らく席を外すと、お守り袋を3つもって戻ってきた。 
そして俺達にこう言った。
「3人とも、もうこの事は忘れなさい。そして、このお守りを1年間肌身離さずもっていなさい。
 そうすれば、今日あったようなことはもう無いはずだから」と。 
そして、「フラッシュメモリーだっけ?これは引き続きうちであずからせて欲しい。それでいいか?」と聞いてきた。
和尚さんは何か俺達の身の上に起きた事情が何なのか、何となく分かっていそうだったが、
結局俺達にはなにも教えてはくれなかった。 
俺達もその事を深くは追求しなかった。というより、しないほうが良いと感じた。

ただし、和尚さんは一つだけある事を教えてくれた。 
まず、俺達に「その資材置き場のような場所か小屋の近くに、川はあったか?」と聞いてきた。 
Oが「覚えている限りではなかったと思うけど…」と答えると、和尚さんは「そうか…」と言って、
続いて、なぜ俺達が無意識に水の入ったコップをもって外に出たのか、憶測を交えながら話し始めた。 
どうやら俺達は、何か呪いの一種のような物をかけられていたらしく、
その呪術の続きを川伝いに俺達へと、何者かが送り込もうとしていたらしい。
その何者かが人なのか、それともそれ以外の何かなのか、それは和尚さんは教えてくれなかったが、
とにかく、川を通ってやってきた呪いの受け口となっていたのが、そのコップと中に入った水らしい。 

俺達は呪いの元に誘導されて、寝ているうちに家にあるコップに水を汲み、
川へと呪いを受け取りに行っていたという事だった。 
このまま何の対策もせず、俺達が呪いの続きを受け続けていたら、
その後どうなっていたかは、和尚さんにもわからないらしい。
ただし、「無事ではすまなかっただろう事は確実だ」とも言っていた。 
このお守り袋は大した力は無いらしいが、
少なくとも、俺達の居場所を呪いの元から分からなくすることができるらしい。 
そして、1年もすれば呪いの痕跡そのものが消えるため、俺達が操られる事も無いのだという。

お守り袋を貰うと、俺達は特に根拠があるわけではないが、不安感から多少なりとも開放され、 
何かほっとしてそのまま各自家に帰った。

それから俺達は高校を卒業し、進路もばららばとなり、俺は都内の大学に進学した。 
TとOとは今でも連絡を取り合っているが、あの日の事は話題に上がることは殆ど無い。 
和尚さんに言われたとおり、お守り袋は今でも肌身離さずもっているせいか、
あれ以来俺達に、記憶の喪失やおかしな出来事は起きていない。







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766 :十九地蔵 1/4:2009/08/20(木) 01:55:04 ID:pfI/pQWT0
 
俺の家は広島のど田舎なのだが、なぜか隣村と仲が悪い。
俺の村をA村、隣村をB村としよう。
不思議な事に、なぜ仲が悪いのかは不明なのだ。
A村の住人に聞いてもB村の住人に聞いても、明確な理由は解らない。理由不明。
しいて言えば、ご先祖様の代から互いに敵対していたと言う理由。つまり先祖の遺恨しかない。 
A村、B村の人間は、結婚など御法度である。

そればかりではない。俺のじいさんなどは「B村へは決して行くな」と言う。 
別にB村は部落民と言う訳では決してないし、A村も同様である。 
「なんで行っちゃいけないの」と子供の頃の俺が聞くと、
「それは、B村の呪いで災いを被るからだ」等と言う。 
じいさん曰く、
「A村、B村の境の道祖神を越えてA村の者がB村へ行くと、必ず禍を受ける。
 例えば、B村○○の四つ角では事故を起こす者が多いが、決まってA村の者だ」
「反対を押し切って結婚し、B村へ嫁いだ△△の娘が早死にした」
「B村の□□川は流れが急で深いから、5年か10年に一度事故が起こる。それが不思議にA村の者ばかりだ」
と言ったものだった。
勿論、本当かどうかは知らない。 


767 :十九地蔵 2/4:2009/08/20(木) 01:55:45 ID:pfI/pQWT0
 
正直なところ、俺は祟りなぞ信じていない。
じいさんに、B村へ行くと何でA村の人に危害が出るのか聞いてみた。 
「十九地蔵が呪うからだ」とじいさんは答えた。
十九地蔵と言うのは、B村の××神社にある十九体の地蔵で、
俺も見た事があるが、歴史を感じさせる古さがあるものの、ごく普通の地蔵である。 
「なんで、お地蔵様が人を呪うの?」 
「それは知らん」等と適当な事を言う。 

こう言う因習については、若い世代ほど気にしない。
俺なども事実、B村の友達もでき、一緒に遊んだほどだ。
B村の友達に「B村ではA村に行くなとか、言われた事ある?」と聞いてみたが、
友達は「そんなこと言われた事はない」と答えた。 
ますます俺はじいさんの古臭さを馬鹿にして、じいさんの言ってることは気にも留めなかった。 




768 :十九地蔵 3/4:2009/08/20(木) 01:56:41 ID:pfI/pQWT0
 
ある日俺は、兄貴とB村にある□□川へ泳ぎに行った。
じいさんには禁止されていたが、もちろん気にしない。 

所が、泳いで10分もしない内に、兄貴が「出るぞ」と言いだす。
俺がまったく霊感が無いのとは対照的に、兄貴は子どもの頃から非常に霊感の強い男だった。
「なんで、いま泳ぎ始めたばっかだよ」
「いいから、かえるぞ!!」
俺は兄貴の真剣な形相に驚き、着変えもせず短パン姿のまま衣服を持って走って帰る。 
「なあ、なんで帰るん」
「お前、見えなかったのか」
「えっ、何が」
「なんだが良く解らんが、黒い影の様なもんが20人近くいて、それが俺らにものすごい敵意を向けてたぞ」
俺は、20人近い影と言う事と、十九地蔵と言う事が頭の中でリンクして、とてつもない嫌な予感を感じた。 


769 :十九地蔵 4/4:2009/08/20(木) 01:58:01 ID:pfI/pQWT0
 
なぜ両村の仲が理由もなく悪いのか。これに納得がいったのは、俺が大学院に進学した頃である。
A村の神社より、ある文献が発見されたのだった。 
それは、室町時代後期、A村とB村が××川の水利権を巡り争いを起こし、
A村がB村との戦いに勝ったと言う内容である。
豊臣秀吉の刀狩りが示している様に、
刀狩りされていない時代の農民は、決して後世のイメージ通りひ弱な存在ではなく、武装していたのである。
兵農分離も進んでおらず、農民と武士の境目は曖昧である。 
だから戦に勝った記憶は大変名誉なこととして、誇らしげに記述されたものだった。 
けれども、時代が下って平和な江戸時代。この様な不穏な文献は、誇らしい記憶から忌わしい記憶となった。
よって、A村の神社へこっそりと隠されたのである。 

この文献は中世史を語る上でも重要な文献らしく、
(つまり、農民=弱者というマルクス主義史観を覆すと言う意味でね)
地方紙ではニュースになったし、大学から学者がかなり来た。 
その内容から一部要約して抜粋すると以下の通り。 

『A村とB村が××川の水利権を巡り争った。A村が奇襲をかけることにより、戦に勝ち権利を治めた。 
 A村の戦での被害は軽微であり、軽傷者5名。
 B村の者を16名打倒した。また、戦の巻き添えに女2名、子供1名が死んだ。 
 計19名の内には、B村庄屋であり××神社宮司を務める●●家当主、宗衛門義直を含む』

十九地蔵が呪うと言うのは、じいさんの勘違いだった。
十九地蔵は、この時の死者を弔うためB村で建てられたものだった。 
けれども、地蔵にさえ癒し得ない、抑えきれないほどの深い深いA村への恨みが、まだこの地には残っていたのである。






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950 :その1:2005/12/30(金) 17:46:55 ID:3/vn8igK0
 
くだらない話なんでスルーして結構。 

父が再婚し、新しい母が出来たのだが、ドラマに出てくるようにムカつく女で、 
単純に言うと、父の前ではいい顔をし、私の前では罵声など当然・・・といった感じだった。 
しかも超ドケチで、空のペットボトルを歯ブラシ立てに使い、
父に「生活の知恵があっていいな」などと誉められて、喜んでいるバカ女だった。 

その日、父とその女が旅行なので、友達を呼んで泊まらせることにした。 
二人とも怖い話が大好きで、一緒にパソコンで怖いサイトを見まくっていたが、 
普通の『心霊体験談』では物足りなくなり、呪いの方法やら自殺サイトやら、危ない系のものを見始めた。 


951 :その2:2005/12/30(金) 18:04:49 ID:3/vn8igK0
 
そこで見つけたのが、『嫌いな奴を不幸にする呪いの方法』。(知ってる奴も多いと思う) 
その方法っていうのが、まず夜中に(時間は書いてなかったが)ペットボトルに10円玉を入れ、
嫌いな奴の髪の毛を入れる。 
『○○(嫌いな奴の名前)死ね死ね』と念じながら、ペットボトルの蓋を閉じる。 
それを神社に埋めておけば自然と呪いは起き、呪われた奴は不幸のドン底・・・という内容だった。
なんか幼稚園児が考えそうな呪いの方法だったが、
他の呪いは『ネコの血』だの『ねずみの死骸』だの、入手困難なものが必要だったため、 
とりあえずコレやってみよーよって話になって用意した。 

調度歯ブラシ立てになってるペットボトルを使うことにし、髪の毛は当然あの女の。 
(ベットの枕に何本か長い毛がついているので、それを使った) 
友達は「本当に呪われたらどうすんの」とちょっと心配していたが、 
本当にあんな女死ねばいいと思っていたので、迷わず決行。 
その時、部屋は明るかったのだが、空間が変な感じがした。 


952 :その3:2005/12/30(金) 18:15:45 ID:3/vn8igK0
 
10円玉と女の髪の毛を入れる。 
『どの神様でもいいのであの女を殺してください』と念じながら蓋を閉じる。 
家の裏は神社なので、すぐに埋めに行った。 
効いても効かなくてもザマーミロって感じで、家に帰った。 

しばらくしても呪いの効果は出ず、その女は相変わらず私に意地悪し続けた。 

たぶん、そっから1週間くらいたった日、あの女が包丁で手を切って血を流していた。 
「何見てんのよ!あっち行ってなさいよ!」と怒鳴られたので、
わざと『いい気味』っていうような笑いを見せて、部屋に戻った。 

次の日、あの女は階段から落ちて捻挫した。 

その3日後に、また階段から落ちて、鼻を強打し骨折。 
なかなか呪いが効いてきたではないか、と思った。 


954 :その4:2005/12/30(金) 18:23:16 ID:3/vn8igK0
 
一緒に呪いをやった友達に、「効果が出てきたよ~」と報告すると、友達は静かに口を開いた。 
「ペットボトルに10円は入らないよ・・・」
その時は何言ってんのコイツと思ったが、まさかと思い、
家でもう1度ペットボトルに10円を突っ込んでみると、10円がでかすぎて入らない。 
友人は気づいてからずっと言おうと思ってたらしいのだが、怖くて言い出せなかったらしい。 
なぜあの時はすんなりと入ったのだろう? 
なんか嫌な予感がするので、今から神社に行って掘り返してきます。





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193 :本当にあった怖い名無し:2006/06/30(金) 17:34:08 ID:uoC/HSlxO

自分なりに恐かった事を書いてみようと思う。
もう4、5年は経ったし、何より関係者全員無事に生きてる。
恐い思いだけだったんだからいいやと思う反面、やっぱりあれは何だったのか不思議で仕方がない。
つたない文章だし、あやふやな表現もあるかもしれない。そこは勘弁してほしい。
本当に体験した出来事なのに、いまいち自分の中で未消化なもので。

 

 

193 :本当にあった怖い名無し:2006/06/30(金) 17:34:08 ID:uoC/HSlxO

事の発端は、仲間と飲みに行った時。この話は、実は他のスレでも書いた事がある。
その時は全部書ききれなかったので、今回書かせてもらおうと思う。

 

仲間8人で居酒屋に飲みに行った時の事。早くに酔い潰れてしまった女の子がいた。俺の友人の連れだ。
座敷で広い座卓に突っ伏して眠りこけた彼女を、ほっといて俺たちは楽しんでいた。

 

そろそろ帰るかという話になり、彼女を起こそうとするが起きようとしないので、
誰かが「携帯鳴らしてやれよ。起きると思うぞ」と言いだした。
彼氏である友人がニヤニヤしながら、彼女の携帯に呼び出しを始めた。
音から察するに、携帯は彼女の突っ伏した腕の下にある事がわかった。
携帯ストラップも腕の下から覗いている。
10秒鳴らして、周囲の迷惑を考えてか、友人は鳴らすのを止めた。
「あ~駄目だわ。こいつ、寝起き悪いんだよね」
酒も入ってるし、無理に起こすのも可哀相だからと、しばらく待つつもりで俺たちは腰を降ろしたその時、
友人の携帯にメール着信が入り、開いた奴の顔からいきなり血の気が引いた。
「うわ、なんだよ…これ。」
なんだなんだと、俺たちの間でそいつの携帯がまわされた。
差出人は眠りこけてる彼女。本文は『眠い、寝かせてよ。』
彼女の携帯は、ずっと彼女の腕の下だ。ストラップも見えている。
すうっと首の辺りが寒くなった気がしたものの、
飲みに来ていた他の仲間は、「よく出来た悪戯だろ。すげえな」と感心したので、
俺たちもその答えに納得して、その夜はお開きになった。

 

 

194 :193:2006/06/30(金) 17:36:43 ID:uoC/HSlxO

それからしばらくして、俺は仰天する事となる。彼女が亡くなったのだ。
もともと体は弱かったらしい。詳しく聞くのも悪いと思ったので、結局聞いていない。

 

彼氏である友人の希望で、俺は付き添って葬式に出る事になった。
他の仲間もやってきて斎場へ向かい、受け付けを済ませ、
式の邪魔にならないよう、隅の席で小さく無言で固まっていた。

 

読経が始まり、皆うなだれている。その時ふと、飲み会の事を思い出してゾッとした。
そしてなぜか、そこに居る仲間たちも自分と同じ事を思い出しているに違いない、という気持ちがした。

 

じき、焼香かなという頃、いきなり携帯が鳴り始めた。おそらく、その場に居た全員の。
勿論俺たちは消音にしていた。でも、相当数の携帯のバイブが一斉に反応したので、かなり音が響く。
中には会場に入る前に消音にし忘れた人もいて、あわてて切っていた。
呼び出しは始まりと同じく、いきなり切れた。全員一斉に。俺たちは黙って、顔を見合わせるしかなかった。

 

斎場を出て各々携帯を調べたら、確かに同時に着信があった事がわかった。それも非通知。
非通知着信拒否設定も意味がなかったらしく、女の子の中にはパニックに陥る子もいた。

 

 

195 :193:2006/06/30(金) 17:38:34 ID:uoC/HSlxO

喫茶店に入って、これまでの事を話し合った。
飲み会に来ていなかった連中に説明をしたり、逆に俺たちが知らなかった他の事件について教えてもらったり。
結論として、亡くなった彼女はかなり不気味な存在であることが判明した。
俺の知ってる彼女は内向的。おとなしく、どちらかといえば地味。
控えめな人好きな友人のチョイスなので、あまり気にはかけなかった。
飲み会でも喋らずに黙々と飲んでるタイプ。
ブスでも美人でもない。というか、印象が薄くてすぐに忘れてしまうんだ。
覚えてるのは、貝殻が好きだった事。いつか、店先でインテリアの貝殻を手にとって耳にあてていた。
「私の耳は貝の耳。海の響きを懐かしむ」と口ずさんでいた。多分詩だと思う。
「それ、海の音じゃないよ。自分の体の中の音が反響してるんだってさ」
と、ロマンの欠片も無い俺が茶化すと、ぼんやりした生気の無い彼女の顔に一瞬笑みがのぼった。
「〇君も、そのうち自分の貝殻に耳を傾けるようになるよ。今にね。きっとそうなるよ」
「そうかな、楽しみだね~」なんて笑って肩をすくめてみたが、
彼女は真剣そのもので、反応の薄い彼女にしちゃ珍しいな、くらいにしか思わなかったんだ。
彼女の言ってた事が、今回の件だったのかは最後までわからない。

 

 

196 :193:2006/06/30(金) 17:40:02 ID:uoC/HSlxO

他の奴も、彼女の風変わりさに気付いていたらしい。
ある女の子は、彼女が他界する一ヵ月前に街中で会って、しばらく一緒に歩いていったそうだ。
買い物したらしくショッピングバッグをいくつか持っていたので、手助けすると彼女はとても喜んだらしい。
「あなたには特別に教えてあげる。私ね、ちょっとだけ先の事がわかるんだ」
女の子は面白い冗談だと思ったようで、
「すごいじゃん。株とか先物取引とかわかったらお金持ちになれるよ」と、相づちをうったらしい。
「そういうのはわかんない。興味ないからね」と言われ、「どういうのがわかるの?」と尋ねると、
誰も居ない交差点の角を指差して、
「あそこに居る男の子わかる?あの子はあさってここで死ぬんだよね」

 

そこまで聞いて全員顔を見合わせた。
「それって〇のとこの?」
女の子は首をたてに振った。
「だって、冗談だと思ったんだもん」
死亡事故は、その通り起こっていた。彼女は日にちも言い当ててた事になる。

 

彼女の彼氏、つまり俺の友人は重い口を開いた。
「あいつ、慢性的にこの世に恨みをもってたよ。それでいて、時々猛烈にこの世界に愛着を感じていた。
多分、心を病んでたと思う。
俺がどうかしてやれるかなと思ったけど、駄目だったらしい」

 

 

197 :193:2006/06/30(金) 17:42:49 ID:uoC/HSlxO

以下、奴の話。

 

バイトで知り合った二人が、付き合い始めてしばらくして、彼女はよく友人に話していた事があった。
彼女は時々、まとまりがなくなるというのだ。
普通の人のように形状を維持できない。分散してしまう。この板でいうと、アリス症候群みたいなものだろうか。
友人は彼女の分裂症を疑ったが、放っておけず色々話を聞いてやったらしい。

 

まとまりが無くなった彼女は、色んな物に部分的に入り込んだり、色んな物が見えたりするとの事。
飼ってる猫、掃除機、水の入ったコップ、石、そして携帯。
彼女が眠りながら、無意識か有意識か携帯を操ったのは、どうもここら辺らしい。
携帯電話に彼女の一部が入り込んだのか、はたまた彼女が携帯になってしまったのか。
まだその時は、手の込んだ悪戯だと思い込もうとした。やろうと思えば出来ない悪戯じゃない。
非通知着信拒否してた奴は、設定ミスか思い違いでもしてたんだろうと。
死んだ人を冒涜してる奴がいるかも、と思うと腹もたった。友人は実際、憔悴しきっていたし。

 

気まずい気分になり、帰るかという話になった。今日の葬式の携帯については忘れようと。
その時、また携帯が鳴りだした。メールの着信。差出人は非通知。全員一斉に。
『ねえみんな、面白かった?』
冗談にしてはひどすぎると俺が言い掛けたその時、女の子の一人が泣きだした。
電源を切ったのに着信したらしい。

 

 

198 :193:2006/06/30(金) 17:45:06 ID:uoC/HSlxO

半狂乱の仲間たちをなだめて、帰宅したのは夜遅くなってから。
疲れていたものの眠れるはずもなく、酒を飲んで気を紛らわせていた。

 

数日後、一通のメールを受信した。非通知。非通知着信拒否設定にしていたのに。

 

以下全文。

『○君、(彼女)です。急な事でびっくりしたと思います。
年々私は生きてる感じがしなくなったので、もう死んでしまうんだろうな、ってわかってたよ。
生きていても楽しくなかったし、意地悪な人ばかりで正直煩わしかったし。
 
嫌いな人を呪い殺してやりたいよね。私にはそれが出来るし。
でも、そうしようとしたら、(彼氏)君や、話を聞いてくれたり、慰めてくれた〇君や他の人達の顔が浮かんでくるの。この世に未練なんか残すんじゃなかったよ。
どっちつかずで今も彷徨ってる。電波にのればどこにでも行けるんだよ。すごく便利。
意地悪な人のとこに行って色々してやりたい。でも○君は賛成しないかな。
困ったことに、どんどんまとまりが無くなってきてる。そのうち自分がわからなくなるかもしんない。
その前に仕返ししたいなあ。引っ張るだけでいいんだよ。
じゃあ、またね。』

 

 

199 :193:2006/06/30(金) 17:47:04 ID:uoC/HSlxO

メールを受け取る前日、俺は携帯のアドレスを変更していた。悪戯はもうこりごりしていたので。
明日になったら、必要最低限の人に新しいメアドを知らせるつもりでいた。
誰も知らない俺のメアドに彼女からのメール。
偶然というより、『私、こんな事出来ちゃうんだよね』というメッセージに思えた。

 

やっぱり彼女は病んでたと思う。それを自分で持て余してたようだった。
病んだ心で彼女が誰か引っ張らないか、間違えて俺や彼氏の友人を引っ張ったりしないかガクブルしてたが、
今でも生きてるところをみると、彼女は分散してしまったに違いない。
彼女にとっては幸せじゃないかな?あれから誰も死んでいないし。
そのことを思うと泣けてくる。もっと優しく接してやれたのにってな。
そしたら、恨みなんてきれいさっぱり消えたかもしれない。

 

それから一年くらいして、『着信アリ』を観た。
あんな風にならなくてよかったと思った。






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