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カテゴリ: いい話



8年前私が体験した話です。
大学を卒業して獣医師免許を取ったばかりの頃のお話。



3: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 18:49:41.92 ID:QmGt65RG0

スレ立てありがとうございます。
少し長くなりますが、ある出来事が有り今回一区切りとして
今一度あの体験を思い出し書いていきたいと思います。
よろしかったらお付き合いください。
私は大学附属の動物病院に勤務していた。大学附属と
言っても動物病院なんでそんなに大きい施設ではなかったが。
私の上司に当たる獣医師は、「獣医師業務は慈善事業でも、野良犬・野良猫の保護でもない。
そのへんにいる動物を片っ端から助けていたら破産する。ただでさえ給料が少ないのだから利益をいかにして出すか。獣医師はビジネスだってことを忘れるな。」そんなことを常日頃から言っている人だった。
何となく大沢たかおに似ていたため以下大沢とする。



4: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 18:52:05.66 ID:QmGt65RG0

大沢は私の10歳年上の所謂中堅ポジションとして病院では活躍していた。
「獣医はビジネス」という考えが理解できなかった私は大沢が大嫌いだった。
しかし、それが病院の理念でもありほとんどの獣医師がその理念のもと働いていた。

もともと動物が好きで獣医師を目指してきた私にとっては
病院が掲げるその理念は衝撃的であった。
もちろん動物が好きなだけではこの仕事が務まらないのもわかっていたし、
獣医師は法律上人間のために存在する資格であることもわかっている。
しかし、私の中での獣医師像とはかけ離れた「ビジネス、利益至上主義」のその病院のことは、
どうしても好きになれなかった。



5: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 18:54:09.36 ID:QmGt65RG0

例えば、治療で使う抗生物質一つでも、より高価なものを選択する。
考えてみて欲しい。
自分がとても可愛がっている家族同然のペットが、
大きな病気やケガをしたとき藁をもすがる気持ちで、
少しでもいい治療を受けられるよう病院に連れてきたのに、
必要のない薬や高価な薬を勝手に使われ高額な医療費を請求される。
飼い主さんにとっては「ただこの子を助けたい」という思いだけなのに、
そんな気持ちを踏みにじるような治療内容であることも少なくはない。



6: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 18:57:05.27 ID:QmGt65RG0

私はそんな動物病院の体制に嫌気がさしていた。
もうこの上司の下ではやっていけない。
こんな仕事やめて、ボランティア団体に行ってみようか。
最初はとにかく辞めたくてしょうがなかった。

そんなある日の深夜、一人の老婆が訪れた。
19歳になる猫の様子がおかしいので連れてきたと言うのだ。
猫は可愛らしい顔をしたアメリカンショートヘアー。
診察の結果腎臓が悪く、急に昏睡状態に陥ったようだ。





7: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 18:59:10.75 ID:QmGt65RG0

私はその日経過が気になる犬がいたので徹夜で様子を見ていた。
獣医は私と大沢の二人。
大沢はあからさまに嫌な顔をしていた。
仕方がないので私が診察に当たり、現在の状態を説明。
「詳しい検査もあるので今晩は預かります。詳しく検査をしてみないと
今後の治療方針も決まらないのでまた明日、お迎えに来てください」
と老婆に告げた。
老婆は分かりましたとポツリと言い残し去っていった。



8:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:01:02.30 ID:P8uFtQay0

おばあちゃん1人と猫1匹で暮らしてたんかなぁ…
なんか和む



10: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:02:25.06 ID:QmGt65RG0

翌日猫は未だに昏睡状態。
詳しく検査した結果、腫瘍が全身に広がっていることが発覚した。
おそらくひどい痛みに耐えていただろう。
腎不全のため心臓も弱っていた。
19歳という年齢も考慮して、痛みを最小限に抑えてあげて、
お家で飼い主さんと最期の時を過ごしてもらうのが最善だろうという結論に至った。
そのことを老婆に告げると、色々準備をするのでもう一日預かってくれと言われた。
私は快諾した。
その日の夕方猫が目を覚ました。
痛々しい姿ではあるが飼い主を探すような仕草をして「ニャーン」と鳴いた。
私はひと安心し自宅に帰った。



11:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:03:26.61 ID:4wIoWUGg0

十九歳ならしょうがないか…



12: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:05:00.77 ID:QmGt65RG0

翌日休みだった私は夕方まで寝ていた。
すると大沢が大声で怒鳴り電話をかけてきた。
何事かと聞いてみると、なんでも猫の飼い主と連絡がつかないらしく
治療費を踏み倒されたらしい。
最初に名前と住所と電話番号を書いてもらっていたのだが全てデタラメだったのだ。
まあ珍しいことではないんですがね。

とりあえず明日まで待ちましょうと言い電話を切った。
翌日出勤してもまだ猫のお迎えは無かった。
大沢は「無料で治療は出来ない。可哀想だがこのまま投薬をやめて死ぬのを待つしかない。」
と言っている。
私は猫の顔を見ていると何だかとても悲しい気持ちになった。



13: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:07:16.16 ID:QmGt65RG0

「私が看ます!」
勢いで言ってしまった。
今考えると、獣医師としてのプロ意識が足りないと思うし
正直考えられない行為だ。
なんでそんなことを言ってしまったのかわからない。
でも何だかこの猫を見捨てることがどうしても出来なかったのだ。

その日から、私は仕事以外の時間を全部猫の面倒を見るために使った。
数日間は病院に入院させてもらい、
病状が落ち着いてから家に連れて帰り点滴、投薬をした。
とにかく痛みを取り除くために手を尽くした。



14: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:10:12.72 ID:QmGt65RG0

そんなある日、仕事が終わり家に帰るとなんと猫が立ち上がっていた。
病状は改善はしないものの痛みが和らいだため、
動くことができるようになっていたのだ。
餌も柔らかいものなら食べられる。
一安心だ。あとはこの猫のそう長くはない余命を、幸せに全うさせてあげよう。
そんなことを思っていた。

次の日私にとって忘れられない体験をすることになる。
事前に言っておくが、これは色々な人に話しても誰も信じないし、絶対にありえない。
お前人間の病院に行ったほうがいいぞと言われるほどブッ飛んだ体験だった。



15: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:12:17.74 ID:QmGt65RG0

簡潔に言うと、猫が喋ったのだ。
帰ってすぐ電気もつけずに「ただいまー。具合はどうだい?」と何となく話しかけた。
すると猫が「腹減った」っと言ったのだ。
私は耳を疑った。「え??喋った?」
猫は続ける。「腹が減った」
私はびっくりして言葉が出なかった。
それから猫は良く喋るようになった。



16: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:14:28.82 ID:QmGt65RG0

猫は飼い主のこと、猫の気持ちなど色々な事を喋った。
不思議だったのが、私の知らない病院内の事情を教えてくれること。

それは決まって寝るとき電気を消してから一方的に喋るのだ。
私が話しかけても返事はない。
「あの婆さんは俺がいらなくなって捨てたんじゃない。
生活に困っていて俺を助けるために捨てたんだ」
「お前の上司、実はそんなに悪い奴じゃないぞ。よく見てみろ」
「俺たちに餌をくれる女。病院でタバコ吸ってるぞ」
「病院にいた毛の長い猫。あいつは気に入らない」
「病院にいた犬。あいつは元気になる」
「お前がくれる餌はマズイな」
「人間が思ってるほどまたたびは好きじゃない」



17: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(3+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:16:58.02 ID:QmGt65RG0

特に病院スタッフの話はよくしていた。
この時は大沢がいいやつなんて半信半疑で
「あんな冷血漢になんでこんなに肩入れしているんだろう?」ぐらいにしか思わなかった。

中でも女性スタッフの院内での喫煙は大問題になった。
猫が言っていたことが本当なのか確かめたくなり、
翌日こっそり女性スタッフをのぞき見してしまった。
すると個室に入ったスタッフは本当にタバコを吸っていたのだ。
彼女は10年近く働いている、所謂お局さん。私なんかが指摘したら後の仕打ちが怖い。
とにかく上司に報告し注意してもらった。
酸素を使っているのも知っているはずなのに、一体何を考えているのか。
それから程なくしてお局さんは辞めた。



18: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:19:02.08 ID:QmGt65RG0

それにしてもよく喋る猫だ。

時には私の悩みを見透かしたように
「そんなに背負い込むな。俺らはお前が思っているより強い」
「可哀想なんて思うな。俺らは幸せだ」
「人間はいつも忙しない。そんなに急ぐな」
「気まぐれで俺らを助けるな。死んだ方が幸せな奴らだっている」
「現実が残酷なのは当たり前だ」
「上司をもっとよく見ろ。お前はアレみたいになりたいんじゃないのか」
「お前は何も知らないんだな」
「知識だけで分かった気になるな。目に見えないものもある」
「目に見えないものこそ今のお前には必要だ」
「たまには気晴らしに散歩でもしてこい。散歩はいいぞ」



19: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:21:29.44 ID:QmGt65RG0

猫は私の事をよく知っていた。
人の嫌な所ばかり見て、
自分の理想を追いかけ、現実は残酷だと嘆いているだけ。
この日ばかりは電気を消したまま、酒を飲んだ。

そしてそれから数日後猫は息を引き取った。
最期はとても安らかであった。
猫は亡くなる前日の晩
「世話になった。ありがとう。幸せになれ」と一言言った。
私は涙が止まらなかった。
たった一週間ほどの時間が私にとっては人生を変える時間となった。



20:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:22:29.15 ID:4wIoWUGg0

すげー



21:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:24:02.75 ID:PjCKKNQX0

直接聞いたら信じられないと思うけど
ここで読むとちょっとは信じてみようと思うわ不思議



22: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:24:34.35 ID:QmGt65RG0

当時の私は自分の理想とする獣医師になりたかった。
小さい頃から夢見ていたただひたすらに優しい獣医師に。
しかし、現実は甘くない。
一匹一匹の患畜に感情移入しすぎる私に大沢は
「プロ意識を持て。全ての動物を救えるなんて思うな。動物は人間とは違う。
病気になって病院に連れてきてもらえる動物なんてひと握りなんだ。
動物が病気になったから獣医に連れて行くのが当たり前だなんて思うなよ。
昔よりはだいぶマシにはなってきたが、未だに動物にそんなにお金をかけるなんて考えてない飼い主は多い。
人間にとって動物は所詮動物だ。どんなに俺らが頑張っても無責任な飼い主は減らない。
だから虐待されたり、捨てられたりする動物も減らない。それを全部助けようなんて一生かかったって無理だ。
俺だってできる限り助けたい。でも治療費を払うのは飼い主だ。ペットの生き死にを決めるのは飼い主なんだ。」
と悔しそうに言っていた。



24:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:27:20.65 ID:RL1qVeb+0

俺、信じるよ
色々その猫さんのこと書いてよ



25: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(2+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:27:51.12 ID:QmGt65RG0

猫の言っていた通りだった。
大沢はよくわかっている。
死と向き合うことから逃げていたら一人前の獣医にはなれない。
私は覚悟を決めて動物の死と向き合わなくてはならなかった。

それから私はがむしゃらに働いた。
時には心を鬼にしなくてはならないこともあった。
猫が亡くなって数ヵ月経った頃、
心疾患で子犬の頃からうちの病院に通っていていたシーズー犬がいた。
6歳だった。
ある日飼い主は頻繁に起こす発作に耐えられなくなり
「こんなに苦しむなら安楽死させてやってくれ。終わったら連絡して下さい」といい
承諾書にサインをし、病院に犬を置いていってしまった。
私はやるせない気持ちでいっぱいだった。



26: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:31:49.28 ID:QmGt65RG0

安楽死させる直前、大沢は犬に話しかけていた。
「人間は自分のエゴで動物を飼う。今まであんなに可愛がっていたのに
死に目には会いたくないという。
勝手だな。でも俺はお前を殺さなくちゃならない。仕事だから。
俺じゃ役不足かもしれないが、最期まで見ているぞ。
お前は病気に負けず精一杯生きた。楽しいことよりも辛いことのほうが多かったかもしれない。
助けてあげられなくてゴメンな。もう頑張らなくていい。次は人間に生まれてこい。美味い酒でも飲みに行こう。絶対だぞ。約束だ。」
大沢は優しい顔をしてそんなことを言っていた。



27: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:35:07.08 ID:QmGt65RG0

病院では泣いてはいけない。
私の不安は動物にも伝わる。この犬の最期の瞬間、不安な思いをさせてはならない。
私は涙をこらえて薬を注入した。
犬は安らかに逝った。
飼い主は遺体を迎えに来ると大声で泣き出した。
すると大沢は「あなたに泣く資格なんてない!」と声を荒げた。
私にとって初めての安楽死であった。

以上が私が体験した不思議な話だ。
母、父、妹、友達皆笑って「うそだーww」とバカにする。
しかし大沢だけは笑わなかった。
「そんなこともあるんだなあ。猫又とはよく言ったもんだ。
動物は俺らなんかよりずっと人間の本質を見抜いているのかもしれんな」
と言っていた。



28:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:35:39.76 ID:4wIoWUGg0

大沢超良い奴じゃん



29:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:36:14.56 ID:PjCKKNQX0

大沢すげえ出来た人だなぁ



30: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:38:53.74 ID:QmGt65RG0

後日談。
二年程前、大沢は「独立する。お前もついて来てくるか?
ついでに結婚してやってもいい。お前はどんくさいからな。このままじゃ行き遅れるぞ。」
なんて笑いながら言った。

今は結婚し、開業しました。
相変わらず生活はカツカツですが、大沢と私と猫一匹の三人で幸せに暮らしています。
大沢は「15年経ったらこの猫も喋るだろう。もし喋るとき苦労しないように、
色々な言葉を教えておこう。また会いたいな。猫又」と言いながら毎日猫に話しかけているが
一向にしゃべる気配はありません。



32: 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:8) ◆BUxZpQs5ZU :2014/01/21(火) 19:41:48.88 ID:QmGt65RG0

長々と失礼しました。またご支援ありがとうございました。
こんな話誰も信じてくれないし、私の夢だったのかもしれません。
でもあの猫との出会いは私の価値観を大きく変えてくれたのも事実です。

今回妊娠が発覚し、新しい命を授かりました。
あの猫が教えてくれた事、大沢が教えてくれた事をしっかり胸に刻み、
これから生まれてくる新しい命と向き合っていきたいと思っています。



33:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 19:41:59.09 ID:h47ZPcmz0

素敵すぎ
きっと患者さんたちは幸せだろね



36:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 20:45:03.96 ID:OTSBlhUj0

乙でした
うちの猫は喋るまであと13年か...長生きしてくれるといいな



39:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 21:46:36.56 ID:P8uFtQay0

とっても素敵な話だった



40:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 21:53:35.34 ID:7ro3FQO/0

良い話聴けた面白かったです



42:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 22:27:00.55 ID:YTnoxh+GP

羨ましい体験じゃん。会話として成立したのか気になるな
俺も実家にいた弟分の猫と喋りたかったよ
あっちは毎日長々と喋りかけてきてくれてたんだけも全く分かんなかったなあ



43:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 22:27:40.70 ID:8Zgdh7Vy0

いい話だなー( ;∀;)



46:名も無き被検体774号+:2014/01/21(火) 23:40:02.44 ID:ybd8D4UC0

1乙
素敵な話しを聞けてよかった。
たまにペットが何を言いたいか分かることはあるけど、きちんと会話してみたいな。
お仕事頑張って下さい!





おしまい


おまけ
o0480072012821631182









245 本当にあった怖い名無し 2005/08/17(水) 10:35:41 ID:EDoumzb5O
少し長いですがレスさせてください。

俺が高校生だった頃、隣のクラスに目茶苦茶可愛い子がいて、俺は恋心を抱いていた。
一年ほど片想いをしていたが、体育祭の日、その子が俺に告白をしてきて付き合うことになった。
その子は高校でもかなりモテていたが、オレなんて全くモテないブ男と付き合うなんてどうかしてる!
と、周りの奴が噂するのを一時期学校ではよく耳にした。
俺も何度か『オレなんかのどこがいいの?』と尋ねた。
彼女は毎回ハニカミながら『笑顔が好きになった。周りが何を言おうが、私が好きなんだからいいぢゃん!』と言ってくれた。
すごく真っすぐな子だった。
俺は昔から自分自身にコンプレックスを持っていた。
『俺は不細工で頭も悪い』それがオレの口癖だった。
彼女はそんな俺に「でも私はそんな貴方が好きなんだから。自分で悪く言うのは辞めて。」と。
俺にはとても出来過ぎた子だった。
つづく

246 本当にあった怖い名無し 2005/08/17(水) 10:44:35 ID:EDoumzb5O
高校を卒業し、俺は町工場に就職、彼女は大学へ進学した。
彼女は大学の授業が終わるとしょっちゅう工場の前で俺の事を待ってくれていた。
19才のとき、彼女が妊娠した。俺達は周囲の反対(彼女が大学生だった為)を無視して結婚した。
彼女は当然、大学を中退、元気な女の子を産んでくれた。
俺に甲斐性がないので、彼女は半年後にはパートをして家計を助けてくれた。
金は無かったが毎日幸せだった。
娘が二歳になって間もなく、彼女は交通事故で他界した。パートの行きに車に跳ねられて。



248 本当にあった怖い名無し 2005/08/17(水) 11:00:43 ID:EDoumzb5O
俺は葬式でも涙が出なかった。彼女の死を信じられなかった。

それから三年経った。
俺は今でも彼女の事を引きずっている。
オレなんかと出会わなければ彼女は・・
俺は彼女のお陰で幸せだったが彼女には俺のせいで幸せを掴みそこなったんじゃないのか・・とか
生活する為に工場と夜のウエイターのバイトで彼女の忘れ形見の娘との会話もあまり無かった。
そのせいか、娘はいつも一人で絵を描いている。
昨日、仕事から帰ると、また娘が何か描いていた。
「それなに?」
愛想なく聞くと娘は
「おかあさん」
と答え、絵を書き続けた。
一瞬、ドキッとした。
「え?おかあさん?・・・お母さん何してるの?」
と聞き直すと
「今日はオカーサンとお砂場で遊んだの。」
娘が言った。
俺は、娘に聞いた
「どこのお母さん?お友達の?」

娘ははっきりと
「違うよ、美優(娘)のお母さんだよ。昨日も遊んだの」
と。

249 本当にあった怖い名無し 2005/08/17(水) 11:34:18 ID:EDoumzb5O
娘は続けてこう言った
「美優おかーさん大好き、おかーさんもねぇ、美優とパパが大好きなんだよ。」
俺は娘を抱き上げ、すぐにその砂場に走った。
砂場に着くと、もちろん、そこに彼女はいなかった。
娘は「おかーさんはこの公園が大好きなんだって。いつも美優より先に着てるよ。」

その言葉を聞き俺は思い出した。この公園は高校時代、よく彼女と立ち寄り、始めてキスしたのもこの公園。
俺は、娘の前で号泣した。むせる様に泣いた。
娘はポカーンとしていた。
俺は娘を抱きしめ、謝った。「ごめんね。」と。
彼女が死んだ事を受け入れられず、多感な年頃の娘の相手もせず、毎日クヨクヨ生きていた自分自身が恥ずかしかった。
彼女は死んでも、娘の遊び相手になって。
俺は死んだ彼女にも苦労をかけていた。





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780: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 20:01:41.28 ID:TXVIrBId0
重くて長い話で申し訳ありません。
読みにくいところも多いと思いますが、
孤独だった俺の話を暇つぶしに聞いてください。

小学校5年生の時、交通事故で両親を亡くして祖父に引き取られた。
その時から俺の時間は止まってしまったようになって何も考えられなかった。
事故の前のことは何も思い出せなくなり、何もかも楽しくなくなった。

転校した先の小学校でも、何もしゃべれず、全く友達もできなかったし、
友達を作りたいとも思わなかった。
ただ、朝になったら学校に行き、自分の席に座って授業にのみ集中し、
学校が終わればすぐに家に帰った。
先生は気を使っていたようだが、みんな気味悪がっていたと思う。

いつもステテコと腹巻姿の祖父は優しく、
慣れない手つきで家事をしつつ、俺の好物の鳥の唐揚げを良く作ってくれた。
今でも感謝しているがその頃は会話もほとんどなく、
自分の部屋でゲームを延々としていた。



781: 780:2011/06/26(日) 20:07:44.99 ID:TXVIrBId0
クラスでの俺は誰の眼中にも入らない透明人間のような存在になっていったと思う。
そんな生活を続けていて、いつの間にか6年生になった。
クラス替えもないのでほとんど環境も変わらなかった。

6年生になってからしばらくして、
休み時間にいつもいじめられている女の子がいることに気が付いた。
茶色くて長い髪の大人びた綺麗な女の子だった。
近くにいる奴とかの、ひそひそ話を注意深く聞いていると、
彼女は白人の祖母を持つクォーターで父親を早くに亡くしており、
母親が1年程前から新興宗教に入信し、
熱心な勧誘活動をしているようだった。

「おい!外人!」とか「たたりがあるから触るな」とかバカにされていて、
いつも仲間はずれにされたり、モノを隠されたりしてからかわれていた。
先生も絶対に気付いていたが、黙認しているようだった。

ある日の昼休み、いつものようにクラスの代表格の体の大きないじめっ子が、
彼女が大事にしていたお守りを取り上げた。
周りのみんなはそれを見て笑い囃し立てた。
そんな場面を今まで何度も見たが、俺は何にも感じなかった。




782: 780:2011/06/26(日) 20:13:12.44 ID:TXVIrBId0
普段、どんなに苛められても平気そうだった彼女が、
この日だけは必死に取り返そうとしていた。
「それはだめ。お父さんの・・・」
小さくて泣きそうな彼女の声が聞こえたとたん、俺の中の何かが切れた。

俺は腹の底から「やめろ!」と怒鳴り、机を倒し、
いじめっ子に殴りかかっていった。
喧嘩が強いはずのいじめっ子は不意をつかれたようで椅子につまずいて倒れた。
馬乗りになって彼女のお守りを取り返した。

それでも俺の怒りの爆発は収まらなかった。
その後も俺は机を倒したり、椅子を投げたり、張り紙を破ったりして、
教室の中を狂ったように暴れまわった。
何故かこの教室の全てが憎らしかった。
いつも全くしゃべらない俺が暴れたので、周りのみんなは呆然と見ているか、
悲鳴を上げて逃げているだけだった。

騒ぎを聞きつけた先生が止めに入りその場は収まった。
すぐに学校に祖父が呼ばれ、祖父は一生懸命謝っていた。
俺はただ黙ってそれを見ていた。





783: 780:2011/06/26(日) 20:19:19.21 ID:TXVIrBId0
次の日から彼女はいじめられなくなった。
俺はさらに孤立したが何とも思わなかった。
ある日の帰り、校門に彼女が待っていた。

「○○君。あの時はありがとう・・・・・一緒に帰ってもいい?」

彼女は少し恥ずかしそうに俺に聞いた。
俺は頷いて一緒に歩いた。彼女は黙って少し後ろを歩いていた。
そして、彼女の家と俺の家との分かれ道に着くと彼女は
「じゃ、また明日。」
と笑って手を振って帰っていった。

次の日の朝、分かれ道に彼女は待っていて一緒に学校に行った。
こうして毎日、俺と彼女は一緒に登下校した。
休み時間も彼女がそばにいるようになった。
最初は何も話さなかった彼女は、
段々打ち解けてきて、家族の事とかをぽつりぽつりと俺に話してくれた。
彼女が幼い頃、おばあさんに作ってもらったお菓子がとても美味しくて、
いつか作れるようになって食べさせてみたいとか言っていた。






784: 780:2011/06/26(日) 20:23:43.20 ID:TXVIrBId0
たまに俺の家にも遊びに来るようになった。
俺は彼女専用のゲームのセーブデータを作って、
夜の間に彼女の為にレベルを上げておいたりした。

俺も徐々に一人でいるよりも彼女といるほうが楽しく思えてきていた。
周りはいろいろと囃し立て、ことあるごとにからかわれたが、
俺は危ない奴と思われているようで誰も執拗には言ってこなかった。
俺も彼女も周りに何を言われても全く気にならなかった。
彼女にだけは俺も話ができるようになって、
たまには笑うこともできるようになった。

俺が笑うと彼女は
「○○君の笑ったところ大好き!」
と赤くなって言ってくれた。
彼女は幼い頃のおばあさんとの楽しい思い出をたまに聞かせてくれ、
俺も何か思い出を話したかったが、
どうしても事故の前の小さい頃のことが思い出せなかった。
それ以外は彼女には何でも話せるようになった。




785: 780:2011/06/26(日) 20:28:53.76 ID:TXVIrBId0
中学生になってからもこの関係は変わらなかった。
中二のとき彼女が俺の家で遊んでいて、ふと俺に聞いた。

「どうして・・・あの時、助けてくれたの?」

俺は彼女が言った『それはだめ。お父さんの・・・』と言う言葉を思い出し、
「俺のお父さんとお母さんも・・・・・」
口に出したとたん、目から涙がぼろぼろ零れて止らなくなった。
俺の心の奥から後から後から事故の前の楽しかった思い出が涙と一緒に溢れ出し、
泣きながら、彼女にその思い出をひとつひとつ話した。
彼女も泣きながら辛抱強く聞いてくれ、俺を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。
俺は彼女の優しさが嬉しくて強く抱きしめて初めてのキスをした。
キスをやめると彼女は

「・・・○○君、大好き。ずっと一緒にいさせて・・・」

と言った。





786: 780:2011/06/26(日) 20:31:58.60 ID:TXVIrBId0
高校も同じところに行った。
彼女との電車通学は本当に楽しかった。
彼女のおかげで俺は少しずつだが自分を取り戻せている気がした。
彼女がお母さんと住んでいるのは狭いアパートだったので、
勉強もゲームもキスも、だだっ広い俺の祖父の家でしていた。
ただ、毎週金曜日は彼女の家の宗教の集まりがあり会えなかった。
彼女は昔から、行きたくないけど行かないとお母さんに怒られる、
と言っていた。

高校3年生になったある日の帰り道、彼女が青い顔をして
「大事な相談がある」
と言った。 俺たちは駅前の喫茶店に寄った。

「私、教団(横文字)をやめたいのに・・・大変なことになっちゃった・・・」

彼女はゆっくりと少し震えながら話し始めた。
彼女の話によると、教祖の世話係(特殊な名称)に選ばれてしまったらしい。
教団では名誉ある役目とのことだが、
要は教祖が信者の中から気に入った女性を選抜し、
18歳の誕生日に本部に出家させ、
1ヶ月間、厳しいと言われている修行をさせて身を清め、
その後は教祖のそばで身のまわりの世話をする役目だと言う。

聖人の世話係は穢れない女性に限られるらしい。
穢れない女性とは男性経験のない女性とのことだった






788: 780:2011/06/26(日) 20:34:02.80 ID:TXVIrBId0
それを聞いても実感がわかず、俺は少しだけ笑った。

「そんなこと、ほんとに? 
それに○○は教団が言うところの穢れある女性なんじゃない?」

俺と彼女はついこの間、自然な流れで初めて一線を越えてしまってもいた。
彼女は少し赤くなったが、真剣な顔で言った。

「笑い事じゃないんだって、ほんとなんだよ。お母さんも本気なんだよ。
○○君としたなんてわかったら、すっごい怒られるよ。どうしたらいい?」

「断れないの?」

「私・・・絶対、やだっ!て言ったんだけど、ダメだって・・・
すごいお金も、もらえるって・・・ 出家したら会えなくなるんだよ。
来月、本部から迎えが来るんだって・・・
・・・私はいつか○○君のお嫁さんにしてほしいのに・・・」

泣きそうな声で言った彼女の言葉にドキドキとしてきて、

「そんなところに○○を行かせるわけないだろ。
俺は○○の為ならどんなことでもやれるんだよ。
何人で迎えに来るか知らないけど、絶対守ってやる。」

と俺も本気で言った。
彼女は嬉しそうに微笑んで頷いて俺の手を握った。





789: 780:2011/06/26(日) 20:36:52.87 ID:TXVIrBId0
どうすればいいか悩んだ末、俺は祖父に相談することにした。
祖父に俺は彼女との馴れ初めから初体験、彼女の生い立ちまで包み隠さず話し、
新興宗教のことも、分かっていることのすべてを話した。
祖父は口をへの字にまげ真剣に聞いてくれた。

「じいちゃんはいつかお前も両親の後を追って、
いなくなってしまうんじゃないかと怖かった。
今、お前が生きているのは全て彼女のお陰だ。
じいちゃんが全身全霊をかけて彼女のお母さんを説得してやる。
決裂したら彼女をかっさらってでもここに住まわせてやる。
そんで、どんな宗教か知らんが誰も家には入れん!」

と言ってくれた。

次の日、彼女に会って祖父の話をすぐに伝えた。
彼女は目に涙を浮かべながら聞いてくれた。

彼女のお母さんと会う日、
祖父はビシッとスーツで決め、俺にも制服を着ろと言った。
いつになく祖父が若々しく頼もしく見えた。





790: 780:2011/06/26(日) 20:41:54.84 ID:TXVIrBId0
彼女のアパートの呼鈴を押すと彼女が出てきて部屋に通された。
中に入ったとたん、酷い耳鳴りがして、
目の前に透明な幕がかかったようになり、
ふわふわと夢の中で歩いているような気がした。

部屋はよく整理されていて清潔だった。
テーブルには彼女のお母さんが不機嫌そうに座っていた。
祖父はお母さんの正面に腰を下ろした。
祖父の隣に俺は座った。

さらに耳鳴りが酷くなった。
俺は祖父を見た。
愕然とした。

俺の祖父だと思っていたら、お父さんが座っていた。
お父さんの向こう隣には知らない男の人がいて彼女を見ていた。
お父さんは俺を見て微笑んで言った。

「今まで良く頑張ったな。お前の幸せを母さんと応援してる。安心しろ。」

俺の目から涙が溢れそうになり、胸が一杯になって目の前が真っ白になった。
一瞬、笑顔のお母さんが手を振っているのが見えた気がした。




791: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 20:48:07.07 ID:KGHJvPV5O
おわり?




793: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 20:51:15.89 ID:z1lR5t0HO
彼女はどーなった?




798: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 21:00:54.67 ID:GJpoqvsD0
紫煙





799: 780:2011/06/26(日) 21:03:37.34 ID:TXVIrBId0
支援等ありがとうございます。続き行きます。

どの位の時間が経ったのかわからなかったが、
急に夢から覚めたように頭がはっきりとした。
透明な膜がかかったような感覚はなくなっていた。耳鳴りもしていない。
いつのまにか話し合いは終わっていた。

隣を見るとやっぱり祖父が一人で座っていた。
祖父は
「良かったな。わかってもらえたみたいだ。帰ろう」
と言って席を立った。

彼女と彼女のお母さんは顔を両手で覆って泣いているようだった。
俺は挨拶をして、あわてて祖父についていった。
何がなんだかわからなかった。
外に出ると祖父は

「何かあたたかい不思議なのが、俺たちのほかに二人くらい来ていたな。」

と言った。
彼女からすぐに携帯に連絡があった。

「私のお父さんが来てくれた。お母さんを叱って、
私に○○君と幸せになれって言ってくれた。
昨日の夜から私、お父さんにもらったあのお守りに祈ってたんだ。」

彼女は興奮して言った。



800: 780:2011/06/26(日) 21:05:25.72 ID:TXVIrBId0
その後、彼女と彼女のお母さんは新興宗教を辞めた。
かなり揉めてしまって、祖父が知人の弁護士に相談し、
しばらく俺の家に避難させた。教団と思われる嫌がらせもあったが、
俺は家族が増えたようで楽しかった。
祖父は前の言葉通り、教団関係者を誰も敷地内に入れなかった。

数年後その教団の教祖が強制わいせつ罪で摘発された。
やはり、あの時行かせなくて良かったと俺は心底思い、妻に話した。
そして、
「でも怖いな。こんな悪魔みたいな奴、信じていたこともあったんだろ?」
と聞いた。

「それはお母さん。私は子供の頃から、あなたしか信じてなかったよw」

妻は幼い息子を胸に抱いてあやしながら幸せそうに笑った。
妻の向こうの居間でステテコに腹巻姿の祖父が、
寝転んでテレビを見ているのが見えた。
キッチンのオーブンからは、
妻のおばあさんレシピのクッキーが焼けてきた良い匂いがした。

幸せな今だからかもしれませんが、
もしもあの時、祖父に相談せずに教団の人たちが、
彼女を迎えに来たとしたら、自分が何をしようとしていたのかを考えると
洒落にならないくらい怖くなるんです。

長文失礼致しました。ノシ




801: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 21:07:06.18 ID:4AeqeMf10
>>800
乙 面白かったよ




802: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 21:09:26.77 ID:2fG5h4LHO
>>800
乙です。奥さんといつまでもお幸せに。



804: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 21:11:51.07 ID:z1lR5t0HO
いい話だった。良かった…



807: 本当にあった怖い名無し:2011/06/26(日) 21:24:14.09 ID:iCePdjsf0
ええ話だったよ
ほっこり







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362 :本当にあった怖い名無し:2007/09/09(日) 14:00:00 ID:FQ8MKZb6O
先日、酔っ払いに絡まれてる女性がいて助けました。
その時、酔っ払いに引っ張られて、シャツの生地の縫合部分が裂けました。
その日に限って、病気で亡くなった妻が私の誕生日にプレゼントしてくれたシャツを着てました。
最後の妻からのプレゼントだったのでショックでした。
でも、困ってた女性を助けてあげられたし、仕方ないと思うことにしました。
それでも捨てることはできず、外では着れないとしても、家着としてなら多少破れていても着れるかなと、
洗濯して仕舞いました。

その晩、ひさしぶりに夢を見ました。
帰宅した俺を妻が玄関で迎えて、そのシャツを見て「あらあら」と言いました。
家着に着替えてソファーに座ってると、妻が食卓で破れたシャツを縫い始めました。


363 :続き:2007/09/09(日) 14:00:58 ID:FQ8MKZb6O
昨日、久しぶりに一人暮らししてる娘と映画に行くことになり、どれ着て行くか箪笥を物色しました。
あの日、破れたシャツが目に止まり、破れたんだよなと思いつつ広げました。
そしたらなんと、破れてないのです。
えっ?と思い破れてる箇所を探しました。
そのうちに、表ではなく裏を見て気付きました。
表からはわからないように裏から縫合されていました。そこだけ裏側に裂けた布が出ていました。
そして、あの晩の夢を思い出しました。
ああ、あいつが縫ってくれたんだなと思いました。

その服を着て、娘とひさしぶりに映画行ってきました。
娘に話したら、
「父さん酔ってたんだよ。破れてなかったんじゃないの?」
そう言いながらも、娘の目元に涙が光っていました。

こういうことって本当にあるんですね。
できることなら次は妻の手料理期待しています。
冷蔵庫開けたら作り置きの手料理が入ってるとかさ。
まあ、それはないかな。さすがに。


367 :本当にあった怖い名無し:2007/09/09(日) 16:20:50 ID:EY961Rjp0
>362
娘さんがこっそり繕ってくれたというオチか?


373 :本当にあった怖い名無し:2007/09/10(月) 15:22:11 ID:+aOY42s+O
>>362です。レスありがとうございます。

今は娘と同居してませんし、たまの休みに来るだけなので、娘ではないですね。






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50 :本当にあった怖い名無し:2006/09/21(木) 18:37:18 ID:AMlJc147O
両親を事故で亡くした俺には、9歳離れた姉貴がいた。
ガキの頃、肥満気味で両親がいなくて苛められてた俺を、いつも助けてくれた。
優しくて、強くて、俺の自慢の姉貴だった。
秋になると金木犀の花を部屋に飾った。
「お姉ちゃんが一番好きな花なんだよ」と笑って。
高校にも行かず、朝から夜まで働いて俺を養ってくれた。

そんな姉貴が、死んだ。
事故だった。
結婚が決まって、やっと幸せになれる日を目の前にして、姉貴は逝った。
享年27歳。
俺は兄貴になるはずだった人に後見人を務めてもらい、小さなアパートに部屋を借りて就職をした。

5年経って、俺は職場で出会った彼女と結婚を決めた。
結婚式の前日、姉貴が夢に出てきた。
姉貴は俺に「ごめんなさい」と謝った。「大学まで行かせてあげたかった」と。
俺は高校出たら働いて姉貴に楽させてやりたかったよ。
姉貴は「私の分まで幸せになりなさいね」と泣きながら笑って言った。

姉貴の結婚式の日に、今まで有り難うって言って渡すはずだった金木犀の苗木は、俺の家の庭に植えた。
今年も金木犀の季節がやってくる。
俺はきっとまた、姉貴がいた頃を思い出して泣く。





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