【閲覧注意】怪談の森【怖い話まとめ】

当サイト「怪談の森」は古今東西の怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!

カテゴリ: 心霊シリーズ系




868 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 00:06:03 ID:Qwr7wri20
流れ豚切り、オタク話&姉話注意。






何スレか前に、コスプレ除霊(?)するねーちゃんの話をしたものです。
様子見を兼ねつつ、ねーちゃんの部屋に行ってきました。

ねーちゃんの部屋は1LDKなのですが、そのうちの一室がある意味で四面の部屋になっていました……。

東に慈母様の頭と毛皮が鎮座し、西に森の黒山羊様の頭部が転がり、東の窓には口裂けマスクが陣取り、北の壁にはカオナシが吊るされ…
その真ん中で、おねいさんがそれはもう憔悴し切った様子で佇んでいました……。

………………うん。気持ちはわかるよ、おねいさん。
ねーちゃんの部屋、心霊的な意味で怖いというか、オタク的な意味で怖いよ……。
何で球体関節人形の隣にゴジラが鎮座してんだ本当に…。
  
869 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 00:07:35 ID:Qwr7wri20
ちなみにその晩、風呂には長い髪の毛が浮くわ、人影は足音を立てて横切るわ、例の四面の部屋から声が聞こえるわ、
金縛られるわ、息苦しく&胸苦しくなるわ、もうやだこの人と訴えられた気がするわでしたが、
正直、旧支配者のキャロルと共にダボツ・メムプロトで、黒山羊の皮を剥いで手直しするねーちゃんの方がやっぱり怖かったです。

その上、ねーちゃんお手製の被り物は念の込められ方が半端ないのがさらにアレです。
……慈母様を作るときは禊と祝詞は欠かさなかったらしいし、黒山羊様製作時はいえいえしゅぶにぐらすだし、
口裂けマスクの時は君が望むならだったし、カオナシは千尋ちゃんめんごい超めんごいだったらしいので、
そのうち付喪神にでもなるんじゃないかと思います。

だからね、ねーちゃん。ケルベロス補完計画はやめてあげて……地獄の番犬とか、おねいさんが可哀想すぎる……。
そんなだから、死んだじーちゃんが未だに「姉子は相変わらずだなぁ。嫁の貰い手あるのかー?」って心配するんだよ…。

……っていうか、おねいさんも、私に訴えてないでさっさと成仏すべき。
ねーちゃんは気配を感じるかチラ見できる程度で零感に近いし、性格もアレだから祟っても呪っても無駄だと思う…。

ついでに、ねーちゃんの部屋から帰った後、緑色の粘液が支配する世界でいあいあ叫ぶ夢を見たんだけど、これは呪いなんだろうか…orz
  
872 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/25(月) 00:48:32 ID:zFqsZfrk0
とりあえず、ねーちゃんがある意味すごいのは分かった。
  
925 名前:自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/28(木) 08:24:04 ID:J8+VbTJi0
久しぶりにコスプレねーちゃんワラタ
また書いてくれ
待っている





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493 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/12(土) 23:42:18 ID:ehxjKqUq0
まとめサイト読んでたんだが、初期スレに49日はあの世に行くための準備期間で、
49日後にベストな状態にもっていくためのアップ期間って話があったけど、なんか納得してしまった。

今年の春、末期ガンで自宅療養中だったじーちゃんが死んだ。
本当に末期ガンか!?ってくらい元気だったじーちゃんだったけど、
最後の2週間くらいは寝たきりになって、恍惚の人になって逝ってしまった。
長年連れ添ったばーちゃんの顔も、息子であるとーちゃんの顔も、
女孫だっていうんで思い切り可愛がったねーちゃんや私の顔もわかんなくなったまま静かに逝った。

そんなじーちゃんが死んでしばらくした日の夜、
じーちゃんが居間にある自分の椅子に座ってボーっと庭を眺めてた。
死ぬ前とおんなじ、ちょっと虚ろな顔して、じーちゃんより先に逝った先代シバ子が庭で遊んでるのを見てた。
私が呼んでも気づいてないみたいだった。

ところが、49日の法要が終わった夜に出てきてくれたときには、話すわ笑うわ酒飲むわで超元気だった。
10年近く前に死んだ、じーちゃんの親友と一緒に酒盛りして盛り上がってた。
私の顔見て、「おお、妹子かー。元気だったかー?」って、昔とおんなじニコニコ顔で私の頭撫でてくれた。
「酒んまいぞー。いくらでも飲めるぞー。そういや、最後に食った姉子の煮魚美味かったなー」って。

じーちゃんは胃癌だったんだけど、寝たきりになる前の晩、
ねーちゃんが作った夕飯を美味い美味いって食べてた。覚えてたんだー、と思った。
………………だけどね、じーちゃん。「それにしても姉子は相変わらず変なもん作ってるなー」って笑わないで……。
ねーちゃんのアレはもう病気だと思うから……。

そんな私は>>119。
玉座の前…というか、神前で龍笛を吹き、カオナシのまま床を這いまわり、
もっさりもっさりしたまま、いあいあ呟くコスプレねーちゃんを持つ奴です。
  
498 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/13(日) 00:16:12 ID:fDVW2Ioa0
>>493
ホントに笛吹いてたのかw
  
  



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119 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/03(木) 20:42:54 ID:svlHFyRf0
オタク話注意。



何スレか前に、コスプレ除霊するねーちゃんの話をしたものです。
夏休み、ねーちゃんの部屋に行ってきました。
「おねいさんが復活した!」というねーちゃんの言葉通り、
ビシビシバシバシとラップ音っぽいもので大歓迎していただきました。
ねーちゃんの部屋は、暑いさなかにいったにもかかわらず、
どこかひんやりと底冷えするような感じがしました。

しました……が……。

正直、部屋の隅にゴロゴロ転がっている獣の頭(ねーちゃん手製の被り物)の方がおっかなかったです。

お風呂に入ろうとすれば、なぜか長い黒髪が浮いてたりもしました(ねーちゃんはショート、自分は茶髪)が、
着ぐるみの抜け毛で配水管を詰まらせかけたねーちゃんは歯牙にもかけていませんでした。

確かにその夜は金縛られたり耳元でうめき声らしきものを聞いたりもし、ねーちゃんに助けを求めようとしましたが、
デスクスタンドの灯りに照らされつつ、
いえいえしゅぶにぐらすと呟き笑いながら黒山羊の頭を作るねーちゃんの方が怖かったです。

ねーちゃん曰く、
「おねいさんは私が乳だく漫画を描いているとラップ音で抗議してくる。」
「これは『エッチなのはいけないと思います!』ということなんだろうか。乳と獣に萌えることの何が悪い」
「つーか家賃代わりに乳の一つでも揉ませてくれればいいのに!!」
……だそうですが、自分は幽霊の人が正しいと思います。

ちなみに、以前に柴ワンコ様を追い払った時のねーちゃんのコス衣装は【カオナシ】でした。
カオナシに月に代わってオシオキされたら柴ワンコ様も出てこねぇよな…という話でした。

こんなねーちゃんの前職は 巫 女 だったりします。
  
137 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/04(金) 12:44:58 ID:JyvrGm6mO
おんつぁ姉さんキター!
コスプレ姉さんわぁ~い
あとゴスコさんのその娘知りたいです。
  
194 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/05(土) 19:53:02 ID:b+DsuLPf0
>>119
ねーちゃん、巫女は巫女でもどっかの玉座の傍らで笛吹いたりしてたんじゃないだろうな。
カオナシは実は這い寄る混沌だったんじゃないだろうな。
とか、どーでもいいことを思った。
  
195 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/05(土) 21:10:56 ID:mHU1/jd40
>>194
【審議中】
    ,、_,、  ,、_,、
  ,、_('・ω)(ω・`)、_,、
 ('・ω)u゚  ゚uu(ω・`)
  ゙uu゚( '・) (・` )uu'
    ゚uu゚  ゚uJ゚
  
196 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/09/05(土) 22:11:05 ID:1rV5eFkp0
【審議チュウ】
          チュウ
         +  ゚  ・ +
          ゚∧,,∧∧  ゚
  チュウ      (* ゚(   )       チュウ
.+  ゚  ・ +  l っと  ヽ  .+  ゚  ・ +
  ゚∧_ ∧∧  ゚ と__(__(^)(^)   ∧∧ _∧
  (*´・(   )            (   )・`*)
   l っと  ヽ           /   つと l
   と__(__(^)(^)          (^)(^)_)_つ


  



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767 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/15(水) 17:35:52 ID:5NbBWmx10
ウチのねーちゃんの話。オタク話注意。

2年前、ねーちゃんがリストラ&再就職のために急遽引っ越した。
あんな短時間でよく見つけられたな、ってくらいに、
スペックが高いうえに安い部屋だった。
ねーちゃんに話を聞いてみると瑕疵物件だったらしい。

この前のじーちゃんの3周忌の時、未だにその部屋に住んでるねーちゃんに、
「何か怖い事なかった!?」とwktkで聞いてみた。

ねーちゃん曰く、
・住み始めてしばらく家の中で物音がしたり、視線を感じたり、物がなくなったり移動してたりはした。
・寝ている時に、黒っぽいものに乗られたり金縛ったりすることもあった。
・ネットが繋がったら、人影が見えたりそれが部屋の中で動いたりするようになった。
・オッパイオッパイ!なんぞやろうもんなら、一晩中天井の方からビシバシビキバキ音がした。
・ニコ動にハマってハレハレしたりドーマンセーマンしたりチルノの算数してたら、いつの間にか静かになってた。
・去年の冬コミに向けて衣装を作っている時、本体っぽいものを見たがそれ以来顔を見せてくれない。
・色白で黒髪ロングのすらっとした体つきのおねいさん……だったような気がする。
・顔は見ていないが、きっと美人に違いない。家賃代わりに乳の一つでも揉んでやれば良かった。

……ねーちゃん……。
ねーちゃんの趣味はコスプレで、被りモノが大好き。
本体らしきものを見た時も、出来上がり具合を確認するために被り物を被って動いていたらしい。

どんなにラップ音鳴らそうとも金縛ろうとも部屋の中徘徊しようとも、
年がら年中びっくりするほどオッパイオッパイある晴れた日のことすぐに呼びましょバーカバーカやられたあげく、
身体は人間、顔(頭?)は獣なんていう姿で、アイドルマスターKOTOKOを目の前で踊られた幽霊の方が、
よっぽど怖いものを見ただろうし怖い思いをしただろうと思った。
  
769 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/15(水) 19:20:44 ID:fjKpeCDj0
>>767
姉をくれ
  
770 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/15(水) 19:42:20 ID:lUq1r+Zx0
>>767
ねーちゃんに惚れそうだwwwww
  
771 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/15(水) 23:58:19 ID:Y2vh9ZKxO
>>769
柿で我慢汁
  
772 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/16(木) 02:54:25 ID:Ob32JdOEO
>>771
我慢汁で、先っちょ濡れました…

柿喰えば
鐘が鳴るなり
我慢汁
  
773 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/16(木) 07:25:33 ID:0tmBjYDJ0
>>767
そういや、BL本で撃退したやつがいたな。

ヲタ最強ってことか。
  
780 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/16(木) 15:23:40 ID:zs2YewbZ0
>>769-770
悪いことは言わないからねーちゃんはやめとけ。

ウチにいたころのねーちゃんは、コスプレ衣装着てポージングしてる時に、
その3ヵ月前くらいに逝去したウチの柴ワンコにその姿見られたらしいから。
柴ワンコは(゚Д゚)な顔して消えていったらしいから。
それ以来、柴ワンコはちっともウチに降りて来てくれなくなったんだから!。・゚・(ノД`)・゚・。

……ねーちゃん…orz
  
781 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/16(木) 15:27:47 ID:ODiGWyheO
>>780
コスプレ除霊か
新しいジャンルだ
   
783 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/16(木) 15:55:02 ID:LhpjAbdi0
>>780
決めポーズが何だったのか知りたいw
  
787 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/04/16(木) 23:32:14 ID:Oo1xOA5xO
>>780
逝去が去勢に見えて、意味の汲み取りに苦労したんだぜ





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邪視


これは俺が14歳の時の話だ。

冬休みに、N県にある叔父(と言ってもまだ当時30代)の別荘に遊びに行く事になった。 
本当は彼女と行きたかったらしいが、最近別れたので俺を誘ったらしい。 
小さい頃から仲良くしてもらっていたので、俺は喜んで遊びに行く事になった。 
叔父も俺と同じ街に住んでおり、早朝に叔父が家まで車で迎えに来てくれて、そのまま車で出発した。 
叔父は中々お洒落な人で、昔から色んな遊びやアウトドア、音楽等等教えてもらっており、尊敬していた。 
車で片道8時間はかかる長旅だったが、
車内で話をしたり音楽を聞いたり、途中で休憩がてら寄り道したり、本当に楽しかった。 

やがて目的地近辺に到着し、スーパーで夕食の食材を買った。そして、かなりの山道を登り別荘へ。 
それほど大きくはないが、木造ロッジのお洒落な隠れ家的な印象だった。
少し下がった土地の所に、2~3他の別荘が見える。人は来ていない様子だった。 

夕食は庭でバーベキューだった。普通に安い肉だったが、やっぱり炭火で焼くと美味く感じる。 
ホルモンとか魚介類・野菜も焼き、ホントにたらふく食べた。白飯も飯盒で炊き、最高の夕食だった。 

食後は暖炉のある部屋に行き、TVを見たりプレステ、スーファミ、ファミコンで遊んだり、
裏ビデオなんかも見せてもらって、当時童貞だったので衝撃を受けたもんだった。 

深夜になると、怖い話でも盛り上がった。叔父はこういう方面も得意で、本当に怖かった。
機会があればその話も書きたいが…

ふと、叔父が思い出した様に「裏山には絶対に入るなよ」と呟いた。 
何でも、地元の人でも滅多に入らないらしい。マツタケとか取れるらしいが。 
関係ないかもしれないが、「近くの別荘の社長も昔、裏山で首吊ってる」と言った。 
いや、そんな気味悪い事聞いたら絶対入らないしと、その時は思った。 

そんなこんなで、早朝の5時ごろまで遊び倒して、やっとそれぞれ寝ることになった。 

部屋に差し込む日光で目が覚めた。時刻はもう12時を回っている。喉の渇きを覚え、1階に水を飲みに行く。 
途中で叔父の部屋を覗くと、イビキをかいてまだ寝ている。寒いが、本当に気持ちの良い朝だ。 
やはり山の空気は都会と全然違う。

自分の部屋に戻り、ベランダに出て椅子に座る。 
景色は丁度裏山に面していた。別になんて事はない普通の山に見えた。 
ふと、部屋の中に望遠鏡がある事を思い出した。
自然の景色が見たくなり、望遠鏡をベランダに持ってくる。 
高性能で高い物だけあって、ホントに遠くの景色でも綺麗に見える。 
町ははるか遠くに見えるが、周囲の山は木に留ってる鳥まで見えて感動した。 

30分くらい夢中で覗いていただろうか?丁度裏山の木々を見ている時、視界に動くものが入った。 
人?の様に見えた。背中が見える。頭はツルツルだ。しきりに全身を揺らしている。地元の人?踊り? 
手には鎌を持っている。だが異様なのは、この真冬なのに真っ裸と言う事。
そういう祭り?だが、1人しかいない。 
思考が混乱して、様々な事が頭に浮かんだ。背中をこちらに向けているので顔は見えない。 
その動きを見て、何故か山海塾を思い出した。 
『これ以上見てはいけない』と、本能的にそう感じた。
人間だろうけど、ちょっとオカシな人だろう。気持ち悪い。 
だが、好奇心が勝ってしまった。
望遠鏡のズームを最大にする。ツルツルの後頭部。色が白い。 
ゾクッ、としたその時、ソイツが踊りながらゆっくりと振り向いた。 
恐らくは、人間と思える顔の造形はしていた。鼻も口もある。
ただ、眉毛がなく、目が眉間の所に1つだけついている。縦に。 
体が震えた。1つ目。奇形のアブナイ人。
ソイツと望遠鏡のレンズ越しに目が合った。口を歪ませている。笑っている。 
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
目が合った瞬間叫んでいた。涙が止まらない。
とにかく死にたい。異常なまでの鬱の様な感情が襲ってきた。 
死にたい死にたい…半狂乱で部屋を駆け回っていると、叔父が飛び込んで来た。

「どうした!?」
「バケモン!!」
「は?」
「望遠鏡!!裏山!!」
叔父が望遠鏡を覗きこむ。 
「~~~~~~ッ」
声にならない唸りを上げ、頭を抱え込む。鼻水を垂らしながら泣いている。 
さっきよりは少し気持ちの落ち着いた俺が聞いた。 
「アレ何だよ!!」
「00子~00子~」
別れた彼女の名前を叫びながら泣きじゃくる叔父。 
流石にヤバイと思い、生まれて初めて平手で思いっきり人の顔をはたいた。 
体を小刻みに揺らす叔父。10秒、20秒…叔父が俺を見つめてきた。 
「邪視」 
「じゃし?」 
「いいか、俺の部屋の机の引き出しに、サングラスがあるから持ってこい。お前の分も」 
「なんで(ry」
「いいから持ってこい!!」 

俺は言われるままに、サングラスを叔父に渡した。
震える手で叔父はサングラスをかけ、望遠鏡を覗く。しばらく望遠鏡を動かしている。 
「ウッ」と呻き、俺に手招きをする。
「グラサンかけて見てみろ」
恐る恐るサングラスをかけ覗き込む。 
グラサン越しにぼやけてはいるが、木々の中のソイツと目が合った。
言い様の無い不安がまた襲ってきたが、さっきほどでは無い。 
だが、心臓の鼓動が異常に早い。
と言うか、さっきの場所では無い…ソイツはふにゃふにゃと奇妙な踊り?をしながら動いている。 
目線だけはしっかりこちらに向けたまま…山を降りている!?まさかこっちに来ている…!? 

「00、お前しょんべん出るか?」 
「は?こんな時に何を…」 
「出るなら、食堂に空きのペットボトルあるから、それにしょんべん入れて来い」 
そう言うと、叔父は1階に降りていった。
こんな時に出るわけないので呆然としていたら、
数分後、叔父がペットボトルに黄色のしょんべんを入れて戻ってきた。 
「したくなったら、これに入れろ」と言い、叔父がもう1つの空のペットボトルを俺に差し出した。 
「いや、だからアイツ何?」 
「山の物…山子…分からん。
 ただ、俺がガキの頃、よく親父と山にキャンプとか行ってたが、あぁ、あそこの裏山じゃないぞ?
 山は色んな奇妙な事が起こるからな… 
 夜でも、テントの外で人の話し声がするが、誰もいない。
 そんな時に、しょんべんとか撒いたら、不思議にピタッと止んだもんさ…」 
そう言うと叔父は、もう一度望遠鏡を覗き込んだ。
「グウッ」と苦しそうに呻きながらも、アイツを観察している様子だ。 
「アイツな。時速何Kmか知らんが、本当にゆっくりゆっくり移動している。
 途中で見えなくなったが…間違いなく、このロッジに向かってるんじゃないのか」 
「じゃあ、早く車で戻ろうよ」
「多分、無駄だ…アイツの興味を俺たちから逸らさない限りは…多分どこまでも追ってくる。 
 これは一種の呪いだ。邪悪な視線と書いて邪視と読むんだが…」 
「さっき言ってたヤツか…でも、何でそんなに詳しいの?」 
「俺が仕事で、北欧のある街に一時滞在してた時…イヤ、俺らが助かったら話そう」 
「助かったらって…アイツが来るまでここにいるの?」 
「いいや、迎え撃つんだよ」 

俺は絶対にここに篭っていた方が良いと思ったが、
叔父の意見は、「ロッジに来られる前にどうにかした方が良い」と言う物だった。 
あんな恐ろしいヤツの所にいくなら、よっぽど逃げた方がマシだと思ったが、 
叔父さんは昔から、いつだって頼りになる人だった。
俺は叔父を尊敬しているし、従う事に決めた。 

それぞれ、グラサン、ペットボトル、軽目の食料が入ったリュック、手持ちの双眼鏡、木製のバット、懐中電灯等を持って、
裏山に入っていった。
「暗くなる前にどうにかしたい」と言う叔父の考えだった。 
果たしてアイツの視線に耐えられるのか?
望遠鏡越しではなく、グラサンがあるとはいえ、間近でアイツに耐えられるのか?
様々な不安が頭の中を駆け巡った。 
裏山と言っても結構広大だ。双眼鏡を駆使しながらアイツを探しまわった。 
叔父いわく、「アイツは俺らを目標に移動しているはずだから、いつか鉢合わせになる」と言う考えだ。



あまり深入りして日が暮れるのは危険なので、
ロッジから500mほど進んだやや開けた場所で、待ち伏せする事になった。 
「興味さえ逸らせば良いんだよ。興味さえ…」 
「どうやって?」 
「俺の考えではまず、どうしてもアイツに近づかなければならない。
 だが直視は絶対にするな。斜めに見ろ。言ってる事分かるな?目線を外し、視線の外で場所を捉えろ。 
 そして、溜めたしょんべんをぶっかける。
 それでもダメなら…良いか?真面目な話だぞ?俺らのチンコを見せる」 
「はぁ?」 
「邪視ってのはな、不浄な物を嫌うんだよ。糞尿だったり、性器だったり…
 だから、殺せはしないが、それでアイツを逃げされる事が出来たのなら、俺らは助かると思う」 
「…それでもダメなら?」
「…逃げるしかない。とっとと車で」

俺と叔父さんは、言い様のない恐怖と不安の中、ジッと岩に座って待っていた。交代で双眼鏡を見ながら。
時刻は4時を回っていた。 

「兄ちゃん、起きろ」 
俺が10歳の時に事故で亡くなった、1歳下の弟の声が聞こえる。 
「兄ちゃん、起きろ。学校遅刻するぞ」 
うるさい。あと3分寝かせろ。 
「兄ちゃん、起きないと 死 ん じ ゃ う ぞ ! !」

ハッ、とした。寝てた??あり得ない。あの恐怖と緊張感の中で。眠らされた?? 
横の叔父を見る。寝ている。急いで起こす。叔父が飛び起きる。
腕時計を見る。5時半。辺りはほとんど闇になりかけている。冷汗が流れる。 
「00、聴こえるか?」 
「え?」 
「声…歌?」
神経を集中させて耳をすますと、右前方数m?の茂みから声が聞こえる。 
だんだんこっちに近づいて来る。民謡の様な歌い回し。何言ってるかは分からないが、不気味で高い声。 
恐怖感で頭がどうにかなりそうだった。声を聞いただけで、世の中の何もかもが嫌になってくる。 
「いいか!足元だけを照らせ!!」
叔父が叫び、俺はヤツが出てこようとする茂みの下方を懐中電灯で照らした。 
足が見えた。毛一つ無く、異様に白い。体全体をくねらせながら近づいてくる。 
その歌のなんと不気味な事!!一瞬思考が途切れた。 

「あぁぁっ!!」 
「ひっ!!」 
ヤツが腰を落とし四つんばいになり、足を照らす懐中電灯の明かりの位置に顔を持ってきた。
直視してしまった。
昼間と同じ感情が襲ってきた。死にたい死にたい死にたい!こんな顔を見るくらいなら、死んだ方がマシ!! 
叔父もペットボトルをひっくり返し、号泣している。落ちたライトがヤツの体を照らす。
意味の分からないおぞましい歌を歌いながら、四つんばいで、生まれたての子馬の様な動きで近づいてくる。
右手には錆びた鎌。
よっぽど舌でも噛んで死のうか、と思ったその時、 
「プルルルルッ」 
叔父の携帯が鳴った。
号泣していた叔父は何故か放心状態の様になり、ダウンのポケットから携帯を取り出し見る。 
こんな時に何してんだ…もうすぐ死ぬのに…と思い、薄闇の中、呆然と叔父を見つめていた。 
まだ携帯は鳴っている。プルルッ。叔父は携帯を見つめたまま。ヤツが俺の方に来た。
恐怖で失禁していた。死ぬ。 
その時、叔父が凄まじい咆哮をあげて、地面に落ちた懐中電灯を取り上げ、 
素早く俺の元にかけより、俺のペットボトルを手に取った。 
「こっちを見るなよ!!ヤツの顔を照らすから目を瞑れ!!」 
俺は夢中で地面を転がり、グラサンもずり落ち、頭をかかえて目をつぶった。

ここからは後で叔父に聞いた話。
まずヤツの顔を照らし、視線の外で位置を見る。 
少々汚い話だが、俺のペットボトルに口をつけ、しょんべんを口に含み、 
ライトでヤツの顔を照らしたまま、しゃがんでヤツの顔にしょんべんを吹きかける瞬間目を瞑る。霧の様に吹く。
ヤツの馬の嘶きの様な悲鳴が聞こえた。さらに口に含み吹く。吹く。ヤツの目に。目に。 

さっきのとはまた一段と高いヤツの悲鳴が聞こえる。だがまだそこにいる!! 
焦った叔父はズボンも下着も脱ぎ、自分の股間をライトで照らしたらしい。 
恐らくヤツはそれを見たのだろう。
言葉は分からないが、凄まじい呪詛の様な恨みの言葉を吐き、くるっと背中を向けたのだ。 
俺はそこから顔を上げていた。叔父のライトがヤツの背中を照らす。 
何が恐ろしかったかと言うと、
ヤツは退散する時までも、不気味な歌を歌い、体をくねらせ、ゆっくりゆっくりと移動していた!! 
それこそ、杖をついた高齢の老人の歩行速度の如く!! 
俺たちはヤツが見えなくなるまで、じっとライトで背中を照らし見つめていた。
いつ振り返るか分からない恐怖に耐えながら… 

永遠とも思える苦痛と恐怖の時間が過ぎ、やがてヤツの姿は闇に消えた。 

俺たちはロッジに戻るまで、何も会話を交わさず黙々と歩いた。 
中に入ると、叔父は全てのドアの戸締りを確認し、コーヒーを入れた。
飲みながら、やっと口を開く。 
「あれで叔父さんの言う、興味はそれたって事?」 
「うぅん…恐らくな。さすがに、チンコは惨めなほど縮み上がってたけどな」 
苦笑する叔父。
やがてぽつりぽつりと、邪視の事について語り始めてくれた… 

叔父は仕事柄、船で海外に行く事が多い。詳しい事は言えないが、いわゆる技術士だ。 

叔父が北欧のとある街に滞在していた、ある日の事。
現地で仲良くなった通訳も出来る技術仲間の男が、面白い物を見せてくれると言う。
叔父は人気の無い路地に連れて行かれた。
ストリップとかの類かなと思っていると、路地裏の薄汚い小さな家に通された。
叔父は中に入って驚いた。外見はみすぼらしいが、家の中はまるで違った。
一目で高級品と分かる絨毯。壺。貴金属の類…香の良い香りも漂っている。 
わけが分からないまま叔父が目を奪われていると、奥の小部屋に通された。 
そこには、蝋燭が灯る中、見た目は60代くらいの男が座っていた。
ただ異様なのは、夜で家の中なのにサングラスをかけていた。 
現地の男によれば、『邪視』の持ち主だと言う。

邪視(じゃし)とは、世界の広範囲に分布する民間伝承、迷信の一つで、 
悪意を持って相手を睨みつける事によって、対象となった被害者に呪いを掛ける事が出来るという。 
イビルアイ(evil eye)、邪眼(じゃがん)、魔眼(まがん)とも言われる。 
邪視の力によっては、人が病気になり衰弱していき、ついには死に至る事さえあるという。 

叔父はからかい半分で説明を聞いていた。この男も、そういう奇術・手品師の類であろうと。 
座っていた男が、現地の男に耳打ちした。
男曰く、「信じていない様子だから、少しだけ力を体験させてあげよう」と。 
叔父はこれも一興と思い承諾した。また男が現地の男に耳打ちする。
男曰く、 
「今から貴方を縛りあげる。誤解しないでもらいたいのは、それだけ私の力が強いからである。 
 貴方は暴れ回るだろう。私はほんの一瞬だけ、私の目で貴方の目を見つめる。やる事はただそれだけだ」 

叔父は、恐らく何か目に恐ろしげな細工でもしているのだろう、と思ったという。 
本当に目が醜く潰れているのかもしれないし、カラーコンタクトかもしれない。 
もしくは、香に何か幻惑剤の様な効果が…と。
縛られるのは抵抗があったが、友人の現地の男も、本当に信頼出来る人物だったので応じた。 
椅子に縛られた叔父に男が近づく。友人は後ろを向いている。 
静かにサングラスを外す。叔父を見下ろす。 

「ホントにな、今日のアイツを見た時の様になったんだ」 
コーヒーをテーブルに置いて、叔父は呟いた。 
「見た瞬間、死にたくなるんだよ。瞳はなんてことない普通の瞳なのにな。
 とにかく、世の中の全てが嫌になる。見つめられたのは、ほんの1~2秒だったけどな。 
 何かの暗示とか、催眠とか、そういうレベルの話じゃないと思う」

友人が言うには、その邪視の男は、金さえ積まれれば殺しもやるという。 
現地のマフィア達の抗争にも利用されているとも聞いた。 

叔父が帰国する事になった1週間ほど前、邪視の男が死んだという。 
所属する組織のメンツを潰して仕事をしたとかで、抹殺されたのだという。 
男は娼婦小屋で椅子に縛りつけれれて死んでいた。床には糞尿がバラ巻かれていたと言う。 
男は凄まじい力で縄を引きちぎり、自分の両眼球をくり抜いて死んでいたという。 

「さっきも言った様に、邪視は不浄な物を嫌う。
 汚物にまみれながら、ストリップか性行為でも見せられたのかね」 
俺は一言も発する気力もなく、話を聞いていた。さっきの化け物も、邪視の持ち主だっという事だろうか。 
俺の考えを読み取ったかのように、叔父は続けた。 
「アイツが本当に化け物だったのか、ああいう風に育てられた人間なのかは分からない。 
 ただ、アイツは逃げるだけじゃダメな気がしてな…だから死ぬ気で立ち向かった。 
 カッパも、人間の唾が嫌いとか言うじゃないか。
 案外、お経やお守りなんかよりも、人間の体の方が、ああいうモノに有効なのかもしれないな」 
俺は話を聞きながら、弟の夢の事を思い出して話した。弟が助けてくれたんじゃないだろうか…と。 
俺は泣いていた。
叔父は神妙に聞き、1分くらい無言のまま。やがて口を開いた。 
「そういう事もあるかもしれないな…00はお前よりしっかりしてたしな。 
 俺の鳴った携帯の事、覚えてるか?あれな、別れた彼女からなんだよ。 
 でもな、この山の周辺で、携帯通じるわけねぇんだよ。見ろよ。今、アンテナ一本も立ってないだろ? 
 だから、そういう事もあるのかも知れないな…
 今すぐ、山下りて帰ろう。このロッジも売るわ。早く彼女にも電話したいしな」
叔父は照れくさそうに笑うと、コーヒーを飲み干し立ち上がった。



アメリカ人にお経




昨日の者です。叔父さんから聞いた話にいくつか印象深い話があるので、書きたいと思います。 

「00、アメリカ人の幽霊を、お経で成仏させられると思うか?」 
叔父さんは唐突に聞いてきた。 
「無理じゃない?」 
「なぜ?」
「だって、お経知らないでしょ」 
「それだよ」 
叔父はニタリと笑った。 
「もちろん、お経だろうがキリスト教の悪魔祓いの儀式だろうが、霊的な力はあると思う。
 だが、それよりも重要なのは、死んだ人間がどの文化圏に属し、どういう生活習慣を送ってきたかだと思う。 
 例え、信心・信仰深くない人間でも、人生で何度かは、葬式や宗教の祭り、教会等に行った事はあるはずだ。 
 そこで、そういう所でそういう儀式を見ている。
 つまり、『死んだ者等に対しては、そうやって奉る事が常識だ』と思っている。
 古来からずっと続いてきた事だ。 
 それだけ人の思い、思い込みとも言っていいだろうが続けば、それは力を持つ。 
 つまり、霊の側も、何となく成仏した気持ちになってるのかも知れない。全部が全部とは言わないがね」 

「医者が、その症状には効かないビタミン剤とかを患者に渡し、患者が効くと思い込んで病気が治る、
 ってのに似てるね」 
「そうだな。じゃあ、人生の前半をアメリカで過ごし、人生の後半を日本で過ごしたアメリカ人の霊はどうだ?」 
「う~ん…両方効くんじゃない?」
「両方有効な可能性もあるが、最初に生まれ育った文化圏でのやり方の方が、有効な可能性のほうが高い」 
「というか、霊がいるってのは、叔父さん信じてるんだ?」 
「難しいな。そういう残留思念の様なモノはあると思う。
 俺も仕事柄世界中を回っているし、いくつも不思議なモノは見てきた。
 何とか説明がつくのが9割、どうしても分からないのが1割、かな。 
 さっきの話に戻るが、宗教的な呪文や儀式を、彫刻刀に置き換えてみるといい。 
 ド素人が彫刻刀を奮っても、凡作しか出来ないだろう。
 だが、才能溢れる人物が彫刻刀を奮えば、それは素晴らしい作品が出来上がるだろう。
 要は、呪文も儀式も媒体・触媒に過ぎず、それ自体にさほど効果があるわけではない、と言う事だ。
 優れた詩人が自分が作った詩を詠めば、それは不思議なな力を持つだろう。優れたミュージシャンが…も然り。 
 49日とか何回忌とか、死者は別に坊さんのお経が聴きたいのではない。 
 死者を想う家族の念や心、畏敬や感謝の気持ちが嬉しいのだと思う。 
 だから俺の葬式には、辛気臭いお経など詠ませずに、ビートルズの曲を流す様に頼んである」 
ビートルマニアの叔父さんは、そう言って笑った。




死者に会える方法




これは叔父さんがイギリスに滞在していた時に、現地のイギリス人の仕事仲間から聞いた話だ。 

とある青年がいたと言う。学生で、同じ学年に付き合っている彼女がいた。 
非常に仲睦まじく、お互い卒業したら結婚の約束までしていたと言う。 
だが、ある日不幸が起きた。彼女が交通事故で死んでしまった。
彼女は歩行者で、運転手の脇見運転からなる悲劇の事故だった。 
彼は病院に駆けつけた。死因は脳挫傷で、遺体は眠っているだけの様な本当に綺麗な物だったと言う。 
彼は深く悲しみ絶望した。
葬儀は彼女の遺族らと共に、深い悲しみの中行われた。 

彼は抜け殻の様になってしまった。
学校へもあまり出席せず、彼女と同居していた古いアパートに篭りっきりの生活をしていた。
少しでも彼女の思い出に触れていたいが為、
居間・台所・風呂・玄関・寝室・トイレに至るまで、彼女との思い出の写真を置き、何時でも目に入るようにしていた。 
そんな彼を心配して、友人達が良く部屋に出入りして励ましていたが、あまり効果は無かった。 
2Fの真上の部屋は小さな教会になっており、
彼と親しく割と歳も若い神父も励ましにやってきていたが、効果はなかった。
毎日、飢えない程度の粗末な食事をし、彼女の写真を見つめて過ごす日々が続いた。 

ある夜。彼は、子供の頃に聞いた話をふと思い出した。 
『死者と必ず会える方法がある』

その方法とは、 
時刻は深夜2時前後が良い。
まず、会いたい死者を思い浮かべる。その死者の遺品があればなお良い。 
家の門を開けておく。ただし、家の戸締りは必ず完璧に施錠する事。 
遺品を胸に抱き、蝋燭1本にだけ火を灯し、部屋の灯りを消し、ベッドに入り目を瞑る。 
そして、死者が墓場から這い出てくるのを想像する。生前の綺麗な姿のまま… 
死者がゆっくりゆっくり自分の家に歩いてくるのを想像する。
1歩1歩ゆっくりと…そして門を通り、玄関の前に立つのを想像する。
想像するのはそこまで。
そして、絶対に守らなければいけない事は、
死者が何と言おうとも、『絶 対 に 家 の 中 に は 入 れ な い 事』だった。
扉越しにしか話せない。何とも切ない事ではあるが、それがルールらしい。 

青年は漠然とそんな話を思い出していた。
会いたい。迷信だろうが作り話だろうが。もう1度会って話したい。 
もちろん、迷信だとは頭では思っていたが、
もしも彼女と話した様になった気がしたら、いくらか心も休まるかもしれない。
と、自分へのセラピー的な効果も期待し、それをやってみる事にした。 

時刻は深夜2時ちょっと前。
オートロックなんて洒落た物は無いので、アパートの門を開けておく。 
生前、彼女が気に入っていたワンピースを胸に抱き、蝋燭を灯し、部屋の灯りを消し、彼女の蘇りを想像した。
アパートは老朽化が激しく、2Fの真上の教会(彼の部屋の天井に当たる)から何やら水漏れの様な音がする。 
ピチャッ…ピチャッ…彼の部屋のどこかに水滴が落ちているらしい。
そんな事はどうでも良い…集中して…生前の綺麗な姿で…彼女が微笑みながら…部屋にお茶でも飲みに来る様な…

ドンドン ドンドン
ハッと目が覚めた。いつの間にか寝ていたらしい。 
ドンドン ドンドン 
何の音…?隣の住人?隣人も夜型の人だから、うるさ 
ド ン ド ン ! !  ド ン ド ン ! ! 
…違う。自分の部屋の玄関のドアを、誰かが叩いている。時計を見ると、深夜2時50分。 
こんな時間に友人とは考えにくい。…まさか。流石に冷汗が額を伝う。 
蝋燭を手に持ち、恐る恐る玄関に近づく。
叩く音が止んだ。 

「…誰?」
返事がない。 
「00か…?」
彼女の名を呼ぶが、返事が無い。
恐る恐る覗き穴から覗く。 
長い髪の女が後ろを向いてドアの前に居る!!何者かが確実に居る!! 
「00なら答えてくれ…」
青年はふいに涙が溢れてきた。楽しかった思い出の数々が蘇る。 
「寒い…」
ふいに女が口を開いた。
彼女の声の様な気もするし、そうではない気もする。 
「寒い…中に入れて…00」
女は青年の名を呼んだ。涙が止まらない。抱きしめてやりたい!!
青年はルールの事など忘れて、ドアを開けた。 
女は信じられないスピードで後ろ向きのままスッと部屋に入った。 
青年が顔を見ようとするが、長い髪を垂らし俯いたまま必ず背中を向ける。 
青年が近づこうとすればスッと距離を置く。

「とりあえず、ベッドにでも腰掛けてくれよ…」
青年が言うと、女は俯いたままベッドに腰を落とした。 
しかし、この臭い…たまらない臭いがした。彼女が歩いた跡も、泥の様なモノが床にこびり付いている。 
しかし彼女は彼女だ。色々と話したい。

死人にお茶を出すのも妙な気がしたが、2人分の紅茶を入れ、彼女の横に座った。 
蝋燭をテーブルに置き、青年は語り尽くした。
死んだ時苦しくはなかったか、生前のさまざまな思い出、守ってやれなかった事… 
1時間は一方的に語っただろうか。相変わらず彼女は俯いたまま、黙ってジッとしている。 

やがて、蝋燭の蝋が無くなりそうになったので、新しい蝋燭に変える事にした。
火をつけて彼女を照らす。 
…おかしい。ワンピースの右肩に蛇の刺青が見える。彼女はタトゥーなど彫ってはいない。 
足元を照らす。右足首にもハートに矢が刺さっている刺青。 
というか、黒髪…??彼女はブロンドだ…言い様のない悪寒が全身を走る。 
誰だ…!?
電気をつけようとしたその時、女が凄まじいスピードで起き上がり、青年の腕を掴む。 
凄まじい腐臭。女がゆっくり顔を上げると、蝋燭の灯りの中に見たくもない顔が浮かび上がってきた。
中央が陥没した顔面。合わせ絵の様に左右の目が中央に寄っている。 
上唇が損壊しており、歯茎が剥き出しになっている。飛び出ている舌。 
青年は魂も凍るような絶叫を上げたが、女は万力の様な力で青年の腕を締め上げる。 
女が何か呻く。
英語じゃない…ロンドンのチャイナタウンで聞き覚えのある様な…まさか…!!
彼女を轢いたのは在英の中国人女と聞いている…その女も即死している…こいつが!?殺される!!

青年がそう思い、女が顎が外れんばかりに損壊した口を大きく開けた瞬間、 
凄まじい雷か破裂音の様な音が室内にこだまし、天井が崩壊してきた。
女は上を見上げ、青年はとっさに後方に飛びずさる。
崩壊して落下する瓦礫と共に大量の水が流れてきた。 
女は「ギッ」と一言だけ発し、瓦礫と大量の水に埋もれて消えた。 
崩壊は天井の一部だけで済んだ様だった。
青年が唖然として立ち尽くしていると、上から寝巻き姿の若い神父が、驚愕の表情で穴を見下ろしていた。 

その後アパートは、消防・警察・深夜に爆音で叩き起こされた野次馬達等で大わらわとなっていた。 
調べによると、2Fの神父の教会兼自宅のバスタブと下の床が腐食しており、それが崩壊の原因だと言う。 
ただ、確かに腐食はしていたが、今日の様に急に床ごとブチ破る様な腐食では無いという点に、
警察消防も首を傾げていた。 
さらに、神父は月に1度、聖水で入浴していた。その日、バスタブに浸っていたのは聖水だったという。 
もちろん、青年は女の事など誰にも話さなかったし、瓦礫の下にも誰もいなかった。
ただ、血の混じった泥の様な物が一部見つかったという。 
そして青年は不思議な事に気がついた。
部屋の至る所に散りばめていた彼女との思い出の写真立てが、全て寝室に集まっていたのだと言う。 
まるでベッドを円形に囲む様に。

青年は部屋を覗き込む野次馬の中に、微笑む彼女を見た様な気がした。



ドルイド信仰



ドルイドとは、ケルト人社会における祭司のこと。Daru-vid『オーク(ブナ科の植物)の賢者』の意味。 
ドルイドの宗教上の特徴の一つは、森や木々との関係である。
ドルイドは、ヤドリギの巻きついたオークの木の下で儀式を執り行っていた。 
柳の枝や干し草で作った編み細工の人形を作り、その中に生きたまま人間を閉じ込めて、
火をつけて焼き殺し、その命を神に奉げるという、人身御供の祭儀も行っていた。 
刑罰の一種として、森林を違法に伐採した場合、
樹木に負わせた傷と同じ傷を犯人に負わせて木に縛り付け、樹木が許してくれるまで磔にするという刑罰もあった。

自分の叔父は仕事柄、船で海外に行く事が多かった。詳しい事は言えないが、いわゆる技術士だ。 
1年の6~7割は海外(特に北欧)で仕事をしている様な人で、日本に帰って来ている時は良く遊んでもらったものだ。
今は既婚で、引退して悠々自適な生活を送っており、知識も豊富でバイタリティ溢れる快男児だ。 
以前も2話程、叔父関連の話を書いているはずだ。その叔父にこんな恐ろしい話を聞いた。 

当時叔父は30代で、彼女とマンションに同棲しており、幸せに暮らしていた。 
ひょんな事からお隣さんと親しくなったらしい。お隣さんは年配の夫婦で、病気の子供が1人。 
旦那さんも仕事柄、海外に飛ぶ事が多いとの事だった。
話題も合うという事で叔父とは意気投合し、その奥さんも温厚で、夕食を呼んだり呼ばれたりする仲にまでなったそうだ。

ある年の真冬。 
そのご夫婦と賑やかな食卓を共にしていると、そのご夫婦の別荘の話題になった。 
何でも、関東近郊の閑静な山奥に、別荘を1つ所有しているらしい。 
近くには小川もあり、魚等も釣れ、年に1度は家族で病気の息子の療養がてら遊びに行くらしい。 
どうやら今年は仕事の関係で行けなくなったらしく、叔父達に「良かったら使ってくれても良い」との事だった。 
アウトドア好きな叔父は、喜んで使わせてもらう事になった。
そんな叔父と趣味も合った彼女も賛同したらしい。 

そして翌年の年明け、叔父は彼女と共にその別荘へと向かった。 

あまり舗装されていない山道を40分ほど登った場所にその別荘はあった。 
別荘を目にした途端、彼女の溜息が聞こえたそうだ。感動ではない方の。 
「ホント、掘っ立て小屋みたいな感じだよ。こっちは小洒落たロッジ的なモノを想像してたんだけどな。 
 あの夫婦の説明を聞く限り、誰でもそう思うと思うよ」 
叔父は苦笑しながら言った。
とにかく、その別荘はお粗末なモノだったらしい。 
木造平屋で狭い玄関。猫の額ほどのキッチン。古びた押入れに入った布団。
暖炉がある広間がやや広い事だけは救いだったらしい。 

来てしまったモノは仕方がないので、なるべく自分達が楽しむ事にしたと言う。
昼は川魚を釣ったり、近辺の林を散策し、野草を採ったり。
それらは夕飯には天ぷらとして食卓に並び、それはそれで楽しい夕飯だったそうだ。 
「野草を採ってる時に、かろうじて遠くに別荘が見えるくらいの距離の、少しだけ森の深くに行ったんだが… 
 その時に、ちょっと気になるモノがあってな。
 ナラ(楢)の木があったんだよ。クヌギなんだけどな。 
 この森にクヌギの木って、ちょっと浮いててな。
 周りは違う種類ばかりだし、明らかにそこだけ近年植林したんじゃないかなぁ。上にヤドリギも撒きついてたよ。
 クヌギは、10年も経てば大きくなるからな。
 で、気味が悪いのが、そのクヌギに何か文字が彫ってあってな。 
 オガム文字って言ってな。古代のドルイド(上記参照)等が、祭祀に使ってた文字なんだよ。 
 横線を基準と見て、その上下に刻んだ縦や斜めの直線、1-5本ほどで構成されててな、
 パッと見文字には見えないんだが… 
 ま、何て書いてあるかまでは分からんが、不気味ではあるよな。日本だぜここは」 
叔父の様にオカルト方面に知識がある人から見たら、確かに不気味なのだろう。 

そんなこんなで、その日の就寝の時に事件は起こった。 
叔父が窓や玄関の戸締りを確認しようとしていた時の事だった。 
「何で最初に気がつかなかったんだろうな。鍵がな、外側にも付いてるんだよ」 
つまり、窓の内鍵とは別に、窓の外側にも鍵が付いているのだ。玄関の入り口の戸にも。 
「これはヤバイと思ったな。部屋の中に家具が異様に少ないのも、実は気になってたんだよ。 
 生活に必要最小限のモノだけ…それも、全て木造で燃えやすく…
 パッと思い浮かんだのが、ウィッカーマンだな」

映画にもなり、近年リメイクもされたのでご存知の人も多いと思うが、上記でも書いた様に、 
『柳の枝や干し草で作った編み細工の人形を作り、
 その中に生きたまま人間を閉じ込めて、火をつけて焼き殺し、神に捧げる』
と言うおぞましい秘儀が、古代ドルイドの祭儀であるのだ。
それを英語では『ウィッカーマン(wicker man)』、編み細工(wick)で出来た人型の構造物と言うらしい。 

「彼女を不安がらせない様に、その事や鍵の事も秘密にし、俺だけ起きてる事にしたよ。全部の内鍵開けてな。
 そしたら、夜中だよ」 
砂利を踏む音と、人の気配が別荘の外でした。
すかさず窓を開ける。例のお隣の夫婦の旦那だった。 
「何をなさってるんですか?」
叔父に急に見つかり、厳しい声を投げかけられた旦那は、驚愕の表情でしどろもどろだったと言う。 
「いや、その…大丈夫かなと…」
「大丈夫じゃなないですよ。その缶は何です?灯油の缶じゃないんですか?」 
「い…いや…ストーブの灯油を、切らしちゃいかんと思ってね…」 
「暖炉がありますよね?」
「いや…まぁ」

叔父は外鍵の事を厳しく追及した。
旦那が弁解するには、この別荘も人から譲り受けたモノで、外鍵はその当時からついていたらしい。 
「信じるわけないわな。そんな気味の悪い家で誰が泊まりたがる?」 
叔父はまったく旦那の言う事は信用しなかった。

外の騒ぎで寝ていた彼女も起きだし、不安そうな顔を覗かせていた。 
「○○さん(旦那)…あんた、ドルイドの何かやってるんじゃないでしょうね」 
「は…?何ですかそれは」 
「とぼけたって良いんですよ?裏の森のクヌギ。良い薪になりそうだなぁ」 
「な…何を言うんですか!!」 
「あんた、俺らをウィッカーマンにして、捧げようとしたんじゃないのかっ!!」 
「…」
「本当の事を言わないのならクヌギを切り倒す」と脅した叔父に対し、旦那は全てを話し始めた。 

前にも述べた通り、この夫婦には重い病気の息子がいる。
治療法は、病の進行を遅らせる強い副作用のある方法しかない。 
あらゆる方法を試したが、病は一向に癒える気配は無かった。
そんな藁にも縋る思いも極まった時の事。 
15年前、仕事先で訪れたウェールズのある村で、ドルイドの呪術師に出会ったと言う。 
そのドルイドの呪力が篭ったオークの木の苗を、大枚叩いて旦那は買い、日本へ持ち帰った。 
そのドルイドから授けられた秘術は、
『毎月6日に、白い衣装を見に付けオークの木に登り、 
 ドルイドから譲り受けた(これも大枚叩いて買ったらしい)鎌で、オークに寄生しているヤドリギの枝を切り取り、
 生贄をオークの木に捧げる』と言うものらしい。
その祭儀の見返りの願いは言うまでも無く、息子の病を治す事だ。 

「確かに、その日は1月6日だったなぁ…」
「生贄って…」 
俺は恐る恐る叔父に聞いた。 
「最初は小動物とかだったらしいよ。ハムスターとか、野良猫とか、犬とかな。クヌギの木の根元に埋めて。 
 心なしか、大きな動物になればなる程、息子の病が良くなっている様な気がしたらしい。 
 まぁ、そのドルイドに1杯食わされたんだろうけどな。
 でも、病気の子供を持つ、悲しい親の愛とは言えども、あんまりじゃないか?俺らを焼き殺そうとするなんて」 
叔父は笑いながら言った。

それから、懇々とその旦那を説き伏せたらしい。
人を呪わば穴二つ。そんな事をしても何も良い事はない。
オカルト方面に詳しい叔父だけに、様々な知識も動員して旦那を説き伏せた。 

「50にもなろうかと言うオッサンが、声上げて泣いてたなぁ。
 まぁ、俺らも殺されそうにはなったとは言え、その旦那の気持ちも分からんでもないからなぁ。同情心もあって。
 彼女も少しもらい泣きしてたかな。 
 旦那も、クヌギも別荘も処分する事を約束してくれてな。明日にでも、特にクヌギの処分は俺ら同伴で」 
「じゃあ、この件は、警察沙汰にもならずに一件落着、と」 
「ところがなぁ。あのオークは(本物)だったんだなぁ」



何とか旦那を説き伏せて、暖かいコーヒーを飲みながら3人が落ち着いてきたその時、旦那の携帯が鳴った。
奥さんの声が否が応でも聞こえてきたと言う。ヒステリックな金切り声だ。 
明らかに『殺したの?捧げたの?やったの?』と、傍の叔父にも聞こえて来たと言う。 
あんなに温厚に見えた奥さんの方が、実はこの件では主導権を握っていたのだと思い、ゾッとしたと言う。 
奥さんは東京のマンションから電話をしているらしい。
旦那はある程度は言い返してはいたが、奥さんの凄い剣幕に終始押され気味だったと言う。 
たまりかねて叔父が電話を変わり、物凄い口論となった。
一時は殺されそうになり、まだ片方が殺意を剥き出しにしているのだから、
激しい感情のぶつかり合いになるのは至極当然だろう。 
叔父の彼女も先ほどの涙とはうって代わり、叔父に負けじと口論に加わったと言う。 
「こりゃ将来尻に敷かれるなぁと思ったね。その時は」 
叔父は苦笑しながら言った。確かに今は尻に敷かれている様だ。 

やがて叔父がたまりかねて、警察、裁判沙汰をちらつかせる様になると、
やっと奥さんも大人しくなり、しぶしぶ旦那の話も聞くようになってきたと言う。 

一応、いざこざの一段落はついた。
流石にその日は深夜になっていたので、その別荘で休む事になった。 
「一応さ、話はついたけど、まさか眠るわけには行かないよな。あんな事されそうになって」 
暖炉の広間で叔父と彼女が身を寄せ合って座り、離れた場所に旦那が申し訳なさそうに座っていた。 
「明日、旦那の知り合いの業者に手伝ってもらい、クヌギの木は切り倒す事を約束してもらったからさ、
 それを見届けるまではな」
3人ともその日は寝ずに、朝を迎える予定だった。

夜もさらに深まった、午前3時頃だったと言う。
「ザッ ザッ ザッ」と、森の奥から何かが近づいてくる音が聞こえた。野生の動物か、野犬か。 
コックリコックリと船を漕いでいた叔父も、その音に目が覚めた。
「明らかに人間に近い足音と気づいた途端、ゾッとしたね」 
最初は奥さんが来たと思ったらしいが、あの電話を終えてからこんな短時間でここまで来れるわけがない。 
いや、あの電話は実は近くからかけていたとしたら…もしくは他に仲間がいたとしたら…? 
叔父は寒さなどお構い無しに全ての窓や戸を開け、アウトドア用のナイフを手に、臨戦態勢で息を殺していた。 
「ザッ ザッ ザッ」という音は一向に止む事はなく、明らかにこの小屋に向かっている。
「それから10分後くらいかな。
 もうな、普通にこの小屋を訪ねて来るように、玄関の戸に立ったんだよ。足音の主が」
「○○?(妻の名前)」と旦那が叫んだ。が、すぐ驚愕から恐怖の悲鳴に変わった。 
「奥さんの様で、奥さんじゃないんだよ。顔はほとんど同じなんだな。だが、生気が無いと言うか。 
 で、この真冬に素ッ裸だぜ?でな、最初は旦那は、妻の様なモノの裸に驚いて声を上げたと思ったんだよ。 
 違うんだよな。肌の質感も色も、木そのものなんだよ。
 で、もっと怖かったのは、左右の手足が逆についてるんだよ。
 分かるか?それが玄関に上がって来ようとしてな、右足と左足が逆なもんだから、動きがおかしいんだよ。
 上がり口に何度もつっかえたりして。それが何よりおそろしくてなぁ」 
確かに想像するだけでもイヤな造形だ。 

「彼女は絶叫してたな。旦那も、明らかに妻じゃないって確信したと思う。 
 でもな、一応人間の形はしてるんだからさ。刺せないぜぇ?なかなかそんなモノを。 
 やっぱ、人間の心ってリミッターあるからさ。もし人間だったらどうしよう、とか思うよ」 
それは確かに分かるような気がする。
「でな、その妻の様なモノがとうとう小屋の中に入ってきて、何か言うんだよ。 
 それも、何言ってるか分からなくてな。カブトムシの羽音みたいな音を喉から出して。 
 で、左右逆の足でヨタヨタしながら、俺の方に向かって来るわけだ。
 しかし、俺も真面目なもんだよなぁ。
 それでも最後に一応、『○○さんですかっ!?』って聞いたよ。さっきのリミッターの話な。 
 それでも、ソイツは虫の羽音の様な耳障りな音を喉から発して、
 これまた左右逆の両腕を伸ばし、俺の首を絞めてきたもんだから、
 思いっきりソイツの腹を前蹴りで蹴ったよ。 
 すると腹がボロボロ崩れて、樹液みたいな液を撒き散らし、腹に空洞が出来てやんの。 
 それで決心出来たんだよな。あぁ、これは人間じゃないから、ヤッちゃって良いんだってな」 
と、豪快に笑いながら叔父は言った。
こういう時の度胸を決めた叔父は本当に頼もしく見える。

不気味な声を発しながら、ソイツは起き上がって来たらしい。
叔父はナイフをソイツの脳天に1発、もう1度蹴り倒したら、空洞の腹を貫通し、胴体が千切れたらしい。
彼女と旦那の絶叫が一段と激しくなったと言う。

「で、腹の中から異臭のする泥やら、ムカデやら色んな虫がワラワラ出てきてさ。もう部屋中パニックだったな。
 床に倒れたソイツの人型も、段々ボロボロと崩壊していって、床には泥と虫だけが残ったね。 
 気持ち悪くて、ほとんど暖炉に放り込んだな。
 突立てたナイフが、いつの間にか消えてたのが気になったけどな」 

その凄惨な格闘が終わり、全ての残骸を暖炉に投げ込んだ後、すぐさま旦那に妻へと電話をさせたらしい。
妻はすぐに出た。
「妻は死んでいた!とか、やはりそういうのは心配するだろ。形が形だけに。
 元気だったけどな。まぁキョトンとしてたな。
 流石に今起きた事は言わなかったけどな。後で旦那が話したかどうかは知らないが… 
 でも流石に、全て終わった後に恐怖が襲って来たね。手足とか震えて来てな。彼女はずっと泣いてたな。 
 で、1番怖かったのは、彼女が暫くして変な事言い始めたんだよな。
 何でアレに『○○さんですか?』と問いかけたのかと。 
 変な事聞くなぁと思ったね。顔はどう見てもあの奥さんなんだから」 
「で、どういう事だったのかな?」 
俺が聞くと、叔父は気味が悪そうにこう言った。 
「『よく自分の形をしたモノの頭に、ナイフなんて突き立てられたね』って、彼女はこう言ったんだよ。 
 つまり、彼女にはあの化け物が、俺の姿に見えてたんだよな」 

叔父が想像する所は、次の様な事らしい。
古代ドルイドの秘儀で、オークの木に邪悪な生命が宿った。 
それにあの妻の怨念も乗り移り、生贄が止まった事に見兼ねて、自ら実体化して現れたと。 
そして、見る対象者によっては、あの化け物が様々な姿形に見えるのではないかと。 

「翌日、日が真上に昇るまで待って、あの木を見に行ったよ。 
 木の表面が2cm程陥没してて、1m60cmくらいの人型になってたな。
 そして、頭部らしき箇所に、俺のナイフが突き立ってたな」 

やがて夕方になり、旦那の知り合いの業者がやってきて、クヌギを木を切り始めたと言う。 
「最初にチェーンソーが入る時と、木が倒れる時、完全に聴こえたんだよ。女の絶叫がね。
 俺と彼女と旦那だけ聴こえた様子だったな。 
 で、切り株と根っこまで根こそぎトラックに積んでたんだが、小動物の骨が出るわ出るわ。
 業者も帰りたがってたな。さっきの人型と良い、そりゃ気味悪いよな。まぁ、人骨が出なかっただけマシかぁ?」

後日、隣の夫婦がそれなりの品物を持って謝罪に訪れたと言う。 
「受け取ってすぐ捨てたけどなぁ。やっぱり、色々勘ぐってしまうよな」 
そして、すぐ夫婦は引っ越し、叔父たちもその後すぐにマンションを引き払ったらしい。
暫くして、叔父は彼女とは一時別れてしまったそうだ。 

「そんな事もあったねぇ」 
紅茶を飲みながら、叔父が懐かしそうに言った。 
「そうだな…あぁ、そう言えば…」 
叔父が庭の木を見つめて呟いた。 
「ウチにもオーク、ナラのカシワの木があったな。縁起物だから、新築の時植えたんだがな。 
 まぁ、アレだな。モノは使い様と言うか…人間の心次第と言う事かな。 
 それがプラスかマイナスかで、有り様が変わってくるからな」 

そして、叔父の話は終わった。
今度来るときは、カシワの葉で包んだ柏餅をご馳走してもらい事を約束し、その日は叔父夫婦の家を後にした。

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