594:名無しのオカルト 2009/03/09(月) 23:46:36 ID: ID:cJhOepSq0
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
山村に逗留していると、そこの男が奇妙な乾物を幾つか持ち込んできた。
薄紫がかった灰白色の植物のものだ。掌からはみ出すほどの大きさがある。
訛りの酷い男の話を聞くうち、これがある種の冬虫夏草らしいとわかった。
最も中国で冬虫夏草と呼べるのは、特定種類の蛾の幼虫に寄生する物だけらしいので、
ここでは単に虫草と記しておく。
『ただの虫草じゃないよ』自慢気に男は続けた。
『これは人の死体にだけ憑いて生える、特別なヤツなんだ』
不意に幻覚に襲われた。
倒れ伏した腐乱死体から、今手にしている草が幾つも幾つも生え伸びている風景。
非常におぞましい感じを覚えたのだという。
「えらく高いこと吹っ掛けられたんで、結局買わなかったのですけどね」
少しだけ笑いながら彼はそう言っていた。
595:名無しのオカルト 2009/03/09(月) 23:48:46 ID: ID:cJhOepSq0
(続き)
逗留していた山から下りて、街で馴染みの薬屋と一杯飲んでいた夜のこと。
話がてら「そういえば、変な虫草を売りに来た男がいました」と何気なく漏らす。
話を聞いた薬屋は顔を顰めた。
『買ってないだろうな。買ってたら直ぐに焼け。身に近づけるな』
そして何か汚らしい、そして恐ろしい物を見るような目付きで彼を見た。
「まさかアレは危ない代物だったのですか?」
どうにも気になって尋ねたという。
薬屋がいうには、彼が籠もっていた山の更に上の方に、ある少数民族が住んでおり、
そこに小さな村を構えているのだと。
そこの住人には自分の死期を悟る能力があって、寿命が来ると山の高みに登って
姿を消す。
住人がいなくなって後しばらくしてから、その家族が遺体を探しに山を登る。
程なく見つかる遺体には、彼が見たあの虫草がビッシリと生えているのだと。
遺体はそのまま山に還るに任せ、草だけを刈ってから山を下りる。
そしてその草を村民皆で煮て食べるのが、その村流の葬儀であるらしい。
『村はとんでもなく高い所にあるってんだが、住んでる奴ら皆が皆、異常に健康体
なんだと。あの草と何らかの共生関係にあるのかもしれん。
お前さんな、もうこれからは高い山に登らん方がいい。
あの虫草はどうも、ある一定の高度になると、宿主の体内で発芽してるみたい
なんだ。だから死期を悟った住人は、そこまで登ってから死を待つという話だ』
596:名無しのオカルト 2009/03/09(月) 23:50:07 ID: ID:cJhOepSq0
(続き)
薬屋はこうも続けた。
『彼らは本当に寿命がわかったから、そんな行動を取っているのかねぇ?
実はすべてが思い込みに過ぎなくて、体内の虫草が繁殖したくなったから、
高い所に 登らされてるんじゃないか、操られてるんじゃないか・・・ってのは
考え過ぎかねぇ?』
そして、芝居気たっぷりにこう付け加えた。
『あくまでも、私が考えるだけだけど・・・ね』
「信じた訳じゃないですけど。以来、高い山にはほとんど登ってないですねえ」
苦笑しながらこう続けた。
「富士山、もう一回くらい登っときたいのですけど。どうしましょうかねえ」
600:名無しのオカルト 2009/03/10(火) 00:04:06 ID: ID:W76J/+za0
その怪しげな草を食うから寄生されるんじゃ・・
601:名無しのオカルト 2009/03/10(火) 00:23:52 ID: ID:n2paBjJf0
怖っ。雷鳥サン乙です。
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
山村に逗留していると、そこの男が奇妙な乾物を幾つか持ち込んできた。
薄紫がかった灰白色の植物のものだ。掌からはみ出すほどの大きさがある。
訛りの酷い男の話を聞くうち、これがある種の冬虫夏草らしいとわかった。
最も中国で冬虫夏草と呼べるのは、特定種類の蛾の幼虫に寄生する物だけらしいので、
ここでは単に虫草と記しておく。
『ただの虫草じゃないよ』自慢気に男は続けた。
『これは人の死体にだけ憑いて生える、特別なヤツなんだ』
不意に幻覚に襲われた。
倒れ伏した腐乱死体から、今手にしている草が幾つも幾つも生え伸びている風景。
非常におぞましい感じを覚えたのだという。
「えらく高いこと吹っ掛けられたんで、結局買わなかったのですけどね」
少しだけ笑いながら彼はそう言っていた。
595:名無しのオカルト 2009/03/09(月) 23:48:46 ID: ID:cJhOepSq0
(続き)
逗留していた山から下りて、街で馴染みの薬屋と一杯飲んでいた夜のこと。
話がてら「そういえば、変な虫草を売りに来た男がいました」と何気なく漏らす。
話を聞いた薬屋は顔を顰めた。
『買ってないだろうな。買ってたら直ぐに焼け。身に近づけるな』
そして何か汚らしい、そして恐ろしい物を見るような目付きで彼を見た。
「まさかアレは危ない代物だったのですか?」
どうにも気になって尋ねたという。
薬屋がいうには、彼が籠もっていた山の更に上の方に、ある少数民族が住んでおり、
そこに小さな村を構えているのだと。
そこの住人には自分の死期を悟る能力があって、寿命が来ると山の高みに登って
姿を消す。
住人がいなくなって後しばらくしてから、その家族が遺体を探しに山を登る。
程なく見つかる遺体には、彼が見たあの虫草がビッシリと生えているのだと。
遺体はそのまま山に還るに任せ、草だけを刈ってから山を下りる。
そしてその草を村民皆で煮て食べるのが、その村流の葬儀であるらしい。
『村はとんでもなく高い所にあるってんだが、住んでる奴ら皆が皆、異常に健康体
なんだと。あの草と何らかの共生関係にあるのかもしれん。
お前さんな、もうこれからは高い山に登らん方がいい。
あの虫草はどうも、ある一定の高度になると、宿主の体内で発芽してるみたい
なんだ。だから死期を悟った住人は、そこまで登ってから死を待つという話だ』
596:名無しのオカルト 2009/03/09(月) 23:50:07 ID: ID:cJhOepSq0
(続き)
薬屋はこうも続けた。
『彼らは本当に寿命がわかったから、そんな行動を取っているのかねぇ?
実はすべてが思い込みに過ぎなくて、体内の虫草が繁殖したくなったから、
高い所に 登らされてるんじゃないか、操られてるんじゃないか・・・ってのは
考え過ぎかねぇ?』
そして、芝居気たっぷりにこう付け加えた。
『あくまでも、私が考えるだけだけど・・・ね』
「信じた訳じゃないですけど。以来、高い山にはほとんど登ってないですねえ」
苦笑しながらこう続けた。
「富士山、もう一回くらい登っときたいのですけど。どうしましょうかねえ」
600:名無しのオカルト 2009/03/10(火) 00:04:06 ID: ID:W76J/+za0
その怪しげな草を食うから寄生されるんじゃ・・
601:名無しのオカルト 2009/03/10(火) 00:23:52 ID: ID:n2paBjJf0
怖っ。雷鳥サン乙です。
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