【閲覧注意】怪談の森【怖い話まとめ】

当サイト「怪談の森」は古今東西の怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!

カテゴリ: シリーズ




139 :本当にあった怖い名無し:2007/12/20(木) 10:23:33 ID:Jz394uwlO

僕の友人に、古美術商をしている坂さんという人がいる。店が坂の途中にあるから『坂さん』。
30過ぎて枯葉のように生きている半引きこもりだ。
取り扱っているのは、一応は美術品や骨董品の類となっているけど、 
素人目に見ても価値なんてなさそうなガラクタで店が埋め尽されていて、正直言って大分不気味だ。 
品数だけはやたらと豊富なので、大繁盛とまではいかないまでも、食べていくのに困らない程度には客がついている。
だけど、その品揃えの中にいくら探しても見つからない物がある。 
美術品としてはポピュラーで、どこの店でも一つくらいはある物が無い。 
金はないがコネはある坂さんなら、いくらでも仕入れてこれそうなのに、決してそうしない。 
その事を疑問に思った僕に、坂さんはある物を見せてくれた。 


140 :本当にあった怖い名無し:2007/12/20(木) 10:25:06 ID:Jz394uwlO
坂さんはレジスターの下から15センチ四方の箱を取り出して、僕の前に置いた。 
箱の表面にはエナメル細工で出来た小さな薔薇が沢山付いていて、宝石箱のようだった。 
「……箱?」
「箱やないよ。寝室やね」
坂さんは人差し指で、箱の側面を小さく2回叩いた。 
「失礼します」
箱に向かってそう言ってから、静かに蓋を開けた。 
箱の内側は赤い布が張られていた。見るからに柔らかそうなその布に包まれて、ソレはあった。 
丸みを帯びた、長方形の白い物体。すべすべした表面を見るに、石膏で出来ているようだった。 
左右の側面にそれぞれ一つ、底に二つ、上に一つ、嵌込み穴のようなものが開いている。 
もっとよく見ようと覗き込んだ瞬間、強烈な吐き気を催した。 
次いで首筋に激しい痛みが走り、僕は椅子から転げ落ちた。 
痛みは右手、左手にも現れた。鋭い棒で何回も何回も刺されているようで、だけど勿論棒なんか見えない。 
というか店の中には、僕と坂さん以外には誰もいない。
そうしている内にも両足も痛みだし、立っていられなくなった。 
痛みでのたうち回る僕を尻目に、坂さんは箱の中へ向けて小さく呟き、静かに蓋を閉めた。 


141 :本当にあった怖い名無し:2007/12/20(木) 10:26:11 ID:Jz394uwlO
痛みは急に消えた。床に転がったまま呆然とする僕に、坂さんはため息混じりに言った。 
「君がじろじろ見るから、客やと思たみたいやね。ちゃんと言うといたから、もう大丈夫やよ」 
「……なんなんすか、一体」
「彼女はウチが気に入ってるから、出ていきたないんやわ」 
「彼女?」
坂さんは箱をしまい、僕を立たせてくれた。 
「そう。嫉妬深くて執念深くて、おまけに自分にパーツが無いんを気にしてんねや。 
 新しいのん仕入れても直ぐに自分のもんにしてまうから、ウチじゃもう扱わんことにしとんねわや」 
「それってつまり……」
僕は慌てて首に手をやった。ぬるぬるとした血の感触に背筋が凍った。 
救急箱から傷薬を取り出し、坂さんは思い出したように言った。 
「彼女が君のこと、気に入った言うてんねやけど」 
勿論即座に断った。

 
☜1日1クリックの応援お願いします




225 :1/5:2007/10/10(水) 21:15:16 ID:DnvRUKybO
僕の友人に、古美術商を営んでいる人がいる。坂の途中に店があるから、通称『坂さん』。 
友人といっても歳は10歳以上離れているし、月に2、3回会うか会わないかといった程度だから、
僕は彼については、名前と職業とあるひとつの厄介な趣味以外は殆ど知らない。 

それで彼の趣味というのが、まぁ予想はついていると思うがオカルトで、 
そもそもそれが高じて、古美術の名を借りた魔術道具まがいの店を始めたらしい。 
おかげで彼の店は、いつ行っても不気味な雰囲気が漂っていた。 
自称武久夢二の絵なんかも飾ってあるのだけど、明らかに逆効果になってたし。 

ある日、彼から電話がかかってきた。凄い物を仕入れたから見に来いと言うのだ。 
丁度試験明けで暇だったので、僕は学校帰りに彼の店を訪ねることにした。 


226 :2/5:2007/10/10(水) 21:16:58 ID:DnvRUKybO
彼は年期の入ったレジスターに肘をつき、テレビでワイドショーを見ていた。 
「坂さん、こんにちは」 
声をかけると、日に当たらないせいで真っ白な顔がこっちを向いた。 
「ああ、いらっしゃい」 
客商売にまるきり向いていない無愛想な声で坂さんは答えた。 
「そこら、適当に座り」 
僕が店の空いているスペースに適当に座ると、坂さんはレジスターの下の金庫から一冊の本を取り出した。 
古ぼけた洋書だった。日に焼け、虫食いやよく分からないシミがところどころについていた。 
金文字のタイトルは読めなかった。 
「なんすか、これ?」 
「水神クタアト」 
「……なんすか、それ」 
坂さんの答えに、僕はもう一回同じ質問をした。 
坂さんはつまらなそうに説明してくれた。 
「ラヴクラフトが小説ん中で言及した魔導書……いや、ラムレイやったかなぁ。 
 とにかく、現実には存在せん本やね」 
「は?じゃあこれは?」 
「どっかのマニアが自分で作った、同人誌みたいなもんやと思う」 
ほら、と坂さんが見せてくれた本のページは真っ白だった。 


227 :3/5:2007/10/10(水) 21:18:21 ID:DnvRUKybO
「装丁作ったんはええけど、内容が分からんかったんやろね。全ページ白紙やったわ」 
確かに、おしまいまでページをめくってみたが、全く何も書かれていなかった。 
一体これのどこが『凄い物』なのか。落胆する僕を見て坂さんは笑った。 
「以上が前の持ち主の説明。そんでこっからが、僕の説明。 
 なぁ、その本、やたら紙が分厚いと思わん?」 
確かに、一ページ一ページがまるでボール紙のように奇妙に分厚かった。
坂さんは僕から本を取り返すと、初めの方の一ページを破った。 
そして呆気に取られている僕を尻目に、イカの皮でも剥ぐみたいに、破ったページを剥いだ。 
やったことある人なら分かると思うけど、
段ボールとかお菓子の箱の紙とか、薄い紙を何枚も重ねてあるような紙を一枚一枚剥く、あんな感じで。 
ただ違ったのは、ページは元々大きな一枚の紙だったものを、折って重ねた物だったということだ。 
だから坂さんの行為は、『剥ぐ』より『開く』の方が正しいのだろう。 
開いた中――折り畳まれていた内側を、坂さんは僕に見せてくれた。 


228 :4/5:2007/10/10(水) 21:20:02 ID:DnvRUKybO
くすんだ赤色で書かれた筆記体の文章と、訳の分からない図。 
読み取れるものは何一つ無い筈なのに、目にした瞬間に強烈な不快感が体を襲った。 
これは見ちゃいけないものだ。本能が僕に訴えかけた。 
必死で目を反らした僕を笑い、坂さんは紙をひらひらと動かした。 
「反魂の秘術――らしい。ラテン語やからよう読めんかったけどね。 
 インクに血が混ざっとるみたいやし、少なくとも書いた本人は本気やったんやろ。
 君の反応からしたら本物っぽいわ」
と嬉しげな坂さんの声を聞きながら、僕はただただ早く帰りたかった。 

さて、これだけでも僕にとっては気持ち悪い話なのだけど、実は後日談がある。 


229 :5/5:2007/10/10(水) 21:23:11 ID:DnvRUKybO
本を見せてもらってから一週間ほど経ったある日の朝、また坂さんから電話がかかってきた。 
すぐに来いと言われたので、学校をサボって僕は店に行った。 
まず最初に感じた異変は、臭いだった。坂さんの店に近付くに連れて、魚が腐ったような強烈な臭いがするのだ。 
店はもっと酷かった。引き戸のガラスが割られ、店内は滅茶苦茶に荒らされていた。 
自称武久夢二の絵も破かれていたし、テレビは画面が割れてブラウン菅が見えていた。 
おまけに、バケツでもひっくり返したかのように、店中が濡れていた。 
坂さんは相変わらずレジスターに肘をついて、動かないテレビを眺めていた。 
僕に気付くと、坂さんはバケツと雑巾を引っ張り出してきて、僕は片付けを手伝わされた。 
そのために呼ばれたらしかった。
「なにがあったんすか!?」 
「泥棒」 
落ち着き払った様子の坂さんに、僕はそれ以上何も聞かなかった。 
何が盗まれたのか見当はついたし、
誰が盗んだのかは、床といわず壁といわずこびりついている魚の鱗を見れば、考える気も失せた。 
代わりに、壁を雑巾で拭きながら、
「意外と早くバレてもうたなぁ」と呟く坂さんとの付き合い方を、少し本気で考えた。


☜1日1クリックの応援お願いします

↑このページのトップヘ