738 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/09/02(水) 20:41:06 ID:ON983g1M0
山仲間の話。
水筒を空にしてはいけない山があるのだという。
そこにはカサフカシと呼ばれる物の怪がいて、空の水入れを見つけると、その中身を濁った泥水で満たしてしまうからだという。
水が少しでも残ってさえいれば、カサフカシは何も悪さをしないのだそうだ。
彼はそこに登っている時、うっかりと水筒を空にしてしまった。
しかしいつまで経っても水筒は空のまま、一向に満たされる様子はない。
ま、単なる言い伝えだしな。
そのまま無事に山を下りたのだが、家に帰ると、果たして水筒が重くなっていた。
一体いつの間に?
不思議に思いながら中身を確認すると、嫌な臭いのする泥水で一杯にされている。
久しぶりに人が来たんで、カサフカシも頑張っちゃったのかな。
そんなことを考えた。
しばらく前に再びその山に登ったらしいが、その時はワザと水筒を空にしてみた。
しかし水筒に異変はなく、結局家に着いても空のままだった。
カサフカシ、もう居ないのかな。
少し寂しくそんなことを考えたという。