223 :名無し百物語:2022/10/26(水) 23:15:15.75 ID:AdfX2LDE.net
石じじいの話です。
彼が朝鮮にいたときの話です。
ある島を訪れた時に、村人が話してくれたそうです。
この島には、死んだ人間の幻がいる。しかも、たくさんいる、と。
じじいが、それは幽霊か?と訊くと。
いやそれは幽霊(鬼)ではない。死者の「幻」であり、それは、生きている人間に害をなすことなく、場所を選ばす佇んでいる、と。
別に、縁者のところに出現するわけではなく、別の場所で別の人によって目撃されることが多いのだ、と。
海岸で、海につかって波間に頭や上半身だけを出していることもある。
また、家の中に立っていることもある。
畑のなかに座っていることもある。
道端に立っていることも多いのだ、と。
幻に話しかけても、彼らはまったく反応しない。
幻たちは、最初に出現した場所の近くをさまよっているようでした。
そのため、そこに行くと、幻を確実にみることができたそうです。
そのような死人の幻を呼び出すための呪術のようなものはないのだが、この島に限って、そのような現象が見られるだ、ということでした。
自分の死んだ縁者の幻が見られて喜ぶものもいるが、多くの人は当惑して、幻を無視するようにつとめたのです。
幻の多くは、出現してから1年ほどすると自然と消えてしまったそうですが、中には、何年も残っているものもありました。
おそらく、その幻の縁者が執着することによって、その執着心に感応して長く形を留めるのではないか?と。