【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

当サイト「怪談の森」は古今東西の洒落にならない怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!

カテゴリ:



373 :1/5:2006/05/05(金) 20:02:59 ID:tqa7unpK0
久米と旅行に行ったのは、三月の終り近くだった。
新学期になる前に行っちゃおうってんで、無理して予定を組んだものだ。
「あんま観光地らしいとこ行きたくねぇなぁ」等と言うものだから、街から少し遠い山間の宿になった。
宿の傍には川が流れ、その川を下っていくと街に出る。
とはいえ、街に出て何があると言うわけでもないので、俺達はぶらぶらしたり温泉を探したりして1日を潰した。

山間の日は傾くのが早いか、既に道も空も赤々と燃え立つようだった。
俺達は川べりを歩き、橋の上から赤錆色の川を眺めていた。
「おはっ、アレは、おい……うぇ」
久米が奇声を上げて指差したので、俺はつられて川上を見た。
「なんだ。箱……舟……?」
それは四角い箱の様な物に乗せられた、2体の人形だった。
俺は川べりに向い、その舟を迎え入れる様にして、手を伸ばした瞬間、
「バカッ!触るな!」と、怒号とともに引き摺り倒された。
「な、なにしやがんだよ!くそっ!濡れちまったじゃないか」
「冗談じゃないぞ、馬鹿!!……何考えてんだ、お前……」
久米は胸を大きく上下させる、その顔は青かった。

374 :2/5:2006/05/05(金) 20:03:30 ID:tqa7unpK0
「なんだよ、どうしたんだ」
「今日は何日だ?」
「は?今日?27じゃないか?」
久米は逆算する様に指折ると、ハッとして顔を上げた。
「いぃぃ……やっぱり……重陽だ……」
俺は彼の動揺をよそに、川に目を落した。人形の舟はゆるゆると川を下っていった。
「アレがどうかしたのか?」
「なに?どう?どうもこうもあるか!」
ちょっと息を止めてからゆっくり吐いて、
「あぁ……へ、へ、へっ……あれはヤバいっつんだよ」
と言って、さっさと背を向けて歩いていく。
俺はそれを追いながら問いかけたが、芳しい答えはかえってこなかった。

「あ~、かわい~」
はしゃいだ女の声だった。久米は跳ねる様に振り返ると、凍り付いた。
カップルがその舟を抱えてニコニコと笑っていた。
固まった俺達の気も知らないで、二人は笑って会釈した。

375 :3/5:2006/05/05(金) 20:04:00 ID:tqa7unpK0
「やっぱりぃ、日本の心みたいな、風情みたいなのがあるじゃないですかぁ」
等と、自称日本好きの二人が、固まりきった俺達に話し掛けて来たが、
久米は明らかに不快そうな顔をしていたので、代りに俺が受け答えをした。
「えぇ~、二人とも宿一緒じゃないですかァ~」と男が言った。久米は増々不快そうな顔をした。

宿へ着いた後も、久米はしかめ面のままだった。
「おまえ、ほんとにどうしたんだよ」
「あ……?話は、な、帰りにしてやるよ、な。今は言いたくない……。それよりメシだ。メシ食う」
籐椅子をバンと叩いて立ち上がると、食堂まで駆ける様に歩いていった。

出された夕食はたいしたものではなかったが、何故かイナゴという下手物が入っていた。
「俺はコレ、食えないな」
「いいじゃねぇかよ。腹に入りゃ……」と話していると、
「あ~」という声。
なんだ?と思って振仰ぐと、さっきのバカップルが立っていた。
ニコニコと俺達の横に席を取ると、べらべらと喋りながら次々に料理を口に運んだ。
イナゴも平気そうに口へ運ぶ。何故かその時、その様がえらくゆっくりと見えた。
そのイナゴは腹が白かった。白ゴマの様なものが和えてあって……
うっ、と久米がえずいて席を立った。
俺もそれを追って席を立ち、彼を介抱しながら部屋へ向った。

「おい……お前、あれ見たか?」
「あれって、あの白いやつか?」
「ありゃ卵だ……」
イナゴの腹に付いている……ビッシリとくっ付いていたのは……
「違う、お前。見えてなかったんだな……あいつらの料理、どれもこれも表面真っ白だったじゃねぇか……。
 皿の上一面、卵で覆われてたじゃねぇかよ……」

376 :4/5:2006/05/05(金) 20:05:15 ID:tqa7unpK0
部屋に着くと、彼は青い顔で倒れ込んだ。
「なぁ、そろそろ教えちゃくれないか?」
「うん、ああ……今日はひな祭りだ……」
「え?」
「重用だ。上巳だったんだなぁ……クソッ、忘れてた……」
「何言ってんだよ?3日はもう過ぎてるぜ?」
「陰暦の3日だよ、今日は。重用ってのは、月と日が重なる日の事。とくに奇数月」
「でも、ひな祭りっつったって、別に舟で流しゃしないだろ。寺山修司じゃあるまいし」
「流すんだよ」
「なんで?」
「……いいか。雛祭は女の子が人形を飾る祭じゃないんだ。祭と言うのは“神奉り”。人形は形代、憑坐だ。
 しかも春の節供だ。季節の変わり目。穢れを払って、新しい春を迎えなければならない。
 だから人形に穢れを移し、荒魂を流し、和魂を呼び込む。あの人形はそういう人形なんだよ」
「つまり?」
「鬼ごっこと一緒。人形にタッチして禍いを移して、異界に流す。村の外に出てたらもう帰ってこないからな。
 つまり、あの人形に触ると……そいつが鬼になっちゃうんだよ。禍いが移されるんだ。
 ……普段、この地方ではやらない様だからな……余程、流さねばならない禍があったんだろう」
「あ、あのカップルは……」
「さぁな?境を越えたら……どうなることやら……」

で、翌朝。
彼等と帰りのバスではち合わせた久米は、瞠目して固まり、俺に耳打ちした。
「あのバカップル……顔……あるか?」

377 :5/5 お粗末様でした:2006/05/05(金) 20:06:06 ID:tqa7unpK0
チラと見ると、確かに顔はあるが、どことなく白んでいてぼやけているような気がする。
「真っ白だ」
「え?」
「見えねぇ、冗談じゃねぇよ」
彼にはカップルの顔は見えないらしい。俺には良くわからなかった。

俺達に気付いたカップルは会釈をして、バスに乗り込んだ。俺達は彼等の後ろの席に座った。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よ、いぃ、むぅ、なぁ、や、こぉこぉの、たり……」
と数えながら、久米は一から十までをピラミッド上に書き、その紙をポケットに入れた。

バスはゆらゆらと山道を下っていって、俺達はいつの間にか町に入って、はずれまで出ようとしていた。
突然、久米が俺の腕を引いて立ち上がり、降車のボタンを押す。
せわしなく動きながら早くしろと合図するので、俺はどかどかとバスを降りた。
「なんだよ、もう!」
「孵りやがった!」
久米はポケットに手を突っ込んで、行こうとしているバスを見つめた。
「かえる?なにが!?」
「境を越えたんだ。あの卵、長いのを孵しやがった」
「だから、なにが!!」
「卵だよ、卵!顔が見えねぇっつったろうが!やつら顔一面に、びっしりと白い卵が植え付けられてた!
 それが、おまえ一斉にな。顔から動く毛がはえたみたいに一斉に……長いのが孵りやがった」
「まさか」
と俺がバスに目をやると、バスが動きだして、チラリとその女の顔が寝返りをうった。
顔は腫上がって真っ赤だった。小さいニキビの様なものが隙間なくプツプツと湧いていた。
俺達は行くバスを見送って立ち尽くした。







オカルトランキング



592: 本当にあった怖い名無し:2011/07/26(火) 21:07:02.24 ID:IS+Zob7Q0
別にそんな怖くもないけど、うちの地元に伝わる話書こうか?

593: 本当にあった怖い名無し:2011/07/26(火) 21:11:22.32 ID:ghix4IqG0
お願いします。

596: 592:2011/07/26(火) 21:39:54.09 ID:IS+Zob7Q0

んじゃ投下。

平安時代頃の話なんだが、その頃この一体に魔物が出没したらしい。

まあ鬼なんだろうが、これが中々凄まじい奴で、
雷鳴轟かせながら暗雲と共に現れて女子供を攫い貪り食うような奴だったんだそうだ。

堪りかねた村民は郡司を通じて朝廷に使いを送った。何とかしてかの魔鬼を鎮めてもらいたいと。
そうして、朝廷から命を受けたとある高名な僧正と武士がその村へとやってきた。

僧正は村に着くと、しかるべき場所を選定して御堂を築き、
朝廷から預かってきた神鏡を前に七日七晩の調伏祈祷を始めた。

調伏成就の近づいた七日目の晩、
突如として僧正の眼前に黒雲が巻き起こり、雷鳴と共にくだんの魔鬼が現れた。
鬼の目的は神鏡だった。

この神鏡は代々朝廷に伝わるもので、非常に強力な破邪の力を持っていたという。
鬼はこの神鏡を破壊し、僧正の命を奪うことですることで調伏を失敗させようとしたらしい。

正直、そんな神鏡触るのも危ないと思うんだが…まあそれだけ強力な奴だったんだろうな。
僧正はそれまで七日と六晩不眠不休で調伏の祈祷に専念してきたからとっさのことに動きが遅れた。
僧正の首に魔鬼の鉤爪が迫る。

と、そのとき。

それまで外で見張りをしていた武士が御堂の扉を蹴破って中へ入り、僧正と魔鬼の間に割って入った。
魔鬼も突然のことに一瞬ひるんだらしく、とっさに鉤爪のついた手を引っ込めた。
武士はここぞとばかりに魔鬼に詰め寄ってその頭に生えた角をつかみ、根元からぼきりと折り取った。
その瞬間、魔鬼は阿鼻叫喚の咆哮を残して煙と消え去ってしまったという。

で、折れの地元には今でもこの退治された魔鬼を祀った神社がある。
一応鎮守ってことにはなってるが、境内社…というかほぼ同じ大きさの隣接する社で
退治した武士も祀ってる辺り、単なる封じ込めくさいんだよなあ。

ついでに言うと、その神社から1kmか2kmくらい離れた所にある神社は、
かつて退治された魔鬼の「首」を貰い受けた村民が建立したんだそうだ。

おいおい、霧になって消えたんじゃなかったのかよ? と調べたときに思ったけど、
どうやら色々と別伝があるらしい。

ちなみにこっちの神社は江戸時代に一旦火事で焼亡してる。
多分そのときに鬼の首も一緒に焼けちまったんだろうな。
今の御神体はその後で境内から掘り出された大陸渡りの鈴だって話。

600: 本当にあった怖い名無し:2011/07/26(火) 21:52:09.75 ID:ZZZm9lq30
>>596
いいね、おもしろかった
しかし刀で切りつけるのかと思ったら素手で折るとはw

601: 本当にあった怖い名無し:2011/07/26(火) 21:56:17.04 ID:IS+Zob7Q0
>>600
一応、その首を祀ってる方の神社の別伝では刀で首を切り落としたってなってる。
こっちでは角は首が地面に落ちたときに折れた、という話。
でも手で折ったっていう伝承の方が面白いよなwww




オカルトランキング



273 :本当にあった怖い名無し:2011/08/14(日) 21:09:45.87 ID:vkZzK/TEO
里帰りしてて、姪を保育所に迎えに行った時に思い出した。
ほんのりというか、訳わからん話かもしれんけども。

姪(4歳)を迎えに行くと、保育所の庭で走り回って遊んでいた。
その保育所、俺も卒業生なんだけど、神社と同じ敷地内にあるのね。
数人の子と走り回ってるんだけど、見た感じ鬼ごっこ。
でも、鬼の子が分からなかったというか、見当たらないというか、キャーキャー言いながら何かから逃げてる感じ。

先生に挨拶して姪を呼んで貰って、手を繋いで帰る途中、聞いてみたんだよ
「誰が鬼だったの?」
そしたら姪っ子、
「鬼の役は鬼に決まってるでしょ!」
エア鬼ごっこか?って思って、深く追求しなかった。
鬼役が足遅いとずーっと鬼だったりするから、モンペから苦情でもきてルール変えたのかなーって。


274 :本当にあった怖い名無し:2011/08/14(日) 21:12:46.34 ID:vkZzK/TEO
んで帰宅して夜、姉と母が居るところで聞いてみたのね。
姉「いや?そんな話は聞いてないけど。てか、あんたも小さいころ同じようなことしてたじゃん」
俺「へ?エア鬼ごっこ?」
姉「うん。鬼ごっこのルールも知らないで遊んでるんかと、姉ちゃんは情けなくなったもんよ」
母「何言ってんの。あんた(姉)もやってたわよ」
姉「うっそ。あたし覚えてないわ」
母「あの保育所に通ってた子は皆、鬼無しで鬼ごっこしてた」

で、思い出した。
俺がここに通っていたころ、毎日のように鬼ごっこして遊んでいた事を。
鬼は何時も同じヤツだった。
ジャンケンで決めるとかなくて、鬼は決まったヤツがやってて、誰も捕まえられた事が無い。
だからソイツはずっと鬼だった。
そんで、捕まったら死んじゃうってルールだった。
本当に死ぬとは思ってなかったけどね。
鬼が何時も同じヤツだったのは、イジメとかじゃ無いと思う。
ソイツはいつも神社の方からやってきて、姿を見かけたら鬼ごっこスタート。
小さい頃は全く疑問に思わなかったけど、鬼ごっこ以外の室内遊びのときはヤツはいなかった。
全員同じ小学校に上がったけど、ソイツは居なかった。
そういえば名前も知らない。
それどころか、顔も姿も思い出せない。


275 :本当にあった怖い名無し:2011/08/14(日) 21:13:11.99 ID:vkZzK/TEO
姉にその話をしたら、全く記憶に無いと言われた。
気になったんで幼馴染に電話してみたけど、誰も覚えていなかった。
ソイツの存在自体、誰も覚えていないと言う。
姪っ子に、「鬼の子は神社から来る子?」って聞いてみた。
姪「んー?なぁに?」
会話にならなかった。

よく、「小さい頃遊んでたけど自分の記憶にしかない」って話あるけど、
あれって二人っきりで遊んでたパターンが多いだろ?
沢山の友達が一緒だったのに誰も覚えていない。
しかも、まだソイツはあの場所に居て、『鬼』をやり続けてるようだ。

なんで俺だけ思い出したんだろう?




オカルトランキング




439 :本当にあった怖い名無し:2013/01/17(木) 20:44:08.76 ID:YGUuWoQQ0
うちの家はむかーしむかし鬼退治のお供をしたそうで、それ以来家に不幸がある時は凶刹が出る、らしい。
鬼が出るんだか、蛇が出るんだか、具体例は知らない。
そういう言い伝え。
多分それを実体験した。

去年の秋頃祖父が亡くなったんだが、
亡くなる前日、自宅療養中だった祖父を見守りに俺と従兄弟が来ていて、
夜中にちょっと一服しようと庭に出て2人でタバコを吸ってた。
そしたら庭の垣根に外側に人影がある。
祖父の家は高台の出っ張りにあるので、垣根によじ上るような奴はいないだろうと思うんだが、
庭の電気をつけると、見たことのないおじさんが垣根越しにこちらを見てる。
見た目は普通のおじさん。ジャンパー着てた。


440 :本当にあった怖い名無し:2013/01/17(木) 20:46:53.00 ID:YGUuWoQQ0
「おじさん、何してるんですか?」と話しかけたら、
「もうすぐ死ぬけんの」とか言った。
おいおい縁起でもないと思ったら、従兄弟がカッとなったのか「何言うとるんか!」と怒鳴った。
けどそのおじさんは「もうすぐ死ぬけんの」とまた言った。
「やめてください」
「もうすぐ死ぬけんの」
「ちょっとおかしいで」
「もうすぐ死ぬけんの」
ヤバいおじさんが来てしまったのでは、と思って家の中の誰かに言おうと振り返ったら、
「あっ!おらん!」と従兄弟の声。
垣根を見ると確かに誰もいない。
落ちたのか?と思って垣根に近寄ったけど、下の道路にも誰もいない。


441 :本当にあった怖い名無し:2013/01/17(木) 20:50:07.15 ID:YGUuWoQQ0
変な人がたまたま来てしまった、ってことでその後は従兄弟も俺も誰にも言わなかった。
でも次の日の朝に、祖父が急死した。
もう長くないから、ってことで自宅療養だったので、いつかは亡くなると思ったけど、
まさか本当に翌日になるとは思わなかった。
あのおじさんが預言者とも思えず、あれがうちの凶刹なのかな、と思った次第。




オカルトランキング



868 礫ヶ沢の鬼礫 1 sage 2005/12/12(月) 01:43:41 ID:/kR0P5H+0
礫ヶ沢のつぶておにの話をしようと思う。

うちからそう離れてない山の中の小さな川なんだけど、そう言う名前のところがあるんだ。
その名前の由来というのが昔話からなんだけど、
その昔話に出てくる鬼の礫というのが変わった石で、
大きさはまちまちなんだけど鬼が握った後のような模様がついている。
で、確かにそれは石なんだけど、ぶつけられても痛くない。
多分粘土かなんかじゃなかろうかと思うんだけど、握ってみると普通の石くらい硬いのよ。
その鬼の礫が礫ヶ沢を探すとたまーに見つかったりするんだ。
でも、それをうちに持ち帰ってはいけない、と言う決まりになっていて、
「鬼の礫は向こう岸」、といって川に投げ込まなければならないんだ。
その理由をばあちゃんに聞くと、
「昔話みたいに鬼がやってくるから」
そう言うんだよな。
当然ほんとにー?とか言う訳なんだけど、その度にばあちゃんの子供の頃の話を聞かされる訳よ。

ばあちゃんの子供の頃の話というのが「つぶておに」という、鬼ごっこみたいな遊びをしたときの話でさ。
簡単に言えば、鬼が石を持って鬼じゃないヤツにぶつける、
ぶつけられたらそいつが鬼になって石を持って追いかけるというもの。
ちょっと変わってるのは、鬼が使う石は鬼の礫で、その石の交換は出来ない。
だからぶつけそかなうと、それを探している間かくれんぼの様を呈してくる。
そしてここからが大事なんだけど、遊び終わって帰るときはその石を川に投げ込み、
「鬼の礫は向こう岸」
と叫ばなければならないと言うこと。
これは終わりの合図にもなっていたと思うんだけど、実はそれだけじゃないらしい。

869 礫ヶ沢の鬼礫 2 sage 2005/12/12(月) 01:45:06 ID:/kR0P5H+0
前置きが長くなったけどばあちゃんの子供の頃の話。

つぶておにで遊んでいたばあちゃんと近所の子供達。
その日、ばあちゃんは家の都合で先に帰ったんだけど、その残りの子供達が遅くまで遊んでいたのね。
日が暮れた後で、そいつ等は帰ってきたんだけど、その晩、凄いことが起こったらしいんだ。
村のある家で、一家惨殺事件が起こったのよ。
爺、婆、お袋と包丁で滅多刺しにされた姿で翌朝発見されてさ。 (親父は出稼ぎ中でいなかった)
イヤなことに、その死体は肝が食い荒らされていた。
そんで、そこの子供の姿はなかったモンだから大騒ぎだったらしい。
せめて子供だけでも、と言うことだったんだろうね。

ところがさ、それを聞いて青ざめたのが一緒に遊んでいた子供達で、
「じつは大変なことをした」
とばあちゃんにこっそり話した訳よ。

870 礫ヶ沢の鬼礫 3 sage 2005/12/12(月) 01:45:35 ID:/kR0P5H+0
それは最後に鬼になったのが例の家の子供で、礫を探している間に、みんな帰っちゃったらしいのよ。
で、ここからはばあちゃんの推測なんだけど、
「暗くなって誰もいない河原で石を見つけたヤツは、そのまま石を持って泣き帰ったんじゃないか」
そう思ったわけ。
ところが「鬼の礫は~」をしていないから鬼がついてきたんじゃ無かろうか、と。
子供心に心配になったばあちゃんは村のお寺のお坊さんに相談に行ったんだって。
そしたら婆ちゃん、坊さんに怒られる怒られる。
なんか一生分怒られたかと思うくらい怒られたんだって。
「今思えば、やったのは自分じゃないから理不尽この上ない」
そう笑って話してくれたけど、とにかく凄い剣幕だったんだって。
で、坊さんは村の駐在さんと村長さんを呼んで何やら話し込んでたんだけど、婆ちゃんは子供だから蚊帳の外。
その後、大人達がいろいろしている間に、子供が見つかったそうな。
婆ちゃんは心配になって会いに行ったら、縄でぐるぐる巻きにされて駐在さんに引きずられている。
ヤツの表情は凄い面変わりしていてまるで獣のような表情だったんだって。
そして、そのとき婆ちゃんはしっかり見たんだそうだ。
子供の手に鬼の礫があるのを。子供の影に角が生えていたことを。
それ以来その事件は村の忌み事となって話題にはあがらないし、つぶておにもしてはいけない遊びになってしまったと言うこと。
まあ、婆ちゃん達自体が怖くてもうする気はなかったみたいだから、あえて禁止するまでもなかったといってるけど。

871 礫ヶ沢の鬼礫 4 sage 2005/12/12(月) 01:46:19 ID:/kR0P5H+0
実はここまでが前ふりだったりする。

今年の夏、うちの実家に大学の友達3人が遊びに来たんだ。
まあ、キャンプをするのに手頃な河原はないか、ってことで礫ヶ沢を推薦したんだけどね。
それで、河原で2泊ほどして帰ったんだけど、そのときつぶておにの話をした訳よ。
そのとき一緒にいた友人をA,B,Cとすると、オカルト好きAが早速やってみないか、そう言うんだ。
けど、婆ちゃんの真剣な表情を見ている俺は断固拒否。
BとCはそう言った方面には全く興味がないから、
「いやがる奴がいるならあえてするまでもない」
と言うことでその場は終わりになったんだ。

で、夏休みも終わり大学が始まって秋口になると、気が付くとAを学校で見なくなったんだ。
おかしいなー、と思ってBやCとも話していたんだけど 、そのときBが思いだしたように行ったんだ。
「そう言えば、やつ(A)先々週あたりお前の実家行くって言ってたぞ」
「?、なんで」
「なんでもオカルト研の連中に例の礫の話をしたら盛り上がったんだって」
それを聞いた俺はイヤな予感に包まれたんだ。
オカルト研の連中に話を聞いてみようと思ったんだが奴らの活動場所が分からない。
すると、Cもイヤなことを言い出すんだ。
「そう言えば、俺の知り合いにオカ研がいるんだけどそいつも最近見ないな」
益々、イヤな予感が強くなる俺。
正直関わり合いになりたくなかったんだけど、このままってのも気分が悪いので、とにかくAの家に行ってみよう。
そう言うことになったんだ。

Aのアパートに行く途中、近くのコンビニに寄ったら偶然Aとバッタリあった。
始め、何かやたら挙動不審な奴がいるなと思ったら、それは酷くおびえたAだったんだ。
俺たちがAに声をかけると、Aは凄いおびえた表情で逃げようとした。
が、俺の顔を見たとたん、Aは凄い勢いでまくし立てたんだ。
いや、正直もう何を言っているかも分からなかったんだけど。
とにかく、凄い怯えようで、俺たちはAのアパートに連れ込まれた。

872 礫ヶ沢の鬼礫 5 sage 2005/12/12(月) 01:47:08 ID:/kR0P5H+0
Aの話を要約するとこんな感じ。

あの後、礫ヶ沢でつぶておにをオカルト研でやりに行った。
実際鬼の礫を見つけてつぶておにをやってみると、不思議なことに確かに石なのにいたくない。
その後、「鬼の礫~」をやらずに石を持って帰って調べてみよう、そう言うことになって、石を持ち帰った。
ところがその帰り、夜の国道を走っているときに異変が始まった。

礫ヶ沢に行ったオカルト研はA、D(Cの知人)、E(教育学部の地学研究室)の3人。
石を持ち帰ったのはE。
普段はやたらおしゃべりなのに、帰りの道中では殆ど口をきかない。
「まあ、疲れているんだろうな」、位に思っていた。
3人が帰りにコンビニに寄り、飲み物なんかを補充していると、Eが飲み物の他にカッターなんかを買っている。
そのときは「おかしなヤツだな」、程度しか思わなかったんだ。
コンビニを出るとき、Eの影に角が生えているようにAには見えた。
ギョッとして見直すと、コンビニのガラスの影の具合でそう見えただけのようだ。
「つぶておにの話を聞いた後で、神経質になっているんだ」
そう思い直して車に向かったとき、車からDの悲鳴が聞こえた。
それはEがカッターでDに斬りつけたところだった。
Aは後ろからEを羽交い締めにして
「どうしたんだ!」と叫ぶと
Eの首がぐるっと回り(そう見えたらしい)獣のような目でイヤな笑いをしたそうだ。
次の瞬間Aは太ももをEのカッターで斬りつけられて、その痛みでEを放してしまったそうだ。
Dはその間に車に乗り込み、ドアも閉めずにそのまま車で逃走。
Eは開きかけのドアに捕まり、車に引きずられていってしまったそうだ。
一人残されたAは恐怖に震えながらタクシーで家に帰ったそうだ。

後日、Aは大学で連中のことを聞く。
その日、Dの車は近くの陸橋で自爆事故、Dはそのときの怪我で入院中、Eはその日以来姿を見せていないとのこと。
Aはその話を聞いて、
「次にEが来るのは自分のところじゃないか」
そう思ってアパートに閉じこもっていた。

873 礫ヶ沢の鬼礫 6 sage 2005/12/12(月) 01:47:46 ID:/kR0P5H+0
ことの顛末を聞いた俺は、実家に電話をかけて村の寺の名前を聞き、寺の住職に電話をかけようとした。
その間、Aはベッドの上で毛布にくるまってふるえていたのだが、突然悲鳴を上げた。
窓の外をみると、むちゃくちゃ汚れた男がベランダから部屋の中を覗いていたんだ。
目つきが尋常でなく、いやな笑い顔でぶつぶつ言っている。
その常軌を逸した姿を見たとき、俺の背筋は冷たくなった。
男は手にした石でガラスを割ると、ゆっくりと部屋の中に入ってきた。
俺たちはしばし呆然としていたが、そこは男3人、カッターを振り回す男相手に、椅子、ナベなどで立ち回り。
何とかその男を取り押さえた時に、ドアの外から警官の声がしたんだ。
「こんな怪しい風体の男がベランダをよじ登ったりしてていれば通報もされるわな」
なぜか冷静に考えていた俺の脇では、Aが失神してしまっていた。

俺たちが捕まえた男は案の定Eで、心神喪失状態でどうなるかは分からないとのこと。
Aは実家に帰って、その後のことは知らない。
寺の住職に電話をしたら、俺がこっぴどく叱られる羽目になった。
後は任せてもう関わるな、と釘をさされた俺は、正直あんな大立ち回りを演じるのはいやなので
住職の言葉通り、事件に関してはもう触れないようにしている。
たまにBとCで飲むときに少し話すくらいだ。

874 礫ヶ沢の鬼礫 7(終) sage 2005/12/12(月) 01:49:05 ID:/kR0P5H+0
ただ、ひとつだけ気になっていることがあって・・・

鬼の礫、その行方がどうなったか。

あのとき、Eを取り押さえたとき、部屋に鬼の礫が転がったはずだが、警官がやってきたときには石の姿は見えなかった。
いや、警察が押収していれば、住職が何とかしているだろうけど。
もし誰かが持っているのなら、今でもそう考えると背筋が寒くなる。
礫ヶ沢の鬼の礫には気をつけるように。





オカルトランキング

↑このページのトップヘ