私が小学校2年生だった時の話。
私の父は出張が多く、ビジネスホテルに泊まる事が多かった。
父は出張先では夜にお酒を飲みに出かけることが常で、出張先から連絡をくれるなどということは滅多にありませんでした。

携帯電話はもちろん、テレフォンカードすらない時代です。
電話するとすれば公衆電話から家にかけるわけですから、用もないのに10円玉を揃えて長距離電話などしないわけです。


そんな父が出張中のある夜、父から電話がきました…しかも夜の11時過ぎに。要件は、

『仏壇にある紙に書いてある不動明王の真言を教えてくれ』とのこと。


応対した母は訝しげな顔をしながら

「○○(私の名前)、仏壇から紙を、お経の書いてある紙を取ってきて」と言い、

私が持ってきた紙から不動明王の真言を探して、電話口から父にゆっくり伝えました。



父は次の日、無事に家に帰ってきたのですが、非常に疲れた顔をしていました。

以下は父の話です。
「昨日は酷い目にあった…。 

夢で鎧武者が次々に襲って来るんだよ。 

逃げて逃げて…追い詰められた時に、突然隣にいる誰かから剣を渡されたんだ。 

それがすごく切れる剣でな、それでバッサバッサ鎧武者を斬って助かったんだ。 

汗だくになって夜中に目が覚めて、ああ、あの剣は不動明王様のだって思い出したんだ。 

で…電話かけてな、真言を教えてもらったんだ。 

ホテルの部屋の空気がなんとなく重くてな。真言を何度も唱えながら朝を待ったんだ」


父がホテルをチェックアウトする時に、フロントでそれとなく聞いてみたら、そのホテルはとある古戦場跡に建てられていたとのことです。父は幽霊の話など一度もしたことなかったし、テレビの心霊特集など見ても「くだらん」と言い切る人だったので、その一言は今でも鮮明に覚えています。




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