【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

当サイト「怪談の森」は古今東西の洒落にならない怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!





 家は昔質屋だった、と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから
私は話でしか知らないのだけど結構面白い話を聞けた。

田舎なのもあるけどじいちゃんが小学生の頃は幽霊は勿論、
神様とか妖怪やら祟りなど非科学的な物が当たり前に信じられていた時代で
そう言った物を質屋に持ち込む人は少なくは無かったそうだ。
どういった基準で値段をつけていたのかは分らないが、じいちゃん曰く「おやじには霊感があったからそう言う神がかった物は見分ける事ができたんだ」と言っていた。

「よう喜一、でっかくなりやがって」店にデカイおじさんがいた。外知朗おじさんだ。
おじさんはおやじの悪趣味な友人の1人だ。
「俺の名前はトチロウ、外を歩き沢山の事を知りそして教える者、外知朗だ!」
おじさんの口癖で、こじつけだ。(昔は牛年の次男に外と言う字をつける風習があった。理由は牛はどっしりして中々小屋から出ようとしない様子から早く養子に行けという意味らしい)

おじさんはたくさんの学校を行ったり来たりしている学者?らしい。
行った先で変わった物を見つけたり、変な宗教に首を突っ込んだりする変人だったが、
田舎育ちの喜一にはこの人の話は夢の様な外の世界だった。
その日「見せ物小屋」の話をしてくれた。
喜一の町にも縁日になればよくやって来た、小さなサーカス&マジックだ。

たまたま行った村がちょうど縁日だった。
懐かしく思ったトチロウは神社に入り、人ゴミの中でマジックショーを見ていた。
ところがそのマジックショーにはタネが無かった。
どう考えても物理的にあり得ない事が目の前で起っていたのだ。
空は飛ぶは、小さな箱から5人6人と現れたり。
周りの田舎者ならとにかく俺の目は誤魔化せねぇぜ!と粋がったトチロウは自分のスケジュールをずらしてまで、そこの団員達を見張ったそうだ。

15人程の団員達は縁日が終わると小さな小屋へと入って行った。
周りにはもう人は居なくなっていた。
着替えでもしているのか?と思い待っていると出て来たのは団長らしき男1人だった。
不思議に思い小屋を覗くが誰もいない…その間に団長を見失ってしまった。
「くそぅ!たしか次の公演はとなりの県と言っていたな!!」
トチロウは汽車の時間を調べ、次の日汽車の中で男を見つける事に成功した。

男の向かいの席に座り眠ったふりをすると暫くして男も眠りだした…。
しめた!と思い男の小さな荷物を調べた。
中から小箱が出て来て中を開けると葉巻きのような筒が何本も入っていた。
一本抜き取ろうかと思った時に駅に止まる合図の汽笛が鳴った。
「まずい!!」男が起きると思い慌てて荷物を戻し、また寝たふりをした。
男が起きると同時にトチロウも今起きたかの様な芝居をした。
男が立ち汽車を降りようとするトチロウも立とうとしたが何故か腰が上がらない!
声も出なかった俗に言う金縛りにあった。
男は立ち去る瞬間「次、後を追えば殺すぞ」と言い去った。

トチロウの金縛りは次の駅まで続き、結局何も解らなかったそうだ。
横で話を聞いていたおやじがぽつりと「きつねだなぁ」と言った。
「一本盗ってくりゃその管狐、高く買ってやったのによぅ」と笑ったが「おりゃぁ金が欲しいんじゃねーんだよ!真実がしりてぇんだ!!」と怒るおじさんにおやじは「だから狐だって」と、ラチの開かない会話が続いた。





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 家は昔質屋だった、と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから
私は話でしか知らないのだけど結構面白い話を聞けた。

田舎なのもあるけどじいちゃんが小学生の頃は幽霊は勿論、
神様とか妖怪やら祟りなど非科学的な物が当たり前に信じられていた時代で、
そう言った物を質屋に持ち込む人は少なくは無かったそうだ。
どういった基準で値段をつけていたのかは分らないが、じいちゃん曰く「おやじには霊感があったからそう言う神がかった物は見分ける事ができたんだ」と言っていた。

店からおやじと客の話声が聞こえて来た。
チラッと覗くと一組の夫婦が見えた。
友禅の着物、パリッとしたスーツにキッチリ整った鬚。
こいつは金持ちだ!と感じた喜一はチョコでも貰えるのでは!?とすかさず茶を用意し、おやじの後ろからそろりと「粗茶ですが」と茶を差し出した。
普段、用もないのに店をうろつくなと言われているためこうでもしないと自分の存在をアピール出来なかったのだ。喜一の腹の中が読めているおやじは眉を寄せ て邪険にしたが、跡継ぎの勉強だと言えば客受けも良かったため、おやじはそれ以上何も言えず居座ることに成功した。

客が売りに来た商品は立派な日本人形だった。
着せ変え人形にされていたのか立派な着物が何着もあり、素人目でも高価な事がわかった。しかしおやじは「好かんな」と一言。
喜一はピクリと反応した。おやじの(好かん)と言う言葉は(良く無い)と言う意味などが含まれ、駄目だしや説教のさいに使われたからだ。
おやじは人形から何か感じ取ったのか、
執拗に人形の出所などを聞いていると観念した客は重い口を開いた。

ある日蔵を整理しているとが人形が出て来た。
いつの物か分らない人形を蔵のゴミと共に捨てたそうだ。
次の日の朝起きると仏間に人形が置かれ、何とその人形は涙を流していた。
驚いた夫婦は寺に持って行こうとしたが人形がまたぽろぽろと泣き出し嫌がる。
燃やす事も捨てる事も出来ないが恐くて家にも置いておけず、
途方に暮れここへ来たのだった。
おやじは少し考えたが結局その泣き人形をタダ同然で買い取った。

喜一には商売事はやはり興味はなく、
何の収穫も無かった上におやじに店じまいを手伝わされむくれていると、
「明日お払いに住職んとこ行って来るから店番頼むぞ」とおやじに言われ、
喜一はさらにげんなりした。
「そんなに良くない物なんか買うなよ」と反論すると「そんなに悪くも強くも無いんだがな…よく解らんもんを売るのは性じゃねぇ、念には念って事だな」おやじはそう言うと部屋へと戻り、喜一は明日のイワナ釣りを断念し、人形を恨めしく思いながらその日は眠りについた。

その日の夜喜一は夢を見た。
あの人形が自分に泣いて縋るのだ。
何を言っているのかは分らないが泣きながら何か頼んでいる感じだった。
朝、喜一は夢の事をおやじに話すとおやじも同じ夢を見たそうだ。
おやじは夢で人形と会話したらしい。
「普通はこけしを使うからな金持ちはやる事が違うな、気付かなかった…」
そう言うとおやじは店に入り人形の着物を剥ぎだした。
「見ろ、背中に文字が書かれてるだろう?」
喜一は消えかけている文字を目をこらして読んだ。
長々と前置きの後、亡き子を偲んで…トヨ。と書かれていた。

喜一の住む辺りでは水子の霊を供養するときこけしが使われた。
生まれて来る筈だった子の名前を書いたこけしを1年仏壇に置き(その間子を作ってはいけない)その後お払いをして燃やすのだ。
そのこけしを御悔やみこけし、供養こけし、亡きこけしなどと呼ばれていた。
そう、あの人形は泣き人形ではなく、亡き人形だったのだ。

おやじの話では人形には母親の念が憑いていた。
子供を流産した上にもう産めない体になってしまった女は亡き人形を燃やさず、
ずっとわが子の様に可愛がっていたのだ。
その残留思念が人形に残り、燃やされる事を嫌がったのだった。
「寺にもって行かれると燃やされると思ったんだろう…昨日の晩、燃やしたり捨てたりしない事を約束に寺でお払いを受けると言ったから、もうこの人形が泣く事は無いだろう」おやじはそう言うと人形を持って寺へと出かけて行った。

その後人形はすぐに買い手がついた。
おやじは趣味の悪い金持ちに人形を燃やしたり捨てたりしない事を約束させて高値で売り、亡き人形は喜一の前から姿を消したのでした。





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 家は昔質屋だった、と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らない
のだけど結構面白い話を聞けた。

おやじは鑑定士の仕事もしていて依頼の品が大きな物の場合はお客の家まで出かけるため、喜一じいちゃんはその間店番をさせられた。
店番と言っても目利きが出来るわけでは無いので、売りに来たお客は明日にしてもらい、買いに来た客の相手だけ。

しかし田舎の質屋に客なんてほとんど来ない…ところが珍しく客が大きな荷物でやって来た。(まいったこりゃ売りか、鑑定の客だ)と思い帰ってもらおうとすると、ふろしきをドンっと置き、出て来たのは立派な朱い壷だった。
ボコボコしていて荒々しく、模様かと思えば木々の絵が黒い上薬で描かれていた。

おやじは居ないと言うと太った客は語りだした。
客は趣味で骨董を集めている方で、この壷は無名の作家の作品で価値のある物では無いのだけれど、人によっては全財産を投げ打ってもいいと言い出す人がいれ ばゴミ同前と言う人もいて、どういった物なのか詳しく知りたい、もし良く無い物ならどうすれば良いか聞きに来たそうだ。
フーンとまったく壷に興味の無い喜一は話を聞きながら壷の模様を目で追っていた…
すると壷から何かが聞こえて来た…

客はペラペラ語りだし止まらない。
「…それでね、私は後者側でこの壷の価値が解らないんだけど、前者の間でかってに呼ばれている名前があってね…」
喜一は「ヒグラシ!?」と言うと客はビックリしていた。
「そうなんだ、ヒグラシと呼ばれているんだ!何で解ったんだい?」
客に聞かれたが喜一にはハッキリと聞こえた。
壷をジーっと見つめるとヒグラシの鳴声が聞こえ、まさに夏の夕暮れそのものだった。

「お客さんコレ駄目だよ!!良く無い物だ、人の魂を吸い取る壷だお払いしなくちゃいけない、危険だからうちで引き取るよ」

喜一は思わず嘘をついてしまった。
喜一もこの壷に魅せられてしまった。何としても手に入れたくなったのだった。
慌てた客は壷を置いて行ってくれた。
喜一は壷を眺めながらとても良い事をしたと思い(あんな価値が解らない奴が持っているよりウチにあった方がよっぽどいい、それにタダでこんないい物を手に入れられたんだからおやじも喜ぶだろう)とほくそ笑んでいた。

ところが帰って来たおやじに喜んで壷の事を説明すると大目玉を食らった。
「バカやろうウチは鑑定屋だぞ、信用が第一なんだそんな事して商品手に入れてたんじゃ誰が買うってんだ!!物の価値を決めるのが商売、客の価値なんて誰がつけろって言った!!」と怒鳴られ結局壷は持ち主に帰されてしまった。

じいちゃんはもう一度ヒグラシに出会えたなら、全財産投げ打ってもいいと言っていたが戦争になって行方は解らなくなってしまったそうだ。


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 家は昔質屋だった、と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど結構面白い話を聞けた。

喜一じいちゃんが学校から帰ると店にうす汚い火鉢が置いてあった。
(客が売りに置いて行ったのかな?)マジマジ見ていると「そいつは価値のある物なんださわんじゃねーぞ」とおやじが奥から出て来た。
「えっ!?コレがぁ?」と眉を潜めるとおやじは「イワク付きなんだよ」と得意げに言うと喜一は慌てて火鉢から離れた。

イワク付きの物はウチは確かに多いが、いったい誰がそんな物を買うのかと聞くと「世
の中変わった物を欲しがる悪趣味金持ちがいっぺぇいるんだよ、そう言った顧客は大事にしねぇとな…」と笑っていた。


イワクと言うのはこんな話だった。
早くに事故で夫や家族を亡くした老婆は息子を異常に溺愛していた。
そんな家へ嫁が入り嫁姑戦争が始まった。
息子も頭を抱えていたが1年もすると姑が病で倒れ、
1年後には嫁の看病空しく亡くなってしまった。
悲しみに暮れた息子は母を溺愛していたがため奇行に走り、
妻に3食毎日、母のお骨を盛ったのだ。
息子はお骨を食べた人が妊娠するとお骨の主が宿るという言い伝えを信じていた。

何も知らない妻は子に恵まれ喜び、元気な女の子を産んだ。
息子と嫁は大事に育てたが奇病に掛り、日に日に赤子は痩せてしおれて行った。
嫁の看病空しく赤子は1年でまるで小さな老婆の様な姿になり、
ある日突然「この女があたしを殺したんだよ」と声を上げた。
嫁は大声で叫び人殺しと罵る我が子を火鉢へ突っ込んだ。
ところが赤子は嫁の袖をしっかりと掴んで離さず嫁にまで火が回って来たのだ。
嫁は助けてと叫んだが嫁を信じられなかった夫は家から走り去ってしまった。

気がつけばすべてが燃えてしまった後、残ったのはこの火鉢だけだった…。
毋が大事にしていた火鉢なので形見にと思ったのですが、毎夜毎夜火鉢からあの赤子がひょっこり顔を出すんです、私の名を呼びながら…と男は言った。
寺では無くウチへ持って来たのは火事の後で少しでも金が入るのだろう、足下を見ておやじは安値で買った。
 
「でもそんな呪われた火鉢なんか売って、客が呪われちゃったらどーすんだよ」と喜一が聞くと「俺だってプロだ。何か憑いてりゃ払って売るさ、客が死んじ まったら食ってけねぇからな!それにこの火鉢は呪われてなんかいねーよ。見た所タダの火鉢だ、化けて出て来るなんて男の後悔と罪悪感で紡いだ幻だろうよ。 呪われてるとすりゃぁ…」

それから数日後、新聞に奇声を上げ火事の中へ男が飛込み死亡という記事が乗った…おやじはパラパラと店の帳簿(売買いした客の名前、住所を記した物)を見るとニヤっと笑い「店番頼む」と言うと、新聞と火鉢を片手に上等な下駄に履き替え出かけて行った。

きっと今日はごちそうだ。
喜一が初めて複雑な気持ちという物を味わった話。





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 家は昔質屋だった、と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから
私は話でしか知らないのだけど結構面白い話を聞けた。

田舎なのもあるけどじいちゃんが小学生の頃は幽霊は勿論、
神様とか妖怪やら祟りなど非科学的な物が当たり前に信じられていた時代で
そう言った物を質屋に持ち込む人は少なくは無かったそうだ。
どういった基準で値段をつけていたのかは分らないが、じいちゃんは「おやじには霊感があったからそう言う神がかった物は見分ける事ができたんだ」と言っていた。

喜一じいちゃんの時代は電話が無かった。
無かったと言っても一般家庭での話でお役所や大手の企業等は所有していた。
喜一だって何度か市役所で見たことがあったが、
それでも少年にとっては未知の世界の機械。

ある日そんな特別な電話機を蔵で発見したのだ。
それはもう喜一にとっては大事だった。
蔵を飛び出しドタドタと縁側を駆け抜け店へと走る。
「何で何で!!電話機が蔵に!蔵に!?」
大興奮の喜一の言葉は片言だったが親父には充分だった。
「おめぇまた勝手に蔵に入りやがったな…」
じろりと喜一を睨んだが今の喜一には全く効果は無かった。
「なぁなぁあれしゃべれるんだろ?隣町のじっちゃんとも話せるのかな?」
目をキラキラさせながら話す喜一をしり目に親父は足の爪を切りながら
「あほう、家に電話線なんてあるか、それに電話機ちゅーのは向こう側にも電話機がねぇと話せねーんだよ。」
親父の冷めた口調に喜一の興奮もあっという間に冷めてしまった。
「この辺で電話機がある所っちゃあ市役所、軍の事務所、隣町の呉服屋ぐれーだろ、どっちにせよお前みたいなガキには縁の無い物だな」
ガキ扱いされた上にじゃまだと店を追い出され、すっかり喜一は機嫌をそこねた。

電話機はもう買い手が決まっているらしく家の蔵にいるのはほんの数週間、
電話機自体壊れていたがみえっぱりな金持ちの壁のオブジェになるそうだった。
(当時の電話は壁に掛る大きな物だった)
それでも喜一は親父の目を盗んで電話機の受話器を取って話しをしていた。
と言ってもただの独り言だ。
「…それで親父はカンカンだし、かーちゃんは大泣きするしで…」
「フフ…」
喜一の話に誰かが笑った。
「え?」
喜一は周りを見渡したが誰かがいるはずも無い。と言うことは電話の向こうだ。
「も…もしもーし、どなたですか?」
喜一がおそるおそる訪ねると
「…申し申し?」
返答があった。

親父のヤツ俺を電話機に近づけまいとして壊れてる何て嘘を付いたんだな。
そう思った喜一は嬉しくて嬉しくて電話の向こうに話しかけた。
「こ…こんにちは」
暫くすると
「こんにちは…声を出すつもりは無かったんだが君の話が面白くてね、盗み聞きになってしまったな、すまない」
相手はとても紳士な感じがした。
「そんなこと気にしなくていいよ、それよりさそっちは何県なの?」
喜一は電話の向こうが気になって仕方がなかった。
「そうだな…とても遠い遠い所だよ君の知らない所だ」
彼の答えに喜一は「外国!?遠いって蘭よりも遠いのか?」
そう聞くと彼は笑いながら
「そうだねきっと蘭よりも遠いだろう」
と答えてくれた。

それから喜一は毎晩親父が寝静まった後蔵で電話をした。
電話の話相手は喜一が受話器を取って「もしもし」と言うと必ず「申し申し」と答えてくれた。彼の話はとても面白くリアルだった。
ある日「おじさんはどんな仕事をしてるの?」
と喜一が聞くと彼は少し困った様に
「うーんそうだな前は人を幸せにする仕事をしていたんだ」
曖昧な答えに「幸せって?」と聞き返した。
「まぁいろいろあるけどたとえばお金とかが良く入るようにしていたよ」
それを聞いて喜一はかってに銀行関係の人だと思った。
「ふーん、じゃあ今は?」
今度の質問には少し彼の声のトーンが下がった。
「前の仕事は任期が終わってしまってね今は逆の仕事をしているんだ…でもまた暫くすれば幸せにする方の仕事に戻れるんだけどね」
喜一は考えた。
お金を与える仕事と逆って事は奪うんだな…きっとヤクザの取立屋だ!
銀行員になったり取立屋になったり、それは大変そうだと思った喜一は彼をねぎらったのだった。

そんな楽しい電話生活もあっという間に過ぎ、
とうとう明日電話機の受渡という日になった。
「申し申し…今日は何だか元気が無いね、どうしたんだい?」
心配されてしまった喜一は、ここが質屋で電話出来るのが今日で最後だということを彼に話し、寂しがった。
「そうか…それは寂しいね、でもよかった実は私もそろそろ自分の仕事を抑えるのが限界だったんだよ、君に迷惑がかからなくて良かった」
喜一には彼の言っていることが良く解らなかったが、彼も寂しがってくれている事が解ったので少し嬉しかった。

「最後に聞きたいのだが、この電話機の持ち主になる家はお金持ちかい?」
彼が不思議なことを訪ねた。
「?、うんお金持ちだよ、でも嫌なヤツだって親父が言ってたから明日からは電話しない方がいいかもね」
喜一がそう教えてあげると
「ハハハ…そうかそれならよかった…また会えるといいね」
彼の言葉に喜一は「まだ会ってないよ、いつか会えるといいねだろ?」
そう訂正し最後の電話を切った。

翌日、店に電話機の主人になる人が来た親父の横で電話機を見送ると
「お前ずいぶんと電話機と親しくなったみてぇだな」
喜一は心臓が飛び出るかと思うほど驚いた。
「なっな何のこと」白を切ろうとした。が親父にはお見通しだった様だ。
「お前があの貧乏神と仲良くやってくれたおかげで受渡まで家に災難は無かったし、むしろ売上上々だったしな」
さらに喜一は驚いた。
「貧乏神!?あの電話が?電話の相手は?」
「おめぇ繋がらない電話に人間が出るわけねぇだろ」
喜一には電話線と言う物がよく分かっていなかったのだ。

「ねぇ貧乏神なんか憑いてる物売っちゃっていいの!?」
喜一がハッと気づいて問うと「いくら何でも神さんを祓うわけにいくめぇ、それにあそこの親父は昔から嫌なヤツだからな少し痛い目に遭えばいいさ、金に困ればまた家に売りに来るだろう、その頃には福の神に変わってねぇかなぁ」
クククと喉を鳴らした親父は大きなあくびをして茶の間へと姿を消した。

喜一はあの電話の会話をいろいろ回想していると、
思い出した様に茶の間から顔を出した親父が
「今回は特別に泳がせてやったが、調子に乗ってまた蔵に入るんじゃねーぞ、次勝手に入ってみやがれ、裏の木に吊すからな」
そう言うとキッと喜一を一睨みし、喜一はブルっと身を強張らせた。
親父の恐ろしさを改めて思い知らされた今の喜一には充分効果があった。

それからあの電話機がどうなったかは解らない。
じいちゃんは初めて電話線が繋がっている電話をとるとき「申し申し」とまた聞こえないだろうかと期待したもんだと語っていた。





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 家は昔質屋だった、と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから
私は話でしか知らないのだけど結構面白い話を聞けた。

その日の喜一は店番をしていた。
喜一がレジ台に顎を乗せて晴天の空を恨めしそうに見上げていたとき
「もし、坊やここの主はどこかね?」
喜一はビクっと体を大きくはねらせた。
全く人の気配が無かったのに急に太った男が店の前に現れたのだ。
「えっと親父は骨董市に出かけてて夜まで戻らないよ」
喜一の言葉に男は急に挙動不振になった。
「どうしよう…どうしようか?…いやしかし…」
男は何やらぶつくさ言い出した。

男はもう水無月になると言うのに大きな虫食いだらけのコートを羽織り、
帽子を深くかぶっていた。
男のなりを見て、こいつは金に困ってガラクタを押し売りに来たタイプだな、動きがせわしないのはきっと取立にでも追われているのだろうと喜一は考えた。
男の独り言はまるで相談の様に「どうする?しかし時間が無いぞ、この子に任せてはどうだろう?でもこんなガキに全てを任せるのは…」

喜一は男の態度にイライラし
「おじさん冷やかしなら帰ってくれよ、今は買い取り出来ないからさ」
喜一がきつく言うと、男はガラクタがあふれ出るパンパンのカバンを悲しげに見つめて、無言で出て行った。

その日の夕方「おいキー坊」と店に駐在さんがやってきた。
「なななな何俺何にもしてないよ」
身に覚えは無いが喜一は体を強張らせた。
「はは、お前に用はねぇよ親父さんいるかい?」
今日の親父は人気物だ。
「夜まで戻らないけど親父がどーしたの?」
喜一の声に「そうか、困ったな、たぶんお前さんちの落とし物だと思って持ってきたんだけどよ、確認の仕様がねぇな」

髭をさすりながら駐在さんが荷車で運ばせた物は昼にきた客の持ち物だった。
持ち物だけじゃない服、靴、帽子全てだった。
「こんな骨董品扱ってるの何てお前さん家ぐらいだろう?でも落とし物としては不自然でな、カバンの中だけじゃなく服の中にまでパンパンに骨董品が詰まっててよ、帽子の中にまでだぜ?」
喜一はごくりとつばを飲んだ。
何かが起こった、もしくは起こっていると感じたからだ。

駐在さんには見覚えがあると言い、荷物を店で預かり一つ一つを広げてみた。
乱雑にガラクタが詰まっていた鞄の中から一つだけ立派な桐の箱が出て来た。
「へその緒か?」
喜一は箱の中が気になったが恐ろしさもあったため箱は開けず、
親父の帰りを待つ事にした。

夜になり親父が帰って来た。
喜一は店から居間に入り玄関の親父の元へと走った。
「親父!ちょっと来て!」
喜一の声にほろ酔いだった親父の目つきが変わる。
店に入りガラクタの山を見るなり
「そうか、そうだったか…喜一、俺宛の郵便持って来い」
喜一が何を言うわけでもなく親父には何か解ったのか喜一に命令した。
親父はここ3日、他県の骨董市(一種の寄合)に顔を出していたため、
2日分の郵便物が貯まっていた。
親父は一つのハガキを見つけるとため息をつき
「すまなかったなぁ…」
とガラクタに向かってぽつりと言った。

親父は数ヶ月程前旧友の家に招かれた。
古い納屋を近々取り壊すため中の骨董品を鑑定して欲しいと言われたのだ。
高値で売れれば骨董品を頭金に納屋を新調しようとしていたのだが、
どれも商品になる様な物は無く旧友は納屋の新調を先延ばしにする事にした。
ガラクタばかりだったが親父は何かを感じたのか、納屋を取り壊す際に骨董品を引き取らせて欲しいと言い、旧友も快く承諾した。

ハガキは「言い忘れていたが取り壊しを2日後行う」と言う内容の物。
あのガラクタ達は納屋ごと捨てられるのを恐れ、親父の約束を信じここまでやってきたのだ。小さな小さな力を集めぎゅうぎゅうになってここまで来たが親父は留守。
そして道ばたで力つきたのだった。

「これは?」
親父が桐の箱に気付いた。
「こんな物あいつの家で見なかったが…」
親父が桐の箱を開けた。
「こいつは…凄いな…」
中には綺麗な石が入っていた何かの宝石の様だ。
自分達がお金にならない事を分っていたのか、喜一にはそれが引き取り金に見えた。
「はは…律儀なもんだな」
そう言うと親父は一つ一つを磨きだした。

ガラクタの中には何に使うのか分らないような古い道具まであった。
修理された後があり大切に使われていた事がわかる。
喜一は後悔した。昼間の事を。
ガラクタを丁寧に磨く親父の背中を見て、喜一は物も人にも大切に接すればいつか自分にもこんな素敵な奇跡が起るだろうか?
そんな事を思いながら親父と一緒に遅くまでガラクタ達を磨いたのだった。





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