【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

当サイト「怪談の森」は古今東西の洒落にならない怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!



あの世に聞いた、この世の仕組み
ある日突然、守護霊と話ができるようになってしまった「僕」。
「雲さん」というその守護霊は、時に高尚に、時にざっくばらんに、「あの世」と「この世」の仕組みを教えてくれます。
それは、苦しみから解き放たれる方法、望みを叶えるちょっとしたコツ、生まれ変わりについてなど多岐に渡る、驚くべき内容でした……。
私たちはどんな存在で、何が幸せで、そして人生とは何なのか?
楽しく読むうちに、悟りの境地に近づける不思議な一冊

あの世に聞いた、この世の仕組み
雲 黒斎
サンマーク出版
2012-07-01






もっと あの世に聞いた、この世の仕組み 
普通のサラリーマンである著者は、うつ病治療のためにつよ~い薬を飲んだところ、「雲さん」という守護霊と会話ができるようになりました。
あの世の住人である雲さんは、「この世」の様々な仕組みをわかりやすく説明してくれます。
本書では「さとる」ということから「輪廻転生」「アセンション」「『般若心経』のお経の意味」などの真実が紐解かれます。
また、単行本では電子書籍版限定の特典となっていた「第11章 神様からの宅急便」も収録。
ベストセラー『あの世に聞いた、この世の仕組み』衝撃の第2弾。








極楽飯店
死んだら、こんな世界が待っていた!
極楽飯店
雲 黒斎
小学館
2013-02-26


広告代理店のサラリーマンが、突然、黄色いTシャツ姿の「守護霊」と会話ができるようになってしまった経験を綴って大人気になったブログ「あの世に聞いた、この世の仕組み」。そのブログで連載していた小説「極楽飯店」に加筆してまとめたもの。
主人公は、反社会的な人生を送り、仲間に殺されてしまった男。悪行を自覚していた彼は「地獄」行きを覚悟していたが、着いた場所はどうも「地獄」とイメージが違う。美しい町並みに居心地のいいマンション。しかし、「食事」にありついたとき、彼は「地獄」の本当の意味を知る・・・・・。
独特のユーモア溢れる筆致で、「私たちは本当はどんな存在なのか」という永遠のテーマをわかりやすく綴った、「真理」の物語。
謎に満ちた展開の中、主人公と共に「気づき」のプロセスを体験できる。
連載当時、「人気ブログランキング 小説部門」で1位を記録した話題の小説。いままでになかった、スピリチュアル・エンターテインメント小説












この本は、人と付き合うごとにストレスを感じていた男がついに社会から飛び出してしまい、車上暮らしを嗜み、人付き合いをさっぱり諦めて、雑草をタバコにするという遊びを延長して極めていった結果、なにやら独自の方向に研究が進んだ。そんなおかしな経験を記すものです。
知っていますか? 雑草って、巻いて吸うと面白いんですよ。
便秘が治る草もあるし、気分が高揚したりまった~りしたりする草もあって、中にはすごい幻覚を見たりする草も。アヘンの代わりになった草だって。もちろんすべて法的にOK。
全編とっても楽しげに書いたので、気負わずゆる~く読んでみてください。ゲラゲラ笑いながら、まさかこういう例もあったのかと思っていただければ幸いです。




軽トラで車上暮らしをしながら雑草やキノコを“吸いまくった"日常を記録しベストセラーとなった書籍『雑草で酔う』の著者・青井硝子氏が、幻覚成分を含む茶を販売したなどとして2020年3月3日「麻薬及び向精神薬取締法違反幇助容疑」で京都府警に逮捕された。
通常、逮捕されれば落ち込むところだが、青井氏はその状況を心から楽しみ、留置場という非日常の空間でさまざまな遊び方を編み出した。






19 :本当にあった怖い名無し:2013/09/17(火) 19:03:54.13 ID:WhAunLOS0
今から十数年前に友達から聞いた話。

友人が祖父母の家に泊まりに行った時、
その日は両親と一緒に行ったにもかかわらず、1人だけ別の部屋に宿泊することに。
その部屋は庭に面した部屋で、蚊帳を吊るして眠るといい風が入りそうだなと思ったんだそう。

眠くなり、そろそろ就寝しようと蚊帳の中に布団を引いて横になってしばらくたつと、
どこからか人の声というより、大勢の人の喋り声が。
両親、祖父母の部屋とは離れているし、何より聞いたことの無い人物の声だと思ったので不思議に思い、
なんとなく障子を開けっ放しにしていた。
庭の方を見たら、教科書で載っているような戦時中の日本兵の格好をした団体が。
一人の兵士(上官)に対し大勢の兵士が並んでいて、
「○○兵士(たぶん自分の階級?)行ってまいります」
上官にそういって敬礼をし、去っていく日本兵。
友人はそれを見てなぜか『もしかして特攻前の挨拶をしているのかな』と思ったんだそうな。
ちなみにその友人かなり視力が悪く、蚊帳を下ろしていれば服装や性別なんぞ区別がつかないほどなのに、日本兵ははっきり見えたのだそう。

その光景が延々と続いて、怖いよりうるさくて眠れないのにイライラし、
布団から出て蚊帳を上げたら、日本兵が消えた。
安心して蚊帳を下ろし『これで眠れる』と布団に戻ろうろしたら、蚊帳越しにまた日本兵が見えるし声も聞こえる。
『えー、どういうことなの』
蚊帳を上げる→日本兵消える→蚊帳を下げる→日本兵が見える
蚊帳を上げれば見えないが虫に刺されるし、下げればうるさくて眠れない。
悩みに悩んで友人は、そのまま蚊帳を下ろしそのまま就寝。声は無視。
翌日起床まで何もなかったそうです。

なんで下げるのを選んだのか私が友人に尋ねたら、
「虫刺されは翌日に残るが、幽霊は朝になれば消えるから」だそうだ。
実に男らしい女友達の話です。








30 :萱取山◆n8a8vmnvfE :2015/02/14(土)19:59:09 ID:ZRo
母の実家の地域には、ある『呪い』が伝わっている。
それはひどい呪いで、かけた人は自分自身が呪いのために必ず死んでしまうのだが、
呪いを受けた相手が死ぬかどうかは半々らしい。
自分の命はなくなるのに効果は半々とは、なんとも分の悪い呪いだな、と当時は思った。

自分が小さいころ母から、むかし近くに住む女性がその呪いをやったと聞いた。
その人はいつも暴力をふるう自分の夫を憎み、その呪いを行って死んだという。
その女性の死後、呪いの道具が見つかったけど、
その後、呪いが効いて夫が死んだかどうかは不明である。

今にして思えば、呪いとはこんななのものしれない。
リスクもなく確実に効く呪いなんてあるわけないのだ。
自分は死んでもいい、相手を殺せるならわずかな確率でもすがりたい、
そんな憎しみと絶望を持った人だけが呪いなどに手を出す。
だから呪いとは本来、ハイリスクで分の悪いものなのかもしれない。

母は自分にはその呪いの具体的な方法を絶対に教えてくれなかった。
しかし、妹は教えてもらったらしい。
一度、妹にうまいこと言ってその方法を聞き出そうとしたが、
『きゅうりの中をくりぬいて皮だけにしてその中に刃物を入れて』まで聞いたのだが、
妹の言い方が分かりにくくて何度も聞いてるうちに、母に見つかってしまった。

女性がどうしても絶望した時、最後にすがるための呪いなのかもしれない。









深夜十一時。僕と友人のKは、今はもう使われていないとある山奥の小学校にいた。
校庭。グランドには雑草が生え、赤錆びた鉄棒やジャングルジム、シーソー。
現在は危険というレッテルを貼られた回転塔もあった。
僕とKはこの小学校に肝試しに来たのだった。
本当はもう一人、Sという友人も来る予定だったのだが、あいにく急な用事が入ってしまった様で、二人で行くことになった。
野郎二人で肝試しとは別の意味でぞっとするが、
このKと言う奴は、幽霊を見るためなら他の条件が何だろうとお構いなしなのだ。ただ一つの条件を除いて。
「……だってよー。一人じゃ『見た』っつっても誰も信じてくれねえじゃん?」
もっともらしい理由だが、僕は知っている。こいつは実は怖がりなのだ。
それでもって熱狂的なオカルトマニアで、心霊スポット巡りが趣味なのだ。
しかしそんなKのおかげで、僕は普通なら見ることの出来ないものもいくつか見てきた。
「Sのヤロウ正解だったなー、ここハズレだわ」
「うーん……、確かにね。物音ひとつしなかったしなあ」
ハズレならハズレでそれは有難いのだが、僕だって怖いものは怖い。でも興味はすごくある。
6・4で見たいけど見たくない。分かるだろうかこの心理。

というわけで、僕らはさっきまで学校内をウロウロしていたのだが、
あいにくここで自殺したと言う生徒の幽霊は見ることが出来なかった。
懐中電灯を消したり、わざと別々に行動したり、音楽室も理科室も怖々覗いたのだけれど、結局、何も出なかった。
時間が悪かったのか、それともKが「くおらー、幽霊でてこいやーっ!」などと怒鳴りながら探索してたせいだろうか。
そうして、僕らは幾分がっかりしながら、小学校のグランドに出たのだった。

「で、どうすんの?帰る?」と僕はKに訊いた。
Kは明らかに不満そうな顔をして、いつの間にか拾ったらしい木の枝で、地面にガリガリ線をひいていた。
黙ってその様子を眺めていると、Kは地面に二メートル四方ぐらいの正方形を描いた。
次いで、その図の中に十字線がひかれる。田んぼの『田』だ。
Kが顔を上げて僕の方を見た。その顔から不満そうな表情は消えて、ににん、と笑う。
「なあなあ、お前、『あんたがたどこさ』って知ってっか?」
いきなり尋ねられ、僕は少しあたふたしながら、脳内の箪笥からその単語の情報を引っ張り出した。
「知ってる。手まり唄だろ。毬つきながら、ええと……あんたがったどこさ、ひごさ、ひごどこさ、くまもとさ」
「分かった分かった。……じゃあよ、『あんどこ』って知ってるか?」
「あんどこ?」
『それは知らない』と僕が首を振ると、Kは手にした木の棒で、今しがた地面に描いた図形、田んぼの田を指した。
「『あんどこ』ってのは、この四つの四角の枠の中でな、リズムに合わせて飛ぶんだよ。
 右、左と基本は左右交互に飛んで、あんたがったどっこさっ、の『さ』の部分だけ一瞬前に飛んで、戻る。
 いいか?よく見てろよ」
どうやら手本を見せてくれるらしい。
せーの。
「あんたがったどっこさあっ!ひっごさ。ひっごどっこさ!?くまもっとさ!くまもっとどっこさ?せんっばさあっ!!」
大声を張り上げながら、Kは自分で作った図の中を前後左右にぴょんぴょん飛び跳ねた。
「……とまあ、大体こんな感じだな。分かったろ?」
と言われても、僕としては首を傾げるしかない。こいつは一体何がしたいんだろうか。
分かったのは、やはりKはとてつもなく音痴ということだけだ。
「今のが『あんどこ』 ……まっ、遊びだ。遊び」
「へえ……で?」
もしかして、それを僕にもやれと言うのだろうか。しかしKの顔にはまさにそう書いてある。
「で、じゃねえよ。お前もやんだよ。二人で『あんどこ』」
「やだよ。なんで僕がそんなこと」
「何でってお前……しらねえの?
 ま、噂だけどよ。これ二人で目えつぶってやったら、なんか『別の世界』に行けるんだとよ」
およ、と思った。せっかく小学校に来たのだから、ただ単に昔を懐かしんで子供の遊びをやろう、と言うわけでもないらしい。
それなら面白そうだということで、僕はその『あんどこ』をやることにした。

Kの説明によると、田んぼの田の形に区切られた四つのスペースの内、
まず二人がそれぞれ左ナナメに相手が居る様にして立つ。
それから目を瞑り、暗闇の中で『あんたがたどこさ』を唄いながら飛ぶ。スタートは左に。
全てを唄い終わり、『ちょいとかーくーす』の『す』で前に飛んで終了、そこで目を開ける。
何が起こるかはお楽しみ。
注意事項として、歌を間違える、飛び方を誤る、相手にぶつかる、目を開けた時に田んぼの田からはみ出したら失敗。

「んじゃ。行くぞ」
「ちょっと待って」
「何だよ?」
「いや、ちょっと気になったんだけど。
 『あんどこ』が成功してさ。その、Kが言う妙な世界にもし行けたら、……帰ってこれんの?」
するとKは「うはは」と笑い、「シラネ」と言った。
「おいおい……」
「まあいいじゃねーか。さ、はじめっか……。目を瞑れーっ!」
まあいいのか?と思いつつも、僕は目を瞑った。
せーの。
あんたがったどっこさ……。
「イテっ!」「あたっ」
いきなり間違えた。慣れないと意外に難しいのかもしれない。
「おいおいお前、ちゃんとやれって!」
「あははのは。ごめんごめん。次は、さ?」
「ったくよー」

頭の中でシュミレーションする。交互に交互に……さ、で飛ぶ。

いっせーの。
「……いてっ」
正面衝突。一瞬間違えたのかと思って謝りかけたが、よく考えてみると、僕は間違っていない。
目を開けて見ると、Kが手刀をかざして「わりーわりー」。
「次は本気で行くからよ」
僕は何だか急に馬鹿らしくなってきたが、あと一回くらいはやってみようかと思う。

いっせーのっせ。
あんたがったどっこさ、ひーごさ、ひーごどっこさ、くーまもっとさ、くーまもっとどっこさ、せんばさ……、
せんーばやーまには、たーぬきーがおってさ、それーをりょーしがてっぽでうってさ、にーてさ、やいてさ、くってさ……、
……それーをこーのはでちょいとかーくー
「――せっ――」
前へとんで、僕は目を開いた。
四角の中に居た。成功だ。
ちょっと誇らしい気持ちになって、僕はKはどうかなと思い振り返った。
そこにKの姿は無かった。
「……え?」
右を見て、左を見て、もう一度右を見て。
僕は、ははあ、と思う。全てはこのためだったのだ。
『目を瞑ったままのあんどこ』などという凝ったことをさせておいて、Kは唄の途中でこっそり抜け出し、
僕がおろおろするのを隠れて見て楽しむつもりなのだ。
Kの奴め。
僕は何とかしてKを見つけてやろうと思い、そこら中を注意深く見渡した。

グランドに身を隠せるような場所は少ない。しかし、Kは見つからなかった。うまく隠れたものだ。
そうして僕は、持っていた懐中電灯で地面を照らした。グランドにKの足跡が残っているかも、と思ったのだ。
しかし、足跡は無かった。
おかしい。
その時だ、違和感を覚えた。
僕らはさっき前後左右に飛び跳ねてたはずだ。
足跡はともかく、その飛んで着地した痕跡までない。地面に見えるのは、Kが描いた図形だけ。
僕は二歩三歩と歩いてみた。足跡はつく。これはおかしくないだろうか。
辺りをもう一度見回す。誰も居ない。
風の音もしない。さっきまでは吹いてたはずだ。そう言えば、虫の声も聞こえなくなった。
「おーい……」
おーい……、おーい、おーい……
僕はその場に飛び上がった。
Kを呼ぼうと叫んだ瞬間だった。まるでトンネルの中に居るかのように、僕の声が周囲にこだましたのだ。
やまびこでは無い。ここは広いグラウンド。後ろに学校はあるが、何度も音が反響するなんて絶対におかしい。
僕は途端に怖くなった。
「なあっ、おーいっ!」
二度目。返事は無い。僕の声だけが辺りにしつこくこだまする。
ふと思い至って、ポケットの中の携帯電話を取りだした。
圏外。確かにさっきまでは使えたのだ。学校の中でSからのメールも受信した。
『別の世界』
Kが言った言葉がふと頭をよぎる。
ここは、もしかして、そうなのか。
あんたがたどこさ。
ここは、どこだ。
小学校の入口に目を向けた僕は、『それ』に気がついてぎょっとする。
発作的に走りだしていた。学校の外には車が停めてあったが、鍵は持っていない。
それよりも、この小学校は山を少し上った位置にある。
ここに来る時、小学校に入るすぐ前の道からは、下の街の夜景が一望できたのだが。
そこは街を見下ろせる場所。
絶句する。
街が無かった。
いや、正確に言えば、遠目ではあったがそこに街はあった。
ただしその街には、明かりがただの一粒も灯っていなかった。街が黒い。いくら深夜でもあり得ない光景だ。
僕はその場にへたり込んでしまった。
ようやく確信する。僕は異世界への扉を開けてしまったのだ。
帰る手段は知らない。
ぞわぞわと、ゆっくり、足元から恐怖が這いあがって来る。
どうしよう。
僕は立ちあがって学校へと戻った。
とりあえず何か考えがあったわけではない。あのままじっとしていて正気が保てるかどうか怪しかったのだ。

学校の校庭。赤錆びた鉄棒、シーソー、回転塔。
グランドの中央あたりに、Kが描いた図形。僕はその中に入って、再びへたり込んだ。
何をしていいか分からない。Kを探そうか。でも無駄な気がする。
「わっ!」
意味も無く叫ぶ。こだまする。一体何なんだこの反響音は。
僕はもっともっと、遮二無二叫びたい衝動を懸命に押し殺した。
駄目だ。冷静になれ。
人は考えに考えた末、壁をよけて通ることを覚える。これはたしか友人のSが気に入っていた言葉だ。
考えなければ、アイデアは生まれない。考えろ、僕。
そこで一つ思い至る。僕が今座りこんでいるこの地面の図形。
僕はこの図形からここに来たのだ。『あんたがたどこさ』によって。
では、同じことを繰り返せば、元の世界に戻れるのではないか。

俄然元気になった僕は、図形の中に立つ。眼を瞑る。
せーの。
飛ぶ。唄う。間違えない様に、慎重に。
「かーくー、……っせ!」
どうだ。目を開く。
風景に変わりは無い。しかし、静かだ。どうだ、僕は戻れたのか?
「……わっ」
……わっ、わ、わ……
こだました。僕は戻れなかったようだ。
それから何度かパターンを変えて試してみた。
スタートの位置を変えてみたり、飛び方を変えてみたり、Kの様に音痴に唄ってみたり。
けれども、いずれも効果は無かった。
もしかして、二人でなくては駄目なのか。一人では駄目なのか。
一人。無音。暗闇。怖い。
いかんいかん、冷静になれ。後頭部を叩く。考えろ考えろ僕の頭。
もしもだ、僕が『あんたがたどこさ』によってここに来たとする。
そうだとしたら、その歌詞に何かヒントが隠されていないだろうか。
僕は『あんたがたどこさ』の歌詞を頭の中でなぞってみた。
肥後……熊本……せんば山。そこで僕はふと思い至る。
あの歌詞の中で隠されたのはタヌキだ。鉄砲で撃たれて、煮られて、焼かれて、木の葉で隠される。
もしかして僕はタヌキ?だったらKは猟師だろうか。
しかし、そんなことに気付いてもどうにもならないのだった。
足元からじわじわ上って来る恐怖が膝を越えた。足が小刻みに震えだす。
まずい、正気の僕に残された時間は割と少ないらしい。
勘弁してくれ。僕だって怖がりなのだ。
一人は怖い。いつもはどんな心霊スポットに行ってもそれほど怖くは無い。何故なら僕の隣にはSとKが居るからだ。
そう言えば今日は三人じゃなかった。それがいけなかったのかもしれない。
Sが今日来れなかった。急にバイトが入ったと言った。
けれど先程、僕とKが学校の探索をしている時にメールが来ていた。
その時の僕は廃校探索に夢中で、Sからだと知っただけでメール自体は見てなかった。
それを思い出した僕は、ポケットから相変わらず圏外で役に立たない携帯を取りだした。
操作してメール受信画面を開く。
『今何処にいる?』
それがSからのメールだった。それが分かれば苦労しない、と僕は思う。
そうして僕は、足の震えと共に少しだけ笑った。
このメール内容。あんたがたどこさ、じゃないか。
「あんたがったどこさ。ひごさ、ひごどこさ……」
僕は無意識の内に唄い出していた。そろそろ正気がやばい。立っていられなくなりそうだった。
唄いながら、この足では毬を跨ぐことも出来ないな、と思った。
「……くま……え?」
足の震えが止まった。
僕は気がついたのだ。その瞬間、堰を切った様に走り出していた。
そうだ。
あんたがたどこさ。
そうだった。
僕は走る。誰も居ない学校に向かって。走りながら呟く。
「あんたがたどこさ。ひごさ、ひごどこさ……」
そうだよ。あの唄は、元々……。
「……手毬唄じゃないか!」
可能性は見当もつかなかった。客観的に見て、まるで高く無いとは思う。何をどうすればいいかも分からなかった。
けれど、何故か確信できた。これが元の世界に戻るやり方だと。

僕は小学校の校舎脇を走り抜け、裏手に回った。目当ての建物は校舎じゃない。
あった。
体育館。
入口に鍵はかかっていたけれど、床近くにある通風孔が一部壊れていたので、そこに身体を滑り込ませて中に入った。
暗い。懐中電灯を付ける。しかし幽霊でもいいから出てほしい気分だった。
体育館倉庫には幸運にも鍵は掛かっていなかった。錆ついて重たい扉をスライドさせる。
中にはここが小学校として機能していたころの名残がそのまま置いてあった。
目当てはバスケットボール。
ほぼ全部のボールが空気が抜けて萎んでいたが、空気入れを見つけ、それを使ってボールに命を吹き込む。
空気の入ったバスケットボールを持って、僕は体育館の中央に立った。
床にボールを落とす。ダム、と音がして勢いよく跳ねる。再び両手にボールを抱え、僕は目を瞑った。
深呼吸。
いっせーのーせいっ!
「……あんたがったどっこさ、ひーごさ、ひーごどっこさ……」
唄い出すと同時にバスケットボールをつく。目を瞑ったまま。『さ』の部分で片足を上げボールの上を通過させる。
ちなみに、僕は元バスケット部だ。
「くーまもっとさ、くーまもっとどっこさ、せんばさ……」
心臓が鳴っていた。また足が震えだした。
唄いながら自分自身を鼓舞する。もう少しだ、頑張れ僕。
「ちょいとかーくー、すっ!」
最後に思いっきり力を込めてボールをついた。
ボールは今までの最高速度で地面にぶつかり、僕の頭より高く上がったはずだ。
そして僕は目を瞑ったまま、その場で足を軸に一回転した。意味は無い。自分でハードルを上げただけ。
両腕を前に出す。この中にボールが落ちて来るのか。

時間にすれば二秒は無かったと思う。でも長かった。
腕の中にボールが落ちる感触はない。
しかしいつまで経っても、ボールが床に落ちる音もない。
しばらくそのまま目をつぶっていた。開けるのが怖かった。でも、足の震えはいつの間にか止まっている。
深呼吸、一回、二回。
僕は目を開けた。
バスケットボールが消えていた。
「……うわー」
……うわー……うわー、うわー……
僕の声がこだまする。
でもそれは体育館だったから当たり前だったのだ。そのことに僕が気がつくまでに相当の時間を要したけれど。
耳を澄ませば、外で鳴く虫の声がかすかに聞こえた。
僕は携帯を取り出す。アンテナが一本立っていた。
信じられないだろうが、携帯のアンテナが一本立っていたことに、僕は本当に飛び上がって喜んだのだ。
その瞬間、僕の手の中の携帯が鳴った。
Sからだった。急いででた。
『……よお。ところでお前さ。いま、小学校にいるのか?』
Sの声。不覚にも泣きそうになりながらも、僕は「うん、うん。そうだよお!」と大声で返事し、若干ひかれた。
がんっ。
体育館にすさまじい音が響く。
何事かと思って音の方を見ると、丁度体育館の裏口が蹴破られて、息を切らしたKが中に入ってきた。
そうしてKは懐中電灯をこちらに向けた。
「お。……おおう。こんなとこに居やがった。……マジでありえねーし。
 目え開けたらいきなり居ねえんだもん……マージーありえねえよまったくよお……」
そう言ってKは「あーうー、だあーもう疲れた……」と、体育館の床にだらんと寝そべった。
電話の向こうでSが何か言っている。
僕は黙っていた。
戻ったら絶対一発ぶん殴ってやろうと思っていたのだけれど、
体育館の床の上で「うーんうーん疲れたよーい」と唸りながら転がるKを見ていると、何だかその気も失せた。
僕は受話器を耳にあて直し、Sに向かって言う。
「とりあえず、帰るよ」
『ん?……おう、そうか』
それから、帰りにSの家に寄る約束をして電話を切った。
そうして、まだ床でごろごろしているKを軽く一発蹴ると、
実はぼろぼろ泣いていた奴を引っ張り起こして、二人で車まで戻った。
運転席に座ったKが鼻をすすりながらエンジンをかける。

小学校から少し降りると、街の夜景が見えた。
助手席の窓から見たそれは、僕にとって今まで見たどんな夜景よりも綺麗で。
それは決して、僕の目が涙で滲んでいたからでは、ない。
しかしながら、自分で言うのもなんだが、
不思議なことに、これだけの経験をしても、もうこりごりだとは思っていない。
あんたがたどこさ。
どこでもいいよ。けれど、次は三人で行きたいなあ、と思う。









それは蛙とコオロギの鳴き声が響く、夏もおわりかけたある夜の出来事だった。
「……この家だってよ。出るって有名な家」
僕とKはその二階建ての一軒家を、周りをぐるりと囲む塀の外から眺めていた。
風は存外に冷たく、そういう季節はもう過ぎたのだと感じる。
なのに、僕らはまた肝試しに来てしまっていた。僕とKとS、いつものメンバーだ。
発案者はKだ。奴のオカルト熱は季節に関係なく、いつでも夏真っ盛りらしい。
「二階あたりに女の霊が出るって噂。今はー……見えねえけどな。窓に映るらしいぜ」
Kの言葉に、僕は二階の窓を懐中電灯で照らした。
Sはというと、道の脇に停めた車から出てこず、運転席側の窓から右肩と頭だけを出して、つまらなそうに家を眺めていた。
「おいS、出てこいよ。なに一人だけ車乗ってんだよおめーはよ」とKが言う。
Sは大きなあくびで返す。
「……さみーんだよ。それに、誰がここまでずっと運転してきたと思ってんだ。……俺は寝るぞ」
Sはそう言って、車の中に引っ込み窓を閉めてしまった。
「Tシャツ一枚で来た奴がわりーんだよ」と Kが、かかか、と笑う。
でも確かに今日の夜は存外冷える。
おそらく朝から曇っていたことが原因だと思うが……。お天気おねいさんは何と言っていただろうか。
そんなことを考えながら、僕はもう一度窓を見上げた。
ちなみに、僕とKがいる位置とSが乗る車の間には、この家の門がある。門は内側に開いていた。
でも、今日は不法侵入はしない。外から眺めるだけだ。理由は、ここがそういうスポットだから。
「噂じゃ女……っていうかここの家の娘な、事故で下半身が動かなくなったんだってよ。
 それから女はショックで段々頭がおかしくなって、そのせいで両親はその女を、自宅にずっと閉じ込めてたんだと。
 ビョーキ家族だな」
と隣でKが言う。
いつもならここらでSの鋭いツッコミが入るのだが、上がTシャツ一枚の人間にとっては、この寒さは多少分が悪い。
「で、事件は起きるわけだ。その女が夜、寝ている両親の首をナイフで掻っ切って、自分も自殺したんだな」
「……自殺?」
と問い返しながら、僕は何だか周りがさっきよりも寒くなった気がした。背筋がぞわぞわする。
「首吊りだってよ。首つり自殺。こう、ロープにぶら下がって、ぶらんぶらん揺れてたんだと」
Kが舌をべろんと出し、身体を揺らす。
しかし、僕はその時Kの話に違和感を覚えた。女は両親を殺して首吊り自殺をした。けれど、その女は確か……。
「……でもさ、それって、おかしくないか?」
「あ、何が?」
「足も動かないのに、どうやって首吊るんだよ」
「どうやってって。そりゃお前……」とKが何か言おうとしていたその口が止まる。
ぞわり、と冷たいものが僕の首筋を撫でた。
それはまるで、大きなつららを直接背中に当てられた様な感覚だった。足から頭まで、全身に鳥肌が立つのが分かった。
僕とKはほぼ同時に二階の窓を見上げた。
二階の一室の窓が徐々に開いていた。ゆっくり、音も無く。
隙間に女の顔が見えた。
髪がぼさぼさ。大きく見開いた目が、僕ら二人を見据えていた。
窓は開く。隙間が広がり、その首にロープが見えたその時、女は一気に窓の僅かな隙間から外へと身を乗り出した。
女が頭から落ちる。途中で、その首に巻いてあったロープが落下を食い止めた。
がくんと女の身体が上下に反転し、二階の窓を支点に振り子運動を始める。
ぶらん、ぶらん。
枯木のように細い足。その手にはナイフらしきものが握られている。一つ、二つ、三つ。
その身体が痙攣した。ナイフが手から落ちる。その手が宙を掻く。音は何も無い。
その内、女の両手がだらりと下に垂れさがった。口が開き、真っ赤な舌がその中に覗いていた。
死んだのか、死んでいるのか。しかし女の目だけは、未だこちらをぎょろりと見据えていた。
僕の口から何か悲鳴のようなものが出ようとしていた。
と、僕の首筋に冷たいものが当たった。
「ふひゃっ」
僕はついに悲鳴を上げて、実際飛び上がった。
雨だった。
しかし、雨のおかげで一瞬だけだが気がそれた。
それから、はっとしてまた二階を見上げたが、そこにはもう何も無かった。首を吊った女の姿も、窓も、閉まったままだった。
「……ああやって、首を吊ったんだとよ」
隣を見るとKは笑っていたが、無理をしている笑いだと一目で分かる。でもその時は僕も同じ笑いを返していたに違いない。
なるほど、確かにあの方法なら足が不自由でも首が吊れる。
すごいものを見たな。と僕がKに言おうとした時、
――どさり――
僕とKはまた、ほぼ同時に反応した。
何かが落ちた。塀の向こう側。それから、ズル、ズルと布が擦れる音。
先程見た首吊りには音は無かった。しかし、今度は音だけがある。
僕とK、それとSが乗る車の間にある門。門は開いていたのだが、そこから手が出てきた。
さっきの女の手だ。ナイフを握っている。もう片方の腕も出てきた。
次いで頭。首にはロープ。白い服。見開いた眼。垂れた舌は地面を舐める。
僕はSに助けを求めようとした。しかし声が出ない。身体が動かない。金縛り。Kも同じらしかった。
どうしよう。こっちにゆっくり這い寄って来る。足は動いてない。手だけで地面をずるずると。
怖い。それに近い。怖い近いこわい近っ。
這い寄る女と僕らの距離はもう二メートルも離れてなかった。あ、もう駄目かも。本気でそう思う。
突然、光に目が眩んだ。
エンジン音とブレーキ音。
気がつくと、僕らが乗ってきた車が目の前にあった。金縛りが解け、身体が動く。
身体は動いたが、僕はしばらくその場を動けなかった。
ウィームと運転席側の窓が開き、Sの眠たそうな声が聞こえる。
「……おいお前ら、もういいだろ。雨が降ってきたから帰ろうぜ」
僕とKは顔を見合わせた。
おそるおそる車の下を覗くが、そこには何もいない。
「こいつ……」
Kが呟く。
「……轢きやがった」
「あん?ああ、そういや妙な手ごたえがあったな。でかいカエルでもつぶしたか?」
僕は何も言えないでいた。KもSをまじまじ見つめるだけだった。
そんな僕らにSは怪訝そうな顔を見せ、
「どうしたお前ら。なんかあったか?……ま、何を見ても聞いてもだ。そりゃ幻覚に幻聴だ。ほら、乗れ。もう帰るぞ」
僕とKはもう一度顔を見合わせ、お互い何も言わずに車に乗り込んだ。
それは蛙とコオロギの鳴き声が響く、夏も終わりかけたある夜の出来事だった。





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