472: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/08/08(月) 19:18:36 ID:0cYmXmVC0
同僚の話。

毎年夏になると、嫁方の実家でバーベキューをするのだという。
彼が専ら焼く専門になっているらしい。
その年も軍手と火箸を装備して、家族サービスに精を出していたそうだ。

肉を焼く手を一寸休めて、汗を拭きつつ缶ビールを喉に流し込んでいると。
彼の背中目掛けて、パラパラっと小石が飛んできた。
慌てて石が投げられてきた背後を見やったが、人っ子一人見当たらない。
そちらには狭い休耕田があって、それを越えたらもう暗い山の中だ。

首を傾げながら庭の家族たちに目を戻す。
と次の瞬間、バララっ!と先より激しく石礫が投げ付けられた。
思わず火箸を構えて「誰だ!?」と叫ぶ。
流石に今回は家族も気がついた。皆が山に向かって集まってくる。

義母が「あっ忘れてた」と声を上げたのはそのすぐ後だった。
すぐに紙皿に焼けた肉と野菜を少々載せて、おまけに漬物と御握りを添える。
顔中を疑問符にしている彼に構わず、義母はそのまま田の端まで進み、紙皿を
そっと地べたに置いて頭を下げた。

「天狗さんに御裾分けを忘れてたわ。失敬失敬」

庭に帰ってきた義母は、ごく普通に言ってのけた。
彼と息子さんは目を丸くしていたが、嫁さんは「もう忘れっぽいんだから」と
これまた平然と流したそうだ。
彼は少し頭を抱えたくなった。息子は凄いやと喜んでいた。

とは言え、実家側の者は他に変わったことをする訳でもない。
今では彼も自分から御裾分けを用意するようになったという。
「あれ以来、石は飛んでこないよ。まぁ天狗を見たこともないけどな」
ちなみに御裾分けは毎回、炭火を落とす頃には綺麗に失くなっているそうだ。


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