410 :名無し百物語:2023/10/13(金) 21:40:05.40 ID:XzFIuy8H.net
石じじいの話です。

まずは能書。
サルは、秋になると山ブドウ・アケビなどの実をとって岩のくぼみにたくわえておく。そこに雨水などがたまって果実と水がとけあい発酵して味のよい酒ができるといいます。猿酒ですね。
猟師や木樵などが山中を歩いているとこの猿酒に出会うことがあるそうで風味ゆたかな美酒だということです。
彼らが言うには、山を歩いていると岩のくぼみなどに酒がたまっていることがある。芳香をもち非常に美味だと。
しかし、これは作り話だそうです。
清の時代の中国の書物に、サルが多い場所には猿酒を見つけることができるという記述があるので、そこから日本に由来したものかもしれないとのこと。

ある時、山からおりてきた猟師が、「猿酒」を里に持ってきたそうです。
上記のように、山で見つけたので水筒につめて持って帰ったといいます。
その猟師と一緒に皆で飲んだが、非常に美味で香りもすこぶる良い。
これはいいもんだ、どこで見つけた?と尋ねても、その猟師は教えてくれませんでした。
そりゃそうでしょう。
彼は、別の日に、また猿酒を持ってきました。
よろこんで皆で飲んだら、全員が死んだそうです。その猟師も。
その猟師はどこで見つけたのか?
ほんとうに、山で見つけたのか?
それは本当に猿酒だったのか?
里の人々の毒殺が目的の芝居だったのではないか?
しかし、なぜ自分も死んだ?

「よう考えてみんさいや、サルがそがいなことできんやろ。実際に山でサル見とったらわかるやないかな。
注意せないけないな。そがいなありもせんこと信じとると、魔物につけこまれるんで。その猟師が魔物やったんかもしれないねえ。」