274 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/07/20(土) 23:35:37.00 ID:L3hbmMFa0

山仲間の話。


山歩きの途中で休憩していると、唐突に花の香りに包まれた。
様々な野花の匂いが混じっているようで、何の花かは特定出来ない。
見回してみたが、辺りには花など一輪も咲いていなかった。



後で山に詳しい者に聞いたところ、「サニャツキに出会したのだろう」と言われた。
サニャツキとは『山野憑き』が訛った語らしく、取り憑いた者の周囲に野花の香りを漂わせる物の怪なのだという。
「花の香りを振りまくだけで、他に害はないというから、何も心配しなくていいよ。
 ただこいつ、気に入った人間に憑くというから、しばらく付きまとわれるかも」
確かに下山後、街中の自宅にいる時にも、いきなり花の香りが部屋に充満することがあったという。
「一月くらいでなくなったけど、爽やかだし悪いものじゃなかった。
 ただトイレの中で香りが爆発した時は、我慢できずに笑ってしまったよ。
 凄く豪華な芳香剤だったなぁ」
そう言って彼は苦笑した。