329 :死の彫刻(1/10):2011/02/09(水) 03:06:15 ID:QZ6Vr1r10
登場人物や地名などの名称はすべて架空のものに置き換えてあります。

小学校の高学年頃の話だ。
月曜の朝、ちょっぴりヤンチャ坊主な栗本という男の子が、ニヤニヤしながら変な物を学校に持ってきた。
新聞紙に包まれ、二重の買い物袋に入れられたその物体は、かなりの重量がありそうだった。
栗本がどっこいしょと掛け声を掛けながら、自分の机の上にその物体を置くと、
ゴトリという重量のある鈍い音がクラス中に響き渡った。

クラスの連中に声を掛け、机の周りに人を集めてから、トウモロコシの皮を剥くように
買い物袋のビニールを剥き始めた。
続けて出てきた新聞紙の塊を一枚ずつ勿体つけたように、ゆっくり丁寧に剥ぎ取る。
中からは、ザラついた軽石のような石で造られた彫刻作品が出てきた。
子供の頭と同じくらいの大きさの頭部だけの代物だ。

その作品というのが見るからに不気味で、まず片目が潰れて血を流している。
反対側の目はギリギリまで見開かれていて、焦点の合わなくなった虚ろな視線を、
上の方に漂わせているような風情だ。まるで絶命する瞬間のように…。

口は苦悶に歪み、だらしなく舌がはみ出していた。
その口の端からも血のような赤い筋が滴り落ちている。
誰の目にも「断末魔の瞬間」というような薄気味の悪い雰囲気が感じ取れた。

それを見た瞬間、周りの連中は「うわっ」という声を上げて本能的に机から一歩退く。
その後、ゴクリと唾を飲み込み、恐る恐る近付いてよく見直してみた。
誰一人としてその作品に触れようとはしない。

栗本はその彫刻の頭頂部をペシペシ叩きながら全員の顔を見渡して満足げな表情を浮かべた。
栗本の親友の塩崎が、真っ先に皆が感じた疑問を代表して問いかける。

塩崎:「何これ、自分で作ったの?」
栗本:「いや、ちょっとある所から持って来たんだよ。」
一同:「ある所ってどこ?」
栗本:「それはちょっとここでは言えないな。だけどこういう物がまだ沢山あるんだよ。欲しい奴いるか?」

みんなが顔を見合わせた後、男子の数人が「俺も欲しい」と名乗りを上げた。
俺もその中の一人だった。

その他の男子はこの異様な作品に本能的な嫌悪を感じ、欲しいなどと思うヤツはいないようだった。
女子などは見るのも汚らわしいという雰囲気で、サッサと散り始めた。

その日の放課後、一旦各自の自宅に戻ってから自転車で約束の地点に集合。
実際に集まったのは栗本、塩崎、中島、金田と俺の5人だった。
道すがら栗本に今朝の彫刻をどこから持ってきたのかを尋ねてみた。

栗本:「勝間川の先に、手で掛けられたような欄干も無い橋があるのを知ってるだろ?」
俺 :「あぁ、幽霊が出るとかいう噂の、滅茶苦茶寂しい場所だね。」
栗本:「そうそう、あの幽霊橋。その先は防風林のような木で囲まれた畑があって、道が細くなるじゃん。」
俺 :「昼間でも薄暗い気持ちの悪い場所だよね。その先には行ったことがないけど…。」
栗本:「あの道を真っ直ぐ行くと崖沿いに道が折れ曲がっていて、そこから2~3キロ進むとあるんだよ。」
俺 :「ふ~ん…。」

何が? などとは尋ねなかった。行けばわかると思ったからだ。
幽霊橋を渡り、防風林のような樹木に覆われた畑を抜けた先の切り立った崖は、
崖崩れを防止するためのコンクリートで覆われていた。

舗装路は状態が悪く、所々裂け目から雑草がはみ出している。
自転車のタイヤを引っかけないよう注意しながら進むと、
100mほど先に鬱蒼と生い茂る雑木林の入口が見えて来た。
その手前には、小さなプレハブ小屋のような粗末な建物が見える。

その場所で栗本が皆に合図を送り、自転車を崖の陰になるように置いてから徒歩で進むことになった。
少し歩き始めてから栗本がふと立ち止まり、いざという時のため自転車を帰りの方向へ向けておく事を提案した。
みんな黙ってその指示に従う。

再び小屋へ向かって歩き始める。もし建物から見ればこちらの姿は丸見えになってしまいそうだ。
道はプレハブ小屋のすぐ横を通り、崖と雑木林に挟まれる形で真っ暗な木々の中へと吸い込まれていて、
その先に何があるのかは全くわからない。少なくともあまり人が通りそうな道ではないことが分かった。
周囲には人が住んでいそうな民家がまるで無く、以前は田畑があったと思われる農地も荒みきって、
雑草が子供の背丈ほどの高さに伸びていた。

ソロリ、ソロリと様子を見ながら小屋に近付いて行く。
改めてその小屋をよく見ると、窓の部分にはブルーシートが内側から掛けられていて、
部屋の中の様子は全く窺い知ることが出来ない。
それと同時に中からもこちらを見ることが出来ない事がわかり、安堵感から少し気持ちが楽になる。

それでもみんな押し黙って、もし不審な動きがあればすぐさま引き返せるよう慎重に歩を進めた。
栗本が手で全員を静止してから一人で小屋に近付いて行く、死角になっている小屋の裏側まで一通りチェックして、
問題がない事を確認してから俺達を手招きで呼び寄せた。

間近で見るとその小屋は一層不気味な雰囲気が漂っていた。
トタンの屋根はサビサビになっていて、壁の塗装も剥がれ落ち、周りは雑草が生え放題になっている。
敷地の境界と思われる場所には、割った竹を組み合わせて造られた手作り風の柵のようなものが張り巡らされていたが、
完全に朽ち果てていて、それがみすぼらしさを強調していた。

窓の一つを近くから覗き込んでみる。ブルーシートが少し捲れて部屋の中の様子が見えたのだが、
かなり暗くて全体はよく見えない。しかし今朝栗本に見せてもらった物と同じくらいの大きさの彫刻が、壁際の棚や机、床の上などに無数に転がっていた。

それらの一つ一つが非常に精巧に作られているのは、ちょっと見ただけでもよくわかったのだが、
すべての彫刻が陰惨な雰囲気を持っており、中には腐敗途中の顔に見える物、半分白骨化しているように見える物、完全に白骨化した物、黒と白の不気味なペイントで不吉なマスクを被ったように見えるものまであった。
表情の見えるものはすべて栗本が見せてくれたのと同じような苦悶の表情を浮かべている。

それらが、壁のある一点を見つめるように配置されていた。
視線を自然にその場所へ移すと、ひな壇のような形の祭壇があり、そこに薄気味の悪いお供え物が並べられている。
A3サイズくらいの大きめな額には、目を瞑って髪と髭をボサボサに伸ばした小太りの男性の写真が飾られており、
白っぽい服を身につけていることが分かった。この男性を崇めるような形で蝋燭やマッチ箱、
ちょっとしたフルーツなどが雑然と置かれている。

お供え物が痛んでいない所を見ると、この小屋が完全には放置されていないことが自然に窺い知れた。
その当時はよくわからなかったのだが、いわゆる邪信教の祭壇というような風情を醸し出していた。

栗本は「ここだ」と言うと、窓の一つを指さしてガラスのはめ込まれたギシギシ軋む木枠の窓をスライドさせた。
ブルーシートを内側に押し込んで窓から侵入し、手招きで全員に合図を送った。

しかし中の様子がハッキリ見えて来ると、ますます不気味な部屋の様子に全員がビビってしまい、
入ることを躊躇い始めた。

栗本は「何をやってるんだ? 早く来い」と強引にみんなを連れ込もうとするが、
他のメンバーはお互いに顔を見合せたまま、誰一人として小屋に入ろうとはしない。
そこで栗本が「じゃあ、小屋の外で誰かが見張りをしていて、人が来たらすぐに逃げられるようにしよう」と提案し、渋々みんなが了承して話がまとまった。

じゃんけんの結果、俺が一番最後まで勝ち残り、見張り役をすることになった。
全員が窓枠から体を潜り込ませる。口々に「うわぁ~、なんだこれ?」とか「気持ち悪いな~。」とか、
「電器は点かないのかな?」などと呟いている。

ちょっぴり疎外感を感じ、一緒に中に入れば良かったかなぁと後悔し始めた時だ。
林の奥の方からボロ服を身につけて、白髪交じりの不潔そうな髪を振り乱した、浮浪者のような男が、
ブツブツ何事かを呟きながら突然現れた。
片足を引きずるような感じで、歩いてこちらに向かって来る。

俺はビックリ仰天して中の連中に「誰か来たぞ! 早く出ろ、早く! 俺は先に逃げるぞ!」と小声で警告してから、もう一度その人物を見ると、その人物も俺の方に気が付いたようだった。
狂ったように目を見開くと、不明瞭にくぐもった奇声を上げ、びっこを引きながら猛烈な勢いで走って来る。

その様子に心底ゾッとさせられた俺は、足が竦み自分では上手くコントロールできなくなりそうな程の衝撃を受け、
よろよろと走り始める。早く走ろうとすればするほど思い通りにならないモドカシサに焦りながら、
全力疾走で自転車の所まで駆けだした。

小屋の中に居たメンバーも手に持った彫刻を抱きしめながら次々に窓から飛び降りて、
予想よりも間近に迫ったその人物の異様さに恐怖を感じながらも命からがら逃げ出した。
他のメンバーよりも足の遅い俺は、見張り役をしていたことに感謝しながらも、
仲間の安否を気遣って後ろを振り向いたが、全員が何とか男の手を逃れてこちらに向かって走って来る。

栗本の的確な事前指示により自分の自転車が帰りの方向へ向いていることを感謝しながら飛び乗ると、
そのまま躊躇いなくペダルを漕ぎ始める。
真っ先にその場を離脱し、心にゆとりが出来たのでもう一度全員が無事に逃げきれるか確認した。

他のメンバーも両手に抱えていた彫刻作品を前籠にぶち込むと、必死に自転車を漕ぎ始める。
自転車が中々スピードに乗らず、メンバーの中で一番最後に脱出した塩崎の後方1m程度の所まで、
その男が迫ってきていたが捕まる寸前の所でギリギリ逃げ切ることに成功した。

追いかけて来た男は最初から最後まで不明瞭にくぐもったゾッとするような奇声を上げ続けていたが、
完全に引き離した後も驚きのスピードで追跡し続けて来るのがわかった。
俺達は脚がガクガクと震えながらも、全力で自転車を漕ぎ、それぞれが盗んできた彫刻の重さにフラフラしながら、
なんとか逃げ出すことに成功した。結局俺一人が彫刻を手にすることが出来なかった。

地元までスピードを落とさずに一気に戻ってきて、周囲に人の気配がない事を確認すると戦利品を持ち寄って確認をする。
栗本が二つ目に選んだ彫刻は両目がくり抜かれ、鼻が腐り落ち、それでもなお何かを訴えようとしているような苦悶の表情を浮かべる女性と思われる作品だった。

他のメンバーもそれぞれに不気味な物を持ってきていたが、栗本が持ってきたものに比べると
それほどインパクトの強い作品ではなかったようだ。
俺は手ぶらで戻ってきたのだが、栗本が「2個あるからお前の好きな方を一つやるよ」と提案してくれたにも関わらず、
直感的な危機意識が働いて丁重に断ることにした。そしてみんながそれぞれに満足しながらその日は解散となった。

翌日学校で会った栗本は浮かない表情を浮かべて何か考え込むように教室に入ってきた。
昨日一緒に行動した他のメンバーも栗本の様子がおかしい事に気が付き、みんなで栗本の席の周りを囲みながら、どうしたのか聞いてみる。しかし押し黙ったまま頑として何も話そうとしない。
仕方が無いので塩崎を残して他のメンバーはそれぞれの席に引き上げ、そっとしておくことにした。
後で塩崎に何か情報が聞けなかったか尋ねてみたが、栗本は最後まで口を割らなかったようだ。
そして、その日を境に栗本は学校に来なくなってしまった。
担任の先生に聞いてみたが、先生も栗本家と連絡が取れないし、休んでいる理由がわからないという。

その数日後、今度は塩崎、中島が二人揃って学校に来なくなってしまった。
やはり担任の先生に確認してみたのだが、栗本の家庭は勿論、塩崎の家庭にも中島の家庭にも連絡が取れないという。
金田と仲の良かった俺は、学校に来なくなり連絡も取れなくなった3人の事が偶然とは思えず、
放課後3家族の家を順番に訪ねることにした。

真っ先に栗本の家に行くが、チャイムを鳴らしても全く返事が無い。
車が駐車場にあり、自転車もその横に何台か置かれていた。栗本の自転車も置いてあるのが見える。
その駐車場は鉄の門扉で閉ざされていた。外から家を見るとすべての窓が雨戸で閉ざされている。

塩崎の家にも寄ってみる。やはり塩崎の自転車が敷地内に置かれていた。
栗本の家庭と同様に車も駐車場に入れられており、外から家の中の様子を見てみたが、
やはりすべての窓が雨戸で閉ざされていた。インターフォンのボタンを押してみたが、まったく反応が無い。
栗本家と塩崎家を見て、明らかに何かがおかしいというのが小学生の自分達にもハッキリわかった。
完全に戸締りされており、まるでどこかへ旅行にでも出かけたような雰囲気だ。

最後に中島家にも寄ってみた。
前の2件とほぼ同様の状態だったのだが、唯一違っていたのは玄関先の石畳から少し段差になった下の部分に、先日中島が持ち帰った彫刻の一部と思われる欠片がいくつか四散していたことだ。

俺達は周囲を見回してから中島家の玄関先まで近づいて、割れた彫刻のかけらを拾い集めてみた。
まるで頭が割れてバラバラになったような雰囲気だったが、その破片は不思議なことにお椀のような構造になっていて、中までギッシリと石が詰まっているわけではなかったのだ。

外側は敢えて軽石のようなざらついた手触りに仕上がっていたのに対し、内側はまるで石膏のような滑らかさがあり、元から中が空洞になっていたことが容易に想像できた。破片を手にして元の形になるよう注意深く組み合わせてみたが、その想像を裏付ける結果となった。
注意深く周りを見回してみたが、落ちていた欠片は5分の1程度で残りの破片は見当たらなかった。

割れた部分をよく見てみると褐色味を帯びた薄汚い白で、
その周りを白い石膏がサンドイッチするように張り付けられている。
少し指でこすってみるとボロボロと剥がれたが、それを見ていた金田が「ヒッ!」と息を飲むような声を上げた。
そして震える声で次のような事を呟いた。

「この黄色い部分って、何かおかしくないか? これって…。これって骨なんじゃないの? 本物の…。」
「おい、ば、馬鹿な事を言うなよ。本物の骨のわけがないだろ? こんなに黄色いんだぞ?」
「だけど明らかに表面と裏側に張り合わされた石とは、色とか質感が違くないか?」
「人の骨はお葬式で見たことがあるけど、焼いたらボロボロになるし、もっと白くてカサカサした感じだったぞ。」
「それは焼いた場合だろ? これは焼かれたものではなくて生の骨の状態なんじゃないか?」

そこまで聞くと急に恐ろしくなり、手に持った石のかけらが思わず地面へ滑り落ちた。
ゴツッというような嫌な音を立てた後、カラカラと軽い音を立てて石畳の上を転がって行く。
夕方になり周囲はいつの間にか薄暗くなり始めていた。

今ではぼんやりと3つの家庭が何かの事件に巻き込まれたのではないかと思い始めていた。
盗んできた彫刻は金田の家にもあるはずだ。正直あまり関わりたくないという気持ちはあったが、
このままでは絶対にまずいということで、金田を促し慌てて彼の家へ向かって走り始める。

家に着くと金田は「ただ今」も言わずに玄関から家の中に入り、靴を脱ぎ棄てて階段を上り始めた。
俺も「お邪魔します」などと悠長なことは言わずに、金田の後ろへ続く。
そのままの勢いで金田の部屋へ上がり込むと、金田は押入れに隠した彫刻をそっと取り出した。
それを隣の部屋から持ってきた新聞紙に包んでから買い物袋に入れ、再び無言で家を出る。

そして近くにあったお寺まで駆け込むと、人目につきにくい境内の裏手に移動してから包みを開いた。
道中二人で相談して、この彫刻を割ってみようという話で結論が一致していた。
金田が彫刻を振り上げ、投げ落とそうとする直前で「待てっ!」という鋭い声が掛る。

しかし金田は彫刻の重みで勢いのついた腕を完全に止めることが出来ず、
勢いが若干殺されたまま、砂利石の混じる地面に落としてしまった。
中途半端な力で地面に叩きつけられた彫刻は落ちた場所から大きく真っ二つに割れ、
空洞の構造になった内部をこちらに覗かせた。

声の主の方を反射的に振り替える。すると病的なまでにやせ細った中年男性が立っていた。
その男性の顔は薄暗い闇の中に完全に隠れまったく読み取ることが出来なかったが、
印象的で特徴のある白っぽいゆったりとしたパジャマのような不思議な服を身にまとっていた。

俺たちは逃げ場を失い、声を出すことも出来ないほど完全に硬直していた。
その男性は歩を緩めることなく、尚も近づいてくる。ようやく薄明かりの元で表情を読み取ることが出来た。
その男の顔には疲れや無力感や怒りやその他、様々な感情の入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。

男 :「お前たち、その彫刻をどこで手に入れたんだ? それが何なのかわかっているのか?」
金田:「こ、これは…。友達にもらったんです。何なのかは知らないけど、気味が悪いので壊して捨てようと…。」
男 :「もう手遅れだ。それを壊してしまったら、決して後戻りは出来ないのだ。」
金田:「あ、あの…。どういう風に手遅れなんですか?」
男 :「君のご両親はいま私の仲間のところにいる。君は私に付いて来なくてはならない。」
金田:「そ、それはどういう意味ですか? お父さんとお母さんは仕事に行ってるはずですが…。」
男 :「今にわかる。君たち二人は兄弟ではないんだな? その彫刻を壊した君。君は私に付いて来たまえ。」

そう言って我々に近づくと、割れてしまった彫刻を拾い集め、再度「怖くは無い。私に付いてきなさい。ご両親に会わせてあげるから…。」と優しく言ってからクルリと踵を返した。

俺 :「あ、あの僕はどうすれば?」
男 :「君はこれによく似た彫刻を持っていないんだろ? この彫刻の事はもう忘れなさい。寄り道せずに家に帰りなさい。そしてこの彫刻を見つけた場所には決して近づかないようにしなさい。」
俺 :「か、金田。一人で大丈夫か?」
金田:「あ、あぁ…。とりあえず、栗本達も何かあったのかもしれない。あいつらに会えたら何があったのかを聞いてみる。」
俺 :「わかった。それじゃあ俺は帰るからね。バイバイ!」
金田:「バイバイ!」

その時に交わした言葉が金田との最後の言葉になった。
それから10数年後、長野県松本市で猛毒の神経ガスによる無差別テロが発生、さらにおよそ1年後、
地下鉄で再び同様の無差別テロが発生し、教祖として話題となった人物の顔が毎日クローズアップされるようになる。
その顔を見た瞬間、彫刻が無数に置かれたプレハブ小屋に祭られた人物の顔がフラッシュバックした。
その後、俺はあのプレハブ小屋には近づいていない…。