少女漫画家として活躍していた竜樹諒が、漫画家生活最後の記念として『私が見た未来』を出版したのは1999年のこと。それから十余年、同書はにわかに注目を集めることになります。理由は、表紙に「大災害は2011年3月」と記されていたことから。「東日本大震災を言い当てた本」として話題になった結果、作者を装うなりすまし男までが現れ、荒唐無稽な妄言や「5の法則」などを勝手に広め大きな騒ぎに発展します。

さらには絶版だった単行本が、ニセモノの手により復刊されることに。それを知った竜樹諒本人は出版社に名乗り出て、ニセモノが流布した「富士山噴火」などの偽情報に対処するため、自らが取って代わって急遽『私が見た未来「完全版」』の制作に着手。その当時、ニセモノに踊らされ誤報を流しつづけていたテレビやメディアも、のちに謝罪と修正に追われたといいます。

しかし「完全版」が出版されたあとも、SNSなどで誤情報を拡散する人々はあとを絶ちません。ニセモノや怪情報を駆逐すべく刊行したはずの『私が見た未来「完全版」』も、帯に書かれた「本当の大災難は 2025年7月にやってくる」の言葉がセンセーショナルな形で独り歩きするばかり。こうした状況を憂い、自らが本当に伝えたいことを書き残すべく、竜樹諒は最新作『天使の遺言』の執筆・出版に踏み切ることになりました。