【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

当サイト「怪談の森」は古今東西の洒落にならない怖い話~ほっこりする神様系の話まで集めています。 随時更新中!!

カテゴリ: 仏像




322: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:25:49 ID:nuJ7Q8cXO
お久しぶりです。
前回は夏の話をしたので今回は秋の話をしたいと思います。
文体で何の事か気付かれる方も居る事と思います。

それでは長くなりますがご勘弁を。

~赤い仏像~
ある秋の日の話をしようと思う。
その日は、図書館で見つけ出した郷土史に載っていた【赤い仏像】なる物を一目観ようと少しばかり遠出したのだった。

俺は少々オカルトな趣味が有り、変な話や不思議な物等が大好物だった。

赤い仏像との出会いは偶然だったが、出会った時から一目惚れであった。
場所を調べ上げ宿の手配も済んだ、幸か不幸か彼女や友人などと言う煩わしい人種は居ない。
準備万端である。

いざ出陣!と腰を上げたその時、携帯が泣き喚いた…出鼻を挫かれつつ画面に目をやると見慣れぬ番号が表示されていた。

怪訝な面持ちで出ると何やら唸り声のような音声が延々と流れていた。
予想はしていた。こうでなければこんな怪しい電話には応えない。
こんなタイミングで掛かって来るのは虫の知らせと相場が決まっているのだ。

そして虫の知らせならこれは幸先が良い事になる。
“何か”が起こる。予感は確信へと近付いて行く。

逸る気持ちを抑えつつ車に乗り込みエンジンを…かからない。
バッテリー切れらしい。
どうやら俺の守護霊は頼りがいのある御節介みたいだ 。

30分後俺は軽快に車を飛ばして居た。
見覚えは無くとも走り慣れた蛇行する林道を縫って行く。

323: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:27:43 ID:nuJ7Q8cXO
>>322
行きがてら、何かの遠吠えを聴き竦み上がった。
威嚇なのだろうか?それとも俺を呼んでいるのだろうか?

宿に着いたのは昼過ぎだった。
こぢんまりしているものの趣のある宿だ。
ここが今回の拠点になる。

部屋へ案内してもらい軽く言葉を交わす。
どうやらこんな田舎に独り身の若い男が来るのは珍しいらしい。

『余計なお世話かもしれませんが、何かお悩みでしたらいつでもお話下さいませ』
何か勘違いしているらしく、急に自分が滑稽に思え笑いがこみ上げた。
堪え切れず吹き出す俺を仲居さんはキョトンとして見ていた。

『いえいえ、変な気を起こすつもりはありませんよ(笑)お気遣い有難うございます』
仲居さんは紅葉色の頬で照れくさく笑った。

『それではこちらへは何の御用で?あ、作家さんですか?それならなるべく静かにするよう他の仲(ry』
彼女を遮り訳を話す。

『いえいえ、実はこの本に載っていた【赤い仏像】なるものを一目観ようと遙々駆け付けた訳です。』

『はぁ…赤い仏像…ですか…』

『御存知ですか?』

『いえ、誠に申し訳ございませんが存じておりません』

『何やら寺に保管されてるらしいんですが』

324: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:29:04 ID:nuJ7Q8cXO
>>323
『お寺ですか。お寺なら近くに○○寺という寺が在りますが』

『なるほど。でしたら其処を訪ねてみます。お寺にはどなたか居りますか?』

『あぁはい。住職様が一人』

________
仲居さんに書いて貰った寺の名前と簡単な地図が載った紙を広げ寝転がる。
脇に転がる鞄から郷土史の本を開く。

【赤い仏像】
×県△市○○村
寺院に眠るその仏像の異様さたるや筆舌に尽くし難い
曰わく“赤い仏像”曰わく“紅仏様”曰わく“血仏”
大きさは高さ一尺、幅は約三寸
容貌は赤黒く強い異臭を放っている
あまり気持ちの良い代物ではない
住職によればその仏像は時折血の涙を流すらしく、確かに目尻から何かしら垂れたような跡は確認出来た
聞くところによると、かつてはこの仏像を家から家へ回す風習が在ったらしい
更に古い話では、この仏像は元々呪詛の祭具として…

ここから下は読めない。
子供の悪戯だろうか?何やら赤いクレヨンのようなもので塗り潰されている。

この続きをどうしても確かめたくて俺はこうして此処に来たのだ。

腰を上げると早速寺を訪ねようと出掛けた。
山々には紅葉した木々が生い茂り、澄み切った川が音色を奏でる。山紫水明とはこのことだ。

325: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:31:02 ID:nuJ7Q8cXO
>>324
煩わしい日常の喧騒から離れ、穏やかに流れる時に酔いしれていたが、いかんいかんと我に戻る。

寺はホントに近くに在った。
赤い仏像を見せて欲しいと庭掃除をしていた住職に申し出た。

『赤い仏像か』
口振りからこの住職は知っているらしい事が見て取れた。

『一目観るだけで良いんです』

『あれなら、今は此処には無いんだ』
『山の方の寺に移していてね。今は其処に保管しているよ』

『なんとかなりませんかね』

『あんな仏像を見てどうするんだい?』

俺は例の本を渡し一部始終を説明した。

『ふむ、丁度赤い仏像も含め何か盗まれていないか確認しなければと思っていたところだ、私が案内しよう。支度をするから暫く待ってなさい』

ついに【赤い仏像】と御対面だ。
俺は遠距離恋愛の彼女と久々に逢うかのような気持ちの高ぶりを感じていた。


住職の運転する軽トラに乗り山の方へと走って行く。
山道を登っていると中腹辺りに開けた駐車場が在り其処に車を停めた。

『ここからは歩きだ』
50~60代だろう住職は軽々と山道を登って行く。
対する俺はやはり日頃の運動不足からか既に息が上がっていた。

326: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:37:07 ID:nuJ7Q8cXO
途中、不意にワンワンと吠えられビクリ!とする。
犬だ。

住職によるとこの犬はここで飼われているらしく、名前は太郎。
麓の近所に住む婆さんが毎日餌をやりに来るらしい。
『番犬にもなる賢い奴さ』と笑いながら頭を撫でていた。


そうこうしている内に寺が見えて来た。
遠目でも判るようなボロ寺だ。
小さい寺だ。
目測で5~6畳だろうか?その後ろにちょっとした物置がある感じだ。

『さてと』
住職は正面の扉の南京錠を開けた。

住職が扉を開いた。
瞬間!懐かしい耳鳴りがした。
“アタリ”だ。
やはり赤い仏像はただ者ではないらしい。
ピリピリと突き刺す空気を肌に受けながら中に入る。

『老朽化が進んでいてね。大分取り壊してしまって今では物置として此処が残ってるだけさ』

中はガランとしていた。

327: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:38:42 ID:nuJ7Q8cXO
>>325
住職は正面奥の戸棚を開けガサゴソやっている。

『お、有った有った』
『ほら、これが赤い仏像だよ』

住職から赤い仏像が手渡される。
ついに待ちに待ったご対面だ。

だが、2人の出逢いは予想に反して感動的な物では無かった。

『黒い』
それが正直な感想だった。
赤黒いと言うより黒いのだ。

328: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:39:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>327
『これがホントに【赤い仏像】なんですか?』

漆塗り…とまではいかないが、それなりの鮮やかさを予想していただけに期待外れな気がした。

『あぁ、間違いない。それが正真正銘【赤い仏像】だよ』
『薄暗いせいかもしれないな。外で見て来てごらん』

言われるままに外に出てまた眺める。
なるほど。
確かに少しはマシになった。
でもまだ何か違う。
もっと禍々しくおどろおどろしい物を想像していたがあまりに“普通”なのだ。
匂いは確かに変ではあったが、ただ単にカビ臭いだけのような気もした。
改めて仏像をよくよく見ると、本にあったように涙の跡のようなモノは確かに在った。
だが、それだけだ。
変な気配も感じない、何かの声を聞く事もない、動き出す気配なんて微塵も無かった。

自慢のアンテナも不調らしい。
期待外れと言うより拍子抜けに近い感覚に肩を落としつつ赤い仏像を住職に戻した。

『どうだった?』

『どうも何も普通でした』

『だから言っただろう?あんな仏像を観てどうするのか?と』

『はぁ…』

あからさまな落胆ぶりに気を利かしてくれたのか、【赤い仏像】に詳しい婆さんを紹介してくれるらしい。

329: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:42:06 ID:nuJ7Q8cXO
>>328
また明日尋ねなさいと言われた。
有り難い話だが、正直ハズレである事を悟った俺のお熱はすっかり冷めていた。

住職のチェックが終わり。
帰路に着く。
ワンワン。
撫でる。
テクテク。
歩く。

宿に戻った俺はゴロンと寝転んだ。
湯と食事だけが疲れを癒やしてくれた。
気付いたら夜が明けていた。
どうやら爆睡してたらしい。
朝食を軽く済ませ、一息ついたところで何をしようか考える。
ふと携帯に着信あり。
またもや携帯から唸り声が響く。
唸る携帯を脇に投げ寝転がる。

しばらく天井を眺めて居たが、どうにも暇だ。
『よし!』
気合いを入れ立ち上がる。
どうせ後2日在る。
こうなれば乗り掛かった船だ、とことん付き合ってやろう赤い仏像よ。

再び住職の軽トラに揺られ昨日と同じ道を行く。
『昨日と同じ道ですね』

330: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 01:43:20 ID:nuJ7Q8cXO
>>329

『昨日話したろ?山で飼ってる犬に餌をやりに来る婆さんが居るって』
あの婆さんらしい。

『そのお婆さん何者なんですか?』

『昔話が大好きな変わった婆さんだよ(笑)ちょっと痴呆入ってるがね』

家に着くと『話は通して有るから。今日は用事があってね。また後で迎えに来るよ』と行ってしまった。

334: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 02:02:37 ID:nuJ7Q8cXO
>>330
『すいませ~ん?どなたかいらっしゃいませんか~?』

『はーい、いま行きます』
割烹着姿のおばさんが出て来た。

『住職に紹介されて参りました』

『あ~はいはいおばぁちゃんに用が有るって人ね』

『はい』

『どうぞどうぞ狭い家だけど上がって上がって』
『おばぁちゃん?おばぁちゃ~ん?お客さんよ~』
おばさんに連れられ客間へと通された。

『はい、お茶』

『ありがとうございます』

『今おばぁちゃん呼んで来るから少し待っててちょうだいね』

『はい』
しばらくするとスーッと戸が開き、梅干しのようなしわくちゃのお婆さんが入って来た。

336: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 02:04:55 ID:nuJ7Q8cXO
>>334
『ひゃひゃひゃ…あんたかい若いの』
しわくちゃの顔をクシャクシャにして不気味に笑いかける。

『あ、はい今日はよろしくお願いします』
何か負ぶっている…赤ん坊…ではない赤ん坊の人形だ。

『この子はあたしの子だよ』
ニタリと笑った。
なるほど痴呆らしい。

『賢そうな子ですね(笑)』
俺のお世辞に気を良くした感じでほうじゃろうほうじゃろうとニタリと笑った。

『ほいであんた』

『はい』

『今日は紅仏様の話を訊きに来たんじゃろ?』

338: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 02:06:10 ID:nuJ7Q8cXO
>>336
『はい。知ってる限りで構わなのでお願いします』

『そうかいそうかい(笑)それじゃ、そうだね紅仏様が生まれた話をしようか』
お婆さんは静かに語り出した。

『昔昔の話だよ。この裏の山には集落が在ってね。100人いくかいかんかくらいの人々が寄り添って暮らしておった』
『人々は畑を耕し、猟をし、仲良う暮らしておった』
『じゃがある日余所者が来てな、集落の娘っ子を奉公に欲しいと豪商が言っとるとのことじゃった』
『元々閉鎖的な集落じゃったて、長と数名の老人とで話し合い外の世界を見てきて貰おうっちゅう話になった』
『別れの日、手を振る娘っ子を集落の人間総出で見送った』
『それからまたしばらく静かな日が過ぎて行った』

『ある日、農夫が畑を耕しとったら女がフラフラ歩いて倒れた。驚いて駆け寄り更に魂消た』
『その女はあの娘っ子じゃった。娘っ子はボロボロに疲弊しながら、帰って来おった』
『農夫は娘っ子を看病し、娘っ子はなんとか一命を取り留めた。娘っ子は身ごもっておった』
『話せるようになった娘っ子は、堰を切ったように泣き出した』
『娘っ子の口から聞かされるおぞましい余所者の悪行に集落の者全員が悪鬼の如く怒り狂った』

341: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 02:11:32 ID:nuJ7Q8cXO
>>338
『怒り心頭に発した人々は長の元へ集った。長は伝家秘伝の巻物を取り出し、禁書とされとったそれに手を出した。禁書には魔物の呼び出し方が載っとった』
『人身御供となったのは…そう、望まれぬ娘っ子の赤子じゃった』

『人々は準備が整うと赤子を殺し、その赤子の生き血を仏像に吸わせおった』
『これが“紅仏様”じゃ』

恐らく、あの本の筆者はこの話を知っていたのだろう。
だから目の当たりにする【赤い仏像】にあれだけの禍々しさを感じていたに違いない。
自分もアレが生き血の名残かと思うと今更ながらに鳥肌が立つ。
“血仏”とは単なる形容では無かったのだ。
『それで、豪商はどうなったんですか?』

『死んだよ。何か獣のようなモノに襲われ全滅じゃった』

『それが魔物ですね』
『それで、その魔物の正体とは?』

お婆さんは下を向くと首を左右に振った。
『それより、面白い話がある』
魔物の正体が気にはなったが、話したくない・知らないと言うよりどうやら知ってはまずいらしい。

『面白い話とは?』

『昔から“紅仏様”のお側で寝れば面白いものを見せて貰えると言うことじゃ』

『面白いものとは?』

360: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:06:24 ID:nuJ7Q8cXO
>>341
『さぁ~?それは寝てみないと判らんのぉ』
そう言うと、お婆さんはひゃひゃひゃと笑った。

宿に戻りお婆さんの話を要約してみる。

お婆さんの話は、あの本のあの項末尾に書かれていた塗りつぶされた部分の内容だろう。
つまり【赤い仏像】は呪具の一種で、魔物と呼ばれる何らかのモノを呼び寄せる憑り代のようなモノだ。
魔物の方がヤバそうだな…と思う。
『“面白いもの”か』



気付いた時には寺に居た。
こんな事もあろうかと簡易テントと寝袋は用意してあった。
夕暮れ時の山から眺める自然もまた良いものだ。
ふと、【赤い仏像】が気になり横壁の窓から中を覗いた。
すると住職がしまったと思われた赤い仏像が棚に飾られているのが見えた。

ゾッとした。

天窓から夕陽に照らされ赫赫と輝くソレは正に【赤い仏像】だった。
ついに姿を現した“紅仏様”にたじろぎながら、なんとも言えぬ匂いにむせかえる。
その時!“紅仏様”がこちらへ向き直った!
ビクリとして屈み隠れる。

そろーっと腰を上げながら窺うと、こちらを向いたと思われた“紅仏様”は最初に見た時と同じように正面を見据えていた。

『気のせい…か』

361: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:07:29 ID:nuJ7Q8cXO
>>360
それから“紅仏様”が動く気配は無かった。

なるべく近い場所にと寺の横にテントを張る。
秋の山は寒い。
テントに入る頃には辺りは真っ暗になっていた。
長い夜の始まりだ。

俺はテントの中で眠れずにいた。
山は静けさに包まれ、時折鳥の声や虫の音が聞こえる意外は完全に静寂と闇が支配していた。
(罰当たりとは思ったが)外で用を足していると、不意にまた遠吠えを聴き、ビクリとする。
あの犬だろうか。

テントに戻ると吊してある懐中電灯の電池を入れ替え、灯したまま横になった。
しばらく冴えていた目も次第に重くなり、深く深く沈んで行った。
酷い耳鳴りに目を覚ましたのは深夜だった。
携帯を覗くと2:15と表示されている。
ガサ…音がする。
『うっ…!!』
何だこの匂いは…。
いつの間にか辺りは濃い獣の匂いに包まれていた。
懐かしい感じもする匂いに混じって、錆びた鉄の臭いが辺りに充満している。
血の臭いだ。

グルルル…唸り声に体が強張る。
間違いない。
何か居る。
頭を過ぎったのは熊だった。
まずい事になった。
夢を見る前にこんな事になろうとは…。
あれやこれや考えたが、どうしてもこの状況を打開出来る名案は浮かばない。


362: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:08:20 ID:pgEtotfP0
コトリバコみたいな話だね


363: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:09:06 ID:nuJ7Q8cXO
>>361
こうなったらやり過ごすしかない。
俺は息を潜め熊が立ち去るのを待った。
だが、おかしい。
待てども待てども、一向に立ち去る気配はないのだ。
三十分くらい生きた心地のしない時がゆったりと流れた。
次第に恐怖心は好奇心や探究心に変わっていた。
そもそも熊なんか出るのか?ひょっとしたらあの犬かも知れない。
そう考えたら正体も判らない相手に怯えて居るのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
意を決するとジーッとテントを開け、懐中電灯で外を窺った。
何も居ない…?
既に立ち去ったのだろうか?先ほどまであった気配は完全に消えていた。

テントから這い出て辺りを見回す。
やはり何も居ないようだ。
疲れてたのか?
テントに戻ろうと振り向くと…それは居た。
唸り声を懐中電灯で照らす。

化け物だ。

大型犬くらいの大きさ。
熊のような太い足。
形は狛犬のそれに近い。
が、風貌はまるで違う。
顔には六つの飛び出さんばかりに突き出た目玉があり、ギョロギョロと四方八方を見回し。
口は三つ、頭の上と正面と顔面の横に付いていた。
胴体からは人の腕や足が生え不気味にユラユラと蠢いている。
俺は懐中電灯を落とした。

『ミ、ミギュアァァァァ!!』

364: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:11:20 ID:nuJ7Q8cXO
>>363
ミギャーだかオギャーだか判らないが、例えるならそう猫が喧嘩をしてる時の、赤ん坊が泣いてるような鳴き声がこだました。

咄嗟に俺は走り出した。
後ろからは赤ん坊の泣き声と足音が響く。
捕まったら喰われる。
暗い暗い森に駆け込んで行く。

こういう時、人間の力とは恐ろしく思う。
正に飛ぶように枝葉を掻き分け山を下る訳だが、明かりも無い闇の中を、まるでどこにどう木が生えているのか誰かが教えてくれているかのように、ぶつかりもせず縫うように走っていった。
いや…知っていた?
が、途中ふいに足を取られる。
倒れる刹那何かが頭を過ぎる。
全身に衝撃を受け止めながら湿気った土の感触が広がる。
と、同時に土から血なまぐさいような変な匂いも感じた。

どうやらそこだけ草木も無く、僅かに開けているようだった。
痛みをこらえ飛び起きると、再び走り出す。

後ろには赤ん坊の泣き声が迫っている。
途中ワンワン!と吠えられる。
太郎だ。
ワンワン!ワンワン!と吠えている。
グルルルと二匹の唸り声が重なった。

俺は木陰に身を隠し、対峙する獣の様子を窺った。

ギャウン!太郎の弱々しい悲鳴が森に響く。
ボリボリと音が後に続く。
喰っている。

365: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:13:33 ID:nuJ7Q8cXO
>>364
俺は踵を返すと再び走り出した。

また赤ん坊の泣き声が近付いてきた。
どんどんどんどん大きくなる。
オギャーオギャーと泣いている。
息遣いまで聴こえてくる。

次の瞬間!背中に強い衝撃を受け地面に突っ伏した。
『うぅ…』
仰向けに寝返ると、ソレは俺の腹を踏みつけ抑えつける。
もう…駄目…だ。
ギョロギョロとした目が眼前に迫り、俺は気を失った。


目を覚ますと、住職と割烹着のおばさんが俺の顔を覗き込んでいた。
どうやら生きているらしい。
『ん…ここは?』

『おぉ!目が覚めたか!』
住職とおばさんは喜び顔を合わせる。

『俺は…?』

『婆さんが日課の餌やりに行ったらお前が倒れとるのを見付けてな、助けを呼んで今に至ると言う訳だ』
なるほど、助かったらしい。
昨日のアレは…夢?

366: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 06:14:58 ID:nuJ7Q8cXO
>>365
『痛っ!』
痛みを感じ布団を捲り足に目をやる。
歯形だ。

『あ~、それな。なんか咬まれてたみたいだから薬を塗っといた。なぁに傷は深くはない。剥き出しですまんが、あいにく包帯は切れとってな』
夢では無いようだ。

『ご迷惑お掛けしたみたいですみません。介抱して頂きありがとうございます』

『何か欲しいものない?』

372: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 07:24:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>366
『水を』と答えるとおばさんは台所へ向かった。
『しっかしお前さん、いったい何があったね?』
住職の問いに答えようとすると、またあの不気味なひゃひゃひゃという笑い声が聴こえた。

『“見た”んじゃろ?』
お婆さんはニタリと笑った。

『お婆さんはアレが何か知ってるんですね?』
『アレが例の魔物ですか?』

お婆さんは静かにだが深く頷いた。
『その足の鋸のような歯形は間違いない。ヒトアラズの仕業じゃ』

『ヒトアラズって言うとあのヒトアラズか?』
住職が口を挟む。

『ほうじゃ間違いない』

『そのヒトアラズって言うのは?』

『訊きたいか?』
ニタリと笑う。
俺はゴクリと喉を鳴らし頷いた。
婆さんは人形を寝かせた。

373: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 07:26:01 ID:nuJ7Q8cXO
>>372
『昔昔の話じゃ。ある日『ハイどうぞ』
間が悪い。
お婆さんが話し始めたその時におばさんが水を差し出した。

『あ、ありがとうございます』

『ごゆっくりね』
おばさんは部屋を後にした。
気を取り直し再び話を訊く。

『昔昔の話じゃ。ある日集落に不気味な牛の子が生まれた。その牛の子、なんと人の形赤子の姿をしとった』
『人々はこれは禍の前触れじゃと牛の子をバラバラにし埋めてしまった』

374: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 07:27:59 ID:nuJ7Q8cXO
>>373
『じゃが、それからというもの集落に全く子が出来んようなった。人々は牛の子の呪いじゃとはやし立てた』
『そこで、牛の子を供養する為に犬、猫、狸、兎、蛇、熊、梟、鴉、鷹などなどありとあらゆる獣を七匹ずつ生贄とし、生き血を墓に撒いて飲ませた』
『それから集落は子を授かり呪いは見事に破られた』
『しかし呪いを破ったは良いがこの儀式は新たな厄を呼び寄せた』
『ある集落の農夫がお供え物をしに行った時の事じゃ。シシガコミまで来るとその者はおっ魂消た』
『なんと!牛の子を埋めた場所にはぽっくりと穴が空いておるではないか!驚く農夫の耳に唸り声が届く』
『向き直るとそこには!化け物がおった!』
『走った走った、農夫は息も絶え絶え家に着くと、集落中に化け物の話をして回った』
『じゃがそんな話、だぁれも信じやせん。農夫がうなだれておると今まで聴いた事も無いおぞましい遠吠えが聞こえる』
『集落の人々はびっくらこいて皆家々を飛び出し広場に集うた』
『人々は遠目に獣を見た。魔獣じゃった。獣は己の存在を誇示すると満足したのか森に走って消えた』
『それがヒトアラズじゃ』

『お婆さんの言っていた“面白いもの”ですか?』

375: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 07:30:00 ID:nuJ7Q8cXO
>>374
なるほど。
人の悪い婆さんだ。
この婆さん、全て知ってて俺をあんな目に遭わせてくれやがったらしい。

『いんや、違う』
予想外です。
なら何が面白いものだったのか?
お婆さんは『紅仏様の側で寝たら面白いものが見れる』と言った。
俺はてっきり眠ったらだと解釈し、“面白いもの”とは夢を指すのだろうと思い込んでいた。
だから昨日も眠ろう眠ろうとしていた。
しかし違った。
寝ると言うのは一晩過ごすと言う意味で、その晩に俺はあの魔物“ヒトアラズ”に遭遇したのだ。
それ以外は覚えがない。

『違う?では“面白いもの”ってなんなんですか?』

『お前は逃げる時に何か見たはずじゃ、何を見たか覚えとらんのか?』
実に素っ頓狂な質問である。
何度も言うように昨日の晩に俺が見たのは“ヒトアラズ”だ。
それは婆さん自身が説明してくれたではないか。
他には何も見て…いや、待てよ。
何か忘れている。
逃げる最中に感じた既視感、俗にデジャヴュと呼ばれるそれを俺は確かに感じた。
そうか!転んだあの時だ!
確かに俺は見た。
フラッシュバックのようにそれを見た。

『思い出したかい?』

376: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 07:32:28 ID:nuJ7Q8cXO
>>375
『お婆さん、【赤い仏像】に使われた血は何処へ捨てるんですか?』

『牛の子にあげるんじゃよひゃひゃひゃ(笑)』
ビンゴだ。
恐らくはあの場所、俺が突っ伏した時に感じた血の匂いはそれだ。

『ヒトアラズを呼び寄せる時には、必ず人身御供が用意されますよね』

『ほうじゃほうじゃひゃひゃひゃ(笑)』

『それは集落の人間ですね』

『ほうじゃほうじゃひゃひゃひゃ(笑)』
『呪いを成就させるにはそれなりの犠牲が必要じゃ。犠牲を払ってでも遂げたい呪いが在ったとも言えるの』
俺は水をグイと飲み干した。

『お話と介抱、ホントに有難うございました』

『帰るのか?若いの?』

『はいお邪魔しました』

379: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:00:12 ID:nuJ7Q8cXO
>>376
『あ、それと太郎ですが…』

『なぁに気にする事は無いよ(笑)あれはこういう時の為に作ったんじゃからひゃひゃひゃ(笑)』

『作った?』

『ほうじゃほうじゃ(笑)毎年決まった時期に線香の灰を混ぜた酒を飲ませてな』
ニヤリと笑った。

『こうなると予見してたんですか?』

『念のためじゃよ。念のため身代わりくらいは立てとかんとな』

『じゃあ、お婆さんは俺の命の恩人ですね。適わないなぁ(笑)』

『また飯でも食いに来いひゃひゃひゃ(笑)』

380: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:02:17 ID:nuJ7Q8cXO
>>379
『良いですね(笑)また今度ご馳走になります』
『あ、そういう話なら昨日の晩御飯は何だったんです?』

『昨日か、昨日は山菜ご飯とサバの煮付けに里芋のふかし、ほうれん草のお浸し…』
そこまで言うとばつが悪そうにこちらを見た。
『また、ご馳走になる日を楽しみにしてますよ』
俺は笑った。
『ひゃひゃひゃ(笑)こりゃ一本取られたわい』
痴呆の婆さんも笑った。
何の為かは知らないが面倒な事をしている婆さんだ(笑)

庭に出ると山の駐車場に置き去りな筈の俺の車が在った。
『あぁ、車はこっちに持ってきておいた。中にテントやら何やらほっぽっとったもんも入っとる』
助かった。
正直、とてもあの場所へ戻る気にはなれなかったところだ。

『重ね重ね有難うございます』

俺の肩を叩き住職は笑った。
『なぁに気にすんな(笑)お前さんが来てからというもの、こっちも面白かったよ』
『いい酒の肴も出来たしな(笑)』
生臭坊主は笑った。

見送る三人に会釈すると俺は婆さんの家を後にした。

宿に着き。
帰り支度を整え、一人考えていた。
婆さんの話の細かい部分は割愛したが、その話やこの村に来てから判った事をメモに記していた。
以下はその内容である。

382: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:07:31 ID:nuJ7Q8cXO
>>380
赤い仏像
紅仏様(ベニブッサァ・ベニブツサマ)
血仏(チボトケ)

獣非(ヒトアラズ)

獅子囲み=死屍囲み(シシガコミ)

逃げる途中で何かに躓く(フラッシュバック?)
躓いたのは恐らくシシガコミの積み石

【赤い仏像】
昔山の集落で用いられた祭具
奉公に出て孕んで帰って来た娘の赤子の生き血に浸して作られた
それ以降も集落の人々の血を吸い続ける
色はドス黒い
余所者(集落以外の人間)を呪い殺す為の呪具
血の涙を流す
血の涙の跡から来たと思われるが、恐らく血に浸した仏像を取り出し、立てて乾かす際に、他の血が乾き最後に目尻に溜まった血が流れた、その跡だろう

【ヒトアラズ】
昔おぞましい牛の奇形が生まれた(人【赤ん坊】に近い形をしていた)
一節にはアルビノの人間だったというのも有る
牛の子として殺したんじゃないか?と
それを殺し使い魔化したモノ
鳴き声は猫が喧嘩してる時の様な赤ん坊のような鳴き声
風貌は極めて凶悪

383: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:08:43 ID:nuJ7Q8cXO
>>382
【シシガコミ】
獅子囲み=獣の王(この集落ではヒトアラズ)を祀る祠
死屍囲み=同上。ヒトアラズを埋め、様々な七匹の獣の生き血を飲ませた墓場(ベニブツサマを作る為に犠牲にした人身御供もここに埋められた。その際に仏像を浸した血の余りも棄てた)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
以上

『“面白いもの”か』
俺は一人呟く。
ヒトアラズから逃げたあの時、俺はあの場所を知っていた。

384: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:11:47 ID:nuJ7Q8cXO
>>383
前と同じように俺は逃げた。
シシガコミで前と同じように転んだ俺は全てを思い出した。
前の俺はまだ子供だった。
前の時も逃げてはいたが、追い掛けてくるのはヒトアラズでは無かった。
転んだ俺を押さえつけるそいつは…長だった。

寺の下に飼っている猫の世話をしに来た子供は寺の中を見ていた。
激しく言い争う二人。
長はもう一人を祭具で殴り殺した。
そして此方を向いた。
ビクリとしてかがみ込む。
『誰だ?』
長の声が聴こえる。
子供は走った走った。
だがやがて転び、追い付かれ今にいたる。
首を絞められ薄れて行く意識の中、視界には魔物が写っていた。
名をニンゲンと言う。

以上が俺が見た映像だ。
お婆さんが言うには余所者を消す為に儀式は行われ、人身御供が用意されるとの事だった。
だが前世なのか他人の体験なのか知らないが、俺が見た映像を考えるとどうやら違うらしい。
いつからか集落を守る為の儀式は、都合の悪い集落の人間を消す為の、体の良い免罪符になっていたのだ。


紅葉色の頬をした中居達と女将に見送られ宿を後にする。
車を走らせていると、どこからかまたあの遠吠えが聞こえビクリとする。

鮮やかな葉が降り注ぐ。
ある秋の日の出来事だった。

385: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:16:39 ID:APyOeU5JO
>>384
おつ
久しぶりにおもしろかった


381: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:06:08 ID:L4epRnK30
携帯からの連投応援保守

386: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:20:23 ID:nuJ7Q8cXO
やっと終わった…orz
二年前に比べると何だかここも雁字搦めでやりにくくなりましたね。

起きていたのに待たせてしまった方すみませんでした。
>>381さん含め支援して下さった方々、有難うございます。

気付いた方が居るかは判りませんが『人型焼き』の者です。
夏秋と来たので、今度は冬を舞台にしようと今は鋭意執筆中であります。
また近い内に投下します。
その際はまた宜しく御願いします。

387: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:33:41 ID:g/Kqdn/TO
>>386
お疲れ様でした。とても面白かったです。質問いいですか?
『ほうじゃほうじゃ(笑)毎年決まった時期に線香の灰を混ぜた酒を飲ませてな』

太郎は犬ですよね?なんでお婆さんは太郎にそんな酒を飲ませていたのでしょうか?

また『昨日か、昨日は山菜ご飯とサバの煮付けに里芋のふかし、ほうれん草のお浸し…』
そこまで言うとばつが悪そうにこちらを見た。


これは 何でばつが悪そうに…なんでしょうか?また誰が誰に対してばつが悪いんでしょうか?

388: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:46:32 ID:nuJ7Q8cXO
>>387
お婆さんは山にヒトアラズが出るだろうと懸念してました。そこで同じ獣(犬)である太郎に何かあった際の身代わりになるよう育てて(作って)いたのです。

ばつが悪かったのは痴呆が演技だとバレたからです。
主人公は敢えて昨夜の献立を尋ねました。
それに乗せられついお婆さんはペラペラと晩餐の内容を語ってしまいましたが、途中ではめられたと気付いた訳です。

そこは、その後の文に今まで『婆さん』とだけ表記されていたのに急に『痴呆の婆さん』も笑った。>>と書いて判りやすいようヒントを出してあります。

389: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 08:49:00 ID:g/Kqdn/TO
>>388
丁寧にありがとうございます。すっきりしました次回作も期待してます。

406: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 12:29:51 ID:XdwIp8e90
>>388
え、そうなのか?
自分はてっきり、昨夜の献立にも身代わりにするための線香の灰が入れられていたのかと思った
犬どころか語り手も犠牲にして、あわよくば…ってことで
痴呆どころじゃない、なんて婆さんだよ、そんなもの食わせて酷い目に逢わせて
本当に大したご馳走様だったよ、で、また食わせて試すのか?…って皮肉だと思って読んだんだが

449: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 16:15:17 ID:nuJ7Q8cXO
>>406
恐ろしいですね(笑)

395: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 10:05:08 ID:33jOLU0eO
ヒトアラズ→件(くだん)じゃね

397: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 10:51:24 ID:nuJ7Q8cXO
>>395
面白いですね。

400: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 11:11:45 ID:33jOLU0eO
>>397
「くだん」伝承は各地に残ってる
ただ、話しのヒトアラズは、「くだん」を殺しいけにえを捧げたばかりに悪霊と化したのかと…


ま、推測だがね

441: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 16:02:51 ID:nuJ7Q8cXO
>>400
勉強になります。

401: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 11:19:47 ID:pgEtotfP0
>>400
ガキの頃、件についてはFMラジオのミステリーで聞いてから興味を持って色々調べた

404: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 12:21:04 ID:QZ/v0s0R0
物語調が既にリアリティないし

449: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 16:15:17 ID:nuJ7Q8cXO
>>404
リアリティは敢えて崩しております。
折角創作も可という事ですので創作っぷりを前面に押し出してます。
自分は師匠シリーズが好きなんですが、あの作品は結局のところ何も出ないのに怖いと言う暗の表現がありますよね。
ですから自分は逆に直接的で判り易い明の恐怖を心掛けております。

405: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 12:24:26 ID:e1+DGkL0O
物語として面白かった
これでいいだろ

449: 本当にあった怖い名無し 2009/05/04 16:15:17 ID:nuJ7Q8cXO
>>405
そういうスタンスで読んで頂けると有り難いです。








11: 本当にあった怖い名無し 2012/07/27(金)01:58:15 ID:3qiOSY+D/
butuzou
長くなる上に、分かり難かったらすまん。

母親から聞いた話。

自分が生まれるずっと昔の話らしいんだけど、母方のじーちゃんは坊さんだった。

 


終戦後は坊さんの人数が足りなかったのか、他の事情があったのかは今となっては分からないが、元々住職してた茨城の寺の他に東京の寺も兼務(?)してた。
寺は無人には出来ないから、茨城の寺にはばーちゃんが、東京の寺にはばーちゃんの母親(自分から見てひーばあ)が居る事で、じーちゃんは茨城と東京を行ったり来たりしてた。不思議な事があったのは東京の寺。
じーちゃんが茨城でお務め中で不在の時に2度程泥棒に入られた。
1度目は仏像が無くなった事に気付いたひーばあが、じーちゃんに連絡。
東京に戻るのは次の日になるので、取り敢えずひーばあが警察へ。
じーちゃんも東京に戻って暫くは落ち込んだらしいんだが、盗まれた仏像が返って来るとは限らんし、新しい仏像をそろそろ…と考え始めたらしい。
盗まれてからどれ位日が経ってたか詳しくは知らないが、ある日古物商(?)が訪ねて来て「是非見てもらいたい物がある」と。
丁寧に包まれた物を差し出され、中を確認するとなんと盗まれた仏像だった。
拾ったにしちゃ家に直接持ってくるのはオカシイし、盗んだ本人が返しに来た風でなし、じーちゃん軽くパニクったらしい。
古物商の話だと、実は仏像を引き取ってから同じ夢を見始めた。
夢の中で「自分は○○の□□と云う寺に居た。早く元の居場所に戻してくれ」みたいな事を云われたらしい。
最初は聞いた事も行った事もない寺だし可笑しな夢を見た位にしか思わなかったらしいが、毎日同じ場所・同じ寺を繰り返し夢で云われるので、調べてみたら実在する寺がある。
これは何かあると思い訪ねて来たと。
話を聞いてじーちゃん大層ビックリしたものの、古物商に感謝しまくり、仏像を以前に増して大事にしまくったそうだ。

 

12: 本当にあった怖い名無し 2012/07/27(金)02:01:31 ID:3qiOSY+D/
>11続き

2度目に盗まれた時は、直ぐに戻って来たらしい。
しかも盗んだ本人が、直接返しに来た。
じーちゃん曰わくだいぶ憔悴仕切った様子だったらしい。
泥棒の話だと、前の古物商同様に盗んだ日から毎日同じ夢をみる。
ただ元の寺に返す様に云われるだけでなく、説教付でwww
盗んだ本人も度々話の途中で支離滅裂になるし、取り敢えず警察へ連絡し泥棒御用。

後から聞いた話だと、泥棒は暫くの間時々何かをブツブツ呟いては念仏三昧の日々を送ってたらしい。
その話聞いたじーちゃんは、泥棒ながらチョット可哀相になったとか。
その話聞いた自分もどんな説教だったんだとガクブル。

その後仏像は盗まれる事無く、今も東京の寺にいらっしゃいます。












734: 本当にあった怖い名無し 2008/09/15 04:00:05 ID:Ci9Mo1b90
怪奇現象なのか微妙だけど、
子どもの頃、友人と、入っちゃいけないっていう山に肝試しで行ったことがある。
なんでも廃寺があって幽霊が出るっていう噂のある場所だった。

山道を少し上ると、噂どおりに荒れた建物があったんだけど、
中はほとんど空っぽで、目を引くようなものは何もなかった。
期待はずれで「もう帰ろうぜ」なんて話してたとき、
友人がさらに奥に続く道があるのを見つけた。
それまでの山道はそこそこ広くてしっかりした道だったんだけど、
先に続く道は草ぼうぼうで幅も狭い獣道。
なんとなく「こっちが核心」て感じがして、俺たちは盛り上がった。

んで苦労しながら道を登って20分ぐらい経った頃、
急にポッカリ開けた更地に出た。
其処はただ開けてるだけで何があるってわけでもなく、
ただ周りの木に変な模様のお札みたいなのが数箇所貼ってあるだけ。
何故か真の魔王城みたいなのがあると思ってた俺らはガッカリしたけどw
中心まで歩いていって絶句した。

735: 本当にあった怖い名無し 2008/09/15 04:01:09 ID:Ci9Mo1b90
更地の真ん中に、底はさほど深くないけど大きな穴が開いてた。
んで其処に、仏像の残骸がいっぱい捨ててあった。
中途半端に掘られた、作りかけと思しき木彫りの仏像とか、
メッキが剥げて五体がバラバラになった観音様とか、
そういうのがボロボロになって折り重なってる。

どうってことないとも思うんだけど、とにかく数が尋常じゃない。
夕方に差し掛かってたこともあり、急に恐くなった俺たちはダッシュで山を降りた。
んで、アイス食ってお互いの武勲を称えあって帰った。

それから数日、一緒に行った友人が寝込んだ。
医者に見せても全然良くならないようで、学校にもこなかった。
親も心配して大学病院に見せる、みたいなトコまで話が進んでたみたいだけど、
なんかお坊さんが背中叩いたら一発で直ったらしいw
(今は知らないけど、当時は専属?のお坊さんが家を回って仏壇にお経を上げてくのが当たり前だった)
お坊さんはなんか「悪いモノが入ってる」とか言ってたそうな。

と、まあそんだけの話なんだけど、微妙に引っかかってることがあって。
廃棄されてたとはいえ、俺らが見た仏像って「悪いモノ」か?っていうのがひとつ。
それともうひとつ、あのお札は何だったんだろう、って。
正直記憶もおぼろげだけど、白い紙で、雨風に晒されたような形跡はなかったと思う。
手前の廃寺の荒れ方から考えて、それがイマイチ納得できない。
あと仏像も、妙に新しいものがあったように思うんだけど、
普通仏像ってちゃんと供養して処分するもんだよなあ…




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104 :1/6:2012/01/28(土) 00:38:38.79 ID:pO1ybxXv0

中途半端に長いけど

高校の頃の話

うちのクラスにA君ってやつがいて、そいつはいいやつで真面目だったけどいわゆるいじられ役だった。
本人もそれをおいしいと思ってたみたいで楽しく過ごしていた。

学園祭が終わった頃、クラスで打ち上げをやろうってことになってみんなで打ち上げをした。
みんなで晩飯を食って、その後近くの城跡の公園で花火をすることになった。

花火も終わった頃、参加者のうちの一人が肝試しをやろうと言い出した。
その公園には、大き目の座った仏像?みたいなのがあった。
後ろに回りこむとケツのとこに下り階段があり、奥には扉がついている。
噂ではその扉の中で戦争で亡くなった人が葬られてるだとか
ミイラが飾ってあるだとか、いろんな話があった。
その時はそこに行こうという話だった。

暗いからか、仏像自体から気味の悪い雰囲気が漂っており
さらに扉の側に回りこむとより一層暗くなったように感じられた。
だが、テンションが高まった高校生はノリで突入することを決めたのだ。


105 :2/6:2012/01/28(土) 00:39:24.71 ID:pO1ybxXv0

そのとき、A君がふと「無理。やめとこう。俺やだよ」と言い出した。
当時A君を率先して?いじってた俺は前フリだと受け取って
「え?何そんな先頭行きたいの?」みたいにはやし立てた。

他のクラスメイトもそれに便乗し、半ば無理やりA君を先頭に押しやった。
俺は扉だけ開けるとA君の後ろに引っ込んだ。南京錠みたいなのがついていたが
鍵自体はかかってなく普通に扉を開けることが出来た。

そしてA君の背中を押して、中に押し入った。
中は埃っぽくてジメジメとしていたのを覚えている。
正直俺も少し怖かったので、ずっとA君の背中を押すみたいに手を当てていた。

階段が意外と長くて、巨大地下室か?とわくわくしていた部分もあった。
その瞬間、A君の背中が俺の手を離れた。歩みを速めたようだった。
俺が「おい、急ぐとあぶねえぞw」といい終わるか終わらないかのうちに
明らかに前方から「うああああああああううううう」みたいな太い叫び声みたいなのが聞こえた。

どう考えてもA君の叫び声じゃなくて、それよりも何より怖くてクラスのみんなは
急いできた道を引き返した。入り組んでたわけではないので、案外すぐに出られた。

出た後、なぜかみんな別方向に逃げていった。
俺は怖かったので近くにいた友達と、さっき花火をしていたところまで戻った。
すると何人かもそこにいて「マジびびった何あれ」みたいな話をしていた。

106 :3/6:2012/01/28(土) 00:39:52.39 ID:pO1ybxXv0

しばらくそこにいたが、逃げたままその足で帰ったのか、戻ってこないやつもいた。
A君も帰ってこないやつの一人だった。
その日はそのまま解散にしてみんな家路についた。
帰る前にもう一度友達とさっきの仏像の扉を見に行った。
扉は閉まっていた。今から考えるとありえないのだが、
当時は誰かが閉めたのだと思っていた。

家に帰って風呂にはいって
風呂上がってからケータイを見ると、見たことない番号から電話がかかってきていた。
それも同じ番号から2件。
「登録してないやつからか?まあ用があるならまたかけてくるだろ」程度に思ってその日は寝た。

次の日学校に行くと、前日の見慣れた顔がそろっていた。
逃げ帰ったやつも学校に来ていて、前日の話で持ちきりだった。
だけど、A君はただ一人学校に来なかった。


107 :4/6:2012/01/28(土) 00:40:20.02 ID:pO1ybxXv0

「昨日のこと怒ってんのかな」「ビビリすぎて外出られないんじゃねw」
など適当なことを言っていたが、A君は3日間学校に来なかった。
その間にも知らない番号からの着信は続いた。
しかし着信は決まってケータイが手元にないときだった。

その話を学校で友達にすると
「それAの番号じゃん?」
A君に教えてないんだけどなあ、てか電話かけてくるなら学校来いよとかそのときは思っていた。

3日後、A君が学校にやっと顔を見せた。
みんな口々にA君をいじったり、心配したりした。
A君はいつものようにつっこんだり、返事をしたりしていた。


108 :5/6:2012/01/28(土) 00:40:40.35 ID:pO1ybxXv0

だけど一つだけ違うことにみんなは気付いていた
表情が無い。笑わないし怒らない。常に無表情。

それからというもの、A君は無表情だし
授業中は教科書も出さずにずっと教卓を見つめてるし
話をしていてもA君だけかみ合わない。
「そういえばあの時さー」みたいな話をしても覚えてないか、明らかに違うことを言い始める。

そんな調子で卒業まで過ごして
結局A君は卒業まで変わらなかった。
不思議なことに卒業後の彼の進路を知る人はいない。

109 :6/6:2012/01/28(土) 00:41:16.61 ID:pO1ybxXv0

卒業してしばらくたってからも、A君からの着信は続いていた。
正直気味が悪くて、着信拒否にしていた。それでも履歴には残る。

ある日ケータイを機種変して、設定を忘れていて
また着信があったのだ。いつもと違ったのは留守電が入っていたこと。
少し興味があったので聞いてみた。

「スー…」という息を吸う音みたいなのがずっと鳴ってるだけで何も無い
本気で気味が悪くなって切ろうとして、耳から話した瞬間に何かが聞き取れた気がした。
気になってもう一度再生すると、今度は聞き取れた。後悔した。
「おまえのせいだ」ボイスチェンジャーでもあてたような声だ。

俺はその時やっと気付いた。A君は怒っているのだ。あの時先頭を行かせたことを。
いや、もしかしたら中にいた何かが怒っているのかもしれない。

5年経った今でも着信は続いている。




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142:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:14:25ID:iteG+ZmG0
私が小学生の頃、誕生日のプレゼントで親に自転車を買ってもらって、放課後、毎日のように仲の良かった友達と遠乗りしていた時期があった。

いつも通る道の途中には、お地蔵さんを祀った古いボロボロの祠があった。
特に目立つようなものではなくて、気にしたこともなかった。
けれども、何のきっかけがあったのか思い出せないのだけれど、ある日を境に急にその祠が気になりだした。

もうね、学校の授業中も、家で食事や風呂に入っている時もその祠が気になるの。
でも、自転車を止めてその祠を覗き込む事はしなかった。
友達と一緒だったし、なにより薄気味悪くて見たくなかったんだ。



143:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:16:14ID:iteG+ZmG0
確かあれは夏休みだったと思う。
いつもの遊び友達が田舎にでも行ったのだろう。
遊び相手が居なかった私は、一人で自転車を乗り回して遊んでいた。

ある日の夕方、自転車のタイヤがパンクして私は問題の祠のある坂道をトボトボ自転車を押しながら歩いていた。
そして、祠の前に差し掛かったとき、怖くて祠から目を逸らしていたのだけれど、外した視界の片隅で、祠の中で何かが光ったのを見たんだ。

その瞬間、背中にゾクゾクするような悪寒を感じて、私はパンクした自転車に飛び乗って全速力でその場から逃げ出した。

家に帰って夕飯を摂って寝る時間になったのだけれど、怖くて一人では眠れない。
その晩は両親の部屋で寝ることにした。

両親と一緒に寝ていたら恐怖心も紛れてきて、前々から気になっていたし、光の正体が何なのか知りたいという好奇心も出てきて、私は昼間の明るい時間に祠を見に行こうと決めた。



144:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:17:29ID:iteG+ZmG0
次の日は物凄く暑い日だったのを覚えている。
家で昼食をとった後、私は歩いて祠に向かった。
真夏の炎天下なのに妙に冷たくて嫌な汗をかいていて、その嫌な感じは祠に近づくにつれて強くなって行った。

20分ほど歩くと、祠に到着した。
恐る恐る祠の中を見ると大きめの地蔵が一体。
気味の悪い事にその地蔵の両眼はペンキか何かで赤く塗られていた。
地蔵の足元には、仏壇の中に置く観音開きの黒い漆塗りの箱が合った。
箱の片側は火事にでも遭ったのか焼け焦げていた。

はっきり言って、目を赤く塗られた地蔵よりもその箱の方が気持ち悪かった。
今でも自分には霊感などないと思うが、それでもその祠の薄気味悪さ、「妖気」の本体はその箱だと判った。



145:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:18:41ID:iteG+ZmG0
私は完全にビビリまくっていたが、何故かその箱を開けようと思った。
理性では
「ヤバイ、怖い、ダメだ」
と思っているのに、私の手はその箱を開けてしまった…

箱の内側は金箔が貼られていて、中には10cmくらいの金属製の真っ黒な仏像が入っていた。
そしてあろうことか、私は箱からその仏像を取り出した。
仏像はその大きさからは想像できないくらいにズシッと重くて、氷のように冷たかった…

そして、何故そんなことをしたのか未だに判らないけれども、私はその仏像をズボンのポケットに入れて家に持って帰ってしまった。



146:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:19:34ID:iteG+ZmG0
家に帰った私は激しく後悔した。
仏像が怖いし、気持ち悪いし、何より私の行為は盗みではないか!
返しに行かなくちゃ!
確かに頭ではそう思っていた。

しかし、結局私は仏像を祠には戻さなかった。
だが、手元に置くには怖いし、気持ち悪かった。
私は仏像を新聞紙に包んでゴミ箱に捨てた。



149:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:29:18ID:iteG+ZmG0
それから何年か経って、私は中学生になっていた。
仏像の事なんてすっかり忘れていた。
しかし、あれはまた現れた。

その日、私が学校から帰ると母が私の部屋を掃除してあった。
そして、机の上を見ると、なんと…
そこには綺麗に重ねられた秘蔵のエロ本とあの仏像が置いてあったのだ!

私は仏像について母を問い詰めた。この際エロ本はどうでもいい。
あの仏像はどうしたのだと。
母の話だと部屋の隅に落ちていたという。

そして
「これは阿弥陀如来ね。**の守り本尊よ。こういうものは粗末に扱っちゃだめよ」
とも言った。



150:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:30:47ID:iteG+ZmG0
阿弥陀如来像はただならぬ妖気を放っていた。
これはヤバイ!
捨てることも、他の部屋に移すことも出来ない。
私が家から出る事も、他の部屋に移る事も適わない。
どうしよう!

そのとき、何でそのような事を思いついたのか、何でそんなことをしたのか、何の意味があるのか判らないけれども、私は針箱から紫色の刺繍糸を取り出して仏像の頭の出っ張りに結びつけた。
すると嘘のように仏像の「妖気」は消えた。
私は仏像を箪笥の上に置くと崩れ落ちるように布団に横たわった。
眠い…



151:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:31:59ID:iteG+ZmG0
翌朝、登校の時間になっても起きてこない私を起こしに来た母が高熱を出してひっくり返っている私を発見した。
私は40度の熱を出していた。
寒い、苦しい、目が回る…
激しい吐き気で体は水さえも受け付けない。
次から次へと幻覚や幻聴を感じる…

…ああ、俺、死んじゃうのかな?



152:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:33:03ID:iteG+ZmG0
その時、確かに私はその声を聞いた。
「まだ死なないよ。今はね…」
気が付くと私は天井から自分の部屋全体を見下ろしていた。
家具の配置や部屋にあるものは微妙に違っている。
見知らぬ男が机に向かって何かしている。
短髪で背中が広い、黒いスウェット?を着た知らない男…
ああ、コイツは俺だ!

その時、その「男」がこちらに顔を向けた。
私は恐怖から手で顔を隠そうとした。
その拍子に私は腕に何かを引っ掛けて落としてしまう感覚と共に「意識」を失った。

三日後、私は目を覚ました。
目を覚ました時、最初に私は恐る恐る箪笥の上に視線を向けた。
しかし、そこにはあの阿弥陀如来像はなかった。



153:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:35:13ID:iteG+ZmG0
それから10数年いろいろなことがあった。
私は3度ほど命を落としてもおかしくない大事故に遭遇し、多少の怪我はしたが五体満足で生き延びてきた。
軽自動車でトレーラーの多重事故に巻き込まれたときも、
バイクで160km/h以上のスピードでクラッシュしたときも、
建築現場での事故に巻き込まれたときにも、

スローモーション映像の中で
「まだ死なないよ」
という声を聞いたような気がする。



159:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:47:57ID:iteG+ZmG0
そして、昨年末…
忘年会から帰った私は残務を片付けるべくパソコンを立ち上げて作業をしていた。
家人が皆寝静まった深夜、何か異常な気配を感じる。
そう、すぐ後から誰かに覗かれているような気配。
誰かに見られている?

全身にぞわっと鳥肌が立つ。
猛烈な寒気と耳鳴り。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…
その時、背後でゴトッと高い位置から床へと何かが落ちる音がした。



160:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:49:23ID:iteG+ZmG0
私は恐る恐る音のした床の方を見た。
そこには、紫の紐を頭につけた真っ黒な仏像が落ちていた。
そう、消えた「あの」阿弥陀如来像…

阿弥陀如来像を拾い上げた瞬間、私の脳裏にフラッシュバックしてきた光景、
そうそれは、小学校時代に祠からあの仏像を持ってきた光景、
そして、中学校時代に高熱にうなされながら見たあの光景。
そして、頭上に気配を感じて私が見上げると、箪笥の上に確かに見た。
中学生くらいの子供の顔を…

目の部分は黒い影に覆われて見えなかったが、確かにあれは私の顔だった!
その顔を見た瞬間私は意識を失った。



161:◆/3L1OYzz0.:2007/02/03(土)22:51:01ID:iteG+ZmG0
私はまた40度近い熱を出して寝込んでしまった。
周りはインフルエンザだノロ・ウイルスだと騒いでいたが、倒れて5日ほどで私はどうにか回復した。
熱にうなされている間に様々な幻覚や幻聴を感じた。
その中で脳裏にこびりついてはなれない夢がある。

スーツ姿の男が二人の男に捕らえられ、腹を刺されて血の海に崩れ落ちる。
男の手には何か黒いものが握られている。
息絶える男と私の目が合った瞬間、私の記憶は途切れ私は目を覚ました。

あの男、私より幾分年上で髭を伸ばしていたけれども、あれは私ではなかったか?
あの時、確かにあの声を聞いたような気がすると

終わり






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116: 本当にあった怖い名無し:2007/05/08(火) 15:26:57 ID:O3QtsryP0
札幌郊外の某山中。
心霊スポット巡りで、参加者の一人が場所を知っているとの事で
行ったのだけど、林の中にまず3mくらいの仏像が2体立っている。
しかし何かがおかしい。

それを越すと緩やかな石段が何百メートルか続く。
その一段一段の両側に地蔵が立っているが、
首が無かったり転がっていたり、とにかくまともなものは無い。
この時点で数年来、人が立ち入っていないであろう事は解ったが、
石段を登りきると視界が開け、香炉のようなものが沢山見える。

ボロボロではあるが、よくよく見てみると墓らしい。
蓋を開けると骨らしきものが見えたから。
そして香炉の上には赤ん坊を抱いた観音様が立っている。

しかもオリジナルらしく、参加者の誰も見たことが無いと言う。
香炉群の奥にはこちらを見下ろす5mくらいのオリジナル観音様。
訳が解らなすぎて全員逃げるように退散してきたんだけど、
今は亡きカルト邪教集団でもいたのかなあという結論。

それにしてもあの香炉墓は百はあったから、
教団員も少なくなかったのではないかとの想像。
それが廃れた理由や、打ち捨てられた香炉墓を思い出すと、
また行きたくもあり、二度と行きたくなくもある。
そちらにしてもあの現実離れした空間は忘れられない。




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55 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 16:27:44.51 ID:+jAEfwSv0.net
全国心霊スポット行脚兼神社仏閣巡りした時の話聞いてくれや!
聞いたら俺が呪われるかもしらん話と、なんか実際あった心霊現象2個と、
叩けば埃が落ちるくらい話あるんだが。
ただ実際あった話なもんでクソ乗りが軽い文章になると思うが。
いいすかね?


56 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 16:35:40.62 ID:tnYw1PVI0.net
>>55
お願いします


57 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 16:49:30.40 ID:+jAEfwSv0.net
>>56
お、人が聞いてくれるってだけで嬉しいです。今から書きながら投下させてください。
リアルで話すとガイジ扱い受けるもんだから何処にも話せないもんで。

まず最初に、自分は昔から幽霊だの変な悪夢だのたらふく見てまして、
特に家のラップだの怪音だの変な話声だの大量に聞いてた訳なんですよ。
そんで親とかにその話をしてもまともに取り合ってくれない。で、お人形が一緒じゃないと眠れない日々が続いたわけですよ。
誰も助けてくれないとなると自分でどうにかするしか無いわけで、
取り合えず体を鍛えて、自分で言うのもなんだけどバケモンみたいな見た目に成長し幽霊を叩き潰したんです。
長々としましたがここまでが前置きです。


58 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 16:56:06.42 ID:+jAEfwSv0.net
社会の荒波に揉まれ、結果ニートになったんですが、暫くすると旅行に行きたくなったんです。
体を鍛えて成長してから幽霊っぽいものを見る機会がすっかりなくなったんですけど、
実際アレは何だったのかと。そもそも自分が思春期だったために見た幻覚だったんじゃないかと。
では実際に幽霊を完膚なきまで目撃してしまえばいいんじゃないか?
と、考えた自分は有名な心霊スポットを巡ることにしたんです。あとついでに神社とかの観光。


59 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 17:12:36.28 ID:+jAEfwSv0.net
それで福井の雄島とか岩手の慰霊の森とか青森の恐山とか行ったんですが、
中々神秘的な気配があって居心地よかったです。なんか神の威光~みたいなの感じてとても良かった。
恐山は特に良くて硫黄臭い駐車場で車中泊するくらい居心地良かった。

で問題は2個所、岩手と広島であったんですけど、先ずは岩手から。
岩手というと遠野物語とかでカッパとか座敷童とか妖怪の話が多いではないですか。
それでカッパ淵という昔カッパが現れて人を引きずり込んだという沢が観光地になっており、そこに行ったんです。
周りは多少整備されているけれどな~んもないド田舎で、自転車用のコースが整地されてる程度の山間部って感じでした。


60 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 17:19:38.20 ID:+jAEfwSv0.net
そのカッパ淵は何やら大きい寺の裏側に流れている沢で、
木漏れ日とか差して休憩するのにもってこいな環境でした。
特定の曜日は解説とかもしてくれるおじさんがいるそうでしたがその日はいませんでした。
周辺を散策しても特に何も無かったので帰ることにしたんです。

そんで帰り道に半壊した祠?みたいなものが立っていました。
岩手というと豪雪地帯ですからその影響で潰れたのかな?と思いその祠の中を覗いた訳なんですよ。


61 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 18:16:25.77 ID:+jAEfwSv0.net
半壊した祠にはよくあるお地蔵さんとか祀ってある小さい扉が立てつけてあったんだけど、
殆ど崩れて半開き状態だったんだ。いったいいつ崩れたのか分からないけれど、
中に神様とか祀ってある状態で放置されてるのだったら管理者に連絡しとくかなと思って中身を確認したんだ。
チラッと中見た一瞬ですごい吐き気がした。中身は家に飾ってあるエビス様みたいな小さい置物?があったんだけど
なんか様相がおかしかった。高熱で溶けたような、笑っているような、尋常じゃなく怒っているような、奇形極まりない見た目をしてた。
正直ビビった。ネットの数々のグロ画像見ても屁でも無い程度にグロ耐性あったのに、こんな一瞬見ただけで体調不良になるもんが存在するのかと。
直視しているとノロウイルスにでも罹ったのかってくらい体がふらついたんで、そっと半壊した祠の扉を元に戻したんです。
暫く休んでいると体調不良が良くなったんでそのまま帰った。
正直その奇形の物体が何なのか検証したかったんだけど、それを見ているとインフルエンザ並に体にダメージあったから断念した。
神か妖怪かただの思い込みか分からないけれど、所有者がいるものを勝手に触るのは良くないし。

こうやって書くとなんかスゲー胡散臭いし気のせいじゃね?って感じの文章になったな…
これが岩手であった話です。


62 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 18:20:30.09 ID:sx06xQbo0.net
遠野市はそういう祠とかかなり調査されている土地だから
調査報告書を調べてみたら何か出てくるかも


64 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 18:46:40.91 ID:+jAEfwSv0.net
>>62
ぶっちゃけるとカッパ淵行ったらほぼ確実に視界に入ってる所にあります。
二年前の話ですから今はどうなってるか分かりませんが。
グーグルのストリートビューで見れる位置にあるんですけど、写真だとぶっ壊れて無いし、近くまでは見えないんですよね。
謎ですわ。


63 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 18:39:11.10 ID:+jAEfwSv0.net
もう一個が広島というか尾道であった話で、港の駐車場からねり歩いて千光寺を観光してました。
龍が如くとかでゲーム化されてたそうでこの辺で小野ミチオ君がバトルしてたのか~とか見てました。
その辺は問題なく観光してたんだけど、問題はホテルに帰ってから。
営業妨害になるから場所は言わないけど、まあよくあるビジネスホテル。
飛び込みでチェックインしたけど平日だったからすんなりとチェックインできた。
そんで風呂に入って寝てたんだけど、ふとどこかからチリンチリンと風鈴の音が聞こえるのね。
10月後半で寒い時期だったのに風鈴なんぞ鳴らしやがって余計寒くなるわ!と内心苛立ってたんだけどそのまま寝ることにした。
そのままベットに寝転んで風鈴の音聞いてたんだけど、なんか音の出所が近いんだよ。
どこかな~と思って出所を調べようと起きてウロウロしてたんだ。
廊下では聞こえない、窓側で聞こえる。じゃあ窓の外か?と思って窓から身を乗り出して耳をすませても聞こえない。
じゃあどこかな?と調べるとなんか壁の前から聞こえる。
よく分からんが壁の中とかじゃなくて壁の前。スピーカーとか音源も無い空中から聞える。
まあ理解不能だった。自室の空中から何故か風鈴の音が出ている。
気色悪いなぁと思ったけどそういう怪奇現象は慣れてたんで無視して寝ようとした。
二時間くらい寝てたんだけど、風鈴の音がうるさいうるさい。20秒に一回はチリンチリン鳴るもんだから物理的に寝れない。
気になって寝れないもんだからチェックアウトして車の中で寝た。

この二件が全国の心霊スポット回って怪奇現象だったと感じたことです。
他は妙な気配とか影あるだけでなんか呪われた~みたいなことが無かったです。


65 :本当にあった怖い名無し:2021/11/14(日) 23:06:23.43 ID:rCyT/7GH0.net
読みやすくて面白かった






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117 :本当にあった怖い名無し:2013/03/22(金) 16:49:09.00 ID:Mmf3FIxU0
未だに謎なんだが実話だから聞いてください。

俺が小学校6年の頃、学校帰りに通学路で小判みたいな仏像が書かれたものを拾った。
小学生って道端に落ちてるものってなんでも拾うよな。輪ゴムとか針金とか。
そんで、その小判みたいなものを拾ってうちに持ち帰って、少し汚れてたからよく洗って机の上に置いていた。
夜ご飯を食べてから自分の部屋に戻り、ふと拾ってきた小判をながめてた。
その時気づいたんだが、その小判って売り物でもなく誰かが作ったって感じの形状で彫られてて、
不気味な仏像の絵の裏を見ると、何故か俺と同じ誕生日の生年月日が彫られていた。それは今でも印象に残ってる。

んで、それからその小判を机の上に飾って置いたんだが、
ある日母親が部屋の掃除をしていたときにその小判を見つけたらしく、
俺に「落ちてるのを拾ってくるな」とか「不気味だから捨ててきなさい」って怒られた。
しかたないから、その小判を部屋の窓から外に投げ捨てたんだ。

で、それから二ヶ月後くらいかな。
これが謎。
大晦日の大掃除の時のこと。
俺の部屋は兄貴と共同で使ってて、机を向かいに二つ並べて置いてあるんだけど、
その隙間の掃除をしていたとき、何故かあのとき捨てたはずの小判が落ちてた。
しかも、何故かその小判に凄い長い髪の毛が何本も絡み付いていた。毛根まで付いてた覚えがある。
ちなみにその長さは母親の髪の毛より長かった。
気持ち悪くなってすぐさま外に投げ捨てた。
それからもう見なくなった。

っていうなんのオチもないつまらない話なんだけど、本当に意味不明だった。
普段は幽霊とかそういうのは信じないが、この体験だけは唯一のオカルトっぽい体験です。
あれはなんなんだろう。



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1309 :本当にあった怖い名無し:2021/04/15(木) 13:07:34.75 ID:lafmmzj50.net
三十年くらい前のこと
とある坊さんの家に食事に招かれた
居間でごちそうになっていると、
となりの部屋にその坊さんが信仰しているのか、彩色はされてないがかなり大きめの孔雀明王の木製の仏像があった
翼をひろげた孔雀に乗ってるから孔雀明王かな?と思ったぐらいで、詳しくはないから正確にはそれかどうかは分からない
ただ飯を食いながら眺めてるあいだずっと、木製の孔雀の翼に重なるように半透明のもう一対の翼が出てきて、ゆっくりと羽ばたきを繰り返しているのが見えていた
辞去したあとに同行者にそれとなく話をしたら、何言ってんだこいつ?って顔をされた

それから何年かしてその坊さんが所属している寺の関係者に会う機会があり、そういえばこんなことがあったと話をしたら、
その坊さんは複数の信者の女性と関係を持ち金を引っ張ったりしてなんやかんやとトラブルを起こしているとのこと
孔雀明王もそんな家に居たくないから飛んで逃げたかったんじゃないの?とさらっと言われた
そんなもの俺なんかに見せられてもな、と思った





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724:1/2 : 2010/11/22(月) 06:47:16 ID: ID:iEc0k8Sz0

大学の学食でだべっていたときに聞いた話し。
A子さん、フリーマーケットに行って、人形を買ったそうな。
パッと見ヘンテコな人形だったんだが、そこが可愛いと思って買って帰ったら、
だんだん部屋の空気が冷たく重い感じになり、気分もネガティブになっていったそうな。
変だなぁと思ったもののまだ気分の問題だろうと思っていたら、
足に出来物がたくさん出てきたそうな。
医者に行っても「虫さされかな?」と痒み止めしか貰えず、痒いわ大きくなるわで困り果て、
徐々に(人形のせいかな?)と疑いだしてきたそうな。
登校時に思い切って捨ててしまおうと思ったのだが、いざゴミ置き場に着くと
(ひとりでに家に戻っていたら嫌だな)(捨てたら怒って、もっと酷いことしてこないかな)と思うようになり、
捨てられずにそのまま学校に持っていったんだと。
その時は一人で(どうしよう)と悩んでいたら、同じゼミのB子が通りかかって、
「そのお人形さん、可愛いねー」と話しかけてきたんだって。
「えぇ?うん…。気に入った?」
「うん、可愛い可愛い」
「じゃ、あげようか?」
「えー?いいのー?ありがとー!」
と、喜びながらあっさり連れて行ってしまったんだと。
そのときは思考力が沈んでいたこともあって(ああ、行っちゃった…)としか思わなかったんだけど、
部屋の雰囲気が元に戻り、出来物もきれいさっぱり跡形もなく消え去って、だんだん罪悪感に苛まれてきたんだと。
それでゼミでB子に会ったとき、
「人形は元気?」と聞いてみたら、B子はいつもと全く変わらずに
「うん、ありがとー。元気だよ-」と言っている。
「実はね…」と正直に話し、「黙っててゴメンね」と言うと、
「あー、大丈夫だいじょうぶ。私は平気だから気にしないでいいよー」
驚くA子を見て、
「あ、ひょっとしてお人形さん、惜しくなって返して欲しいとか?」とイタズラっぽく笑い、
A子が慌てて首を振るのを「ホッホッッホ」と明るく笑ったそうな。
「いや、大丈夫ならいいんだけどね」と申し訳なさそうな顔のA子。


725:2/2 : 2010/11/22(月) 06:49:08 ID: ID:iEc0k8Sz0


するとC子が
「あー、解るような気がする」と話しを受け継いだ。
「前にサークルの仲間とB子の部屋に行ったことがあるのよ。
そうしたら仏像がやたらにあってさ、五十個はあったと思う。
美大で彫像やってる彼氏がいて、綺麗系の観音様、筋肉系の仁王様、癒し系のお地蔵様とか、いろんな仏像をねだったんだって。
半裸のおじさんがいてなんだこりゃ?と思ったら、知ってる友達が「ラカン(羅漢)様だ」って教えてくれた。
みんなで驚いていたら、B子が
「閻魔様お願いしたら、時間がかかるなーって言われたの」
って言ってた。
そんなB子の部屋に置かれたら、呪いも抜けるんじゃないの?」

その話しを聞いて、
「部屋で怪異っつーとまずお札と思うけど、自分の部屋なら仏像も有りか」
と思うようになったのでありました




726:本当にあった怖い名無し : 2010/11/22(月) 08:03:37 ID: ID:PXp7uIYuO

いいなぁ
美大行ってて仏像造ってくれる彼氏…





727:本当にあった怖い名無し : 2010/11/22(月) 09:18:44 ID: ID:ropTn+Tt0

そんなにお手製仏像欲しい?wwww




728:本当にあった怖い名無し : 2010/11/22(月) 10:38:27 ID: ID:PXp7uIYuO

純粋に一心に造った仏像なら
部屋に迎えて毎日見たいな






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