280 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/03/08(木) 05:14
私の兄は優秀な人間でしたが、ちょっと引き篭もりが入っていました。
(引き篭もりなんていう言葉ができる前のことです)
生真面目すぎて世の中の不正が許せなかったり、自分が世界に理解してもらえないことを悩んでいました。
私が高校生の時、大学を休学していた兄が突然「絵の勉強がしたい」と言い出しました。私達は皆びっくりしました。
兄は確かに絵は小さい頃からとても上手だったのですが、勉強も良くできたので、
いい大学に入り、紙の上ではエリートコースを進むかのように見えていたからです。
また、鬱がひどくなってきてからは、絵を描くとよけいに鬱になるようで、
医者からも絵を描くのをとめられていましたし。
休学中とは言え、いずれは鬱状態を脱して、エリートコースに戻るのだろうと思っていた親は反対しました。
反対されたことによって、兄はますます引き篭もりが激しくなっていく様でした。
そんな時、途方にくれた母は、ある易者に相談しに行ったそうです。兄の写真を持って。
するとその易者は言ったそうです。
「息子さんの好きにさせてあげないと、首を吊って死んでしまいますよ」と。
その易者が指差した兄の写真の首の回りには、驚くべきことに、
うっすらとロープの跡が見えたそうです。映画の『オーメン』みたいに。
281 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:2001/03/08(木) 05:16
驚愕した母は、その易者に言われた通り、毎日一杯の水を供え、毎朝のトイレ掃除を欠かさず、
兄のために必死で祈ったそうです。
(もともと無宗教な家庭でしたので、母がそんな言葉を真に受けて実行していたのが、当時の私には不思議に思えましたが)
その写真は箪笥の奥深く隠し、誰にも見せませんでした。
結局、両親はその易者の言葉に従い、兄が行きたいという海外のアート・インスチチュートの受験を許可しました。
驚くことに、兄は入学が許可されました。
それから十二年が過ぎ、兄は現在は芸術家として生計をたてられるようになりました。
その兄が結婚することになった時、母が初めて私にこの話をしてくれたのです。
そしてその時、十二年ぶりに例の写真を箪笥から取り出しました。
それを見て母は驚愕に目を見張り、そしてはらはらと涙を流しました。
十二年前には確かにあったというロープの跡は全く見当たりませんでした。