【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

実話怪談・都市伝説・未解決の闇・古今東西の洒落にならない怖い話。ネットの闇に埋もれた禁忌の話を日々発信中!!

カテゴリ: 雷鳥一号





57 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/22(木) 19:37:15 ID:PJO/01Ta0
友人の話。

夕暮れ時、闇が濃くなる山道を歩いていると、行く手を塞ぐ物が見えた。
壁だ。大きさは立横が二メートルほど、厚みはあまりない様子。
微かにピンク色で、ぼんやり向こうが透けている。
遠目で見た感じ、ゼリーか寒天を連想した。

近づくと、その壁がぶるぶると小さく震えているのがわかった。
加えてひどく生臭い。間近で見ると、内側に何かが埋め込まれていた。
ゆっくりと動いている。何だろうと凝視してみる。

自分が何を見ているのか、最初まったく理解できなかった。
それは薄べったくなった人間の手だった。力なくニギニギをくり返している。
押し潰された人が中に納められている!?
だとすると、一面に走っている赤い筋は血管だろうか。
右下の方にはぼんやりと白い球体が見えた。とても覗き込めない。

半分腰を抜かし、ほうほうの体でそこを逃げ出した。
後で地の者に聞いたところ、あれはチブスマと呼ばれているものらしい。
入ってはいけない日に入山した者が、閉じ込められているということだ。

しかし、その山で行方不明になった者はしばらく出ていないという。
何だったんだろうなアレって。彼はそう言って顔を顰めていた。





830 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/04(日) 03:38:48 ID:GYUYfZrX0
友人の話。

幼馴染と近くの山へ枇杷を採りに行った時のこと。
雑談しながら登っている山道の上の方から、何か転がってきた。
断面に年輪が見える。丸太だ。大きさは一メートルほど。

勢いはなかったが、当たれば怪我くらいするだろう。
やり過ごそうと道脇によった。
丸太はそのままコロコロと二人の真横まで転がってきた。

そこでピタリと静止する。
驚いた彼らを、何とも説明できない違和感が襲った。
強いて言えば「何かに様子を伺われている」といった感じか。
少し間があって、また丸太は転がり始める。
丸太が視界から消えるまで、彼らは身動きできなかった。

後日、幼馴染が彼の祖父から聞いたところによると、
二人が見たものは地の者にコロゲとかコログなどと呼ばれているものらしい。
丸太に擬態しているが、実際は蛇の類だという。
縁起が悪くなるので、行き逢っても無視しろと言われたそうだ。


831 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/04(日) 03:40:15 ID:GYUYfZrX0
知り合いの話。

持ち山の手入れをしていると、おかしな音を聞いたという。

 グ・・・ググゥ・・・グゴォ・・・

手を止めて耳を澄ます。生き物の鼾のようだ。正体はわからない。
出来るだけ音を立てずに、鼾の主の姿を探すことにする。
右手奥の少し開けた場所で、どうやら目当ての相手を見つけた。
自分の目を疑う。

そこで気持ち良さ気に鼾をかいていた者。それは太い丸太だった。
端面には年輪がある。枝を落とした切断痕もちらほら見受けられる。
それだのに、腹に当たる部分が微かに上下している。生きている。

起こしたりするようなことはせず、静かにそこを立ち去ったそうだ。


832 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/04(日) 03:42:26 ID:GYUYfZrX0
知り合いの話。

彼は山に椎茸を栽培するための小屋を持っている。
小屋の手入れをしに行っていた時のこと。
ほだ木を整理していると違和感を覚えた。
まさか・・・自分が用意していた数より、増えていないか?

おかしく思い引っ張り回している撃ち、何本かのほだ木に異変が起きた。
灰色の先端に、二つの眼がぱちくりと開いたのだ。

しばし睨み合いこをした後、木の表面は波が走ったかのようにぶれた。
ぶれが治まると、元通り何の変哲もない木材に戻っている。
怪しい木には手を触れぬことにして、その日は山を下りることにした。
次に小屋を訪れた時、ほだ木の数は記憶にある数に落ち着いていたという。



834 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/04(日) 03:52:16 ID:GYUYfZrX0
こんばんわデス。

木材に化けるモノ関連の話がいつの間にか溜まっていたので、UPしときます。
一応、中国地方で集めたネタでして、特に一話と二話は、我がお膝元H県。
これって、バチヘビとかツチノコの類と同じモノなんでしょうかねぇ。
他の地方では、何と呼ぶのでしょうか。

地元だけに見てみたいとも思いますが、まぁ、山ン中で丸太に追いかけられたり
したら、私だったらそりゃ一目散に逃げるでしょうなぁ(苦笑)。
最近ヘタレ化が著しいし。

でわでわ。おやすみなさいデス。





503 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/10(水) 23:13:41 ID:WfFmkxTq0
同級生の話。

登山部で一緒に活動していた時に、こんな話を教えてくれた。
彼の地元には、経塚と呼ばれる塚がある。
高校生の頃、そこの碑に悪さをした悪友がいたという。
昔から祟りがあると言われていた曰く付きの場所だったので、返って悪戯心をそそられてしまったらしい。
碑を足蹴にし、塚に立ち小便をかけたのだと。
仲間は皆、祟りがあるぞと注意したが、悪友はまったく聞く耳を持たなかった。

程なくして、件の悪友は帰らぬ人となった。
交通事故だったらしいが「祟りじゃないのか?」という噂が流れたそうだ。
果たして祟りかどうかは不明だが、皆その塚を避けるようになったという。

目撃談が語られ出したのは、それからしばらく後のことだった。
その山付近を歩いていたパーティの中に、死んだはずの悪友がいたというのだ。
曰く、最後尾を俯いて歩いていたが、向こうの景色が透けていた。
曰く、すれ違った集団の最後に付いていたので思わず振り返ったが、もう背後には誰の姿も見えなかった。
曰く、前を歩いていたパーティに見覚えのある後ろ姿を見つけたので、思わず追いかけたが、
どんなに足を速めても追いつくことが出来ずに見えなくなった。


504 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/10(水) 23:14:23 ID:WfFmkxTq0
調べたところ、過去その山では、狂い死にした者が続出したことがあったという。
なぜ狂ったかの理由は伝えられていない。
その死者たちを鎮めるために造られたのが件の塚で、経塚も元々は狂塚と書いていたのだとか。
昔は、その山の近くで死んではいけない、死にたくないと皆が言っていたそうだ。
そこで死んでしまったら、狂いミサキに連れて行かれるのだと。

今は別の登山道が使われるようになり、その塚の場所を知っている者も数少なくなっている。
「知っていても行かないけどな」
彼はそう締めくくった。








336 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/08/22(土) 20:00:17 ID:E11gwc8I0
友人の話。

里帰りした折に、甥っ子を連れて裏山で遊んでいたという。
時はまだ朝方、霧雨がかかって少しばかり肌寒い。
地山が剥き出しになった崖に、立って入れるほどの洞穴が開いていた。
何気なく入ってみると、五,六メートルも進んだ所で行き止まりとなっている。
別に変わったこともないので、すぐに引き返して外に出た。
唖然とした。見事な夕焼けが視界に飛び込んできたのだ。
慌てて甥の名前を呼んで探したが、どこにも見当たらない。

一目散に家まで帰ってみると、親たちにこっぴどく叱られた。
「小さな子供を放ったらかしにして、今まで何処で道草食ってたんだ?」
甥が言うには、急に彼の姿が見えなくなり、仕方なく一人で家まで帰ったのだと。
事情を説明し、自分にも訳がわからないと主張したが、
「言い訳するな!」と一喝された。
危なくその日は晩御飯抜きになるところだったそうだ。

後に村の幼馴染みに聞いたところ、件の山には「トキタガエの穴」と呼ばれる洞穴があるのだと教えられた。
「何でも、その中じゃ時間の進み方がまちまちになるって話だよ。
 長くなったり短くなったり、効果は決まっていないみたいだけど。
 最も君が入ったその穴が、本当にトキタガエかどうかはわからないけど」

その後しばらくして再び裏山に登ってみた。
あの時入った筈の洞穴は、どこにも見つけられなかったという。









153 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/21(火) 20:59:31 ID:wmv7mFFi0
知り合いの話。

彼女の田舎の山村には、ゴンボスジと呼ばれる家があったのだという。
その家系は呪詛をよくしていたと言われ、恐れられていた。
ゴンボスジは畑に呪いを掛ける。
呪われた畑の根菜類を引き抜くと、藪睨みの目玉が幾つか付いていて、抜いた者を睨み付けてから消える。
睨まれた者は、程なくして死んでしまうのだそうだ。

ゴンボ(牛蒡)がよく呪われたそうで、故にゴンボスジ(牛蒡筋)と呼ばれるようになった、そう伝えられている。
大層恐れられたが、何故か避けられてはいなかったようで、村はよくゴンボスジの娘を嫁に迎え入れていたと聞く。
そしていつの間にか村の中に溶け込んでしまい、ゴンボスジは途絶えたという。

今でも村では「嫁を取ったら、絶対怒らせるな」と伝えられているそうだ。
嫁がゴンボスジの血を引いていれば、相手にその意志が無くとも呪われるからだと。
ゴンボスジというのは女系の家で、まず女しか産まれなかったとも伝わる。

「・・・という、まぁ言い伝えレベルの話だけどねー」
そう言って彼女はカラカラと笑った。
相槌を打ちながら「この人は怒らせないようにしよう」と思う私だった








274 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/07/20(土) 23:35:37.00 ID:L3hbmMFa0

山仲間の話。


山歩きの途中で休憩していると、唐突に花の香りに包まれた。
様々な野花の匂いが混じっているようで、何の花かは特定出来ない。
見回してみたが、辺りには花など一輪も咲いていなかった。



後で山に詳しい者に聞いたところ、「サニャツキに出会したのだろう」と言われた。
サニャツキとは『山野憑き』が訛った語らしく、取り憑いた者の周囲に野花の香りを漂わせる物の怪なのだという。
「花の香りを振りまくだけで、他に害はないというから、何も心配しなくていいよ。
 ただこいつ、気に入った人間に憑くというから、しばらく付きまとわれるかも」
確かに下山後、街中の自宅にいる時にも、いきなり花の香りが部屋に充満することがあったという。
「一月くらいでなくなったけど、爽やかだし悪いものじゃなかった。
 ただトイレの中で香りが爆発した時は、我慢できずに笑ってしまったよ。
 凄く豪華な芳香剤だったなぁ」
そう言って彼は苦笑した。

 










69 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/12/25(水) 20:09:49.35 ID:5UaHI/Q80
友人の話。

キャンプ場で一緒になった登山者から、こんな話を聞いたという。
「その昔、ここいらの山には化け物が出たって言われてたんだ。山道を歩いていると、いきなり足が地面に縫い付けられたようになって、もんどり打って転けてしまう。何だ何だ?と足下を確認すると、いつの間にか草履に太い釘が打ち込まれていて、しっかりと大地に固定されているんだと」

「『槌お化け』と呼ばれたその化け物は、誰にも姿を見せたことがないんだって。
今は出たっていう話なんか聞かないけどね。昔の草履と、最新の登山靴とじゃ、勝手が違うんだろうさ」

 



69 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/12/25(水) 20:09:49.35 ID:5UaHI/Q80

そう聞かされて、一緒になって笑ったが、ちょっとだけ気になることがあった。

「そこのキャンプ場でテントを張るとね、ペグが何本か、がっつりと頭まで土の中に埋まっていることが時々あるんだ。誰かの悪戯だと思ってたんだけど、この話を聞いてから、
嬉しそうに槌を振るってペグを打ち込んでいる、お化けの姿を想像しちゃって……」
彼はそう言って苦笑した。

 









540 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2014/01/31(金) 19:50:37.20 ID:NqzmBTwd0

アメリカで聞いた話。

ある男性が、山深い森で鹿狩りをしていた時のことだ。
木々の合間に大きな牡鹿を見つけた。
幸い風上で気が付かれることもなく、見事一発で仕留めたのだという。
鹿がドッと倒れる音を聞いてから、喜んで駆け寄ったのだが。
そこにあったのは鹿の剥製だった。

 



 

540 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2014/01/31(金) 19:50:37.20 ID:NqzmBTwd0

首から上だけの、壁飾りに使われていたような古い代物だ。
しかもそれが三つ揃って、綺麗に並んで地面の上に落ちている。
その一つにはまだ新しい銃創があった。
先程、自分が撃った痕であろうか。
どうにも気味が悪く思え、そそくさとそこから逃げ出したのだそうだ。

 







925 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/12/30(日) 00:43:29 ID:217YPuJe0
知り合いに、新興宗教で悩んでいる人がいた。
彼の妹が入信してしまい、多額の借金を作っていたのだ。
聞けば「貴女の信仰を数字で表してください」という触れ込みで、寄付金の額を決められていたのだとか。
最初は少ないのだが、
深入りするにつれて「貴女の思いはこの程度なのですか」だの、
「この数字で果たして真の信仰に足るとお考えですか」だの煽られて、
どんどん寄付が増えていったものらしい。

親戚中に借金を重ねており、このままでは消費者金融に手を出しかねないと類縁者一同心配をした。
今の状況で手を出したら、間違いなく妹は終わってしまう。
知り合いも何度となく説得したのだが、その都度教団の者が割り込んできて、危うく自身が洗脳されかけたこともあったとか。

「貴方に付いている悪魔を私に祓わせて下さい。
 妹さんも取り憑かれていたのですが、御本尊様の御霊験あらたかな御力によって救われました。
 私は貴方もお救いしたいのです」

面と向かってこう言われた日には、唸って頭を抱えたくなった。
生憎と、壺や印鑑や朝鮮人参なんぞで救える魂など持ち合わせてはいない。
しばし考え、頭を抱える代わりに次の提案を出した。

「本当に俺も救ってくれるのですか」
「当然です。神の愛は無限です」
「なのでしたら、俺の持ち物で悪魔に害されている物件があるんです。
 まずそれを救ってはいただけないでしょうか」

彼は件のマンションの一部屋所有していたのだ。


926 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/12/30(日) 00:44:31 ID:217YPuJe0
昔付き合っていた彼女と同棲する目的で購入したのだが、
彼女はそこで変なモノを見てしまったようで、荷物も纏めずいきなり出て行った。
彼にとっても苦い思い出で、彼自身は怖い思いをしたことがないのに、そこを避けるようになっていた。
部屋は今でも空きのまま。
その部屋を悪魔祓いしてくれ、そう頼んだ。
狂信者は自信たっぷり、胸を叩いて「任せて下さい」と宣った。
彼自身は特に信じてはいなかったのだが、一つ嫌がらせのつもりだったという。
「祓った」と言ってきても、何かと難癖を付けてやろうと考えていたらしい。

部屋の鍵を渡して数日経ち、「終わりました」と連絡があった。
「本当かよ」半信半疑で現地に向かう。
部屋には狂信者と妹の姿があった。
悪魔を祓うため、あの日から二人で泊まり込んでいたという。

「やっぱりこいつら出来てやがる。こりゃ足抜けさせるのはホントに骨だな」
妹をどうやって助け出そうと考えていた彼は、大きく溜息を吐いた。
それをどう勘違いしたのか、教団の男は満面の笑みを浮かべて告げた。
「確かに大層強力な悪魔が居座っていました。
 でも安心して下さい。神の愛で―」

残念ながら、神の愛が一体どういったものなのかを知ることは適わなかった。
男の言葉の途中で、居間の扉に付いている覗き窓のガラスが盛大に割れたのだ。

沈黙に包まれた部屋の中で、ようやく男が言葉を継ぐ。「今のは偶々、実際に―」
ピンポンピンポンピンポン・・・!!!
ドアベルが狂ったように連打された。
玄関に駆け付け、外を確認する。誰もいなかった。
「本当に、ここには何かいるんだ」
その時になって初めて、元彼女の言っていたことを信じる気になった。
・・・もう、どうしようもなく、取り返しようもなく遅かったけれども。


927 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/12/30(日) 00:45:51 ID:217YPuJe0
居間に戻ると、男は視線を泳がせながらブツブツ言っていた。
「まさか、そんな、本当になんて、昨日までは何も起こらなかったのに」
そんなことを繰り返している。妹も蒼白な顔をしていた。
家族には、このマンションの噂を聞かせてはいなかったのが功を奏したか。

二人の様子を見ているうちに、彼自身はとても落ち着いた心持ちになった。
「貴方は失敗しました。悪魔は健在ですね」
しっかりゆっくり、噛んで聞かせるように口にする。
「いや、あれは只の偶然が重なっただけ―」
言い終わる前に、卓上の電気ポットがゆっくりと動き始める。
滑らかに、滑るように机の上を移動し、落ちた。

 ガチャンッ!

「悪魔はせせら笑っていますよ。彼奴はいつもこうやって俺を虐めるんだ。
 してほしくないことを、最悪のタイミングでやらかしてくれる。
 だから彼女も出て行ったんだ」
「・・・」
「助けて下さいよ、お願いしますよ。あの娘を返して下さいよ」
「いやそれは」
「神の愛は無限なんじゃないんですか? 俺は救われないんですか?」
泣きそうな顔で、男はもう一日くれと言ってきた。
何日でもくれてやるよ。声にこそ出さなかったが、そう毒づいた。

翌日、妹から連絡があった。ブツ切りで喋る内容は要領を得ない。
「迎えに行くから待ってろ」そう伝えてマンションに向かった。
妹は外の駐車場で待っていた。
あの部屋には戻りたくない、戻れないと言う。
「昨晩何があった? 男は?」と尋ねても、青い顔で首を振るばかり。


928 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2007/12/30(日) 00:47:26 ID:217YPuJe0
仕方なく妹を車に待たせ、一人で部屋に入った。
物という物が散乱していて、酷い有様だった。
ガラスもほとんどが割れており、ドアも蝶番から壊れて外れ倒れている。
何がここで暴れたんだ? 答えは出ない。

鍵を閉めホールまで出てところで、狂信男から電話があった。
「貴方に憑いている悪魔はとても私ごときには落とせません!」
そんな台詞を繰り返すばかりで、まったく会話にならない。

「困りますよ、今度の件で、恐らく悪魔は俺の妹にも気が付いたはず。
 悪魔はしつこいんです。
 俺の行く所どこにでも憑いてくるように、妹にも憑いて回りますよ。
 貴方の後にだって憑いて行くかも―」
「申し訳ありませんが、私には無理です。さようなら!」
一方的に電話は切られた。

部屋を見上げながら「祟りが役に立つなんてな」そんなことを考えた。

男や教団の関係者から、二度と連絡が入ることはなかった。
妹はその後、正に憑き物が落ちたような状態になり、洗脳が解けたのだという。
ただ事ある毎に「信仰ってさ、無力だよね」と呟くのが気掛かりではあるが。
「あの晩妹の奴、あの部屋で何を見たんだろうな」
彼はそう言って苦く笑った。










488 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/10/15(火) 19:24:20.69 ID:X/22lcU/0

知り合いの話。

 

 

488 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/10/15(火) 19:24:20.69 ID:X/22lcU/0

実家のある山奥で、祖父の手伝いをしていた時のことだ。
何処からともなく人の笑い声が聞こえてきた。
・・・ケラケラケラケラ・・・
調子外れで甲高い声だったが、間違いなく女性のものだった。
何となく、何かを喜んでいるみたいな響きだ。

 

 

488 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/10/15(火) 19:24:20.69 ID:X/22lcU/0

笑い声を聞くや否や、祖父が「山を下りるぞ」と撤収を始める。
祖父は作業を途中で切り上げることがまず無かったので、意外に思ったという。
訝しく思って「何かあるの?」と尋ねると、次のようなことを言われた。
「この奥には、大昔から『笑い女』っていう化け女がいるんだと。
 山に入った木樵とか見つけると、良いものを見つけたと笑い声を上げるそうだ。
 捕まると喰われてしまうというから、サッサと逃げるに限る」
「本当に食べられるの!?」
驚いてそう聞き返す。
「本当のところはどうなのかはわからんが、
 お前はこんな山の中で、嬉しそうに笑いながら追っ掛けてくるモノに逢ってみたいか?」

逢いたくなどなかったので、素直に祖父に従い下山した。
笑い声は途中まで追ってきたが、麓に近づくにつれて段々小さくなっていき、
やがて聞こえなくなったという。






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