【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

実話怪談・都市伝説・未解決の闇・古今東西の洒落にならない怖い話。ネットの闇に埋もれた禁忌の話を日々発信中!!

カテゴリ: 雷鳥一号




 275 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/07/20(土) 23:35:38.00 ID:L3hbmMFa0

知り合いの話。

 

 

275 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/07/20(土) 23:35:38.00 ID:L3hbmMFa0

山中を軽トラで流していると、行く手に襤褸切れのような物が落ちている。
毛布のようだ。どこかの作業車から落ちた物だろうか。
片そうと路肩に停車し、車を降りた。
近よってみると、何となく布ではないような印象。少し生臭い。
「……あ、ペチャンコになった動物の轢死体か?」
そう考えながら傍にしゃがみ込んだ途端、襤褸はムクリと起き上がった。
下になっていた側から、犬のものらしき口が剥き出しにされて迫ってくる。
欠けた牙の間から、紫色の舌がだらしなく垂れていた。
顎から上は削ぎ落とされたかのように失くなっている。

思わず飛び退ると、起き上がった時と同様、唐突にそれはペシャリと潰れた。
先ほどの印象も幻のように掻き消え、もうどこをどう見ても、古びてほつれた
毛布にしか見えなくなっていた。
恐る恐る持ち上げると、間違いなく確かに古毛布だ。
先ほど見た口は何だったのか。いくら考えても答えは出なかった。

 

 

275 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/07/20(土) 23:35:38.00 ID:L3hbmMFa0

後日、近所の老人から「それはカブソだろう」と教えられた。
正体は皆目不明だが、昔からあの山に出て人を化かすモノであるらしい。

「化かされたって話はよく聞くけど、実際にやられると本当にビビルぞ」
彼はそう力説していた。








696 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/11/13(水) 17:34:53.14 ID:VC/zp4PI0

山仲間の話。

 

 

696 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/11/13(水) 17:34:53.14 ID:VC/zp4PI0

知己の山小屋に泊まり、酒盛りをしていた夜のことだ。
玄関の方で物音がした。
何だと様子を見に行くと、森に白い物が吸い込まれていくのが見えた。
汚れた包帯の束だった。
何か透明な筒にでも巻かれているかのように、ぐるぐる巻きになった布の筒がふらふらと空中を漂っている。
小屋から漏れる明かりで見えたのは一瞬で、すぐに木々の間に消えてしまった。
「どうした?」
振り向くと、小屋の主がつまみを下げて倉庫から戻ってきていた。
奇妙な物がいたと、今見たもののことを話してみる。
主は何とも言えない顔になったという。
「かなり昔のことだがな、小屋の傍に猿が倒れていたんだ。
 年取ってて酷い怪我をしてた。
 群れからはぐれたか、追い出されでもしたんだろう。
 つい仏心を出しちまってな。
 手当てして包帯まで巻いてやった。
 しばらくは小屋に居ついていたんだがな。
 その内、傷が癒えたようで、フイッと小屋からいなくなっちまった」

 

 

697 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/11/13(水) 17:35:34.08 ID:VC/zp4PI0

「野生動物ってのは大概、すぐに包帯なんぞ毟り取って外してしまうんだがな。
 しかしアイツ、何を思ったのか包帯を外さなかったらしい。
 それから毎年、手当てした頃になるとお返しに来るんだ」

そう言って玄関を開け放つ。
扉のすぐ外に、さほど多くはないが、山の果物や茸が丁寧に置かれていた。
へえ、猿の恩返しか。
そう和やかな気持ちになったが、一点だけ引っ掛かる。
包帯ははっきりと見えたのに、その中身の猿の姿は何故見えなかったのか?
「随分と前のことだって言ったろ。
 まず、あの猿介は当の昔に死んでる筈だ。
 あの時分でかなり老けてたからな。
 お前が見たのは、真っ当なモノじゃないんだよ」
主はしばらく森の奥を見つめていた。
「もう成仏した方がアイツのためだと思うんだがなぁ」
寂しそうにそう言いながら。









38: 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM @\(^o^)/ 2015/07/24(金) 20:21:39.20 ID:fkEVakQY0.net
知り合いの話。

山道を歩いていると、小さな駄菓子屋に出会した。
喉の渇きでも癒そうと入ってみたが、置いてある商品は見覚えのない不思議なものばかり。
何の動物を模したのか全然わからないお面だとか、硝子瓶に沢山詰められた目玉だとか、
中身が入っているのかゴトゴト音を立てている壺だとか。
描写すると不気味な物ばかりなのだが、なぜか、怖いとは感じなかったのだそうだ。

札に書かれている字も、まったく読めない。
店に人の姿はなく、何度か呼んでみたが、誰か出てくる様子もない。
諦めて、何も買わずにそこを出た。

後日仲間内でこの話をしたところ、
「あんな山奥に駄菓子屋なんかある訳ないだろう」と言われた。
その後も何度かそこを通っているが、あの駄菓子屋はどこにも見当たらないという。

39: 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM @\(^o^)/ 2015/07/24(金) 20:23:14.25 ID:fkEVakQY0.net
友人の話

湖の傍にあるキャンプ場で、キャンプファイヤーを楽しんでいた時のことだ。
歓談中に尿意を覚え、トイレへと出かけた。
すっきりして帰ってくると、自分の座っていた場所に誰かが腰を下ろしていた。

自分だった。
自分と同じ姿をした背中が、皆の話を楽しそうに聞いている。

立ち竦んでいると、仲間の一人が異変に気がついた。
スコップを手に取り、座っている何かに向かい、灰を一掬いして投げ付ける。

パッと姿が消えた。
誰もそこには座っていない。

他の仲間は一瞬驚いたが、「あぁ、またか」といった顔で話を再開した。
呆然とする彼に、灰を投げた者が説明してくれた。
そこのキャンプ場では、こういったことが結構な頻度で起こるのだという。
経験した仲間も結構いるが、特に何もないから気にするなと言われたそうだ。

41: 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM @\(^o^)/ 2015/07/24(金) 20:24:41.50 ID:fkEVakQY0.net
知り合いの話。

彼の親族が、所有している山で奇妙な獣を見たらしい。
身体は野良犬であったが、その顔が人間のものだったというのだ。
ニヤニヤと笑う中年の男のもので、どことなく下品な印象を受けたとか。

それからしばらくして、今度は人面の鹿を見たと言い出した。
やはり、あの中年男の顔をしていたそうだ。

その後もその山で、魚、蛇、猿など、何度となく人面の獣を見たらしい。
どれも皆、あの男性の下品な顔がついていたという。
どうやらこの獣は親族の顔を覚えたようで、最近ではニヤニヤ笑いながら
足元へ近よってくるようになった。
気味の悪いことこの上なく、目撃したら一目散に逃げるようにしたそうだ。

「そのおっちゃんの顔に、全然見覚えがないんだとさ。
 どうして自分の山に現れるのか、まったくわからないのが嫌なんだって」

この親族、先日狩猟免許を取得し、山に入る際には銃を携えるようになった。
……その内何か凄い報告が聞けそうで、彼と話す時はドキドキしている私である。








32 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/25(火) 19:22:01.27 ID:Q0XaX8RP0
友人の話。

夕暮れ時、暗くなった山道を下っていると、いきなり足首に痛みを覚えた。
「何かに引っ掛けたか?」と腰を屈めてみたが、何も障害物は見られない。
足首もしっかりと登山靴でカバーされていたので、直接何かが当たることもない。
しかし確かに軽い痛みは感じられるので、奇妙なことだと思いながら下山を続けた。

麓のバス停に着いたところで、靴も靴下も脱いで足首をうかがった。
足首には、血が滲んで紫色になった人の歯形が微かに刻まれていたという。







34 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/25(火) 19:25:00.22 ID:Q0XaX8RP0
知り合いの話。

彼女は女子高生の頃、通学に私鉄を利用していた。
沿線上に大きな神社があるそうで、巫女さん姿の女性と乗り合わせることも偶にあった。
その内何人かと顔見知りになったのだが、彼女たちから不思議な話を聞かされたという。

巫女さんたち曰く、この支線で山間の部分を通っている途中、誰にも見覚えのない駅が現れることがあるのだとか。
その駅は、真っ暗な山の中に忽然と姿を現すらしい。
汽車はその駅を通り過ぎることがほとんどだが、稀に停車することもある。
駅舎や施設はごく普通に見えるのだが、どこを捜しても駅員や客の姿は確認できない。
駅名は毎回変わっているそうだが、いつの時も、すべて平仮名のみで記されている。
開札口から山奥へ続く細い道が覗けるだけで、他には何も見えないのだと。
神社関係者の間では『お狐さんの駅』と呼ばれていたそうで、
「そこで降りてはいけない、帰ってこられなくなるから」と言われていたという。

彼女はその駅を見たことはないそうだが、それでも夜遅くその山間を走っている時は、どこか不安だったのだそうだ。








53 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/07(水) 19:17:29 ID:IGrGF9If0
友人の話。

夏山を仲間と二人で縦走していた時のことだ。
その日は河原にテントを張り、釣った魚を夕飯にしていた。
腹も満たされてそろそろ寝ようかという頃合、人の声がした。
「入るぞ」
渋い男の声が、テントのすぐ外から掛けられた。
思わず仲間と顔を見合わせる。咄嗟に声が出ない。
「入るぞ」
もう一度声は呼ばわった。
仲間は怖い顔で、指を口の前に立てて“声を出すな”のジェスチャーをした。
固唾を呑んでその指示に従う。
うっかり返事をすると、声の主がテントに押し入ってくるような、そんな気がしたから。
後で確認したところ、仲間もまったく同じことを考えていたそうだ。

その後も間隔をおいて「入るぞ」の声は聞こえ続けた。
何度目の問い掛けだったろう。
身動きもせずに固まった二人の耳に、先までと違う文言が届いた。
「招かれないんじゃ仕方がない。残念だが出直そう」
それきり声は二度と聞こえなかった。


54 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2010/04/07(水) 19:18:27 ID:IGrGF9If0
安堵の溜息を吐きはしたが、言葉を口に出すのが恐ろしかった。
どこかでアレが聞いているような気がして。
声を出して会話すると、またアレが声を掛けてくるような気がして。
闇の中から。

取り敢えず筆談で意思疎通し、交代で番をしながら寝ることにした。
無事に夜が明けてから、やっと声が出せたのだそうだ。
「何だったんだ、アレ!?」
答えは見つからず、その日のうちに強行軍で山を下りたのだという。








126 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2011/04/20(水) 20:12:55.31 ID:M9js9F/p0
知り合いの話。

その昔、彼女の祖父がまだ炭焼きをしていた頃の話だ。
煮炊きに使う薪を集めに山奥を歩いていると、見覚えのない広場に足を踏み入れた。
はて、この山ン中にこんな開いた所があったろうか?
見れば下生えも綺麗に刈られていて、歩き回るのにも支障がない。明らかに人の手が入っている。
広場の真ん中に、古びた祠みたいな物が見える。
近よってみたところ、そこには奇妙な物が並べられていた。
人を象った、不格好な木彫りの人形。
誰が拵えた物かわからないが、五体ほど等間隔で置かれていた。
見ているうちに何故か気持ち悪くなり、逃げるようにそこを後にしたそうだ。

炭焼き小屋に帰ってから、居合わせた里仲間に自分の見たことを話してみた。
「サンコウさんの土地に入り込んじまったんだな」と言われた。
サンコウさんとは、そこの山神の呼び名だ。
「人形ってのは今年、サンコウさんが取ると決めた人の形代だろう。
 お前さん、山で仕事するんなら気を付けるがいい。
 機嫌損ねると、その五人の内の一人になっちまうぞ」


「嘘か誠かはわからんが、そう言われたんだよ。
 だからって訳じゃないが、山ン中にいる時は粗相しないよう心掛けたよ。
 幸い、サンコウさんに取られもせず全う出来た。有り難いことだ」
祖父はそう彼女に語ったという。

最後にこう付け加えた。
「それにしても不思議なのは、あの広場には二度と辿り着けなかったことだ。
 サンコウさんは、何で儂にあそこを見せたんだろうな」








22 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/10/29(月) 20:11:38.71 ID:3LceBR410
昔馴染みの話。

昔、仕事で東南アジアの山に籠もっていた時のことらしい。
不思議な足音に後をつけられたのだという。
背後からしつこく付いてくるのだが、音はすれども人の姿などどこにも見えない。
気持ち悪いと思いながらもどうすることも出来ず、放っておくことにした。

街に下りてから、現地の友人にこの話をしてみた。
「人食いにつけられたね」と、そう言われたのだという。
聞いてみると、かつてその山に棲んでいた部族は、人を食べる習慣を持っていたらしい。
人間を食べると、その強さが食べた者に移るという信仰を持っていたらしく、
そのため主に健康的な男性が餌食にされていたそうだ。
「日本から来た兵隊も、結構食べられたって話を聞いたよ。
 でも終にはアメリカ兵まで食っちまったんで、報復で村落ごと焼き滅ぼされたんだと。
 だから今現在、奴らはもう足音しか出せないっていう話さ。
 実体が無いのだから、そう危なくもないだろう」

「その後も二回ほど足音につけられたけど、確かに別に害はなかったな。
 気持ち悪いことに代わりはなかったけどね」
彼はそう言って苦笑した。

93 :本当にあった怖い名無し:2012/11/05(月) 00:21:45.30 ID:4ixlcD2mP
>>22
東南アジアの人食いというと高砂族とかかなあ?
日本人はクセがなくて美味しかったと言っていたのは
確かポリネシアの少数民族とか南洋の話だっけ(ウロ覚え

日本でも故人の遺骨を食べる習慣のある地域があったみたいだけど、
ヨモツヘグイの源流が実は遺体の共食儀礼だったりして…なんてね。

94 :本当にあった怖い名無し:2012/11/05(月) 16:16:24.27 ID:sr4wLksh0
>>93
高砂族は首狩りの習慣はあったが、人は食わないよ

96 :本当にあった怖い名無し:2012/11/05(月) 20:33:33.36 ID:Pcu8/mQy0
>>93
俺の同僚、フィリピンでやっぱり人食いの話を聞いたとか言っていたなあ。
パプワニューギニアやインドネシアとかが有名だと思っていたけど、
フィリピンと聞いて驚いた憶えがある。

100 :本当にあった怖い名無し:2012/11/05(月) 22:45:43.62 ID:4ixlcD2mP
>>94
そうか、勘違いしてたみたいでスマソ。

>>96
ほほ~フィリピンでもそういう話があったとは初耳です。
同僚さんは他に何か興味深い話をしていませんでしたか?

119 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/06(火) 18:23:36.93 ID:uttupCTX0
どーも、雷鳥です。

>>100
ええと、>>22の話は、フィリピンでのことらしいです。

「日本人は一番美味かった、だから俺は日本人が大好きだ!」
みたいなことを、酒場で一緒になったお爺ちゃんに言われて、
笑いながら肩を叩かれ、ついでに奢ってもらったんだそうです。
昔馴染みは、「・・・えー・・・」ってなことしか言えなかったそうですが。

アメリカ軍に滅ぼされた山村も結構な数があるらしくて。
それがすべて食人集落だったとは思いませんが。

その時のお爺ちゃんが言うには、フィリピンの山岳民族は、米兵にも負けないほどの屈強な戦士揃いだったらしいです。
一人一殺の精神で、銃弾をぶち込まれても山刀を持って駆け寄り、切り捨ててから死んでいたんだとか。
「日本の侍にも引けを取らんだろ!」と胸を張っていたそうで。
それがため、アメリカ軍の装備銃が大口径の物に更新されて、結局は負けてしまったんだそうですが。
・・・これはこれで凄い話かと思います(汗)・・・。

134 :本当にあった怖い名無し:2012/11/07(水) 20:28:15.08 ID:pU9ne/100
>>119
フィリピンのスールー族は戦闘前に恐怖心と痛覚を消す為に、阿片を吸ってから米軍と戦ったみたいだよ。
だからそんな狂戦士を一発で倒す為に開発されたのがM1911ピストル(通称コルトガバメント)。
ベトナム戦争でもM16ライフルの弾が十数発命中しても突撃してきたベトコンがいたそうだけど、
それも阿片のせいなのかもしれん。









848 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/06/30(土) 19:18:43.65 ID:pL6kuC5u0

先輩の話。

一人で山を歩いていると突然、気分がどうしようもなく高揚したのだという。
先輩はまず自分の歩くペースを乱さない人で、常に冷静な性格だったのだが、
何故かその時は、全力で何処までも走りたくなったのだそうだ。
「わはははははは!」と高笑いを響かせながら、普段は出さないような凄いスピードで山道を駆け出した。
自分でも不思議なことに、とても身体が軽く、急勾配の上り坂でもまったく
駆ける速度が落ちない。そのままどんどんと、自分でも信じられない速度にまで加速していく。
堪らない快感だったという。
岩場を飛ぶように駆け上った時には、まるで天狗にでもなった気がした。
岩に取り付いていた登山者が、目を丸くして先輩を見ていた。

848 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/06/30(土) 19:18:43.65 ID:pL6kuC5u0

そんな感じで全力疾走しているうち、意識を失ったらしい。
電球が切れるように、パッと意識が途切れたそうだ。
気が付けば先輩は叢に倒れていて、誰かに介抱されていた。
「やぁ目が覚めたね。身体は大丈夫かい?」
身体の節々が痛かった。限界近い力で全力疾走したような感じ。



849 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/06/30(土) 19:22:38.89 ID:pL6kuC5u0

礼を述べながら話をすると、世話してくれていたその人は、岩場で追い越した登山者だったとわかった。
「驚いたよ、僕の頭の上をタッタッタって飛び越えていくんだから。どこかの修験者か山伏かと思ったよ」
そう彼に言われた先輩は、
「山を歩いていると、突然全力で走りたくなったんです。でも何故そんな気持ちになったのか、全然わからない。あんな飛ぶように走るのなんて、自分には絶対できない筈なんです」
そんなことを訴えた。
その人はニコリと笑って答えた。
「山に呑まれたね。天狗にでも憑かれたかな。身体に無理させているだろうし、しばらく休んでから下りるとしよう」

結局、下山するまで一緒に行動してもらったのだという。
何度も礼を述べ、ペコペコと頭を下げてから別れたそうだ。

「迷惑掛けちゃったけど、本当に助かったよ。あれ以来、薬とか栄養剤とか、そちらの装備にも気を使うようになった。山に呑まれた後で目が覚めた時、傷だらけだったり疲労困憊だったりしたら大変だしな」
幸いにも先輩はその後、山に呑まれてはいないそうだ。









20 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2006/05/03(水) 03:12:56 ID:0RIA4a450
知り合いの話。

彼の祖父は焼き場守をしていた。
別に志願した訳でなく、単に焼き場が実家の持ち山にあったからなのだと。
祖父が言うには、そこで人以外の物を焼いたことが、一度だけあるのだという。

ある時、中年の夫婦が「焼いてほしい」と、その前年に死んだ一人娘の振り袖を持ち込んだ。
遠くに引っ越すのだがある事情で持っては行けない、かと言って捨てるというのも気が引ける。
この村で焼いて供養したい、そう夫婦は言った。
綺麗な袖を燃してしまうのはちょっと抵抗があったが、断わる理由もないので引き受けたという。

異変が起こったのは、衣全体に火が回ってからだった。
赤い炎の間から、何本もの蒼白い手が伸び上がって宙を掻き毟りだしたのだ。
祖父は目を剥き慌てたが、夫婦はえらく落ち着いていた。
何か悟ったような、いや諦めたような目をしていたので、とても問い質すことは出来なかった。

伸び出た手は、あっという間に燃え尽きて灰となり、崩れて消えた。
夫婦は灰を少しばかり壺に詰め、礼を言って村を去ったという。

焼き場で実際に魂消たっていうのは、後にも先にもあれだけだったよ。
そうお祖父さんは話してくれたそうだ。






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