【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

実話怪談・都市伝説・未解決の闇・古今東西の洒落にならない怖い話。ネットの闇に埋もれた禁忌の話を日々発信中!!

カテゴリ: 雷鳥一号




234 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2011/06/16(木) 19:20:34.94 ID:su66lpZA0
友人の話。

幼い頃、山中の実家へ遊びに行った時のこと。
祖父と一緒に庭で竹馬に挑戦していると、不意に背後で異音がした。

べしゃりっ

振り向いてみたが、何も黒土の上には確認できなかった。
気を取り直して竹馬に取り組み直したが、しばらくするとまた同じ音が聞こえた。
何度も聞こえると流石に無視出来なくなり、祖父に「変な音がする」と訴えた。

「ありゃよく熟れた柿が落ちる音だ。心配要らん。
 お前は聞いたことがないから知らんだろうが、儂には懐かしい音でな」

祖父はあっさりとそう答えた。


235 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2011/06/16(木) 19:21:52.64 ID:su66lpZA0
そして庭の一角を指し示す。

「ほら、あすこに切り株があるだろう。
 昔はでかい柿の木が生えていたんだ。
 虫や病でボロボロになったんでな、何年か前に切り倒したんだよ。
 でも何故かそれからも、柿の実が落ちる音だけは聞こえ続けてる。
 柿の季節でもないのに音がするところを見ると、柿も迷っているのかもな」

迷っているって?

「成仏できてないってことだ。
 耳がないから、ありがたい御経も届かんのかもしれん」

成人した今でも時々、べしゃりっという音を聞くと彼は言っていた。








452 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/06/13(木) 19:51:00.65 ID:zgn3WDW30
知り合いの話。

仕事で山に登った折、奇妙な物を見つけたのだという。
森の中にちょっとした広い場所があって、そこに綺麗な白壁でできた塀が三十メートルほども続いていた。
彼の背よりもかなり高く、その下半分は見事な海鼠壁で仕上がられており、
一目で手間が掛かっているとわかる代物だった。
「こんな山奥に住んでいる人がいるのかな?」
好奇心を抑えられず、塀に沿ってぐるりと回ってみた。
四辺を一周して、思わず唖然とする。
「おかしい。どこにも入り口や門がない。
 内部にはどこから出入りするというんだ?」
その時、塀の向こうでガサリと音がした。
誰かが乾いた下草を踏みしめたような音。
音が聞こえたのは一瞬で、すぐに元通り静かになる。


453 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/06/13(木) 19:52:05.48 ID:zgn3WDW30
突然、全身が寒気に襲われた。
息を殺しながら、塀に沿って移動してみる。
歩を合わせるように、ガサリガサリ続けざまに音がする。
彼が足を止めると、音もぴたりと止まる。
まるで何者かが塀を挟んで、彼の後をつけているかのように。
怖くなり、そこから逃げ出すことにした。
幸い、塀から離れる方へ歩く分には、音はついてこなかった。
振り向いて確認することは出来なかったそうだ。
振り向くと何かが塀を乗り越えてきそうな気がして。

無事に山を下りた時には、安堵のあまりへたり込んでしまったという。
以来彼は、山の中でおかしい物を見ても、自分からは近よらないようになったのだそうだ。







154: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 投稿日:2013/05/21(火) 20:29:49.74 ID:DKYMwAuh0
知り合いの話。 

丑の刻参りがあるという神社へ、友達三人で肝試しに行った。 
山奥にあるその社の境内へ車を乗り入れたところ、まるで釘を打っているかのような 
コーン、コーンという音が本当に聞こえてきた。 
恐る恐る音のする方を見てみると、ぼんやりとした灯りが暗い林の中で揺れている。 

「どうする、近くに寄ってみるか?」 
「止めとこうよ、これ洒落じゃ済まないよ!?」 
そんな押し問答をしていると、コーンという音がピタリと止んだ。 

皆、慌てて車に乗り込むと、その場から逃げ出したのだという。 

その数日後、彼は激しい痛みに襲われた。
下腹部が猛烈に痛み、酷い血便が出て歩くことすらままならない。
病院へ担ぎ込まれ診察を受けると、仰天するようなことを言われた。
「大腸の途中に何か細長い尖った物が入っている」と。

すぐに手術を受けたのだが、取り出された物は、まだ真新しい釘だった。
全部で三本出てきたという。
「何処でこんな物を呑み込んだの?」と医者に問われたが、彼にそんな覚えはない。
ただ、理由はないが「……あの時の丑の刻参りの釘だ……」と感じたのだという。
話を聞いて見舞いに来た二人の友人も、青い顔をして同意したそうだ。

「あの類いって、人に見られたらいけないんだっけか?
 でも三人も居たっていうのに、何で俺だけ呪われたんだろうなぁ……」
冴えない顔で彼はそうボヤいていた。

156: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/05/21(火) 21:18:36.02 ID:4h4oOjpHP
>>154
ガキの頃、塾帰りに通り道の神社の敷地内の林の中で何か白い物が見えた。
友達3人と恐る恐る近づいてみると白装束の女性が藁人形を大木に打ち付けていたのが見えたんだ。
その瞬間その女性が振り返り、何かを叫びながらこちらに向かってきたので
必死こいて自転車で逃げたことがある。

後から知ったがあの類は見られちゃいけないそうだね
今でも友人と集まるとその話が出るが、まじビビッタよw
と同時に今思うとその人がちょっと気の毒に思える。
色んな意味で

159: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/05/21(火) 22:14:26.56 ID:raeUMSMvO
雷鳥さん、乙です

>>154
異物吐き出すって西洋のオカ話みたいですね
エクソシストとか
日本のオカ話だとなぜか記憶にないですよね
なんでかな?

192: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/05/22(水) 21:11:37.59 ID:oc0KoJtZ0
>>159
昔、フィリピンの心霊治療師っていうのがありましたな。
病気の人の躯をこすっていると、その体内から錆びた釘とかが出てくるの。
釘が抜けた人は凄く元気になるってな話だったけどね。

・・・抜かれた釘はどこへ持って行かれてどうなったんだろうと、少し気になる。

165: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/05/22(水) 07:13:38.40 ID:0adsArQH0
>>154
そんな能力あるならいちいち丑の刻参りとかせんでも
相手不幸に出来そうなのに…

168: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/05/22(水) 08:49:46.76 ID:vcMiWEHYO
>>154
釘が三本……
友人の分まで引き受けちゃってますなー
何でだろう?

191: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/05/22(水) 21:05:36.29 ID:oc0KoJtZ0
>>168
本当かどうかは知らぬが、呪いを受けやすい体質ってのがあるらしい。
個人的には、プラシーボ効果が出やすい人と同様なのかなぁ、と思ってる。




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33 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/25(火) 19:22:53.75 ID:Q0XaX8RP0

後輩の話。

 

 

33 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/25(火) 19:22:53.75 ID:Q0XaX8RP0

彼が通っていた小学校の裏山には、小さいが深い沼があるのだという。
その沼辺に、両手で抱える程もある石が落ちていた。
石塊にも個性というものがあるのか、
一目見ただけで「普通の石とどこか違う」と感じられるような、変わった石なのだそう。

 

 

33 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/25(火) 19:22:53.75 ID:Q0XaX8RP0

この石、大きさの割に意外と軽く、子供でも持ち上げることが出来る。
これを沼に投げ込むと、不思議なことに、翌日には元の場所に戻っているという。
一体誰が夜の間に沼から引き上げて戻しているのか、まったく不明である。

 

この石を足蹴にすると、決まって数日以内に足を酷く怪我するのだとか。
だから彼らは、この石に触ることなく避けていたという。

 

子供たちから『不思議石』と呼ばれたこの石は、今もその沼辺に転がっているそうだ。




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353: 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM @\(^o^)/ 2015/08/13(木) 18:56:52.10 ID:thzDu8yL0.net
友人の話。

山奥の渓流に、鮎釣りに出掛けた時のこと。
その河原に鮎師の姿は無かったが、その代わりに色々な道具が置いてあった。

無造作に投げ出された、高価そうな鮎竿。
天然木で作られた綺麗なタモと、水に半分浸けられた囮缶。
使い込まれた風なクーラーボックスとザック、仕掛けを作るための道具箱等。

鮎竿は組まれた状態で、仕掛けもちゃんと付けてある。
ただ、仕掛けの囮鮎が死んでいた。
誰かが釣りの途中で場を外したのだろうかと思ったが、どうも様子がおかしい。
近くに寄るとタモの上に、これまた死んだ鮎が載っていることに気がついた。

まるで、釣り上げた鮎を針から外した直後に、当の釣り人がパッと宙に消えた。
……そんな情景を想像してしまった。

「誰かいませんか?」
そう呼ばわりながら、囮缶を開けてみた。

白い腹を上にした囮鮎が何匹か、その中に浮いている。
やはりすべての鮎が死んでいた。



354: 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM @\(^o^)/ 2015/08/13(木) 18:57:40.27 ID:thzDu8yL0.net
(続き)

どうにも不気味だったので、別のポイントで釣ることにしてそこを離れた。
帰り際にも覗いてみたが、道具は彼が見た状態のままで捨て置かれていた。
釣り人が帰ってくる気配はない。

一応漁協に報せておいたが、今に至るも詳細は不明のままである。


「事故じゃなかったのならいいんだけど、ちょっと気持ち悪いよね」
そんな事を言いながら、彼は相も変わらずそこの沢に通っているそうだ。

373: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/08/14(金) 04:08:07.16 ID:azZ2ZkA/0.net
>>353
やはり山道に仕掛けごとのテンカラ竿が落ちていたことがある。
恐らく渓流釣りの最中に酷い雷雨に会ってカーボン竿を投げ出して帰ったんじゃないかと、
釣り竿を持って退却するのは避雷針を持って歩くみたいなものだから。
テンカラ竿一式、有り難く頂戴しました。

@、【-_-;】顔文字小僧が通ります。




374: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/08/14(金) 07:01:19.88 ID:KnBuqcyW0.net
>>373

おいw



376: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/08/14(金) 15:13:04.96 ID:tSS871po0.net
>>373
その竿を所有した者は次々と…




377: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/08/15(土) 07:34:27.80 ID:KmsZCPFG0.net
>>376
処分したつもりもないのにどこかにいっちゃった。

Θ、【-_-;】~ 顔文字小僧が通ります。


今頃、誰かが使ってんのかな?
人から人へと渡り歩く呪いのテンカラ竿ということで




378: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/08/15(土) 11:17:02.11 ID:DG1+bxxt0.net
>>377

竿がどっか行ったんじゃなくて、あなたの方が違う世界に…





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169 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/31(月) 21:18:37.47 ID:LnHHOmtx0

知り合いの話。

 

 

169 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/31(月) 21:18:37.47 ID:LnHHOmtx0

実家の持山に入った時のことだ。
うっかりと下りる筋を間違えたらしく、見覚えのない広場に出た。
刻は既に夕暮れで、「暗くなる前に知った道に戻らなければ」と焦っていた。
方角を確認し歩き出そうとすると、プンとした匂いが鼻に届いた。

 

 

169 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/12/31(月) 21:18:37.47 ID:LnHHOmtx0

彼は過去に大型犬を飼っていたそうだが、その獣臭によく似ていたという。
目を凝らすと、広場の奥まった藪中に小さな社があるのに気が付いた。
傷んだ社の前には、毛むくじゃらの何かが蹲っていた。
臭いが更にキツくなり、その後に唸り声が聞こえてきた。
何物か正体はわからないが、怒っている!?
次の瞬間、強い風が全身に吹き付けてきた。
フワリと身体が宙に浮き、そのままコロコロと地面の上を転がる羽目になる。
恐る恐る身を起こしてみると、そこは自分の見知った山道だったそうだ。

 

その後、何度かあの広場に行ってみようとしたが、未だ辿り着けていないという。





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117 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/06(火) 18:05:56.24 ID:uttupCTX0

友人の話。

 

彼がよく釣りに行く山中の池に、河童が出るのだという。
「一人で釣りしてる時に限って、背後から声が掛けられるんだ。『釣れないんだね』って、少し甲高い子供の声で。
『釣れないんだよ』って振り返ると、でもそこには誰もいないんだ」
常連の間では、この声の主は河童ということにされており、
その名も『釣れないんだね河童』などと呼ばれているのだそうだ。
「これに声掛けされると決まってボウズになるから、心底厭がられてる。
 釣り始めにいきなりやられたら、本当にダメージでかい。
 その日一日はもう、やってられないよ」
忌々しそうに言う彼を見て、いきなりやられたんだろうなぁと想像した私だった。

 

 

118 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/06(火) 18:07:39.50 ID:uttupCTX0

同級生の話。

 

アメリカに留学していた時分、現地で出来た友人に、色々な場所へ遊びに連れて行ってもらったそうだ。
ある山間に広がる湿地帯に行った時、おかしな注意をしつこくされたという。
「こっちから向こう、特に奥の山へは、絶対に近寄るんじゃないぞ」
目をやれば、特に木が密集しているわけでもなく、見通しも良くて迷いそうもない。
底無し沼でもあるのかと尋ねると、とても奇妙な答えが返ってきた。

 

 

118 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/06(火) 18:07:39.50 ID:uttupCTX0

「いや、ここの山間には半魚人が出るんだよ。
 目撃談によると、随分とズングリとした体型らしいが。
 別に人を襲ったりはせず、逆に人を見ると湿地の奥へ逃げていくらしいんだけど、
 こいつにうっかり触っちまうと、強烈な悪臭が付くっていうんだ。
 この臭いが洗っても取れないらしくて、それどころか、しばらくすると身体中から同じような悪臭が出るようになるんだとさ」
真剣な顔で続けて言う。
「まるで魚が腐ったような臭いで、他人どころか家族も耐えられず避けるようになる。
 その内、自分でも我慢できなくなって、大抵の者が自殺しちまうんだと。
 お前が臭くなったら、友人で居続けるのも大変だからな」
二人の友情のため、彼は湿地帯の奥へは絶対に近寄らなかったそうだ。

 



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 67 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/08/23(木) 18:45:22.67 ID:IBNyJ3+S0

知り合いの話。

 

盆で田舎に帰った折、家族で川遊びに出かけたのだという。
河原にシートを拡げており、年長者はそこで食事を摂ったり休んだりしていた。
小さな従姉妹の面倒を見るのは彼の役目だったらしい。

 

 

67 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/08/23(木) 18:45:22.67 ID:IBNyJ3+S0

水に浸かって遊び相手になっていると、突然、身体から力が抜けた。
全身がひどく疲れた感じになり、立っているのも辛いほどだ。
動けなくなる前に、従姉妹の手を引いて一緒に川から上がることにした。
シートまで辿り着くと、大きな息を吐いて倒れ込んだ。
家族が口々に「どうした、顔色が悪いぞ」と話し掛けてくる。
答えるのも億劫になっていると、従姉妹がこちらを見つめながら妙なことを言い出した。
「お兄ちゃん、なんでそんなお婆ちゃんを背負っているの?」
何でも、彼の背中に見覚えのない皺だらけの老婆がしがみついているのだと言う。
ギョッとして背後を確認したが、誰も背中には乗っていない。

 

 

68 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/08/23(木) 18:48:40.74 ID:IBNyJ3+S0

その時、祖父が彼に向かって思い切り塩を振りまいた。
途端に身体が軽くなり、あれだけあった疲労感が嘘のように消え去る。
同時に従姉妹が目を丸くして大声を上げた。
「お婆ちゃん、消えちゃった!?」
驚いて言葉も出ない彼に向かい、祖父はこう述べた。
「カワミサキに憑かれたんだろうよ。
 人に取り憑いて衰弱死させるっていう、いわゆる死霊みたいなものだ。
 お前ら、今日はもう水に入るんじゃないぞ」
仕方なく、遊びの続きは河原ですることにした。

 

その後は帰宅するまで誰もあの奇妙な疲労に襲われることはなく、無事に過ごせたのだそうだ。

 





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556 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/10/01(月) 19:38:22.12 ID:nCLUNxF/0

知り合いの話。

 

彼女は里山に囲まれた田園地帯に住んでいる。
幼い息子を幼稚園に車で送迎するのは、彼女の分担なのだそうだ。

 

ある日、農作業に手間取ってしまい、うっかりと迎えの時間を忘れていた。
気がついてから慌てて母屋へ戻り、車のキーを取って車庫に走る。
車を門から出したその時、当の息子がこちらへ歩いてくるのが見えた。
右手だけ宙に上げて嬉しそうにニコニコしながら、農道の上を進んでくる。
「えっ、まだ年少さんなのに一人で帰ってこれたの?」
驚いて我が子を見つめているうち、奇妙な事に気がついた。
息子の背後から夕暮れの太陽が差しかけて、地面の上に長い影を作っていた。
息子の影と、その横に寄り添うようなもう一つの大きな人影を。
まるで見えない誰かが息子の側に居るかのように。
思わず息を呑む。もしかして・・・。
息子が右手を空中に差し上げているのは、その誰かに手を引かれているのでは?
嬉しそうに口をパクパクさせているのは、その誰かと話を交わしているのでは?
我に返ると、指が白くなる程ハンドルを強く握りしめていた。

 

 

557 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/10/01(月) 19:41:53.51 ID:nCLUNxF/0

必死でドアを開けて、息子の名前を呼ぶ。
すると母親に気がついたものか、息子はこちらの方に駆けだした。
そのまま彼女に飛び付いてき、「ただいま!」と元気に叫んだ。
「お、お帰りなさい・・・えっと、一人で帰ってきたのかな?」
恐る恐るそう尋ねると、首をブンブンと横に振り、変なことを言う。
「違うよ!山の小父ちゃんに送ってきてもらったんだよ!」
「山の小父ちゃん?」
聞くところによると、彼の通っている幼稚園には、以前より不思議な小父ちゃんが現れるのだという。
不思議というのは、どうやら大人にはその姿が見えていないらしいのだ。
しかしこの小父ちゃん、一緒に遊んでくれたり、暴れる子が居ても優しく諭したりするので、
子供達には絶大な人気があるとのこと。
迎えの来ない子を時々送ってくれることもあると言い、今日は息子がその世話になったということなのだそうだ。
幼稚園が閉まる頃、小父ちゃんは別れの挨拶をしてから裏手の山に姿を消すので、
皆から『山の小父ちゃん』と呼ばれている――。
息子は嬉しそうにそう話してくれた。

 

息子を連れて家に入り、おやつを与えておいてから、園に電話をした。
不審者が息子を連れ回したかと考えたからだが、担当の先生は怪訝な声を上げる。
『あれ、○○君はさっき、奥さんが御自身で迎えに来られたじゃないですか。
 変なことを言わないで下さいよ、怖いなぁ』
と、笑われた。
血の気が引いたという。

 

 

558 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/10/01(月) 19:45:12.55 ID:nCLUNxF/0

夫が帰宅してから相談したところ、こう言われた。
「その小父ちゃんっていうのは、イマジナリー・コンパニオンって奴だと思うよ。
 確か、子供が空想で作り上げる、実在しない友達のことだったかな。
 集団心理とか何かで、皆が同じ空想を共有してるんじゃないか」
などとわかったようなことを言う。
「そんなことって有り得るの?」
信じられずに問い返したが、
「さぁ、それは正直わからないけど。
 でもあそこ、僕が中学生の頃からそんな噂があったんだぜ。
 子供の世話をする、子供にしか見えない何かが居るって。
 その噂を元に子供達が空想したのが、山の小父ちゃんなんじゃないかな。
 実際、喧嘩の仲裁をしてくれたり、一緒に遊んでくれたりするんだろ。
 肯定的に捉えても良いんじゃないかい。
 え、何?君の姿を写し取ったって?それは職員の勘違いだろうよ」
夫はそう言って泰然としていたという。
それ以上誰かに相談することはしなかったが、彼女は釈然としなかった。
だって彼女は、アレを見てしまったのだ。
息子の側に立つ、影だけを道に落とす何者かを。
それとも、知らぬ間にこの自分自身も、園児達が作り上げた空想の中に取り込まれてしまっているのだろうか。
いくら考えても答えは出なかった。

 

 

559 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/10/01(月) 19:48:29.61 ID:nCLUNxF/0

「それからどうしたの?」
ドキドキしながら私がそう聞くと、彼女は苦笑しながらこう答えた。
「難しいから、考えるの止めちゃったわ。
 誰にも真実なんてわからないし。
 実際これまで、あの園では、不審者絡みの問題は起こっていないしね。
 ただ、あれから送り迎えの時間だけは、絶対忘れなくなったわよ」

 

今でも息子さんは、元気にそこの幼稚園へ通っているということだ。







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586 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/03(金) 21:32:56 ID:ZVTfPAWb0

知り合いの話。

彼の祖父は、かつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。

586 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/03(金) 21:32:56 ID:ZVTfPAWb0

「女が出る山、ってのを聞いたことがある。
 そこに篭もると、夜中にでかい女が現れて、強引に何事かを約束させるんだと。
 でな、それを破っちまうと罰を当てるっていうんだ。
 そのでかい女が里の家まで押し掛けてきて、舌を千切り取っていくんだとか。
 実際そこの猟師にゃ、舌が短くて上手く喋れねえ爺さんが何人かいたよ。
 いや、本当に山女に舌獲られたのかどうかはわからねえけど」



586 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2009/07/03(金) 21:32:56 ID:ZVTfPAWb0

「しかし遠くの山じゃ、見つかると問答無用で追い掛けてきて、力尽くで舌を千切ってく女ってのもいたんだと。
 そこまでいくとまるで鬼だよなぁ。
 約束で見逃してくれただけ、あそこの山女は優しかったのかもしれねえ」

最後に皮肉っぽく付け足す。
「もっとも、元よりどうしても守れない類の約束だった・・・って話も聞いたがよ」





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