【閲覧注意】怪談の森【怖い話】

実話怪談・都市伝説・未解決の闇・古今東西の洒落にならない怖い話。ネットの闇に埋もれた禁忌の話を日々発信中!!

カテゴリ: 巣くうものシリーズ





1272 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:20:39 ID:8MunFEDQ0
本スレ208の128です。
“巣くうものシリーズ”で纏めてもらってるので、
前と同じく説明は省略。

また時間ができて、少し前にあった話をまとめたんで、気晴らしに投下。
去年の秋の話です。
H、コンパクトの件で懲りたのかと思ったら、懲りてない。
相変わらず『みえる』のを利用してちょいちょい稼いでるようで、
その奴の『小遣い稼ぎ』に関わる話。

いつもHはいらんことする、と奴の絡む話には常に不愉快
(でも他に“みえるひと”の知人がいないため縁切り困難)
のAが、文句より興味で根掘り葉掘り聞いてた、怖いよりは
珍しい(らしい)事例です。

コンパクトの件を投稿してから、何ヶ月かしたころ。
Hから連絡がきて、飲みに行くことになった。
んで呼び出された先が、変な場所だった。
少し距離のある市で、街外れに森っぽい林があって、その中。
おいおい、と思いつつ指示された通り砂利を敷いた道に入ったら、
何か寂れた石碑みたいなもんが奥にあった。
石碑の横で待ってたHに「おいこら」と言うと、奴は
「大丈夫、大丈夫。居るけど、しょぼい奴だから♪」
とかほざいて、カッカッカと笑った。


1273 :本スレ208の128:2011/06/16(木) 10:21:47 ID:8MunFEDQ0
「そーか。んじゃ、とっとと出て飲みに行こうぜ」
と俺が言ったとこで、Hの携帯が鳴って奴が出た。
「はーい♪J(俺。以後、俺の略称はJとします)来たよ。あ、ここ」
Hが携帯を切り、砂利道を歩いてきたBに手を上げた。
「やっほー♪Jくーん」
手を上げ返しながら歩いてくるBの姿。手にはコンビニ袋。
「お疲れー。Bさん、コンビニ行くとき迷わなかった?」
「少しだけ。横道間違えちゃったみたいでした、ここ戻るときも」
答えたBが、コンビニ袋の中身――雑誌とかお茶ペットとかガムとか、
何か細々したものを、下げてたバッグに詰め替え始める。

その隙に俺がHを見ると、小声でコソコソ説明してくれた。
「頼まれごとで、話の段階じゃよくみえなくてさあ。最悪のケース想定して
Bさん呼んどいた。勇み足だったけどねー」
そう言や、会う日時と場所を指定したのはHだった。
何も知らない既婚女性のBを一対一で呼び出せる仲じゃないから、
俺を口実に使いやがったらしい(Cは嫌がったんだろう。怨霊塊憑男Iの
件以来、Bの話はしたくないっぽい様子だから)。

呆れた俺に構わず、Hは続けました。
「JとBさん、仲悪くはないんだよね?今日は一緒に飲みでオッケー?
一軒目でBさん帰して次行ってもいーよ。一軒目、俺おごるよ」
「や、B一緒で全然構わないし。3人でいんじゃね?」
で、そのまま飲む店の相談してたら、またHの携帯が鳴った。
携帯を見たHは、俺とBに向かって言った。
「悪い。ちょい待ってて。少しかかるかもしんないけど」
Bは「J君いるし、大丈夫~。お喋りしてます~」と能天気に答え、
Hは俺だけにこそっと、
「この辺、Bさんいたら寄っても来れない連中ばっかだからさあ。
全く心配しなくていーよ♪」
と言い、夕日の射し始めた木立の間に消えてった。


1274 :本スレ208の128:2011/06/16(木) 10:22:35 ID:8MunFEDQ0
そいでBとダラダラ学生時代のこととか喋ってたら、ものの数分で、
「おい、J(俺)!!」ってHの声がした。
何か妙にあせった声だった。
「……?おう。何だ、早いじゃん」
「あー。ちょい、こっちきて!」
ややあって、道じゃなく横の林の中から現れたHは、頭に蜘蛛の巣を
引っ掛けて肩に葉っぱつけて、変に青ざめていた。
「………?H、何かあったのか」
俺が尋ね、Bも「Hさん~?」と不思議そうに聞いたが、
Hは答えもせずに凄まじい勢いで近づいてきた。
そして俺の腕をがっしり掴んで、結構な力で引っ張りつつ
「来いよ」と言った。
何か変だ、と思って、俺は何となく腕を引く力に抵抗して、
引っ張り合うようになったところへBが割って入るように
近寄って「Hさん、何したんですか?」と言った。

そしたら。ぶったまげたことに、凄い勢いで向き直ったHが
ぱっと俺を放したかと思うと、Bの胸倉を掴んで、ぶん殴った。
バキッと、グーで、女の顔面を。
悲鳴を上げて倒れるB。
俺は仰天して、動くことも出来ずにただHの形相を見ていた。

さらにBを引き起こして2発目を入れようとするHを、
やっと動いた俺が引き止めて手を放させた。
Bは、よろけながら立ち上がり、止める間もなく
「キャ―――――!助けて――――――――!」
みたいに叫びながら、林の中に走りこんで逃げだした。
慌てて追おうとした俺の肩を掴んだHを見て、表情に正直びびった。
これマジでHか?と思った俺の耳に、Aの声が刺さった。
『J君?Hさん?大丈夫――――――?』
「あ―――――――大丈夫!今、撃退したから!」
Hが張り詰めたような大声で返す。
「……ほい、J」
やっと少し表情の和らいだHは、携帯を俺の耳に突きつけた。
『J君?もう居ない?Bのニセモノ』
「……え?」
思わず聞き返した俺に、Aはざらっと説明してくれた。
……さっきまで俺と居て、Hを待ちながら俺と大学時代の話とかしてて、
Hに殴られて走って逃げたBは、Bじゃない、と。


1275 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:23:31 ID:8MunFEDQ0
完全に思考の停止した俺をHが引っ張って、林から普通の道路に出て
しばらく歩いて、コンビニを見つけて近づいた。
もう薄暗くなった駐車場に、Bが居て。携帯をいじってました。
「あ、J君!Hさん!」
元気よく声を上げたBの顔には、殴られた痕など全くなく。
「待ち合せ場所に戻ろうとして道に迷って、コンビニ戻っちゃってー。
メール出しても返事ないから、電波悪いのかなって焦ってたんですよ」
「……うん、電波悪かったしJ来たし、動いちゃった。メールは来てないなあ」
辛うじて笑ってみせたHと、まだ思考停止してた俺の携帯が、一緒に鳴った。

『Bです。すみません!コンビニには着いたけど、そこ戻る道が解らなく
なっちゃいました。コンビニで待ってるので、J君着いたらコンビニ来て
くれませんか?』

着信したメールを読んでやっと頭が動き始め、混乱の渦に巻き込まれた
俺をよそに、HとBはまた飲みの店を相談してた。
決めるとさっさと電話して予約した2人に引きずられ、
とりあえず飲んで喋り、一段落したら早めに店を出て
『主婦だしお子さん居るから、そろそろお開きで』
とHがBを言いくるめて解散し、俺は半ば混乱したまま帰宅しました。


1276 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:24:29 ID:8MunFEDQ0
数日後。Hと連絡を取りA交えて3人で会って、やっと俺は事情説明を
受けることが出来ました。
『分身というか、自分の姿を見る人が出る場所。祟り等がないか調べてくれ』
との依頼を受け、見た人と直接会ったHが、敵の気配や強さが何故か
読めないことに心配になり保険にBを呼ぶことを考え、口実に俺との
飲みをセッティングしたのは、前述の通りです。

とりあえず気配を探りに1人で現地入りしたHは、相手の気配が
予想以上にしょぼくて貧相なことに拍子抜けしたそうです。
確かに霊的なものが居る、だけど年代物の割りに本当にしょぼい。
相談者に会っても読めなかったのは、しょぼすぎて気配が弱かった
からだ、と納得したほどで。
分身とかを“みせる”以上のことができそうには全く思えないから
気にする必要なし。それが当初のHの結論でした。
「いやね、本っ当に貧相だったのよ。来て損したと思うくらい」と。

で、Bが待ち合わせ場所の石碑に来て、二人でJ(俺)を待ったが、
最悪の事態を想定して(ヤバいモノが居たら、うまいことBのアレを
使ってB当人には気づかせずに片付けよう、と算段してたらしい。
Hのこういうとこが、Aの神経に障るようですが……)、待ち合せ時間を
ずらしてあったので、暇すぎて間が持たない。
Bがガムを欲しいと言ったので、コンビニへの道を教えて行かせた。
1人残って、漂えども姿はない貧相な気配をお遊び程度に探ってるうち、
俺到着。つづいてB帰還。
「その時はね、本当に変だとは思わなかったんだよ。アレもいたし」


1277 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:25:15 ID:8MunFEDQ0
HもAも、みえるひとは皆、人をみるときには外見だけじゃなく
自然に気配や憑いてるモノもみるのだそうです。
Bは全く普通に間違いなくBの気配を持っていて、“アレ”も居た。
何も疑う要素はなかった。
ただ一つ違和感があったのは、ちゃんとみえる“アレ”の気配が
変に弱いというか薄いこと。
気配の質は同じだから、Bの中に引っ込むと気配が弱まるのか、と解釈して
スルーしたのだが、仕事電話で石碑を離れてからもやはり気になる。
何だろう、あの、みえるのに弱いってか、薄いってかペラいってか、
と考え続けててふっと頭に浮かんだ言葉。
『ハリボテみたいな気配なんだ』

いや、引っ込むと外側が抜け殻っぽく残るのかも、と考えても
違和感が打ち消せない。
形だけ残して中身が引っ込むとか、何か凄く不自然だ。
そういう偽装とかハッタリとかと一番無縁な、生の力がむき出しで
いるような存在が、Bのアレなのに。

どんどん不審が増してきたので電話を中断して引き返し、
こそっとBの写メを撮って、Aに送って聞いてみたそうです。
すぐにAから返信があり『Bのアレじゃない。絶対違う』と断言。
アレは引っ込むと形がみえなくなる。その時も気配は残り香みたいに
Bを包んでいる。弱くなんかならない、と。
その返事を受け取ったHは、瞬時に結論に到達したそうです。
アレが偽物で背負ってるBが本物ってのは、絶対に、ない。
有り得ない。どんなにそっくりでも、Bごと偽物なんだ、と。

……その辺の理屈は、正直俺の理解できない点もありましたが。
とにかく“偽物のアレを背負った普段通りのB”は、みえるひと
視点では有り得ないようです。


1278 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:26:28 ID:8MunFEDQ0
なお、Hを焦らせAにも驚きだと言われた事実。
それは、石碑に居たモノが気配や憑き物を模写したことでした。
2人の言では、他人の声や姿を真似るモノはワリといる。
そして人間の姿を模した程度のものは、本人の気配とか憑依してる
霊とかを写さないので、幻覚でも化けてても、みえるひとには
疑問の余地なく解るのだそうです。
なのに今回のモノは、本人の気配やオーラ(的なもの)どころか、
背後の霊の気配まで含めてコピーしようとしたわけです。
これは本当に、みるのも聞くのも2人とも初のケースだそうな。

「Bさんのアレも特殊レアものだし、さすがにコピりきれなかったん
だろーけど。それでも、あの精度だよ?ふつーの人なら、守護霊まで
完全にコピーできる可能性が高いよ」
「Hさんが騙されたくらいだもんね…何だろ?ソレ、弱いってのも
フリじゃかったんですか?」
Aの質問にHが身振り手振り交えて説明した限りでは、Aの見解も
「それは確かに。取るに足らないレベルですよね」
とのことだった。

そのしょぼい貧相な気配がBを模して何をしたかったのかも、謎です。
あの時Hは俺が狙われたのかと慌てたそうですが、冷静に返ってみると、
生身の人間1人をどうこうできる程の力はなかったようだと。

そして今となっては、調査もできない状態だったりする……と言うのは、
あの日、Hに全力でぶん殴られたモノに何があったのか、あれ以降、
その貧相な気配の持ち主は居なくなってしまったからです。


1279 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:27:43 ID:8MunFEDQ0
後日、石碑を訪れたH(with 俺とA)は「居なくなっちゃった」と
苦笑しながら言いました。
Aも同意したし、その頼まれ事は、どうやらこれで解決ってことに
なるらしい。
パニックでフルスロットル状態のHに殴られて、消えたか逃げたか
したんじゃないか、とはAの言です。

また、Hの突然の暴行に仰天した以外は特に体感がなかったと
思った俺だが、後で思い出すと、ひとつだけ確かに変なことがあった。
石碑の横でB(だと思ってた何か)とひとしきり喋った記憶があるのに、
何を話したか全く思い出せないんだ。
『大学の頃の話をした』と言うような曖昧な記憶だけ残ってて、
何年生の時のこと、とかどのイベントの話、とかが全く解らない。
飲み屋で本物のBが喋ってたことは、俺が上の空気味だったにも
関わらず、しっかり覚えてるのに。

HとAに話すと、さらに難しい顔で「ってことは、幻覚系じゃないよな」
「変身で、Hさん騙すほどそっくり?うーん……」と、
二人して首を傾げていました。
長いわりに結局オチなしですが、以上です。









834 :本スレ208の128:2010/08/05(木) 01:29:57 ID:O03Tu5yY0
……すみません。
投稿しようとして、間違えてスレ立てしてしまいました……可能ならば
管理人様に削除して頂きたいのですが、どうしたらいいでしょうか?
ご教示いただければ従います。

で、以下に改めて投下します。
本スレ208の128です。
“巣くうものシリーズ”で纏めてもらったので、説明は省略。
仕事が多忙で2ちゃんから遠ざかってたが、時間できたんで投下。
今年初めのことだから、もう結構前のことです。
前回書いた怨霊のカタマリ憑き男Iの件で知り合った、
俺の人生2人目の「おそらく本当にみえるひと」Hがらみの事件だ。

BがAに連絡して、会おうと言ったそうで。
思えば、学生時代からAはBを(というかBについてるモノを)
避け気味だったが、BはAを気に入ってたようだった。
去年から何だかんだでAがBと関わってるから、このまま友達付き合いを
復活したい(現在進行形)んじゃないかと思う。


Aは断る理由もなく、先の件で引け目があったのでOKしたものの、
Bと2人きりはどうしても気が進まず、俺を呼び出した次第だ。
引け目とは、怨霊塊憑男Iの家に熟睡中のBが連れ込まれた段階で
反対しなかったことだそうだ。
A曰く、前回は本当にとんでもなかったらしい。
「井戸の時は逃げたら済んだけど、あの時はHさんが逃げ道を塞いでたから……
ドアが揺れ始めてからずっと、止めなきゃいけなかったんじゃないかって
思って、もしBのアレが負けたらBはどうなるの?って凄く怖かった」と。

当日、Bと待ち合わせ場所で会った時、すでにAが微妙な顔してた。
ファミレスに入ると、Bが「コレ見て♪」と鞄から何か出した。
コンパクト?ってのか?丸い平たい2つ折りで、内側は両面が鏡の奴。
何か古そうな奴。金属っぽい質感で、凄く古っぽい感じ。
横のAは、また表情が固まってる。
「アンティークなんだよー。この前ほら、肝試しなのに現地到着前に私が
寝ちゃったでしょ?Aと俺君が旦那に連絡してくれて」
Bは、あの後Cの呼び出しで“肝試しスポットを教えてくれた人”として、
Hに会ったそうだった。
「Hさん、おかしな場所に行かせたせいで倒れたんじゃないかって
謝ってくれてね、お詫びにってコレくれたの♪
結構よくて気に入ってるんだけど、安いものじゃないみたいなんだよね。
お返しにお菓子でも送ろうかと思ってさー」

835 :本スレ208の128:2010/08/05(木) 01:30:53 ID:O03Tu5yY0
適当に喋ってBを返した後、Aが即効でHに連絡して、数日後に会った。
現れたHは、俺らがBに会ったと聞いた段階で何やら察してたようだった。
Aが「何考えてんですか!」と怒鳴ると、Hはフフンと鼻で笑って言った。
「いいアイディアだと思わない?散らばらないよ、あれ」
……呪いの部屋と同じように呪いのグッズも現実に存在することを、
改めて知らされました。
いや、指輪の一件で既に判っていたようにも思うが、古物やリサイクル品に
稀にでもその類のものがあると思うとやはり怖い。

件のコンパクト、確かにモノは良いがHは一銭も払ってないそうです。
むしろ金をやるから黙って引き取ってくれと泣かれた代物だと。
前回の話の怨霊塊憑き男IのためにHが情報収集してる間、
Hが「みえるひと」だという情報も、広く垂れ流しだったそうで、
お払いしてくれと妙なものを持ち込んでくる奴は割りと居たと。
Hは、何も憑いてない場合はそう教えてやり、たまに出てくるホンモノに
ついては小遣い稼ぎのネタにしていたと言ってました。
金目の物で自力で片付くものは引き取り(そして片付けて売り)、
奉納で済むものは処理方法を助言したりして、ポツポツ稼いでたのだそうな。

「もちろん命は惜しいから、手に負えないのはムリだっつって断ったよ。
あの鏡はね、間違えた。鏡から離れないんだから最悪本体ごとおっぽり出せば
済むわけで、リスクも小さいと思ったんだけどね。甘かったねー。
だからBさんに頼んじゃった」
Hは、からからと笑って言った。
Hに聞いたところでは、そのコンパクト?は持ち主の不在を許さないのだとか。
捨てようとすると邪魔が入って、どうしても捨てられなかったそうです。
憑いてるモノはHの手に余るから長く持ってたくないし、かと言って他人に
譲るのも良心が痛むので、持て余してた一品だと。
「本体から他所にはいけない奴だし、Bさんのアレと勝負できるレベルじゃない
から問題なし。Bさん、寝なかったっしょ?」
Bが例のコンパクトをしばらく愛用してくれたら擦り切れて掠れて
消え去ってくれるだろう、と言うのがHの言い分でした。

で、実はここまでが前フリです。

836 :本スレ208の128:2010/08/05(木) 01:32:07 ID:O03Tu5yY0
再度俺にAから連絡が来たのが、確か5月下旬。
……B、コンパクトを手放してしまったと。
Hにも連絡したら、あの飄々としたHがあわくってたそうです。
俺も巻き込まれで付き合い、3人で次の所有者を訪ねました。

AがBに聞いたところだと、友人(学生時代のではない、俺達とは面識なし)に
見せたら、凄く良い品だと言われ羨ましがられ、ちょっとだけ貸して欲しいと
言うから貸したら返してくれない、と。
「携帯に連絡してもメールしても返事がないの」
と言った時のAの表情を誤解したようで
「貰い物なのに申し訳ない」とBは凹んでいたそうです。

……Aが苦労してBから聞きだした名前その他の情報を頼りに
俺達がB友人宅を探し当てた時、B友人は離婚前提の別居だとかで、
家には居ませんでした。
ご主人だけいて、俺達の目的が奥さんに貸したコンパクトだと言うと、
出てきて暗い顔で言葉少なくモノを渡してくれました。
そのとき、両足首に包帯を巻いていた彼の右袖口からちらりと、
手首より少しだけ上辺りに何か見えました。

モノを引き取りB友人宅を辞して、俺はAとHに確認しました。
…見間違いじゃなかったです。ヒトの歯型だった、と2人とも言いました。
その後の2人の会話は、以下の通り。
「奥さんの歯型だよね、アレ」
「だろうね。……やっちゃったねえ」
さすがのHが、真っ青に青ざめていました。
「Hさんのせいだよ」
「うん、俺のせい。……呪いのコンパクトだよって言っといたから、
Bさん離さないと思ってた」
「勝手なこと言わないで下さい。大体、高価なものなら泥棒にあうこと
だって考えられるでしょ。何でそんないい加減なことするんですか」
Aが物凄く刺々しい口調で言ってHが黙り込み、気まずい気分で
俺らはHと別れました。

837 :本スレ208の128:2010/08/05(木) 01:33:22 ID:O03Tu5yY0
例のコンパクトは、Hが持ち帰りました。
もっともA曰く、もうコンパクトには何もないそうでした。
Bが愛用していた数ヶ月で削り取られ磨り減り続けたモノの、
最後っ屁と言うか断末魔と言うか、そういうものをB友人は
受けてしまったのだと思う、と。

その後、俺が6月にHと飲んだとき(Iの件以降、何となく付き合いしてる)に
聞いたところでは、まっさらになった例のコンパクトを売り払った金に
色をつけて、例のB友人である女性に送金したそうです。
送金先は自腹で調べたそうで、いつも能天気に見えるコイツでもあの一件は
こたえたんだな、と思いました。

また最後になりますが、そのコンパクトに憑いてたものの正体について。
Bのコンパクト紛失以前、AがHを呼び出した際に少し聞きました。
……俺にはよく判らなかった話ですが、Hが“みた”ところでは、
『4つ足の哺乳類に昆虫の羽根がある』生き物がしがみ付いてたとか。
Aには姿は見えなかったが(能力の差か、Bが居たことによる影響かは
解らないと)、ぶんぶんと背筋の寒い羽音が絡まりついてたと。

その中では1人だけみえない俺が、
「哺乳類に虫の羽って何?異次元の生き物とか?」
と聞いたら、AとHがまるで狙ったようなタイミングでバッと
目をそらしたのが印象的でした。
Aは黙ってましたが、Hはハハハとわざとらしく笑い、
「……人間が、恨みとか呪いだけで精神のカタチまで捻じ曲げて
あんなモノになれるってのが怖いよね。本当に」と言いました。
正直、俺はグロいものを見る力が無くてよかったです。

曖昧な部分が多いですが、以上です。








465 :本スレ208の128:2009/10/05(月) 22:53:59 ID:XpTpgJW.0
スレ208の128です。
誘導されたんで、ここに。

洒落コワ本スレで書いた女友達Bの件について、一応もう一度説明を書きます。
・「みえるひと」な女友達Aの言では、Bの身体を出入りしている何か
 普通の霊と違うものがいる(寄生虫?居候?みたいな状態らしい)。
・B本人は気づいてないが、霊的なものは大抵それを避けるから、Bは心霊体験できない。
・とりあえず当時のAが知る限り、ソレはBを守っていた。
・でもAが感じる気配では、とても善意の守護ではない。っていうか悪い感じらしい。
・強力な霊とBのナニかが戦うときにはB当人は爆睡するっぽい←Aの推測

……8月に物凄いことがあったんで、纏めました。
以下、フェイク込みなんで辻褄が怪しいところもありますが、どうぞ。

最初の井戸の話のときに書いた大学時代の仲間内の男子C、こいつから連絡があった。
Bが最近、時間が出来たのか懐かしくなったのか知らんが、
昔の友人にちょこちょこ連絡しててCも電話で話したそうだった。

……んで。
Bと話して昔の井戸の一件を思い出して、職場でネタにして喋ったそうです。
そしたら職場の女の子に呼び出され、その子の知人の男(20代後半、俺らと同年代)に
会ったと。そいつの用件を纏めると、
「ヤバいものに憑かれてる知人が居る、坊さんも神主も霊能者もダメだった、
そのBさんの力を借りたい。連絡を取って欲しい、詳しく教えて欲しい」
Cは井戸の一件しか知らない、つまりBの「ソレ」に守られた記憶しかないので、
気軽に受けあい、ついでに他にも良く知ってる奴が居ると俺とAを推薦したそうです。

俺とAは話し合って、二人つれだってCとその男(Hとします)に会った。
指輪の件、白い着物の件、B宅の件を一通り説明し、BについてるものはB当人にも
他の人間にも制御できず、また悪霊や呪いの類は「跳ね返す」だけで祓ってくれない、
周囲に被害が出るからやめておけと告げた。
どうやらHも「みえるひと」らしく、AがB(幼少時 with白い着物)の写真を見せたら、
即座にハッキリと表情が固まった。
「………凄いね、これ。この子マジ生きてるの?今も?こっちのナニ、山神様とか?
こんなんに狙われても大丈夫なワケ?これなら、本気でいけるかも」
Hは本気になったようで、俺らがやめろと言うのにはとりあわず、
しきりにBについてる「アレ」について尋ねてきました。
Aは躊躇いつつも、他の「みえるひと」の意見を聞いてみたかったようで、
さらにざっと説明をしていた。
みえない俺には良く判らん感覚的な言葉が多く、
「硬さは?こう、バキンていきそうな」
「そうじゃないし、寒いとかスレてる(?ずれてる?)とかもなくて。
ただこう、ぞわっとするだけで、そこにあるのに何で?みたいな変な印象の」
「え、本当に?じゃあザリザリ擦ってるみたいな感じはある?」
「それもないです。するんとして、侵食もしないしできないし」
こんな感じの意味不明なやり取りの末に、Hは
「……俺も全く見当がつかない」と首を捻っていました。
その後はもう一度、「本当に止めた方がいい」と俺とAから念押ししてお開きにしました。

466 :本スレ208の128:2009/10/05(月) 22:55:22 ID:XpTpgJW.0
……数日後の土曜日に、Aから電話が来ました。
BがこれからCと会うから来ないか、と言って来たそうです。
『出る』家があるから、良かったらAと俺にも声をかけて来いとCに言われて
Aに電話をよこしたと。
たまげて家を出、Aと合流してBに指定された待ち合わせ場所に行くと、
そこにはHが車で待っていました。
Hはニヤニヤしながら、
「悪いね。BとCは後から来るから、乗ってくれよ」
といい、車中で説明をしました。
……こいつ、Cに頼んでBに連絡とって約束したそうです。
「知り合いの家が“出る”から来ない?って行ったら2つ返事だった。いいご主人だね、
 『昔の友達と肝試し?いいよ、羽を伸ばして来い』って子供の面倒見てくれてるって。
あんまり時間ないから急がないと」

Hの目的地は、高級住宅街の塀に囲まれたでかい豪邸でしたが、車が止まった時には
俺の横のAは硬直して真っ青でした。
「悪いね。大丈夫だよ、俺ら部外者だし、出入りしても手ェ出さなければね」
Hに促されてしぶしぶ降りたAは、その豪邸を見上げて、引きつった顔でHを
みました。
「……本気で?」
「まあね。……ここんちの奥さんが、俺の母親の幼馴染。息子が完全に
イカれちゃってんだよ」
「何いってんの?その人が助かったって、周り中に散って広がるだけじゃ」
「俺も考えたし。……出られないところに押し込めてやりあってもらえばいいんだろ?
 勝敗つくまで、徹底的にさ」
2人が言い合ってる間にドアが開き、中から中年のおばさんが出てきて、
俺らを招き入れました。

……どうぞ、と通された部屋に居る男を見て、思わず硬直しました。
壁向いて立った横顔は白目むいて天井見上げて、唇の端が少しだけ上がって
ニヤついてるみたいで、どっか壊れたような形相でブツブツブツブツ何か呟き続けてて、
上手く言えないけど、その目つきが本気で怖い。
実はコレがウチに出る悪霊です、って言われたら信じたと思う。
俺もドン引きしたけど、Aはもう真っ青でした。
「…… もとはどこに?」
Aが聞くと、Hは少し疲れたような余裕のない顔で笑って、
「そこが一番まずいんだよね。……解んないんだよ、気がついたら拾っちゃってて」
後で二人に聞いたら、そこんちの息子(Iとします)についてたのは、
何だか複数の人霊が怨念をツナギにして融合したようなものだそうでした。
様子から言って、長いこと生き物でなくモノに憑いていたと解る状態で、
本体と言うか依りしろと言うか、それがIに憑く前に居たものがあるはず。
それが除霊するときに手がかりと言うか土台になるらしいです。
なのに、どこで取り付かれたのか解らないために除霊の手がかりがなく、
霊能者に無理だと言われたそうでした。
Hの答えを聞いたAは、さらに怯えたような顔をしていました。
「…… この人、大丈夫なの?何かヤっちゃったとかないの?」
「……あー。寸前まで行ったことはある、かな。今はとりあえず、ちょい前に
来てくれた人が体にヨケ(?)つけて抑えてるから」
そんな感じの怖い会話の途中で、外から車の音がしました。
CがBを乗せて来たのですが、案の定と言うか怖いことにと言うか、
Bは車中で既に熟睡していました。

HがCからBを引き取り、抱えて奥の部屋へ連れ込み、床に寝かせて毛布をかけました。
後からIをそこんちの奥さんが連れてきて、熟睡中のBと空ろな目のIを
残して、俺らは部屋を出ました。

……考えてみりゃ、眠ってる既婚女性とおかしな男を1つ部屋に入れたりして
とんでもない話です。
何故かその時は、Hの全く躊躇いのないテキパキした態度と
Bは何があっても無事、と言う考えが当然のこととして頭の中にあったため、
唯々諾々と従ってしまいました。

ドアを閉めると、Hがドアに背をつけて廊下に胡坐をかいて座りました。
Aが俺にしがみつき、奥さんが足早に廊下を戻って引っ込んで少しして。
部屋の中から、凄まじい破壊音が響き渡りました。
壁か柱がぶっ壊されてるんじゃないかってくらいの轟音に混ざって、
ガシャン、パリンとガラスか茶碗が割れるような音。
俺はギョッとしましたし、Hは揺れるドアに背中を押し付けて座り込んだまま
動きませんでした。
Cも、何かHから聞かされていたのか、落ち着かない様子ながら、あまり慌てた様子も
なく。

467 :本スレ208の128:2009/10/05(月) 22:56:17 ID:XpTpgJW.0
どれだけ時間が経ったのか、誰も動かずに待ち続けて、ようやく中の音が小さく
まばらになってきたとき。
直ぐ内側から誰かがゆすってるようにドアががたがたっと揺れ、
鋭い、あせりまくった切迫した男の声が聞こえました。
「おい、助けてくれ!!お願いだ、助けて!開けてくれ、早く!早く!!
ここを開けてくれえええっ!!」
Aが顔をあげてHに向き直り、
「ねえ、もういいんじゃない?開けて出してあげようよ」
ここで俺もはっとして、「おい、さっきの人(I)、正気に返ったんじゃないか?」と
言葉を添えましたが、 Hはぎっと俺たちを睨みつけて「まだ」と言いました。

それからさらに時間が過ぎ、中から全く音がしなくなって、やっとHは
立ち上がりドアを開けました。
……中は、H がBを寝かせIを入れて出たときと全く変わりありませんでした。
壊れたものも動かされたものもなく、ただBが部屋の真ん中で大の字になって寝てるだけ。
あの破壊音を立てたと推測できるものの痕跡1つなく。
そして部屋の隅にうずくまって震えていたIに、Hが駆け寄りました。
「おい、I。俺、わかるか」
「あ……H?H!!」
 目が焦点を結ぶと、Iは取り乱した様子で、しかし初対面の時より遥かにまともな様子で
H に掴みかかりました。
「H、化け物がいたんだ!本当だ、俺に化け物が、襲い掛かってきて俺を殺して」
「……ほいほい」
 幾らか安心した様子でHがポンポンとIの肩を叩いて宥めた。
その時、俺の横に居たAがふらりと傾いたのが視界に映った。
慌てて受け止めた俺に、H が
「あ、ごめん。リビングに連れてったげて。ココは辛いでしょ」
と言った。Cと一緒にAを運んで廊下を戻りながら、やっと気がついた。

さっきHと喋ってたIの声。
破壊音が止む前に部屋の中から聞こえた声とは、全然違う声でした。

468 :本スレ208の128:2009/10/05(月) 22:57:17 ID:XpTpgJW.0
……その後、Aが目を覚まして動けるようになり、眠り込んでるBをA宅へ移した上で
B夫を呼び、AがBを引き渡しました。
変に疑われると嫌なので、俺もHもCも、男は全員席を外しました。
B夫は怪しむ様子もなく爆睡してる妻を引き取っていきました。

「あ、またですか?すみません。ひょっとしたら知ってるかもしれませんけど、
 睡眠障害とか言うんですかね。突然パタンと寝ちゃって目がさめないことがあって。
これの母親から、小さい頃はよくあったって聞きましたけど、
結婚してからは年に一回もないし、病院で検査しても異常ないし、
本人覚えてないけどガスだの何だの危ないものは必ず寝る前に止めてるし、
子供と居る間は起きないし、倒れるとかじゃないから問題ないんで
俺は気にしてないんです。
面倒をかけてすみません。連絡ありがとうございました」

A曰く。
「……ガスとか火とかは絶対に大丈夫だと思う。Bが止めなくても、
必ずアレが何とかするから。赤ちゃん居るとないってのは意外。
Bが子供できてから、危ない場所に行ったり危ないもの買ったり
しなくなってきたのかな」
H曰く。
「さすがに赤んぼ放置して熟睡は、Bさんの潜在意識が拒むんじゃね?
アレ、Bさんの意識とカンペキ無関係って訳じゃないと思うよ。
無意識の部分とかに食い込んでないと、寝かすのはないと思うし。
Bさんでなきゃいけない理由があるんだろーねー。
赤んぼ預けるとか家族が一緒とかでないとフルで戦えないなんて不便な状況、
ただの間借りならショバ替えしてるよ」

あのとき部屋の中から聞こえた声についても、「みえるひと」な2人に聞いてみた。
こちらは2人とも完全一致。
『融合してた人霊のウチの一体が、消滅の危機に瀕して自我を取り戻した』
だそーです。
あの部屋、事前にHが、使える伝もコネも知識も全部使って、頼めるだけの人に頼んで、
何重にも霊的に閉鎖してたんだとか。
で。
その檻の中で、Bについてるアレと、Iについてたモノとが。
互いに在るだけで互いを削りあう至近距離に置かれることになり、
形容し難い激烈なバトルが繰り広げられたようです。
結果は、またしても、Bのアレの勝ちでした。

……助けてくれ、開けてくれ、と叫んでいたのは。
逃げ場のない檻の中で、Bのアレと戦いながら2度目の死の恐怖を、
味わっていた誰かの霊だったと。

衝撃でした。
生身でない、声帯を持たないとは信じられないほど、声はリアルでした。
そしてAが倒れたのは、霊的に比喩的に「血染めの惨殺現場」を見たためでした。
その霊たちがどうなったのか、と言う質問には2人とも答えてくれなかったし
俺も考えたくありません。Bのアレはお払いだの浄霊だのしてくれる存在ではないと
既に知っているので。

話は概ねこれで終わりです。
Bは次の日の朝に目を覚まし、鼻歌と共に朝食と夫の弁当を作ったそうです。
Iは精神科へ通院しているそうですが、以前と違って会話ができて
治療効果がきちんと出ることにI母は大変喜んでたそうでした。
ついでにCは、Hから何を聞かされたか知りませんが、もうあまりBとは
連絡を取りたくないようなことを言っていました。

最後に、その「融合した複数の人霊」これが一番、この話の嫌なところですが。
「恐らく半世紀以上は前、だけど100年は経ってない」で、
「全員、両手の爪が剥がされてた」そうでした。
それ以上はAもHも説明してくれませんでしたし、
俺も聞きたくないと思っています。
どこでどんな目にあった誰だとしても、判れば気分悪くなるだけでしょうから。
以上です。





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