カテゴリ: 天狗男シリーズ
【天狗男シリーズ系】女の行動の真意
745 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:10:13 ID:pA5vTJvk0
1/9
あれは俺が事故で入院した頃だからもう10年も前の話だ。
今日はその時入院した病院での恐怖体験を書いてみる。
俺は病院が嫌いだ。今思い出しても鳥肌が立つ、忌々しい体験だ。
高校を卒業した俺は地元の専門学校に入った。しかし入学式から
1ヵ月くらいした頃、俺は車に撥ねられ右足を骨折。全治3ヵ月
で事故現場近くの病院に入院することになった。そこはいわゆる
「出る」 ことで地元では有名な病院だった。
「なんでよりにもよってこの病院なんだよ・・・」
俺は全力で落ち込んだ。俺を撥ねた会社員さんが毎日仕事帰りに
お見舞いに寄ってくれたが、元気のない俺を見てさぞかし心を痛
めたことだろう。いや違うんだ、骨折で落ちこんだんじゃあない。
この病院に入院しちまったことが悲しいんだ。
病院は後は山、前は川という立地だ。裏山には古びた墓地があり、
周りは鬱蒼とした森に囲まれていた。病院に入るには細い石橋を
渡ってこなければならず、その橋の手前には、センターラインの
消えかかった暗いトンネルがある。そのトンネルも出ると噂され
ている。
事故直後、救急車で運ばれた俺は入口から入る時、たくさんの窓
から青白いの顔が覗いているのが見えた。もちろん生きてない人
の顔だ。台車に寝かされカラカラと手術室に向かう途中、ぼんやり見
ている天井から、数本の足がブラブラとぶら下がっている。
746 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:12:17 ID:pA5vTJvk0
2/9
手術室の隅には過去にここで亡くなった人が壁に向かって立って
ブツブツと何かをつぶやいている。医者が骨折した足を仮処置して
くれたが痛さで「ぐおおおおお!」と叫ぶと、そいつらはしばらく
見えなくなる。しかし少しするとまた現れる。
生きてここから出られるかな・・・
事故のショックからか普段よりも鮮明に見えている。なるべく気
にしないようにしているが、明らかにこの病院があっち寄りに存
在していることをビンビン感じていた。そんな俺を見かねてか、
昼間は学校の友達がひっきりなしに見舞いに来てくれた。
そんな中、数日も経った頃の深夜、寝ていると救急車が入って来
た。誰か事故ったか?俺は大して気にもせずに再び眠った。翌日、
同じ病室の山田さんに昨日の救急車について聞いてみた。俺の病
室は6人部屋で入院してるのは3人だ。しかし山田さんと、もう
一人の加藤さんは昨夜の救急車など知らないと言う。
二人とも老人だ。耳が遠くて気づかなかったのか・・・?
俺はたいして気にもしなかった。が、その翌日の深夜にも救急車
が入ってきた。俺のベッドは窓際だ。外を見ると赤いサイレンの
ライトが回転している。俺は「またか・・・」と思ったがそのまま寝
てしまった。
747 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:13:36 ID:pA5vTJvk0
3/9
翌朝、寝ていると定時の採血で目が覚めた。看護婦さんに昨夜の
救急車について聞いてみると、昨夜は急患はなかったと言う。俺
は何言ってんだ?一昨日も来ただろうと聞くと逆に変な顔をされ
てしまった。
おかしいな、幻覚だったのかな・・・
そういえばここ数日、あっち側の人達を見ていない事に気がつい
た。試しに夜、院内を車椅子で散策してみる。おかしい・・・俺が担
ぎ込まれた時は、これでもかという位見えたのに・・・外にも出てみ
たが何も見えない。
俺は事故の後遺症で霊感がなくなったのか?と思ったが、それな
らそれで別にいいか、と妙な安心感に襲われ病室に戻った。病室
に戻ると同室の2人はすでに寝ているのかカーテンが閉まってい
た。俺は自分のベッドに戻るとそのままうとうとと寝てしまった。
どれくらい時間が過ぎただろう。目の前に何か赤いものが動いて
いる事に気がつき目が覚めた。救急車のライトだった。
何だ今夜も急患かよ・・・
俺は起き上がると窓越しにその救急車を見た。ちょうど担架から台
車に患者が移されるところだった。しかしおかしい、妙に静かだ。
病室は2階だから台車の音や救急隊員がしゃべる声など、充分聞こ
える距離だ。そしてふと台車に乗せられた患者を見て愕然とした。
ぇ・・・なんで・・・俺が・・・
748 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:14:47 ID:pA5vTJvk0
4/9
台車に乗せられていた急患は俺だった。俺が俺を見ている。頭が混
乱していた。急激に鼓動が早くなり俺は震えながらその「俺」を見
ていた。おかしなことに救急隊員や出迎えている看護婦・医者の顔
がよく見えない。しかもその「俺」 は台車に乗せられると、ベルト
のようなものを締められ動けなくされている。
ガラガラガラ・・・!!
そして更におかしなことに台車は院内に入らず、逆の橋の方向に押
されて行くではないか。台車の俺が必死にもがいてこっちを見てい
るのに気がついた。何かを叫んでいる。が、まったく聞こえない。
これはヤバイ・・・俺は咄嗟に松葉杖で階下を目指した。
院内は消灯され、ひっそりと静まり返っていた。俺はエレベータに
乗るとで1Fを押した。が、どうした訳か下降を始めたエレベータ
はそのまま下降を続けている。どう考えてもすでに10F分くらいは
下降をしている感じだ・・・病院の地下はB1のみであるにも関わらず
だ。
ど、どこまで降りるんだ・・・
と、ガコンという衝撃とともに止まった。ボタンを見るとB1が点
灯していた。おかしい、確かに1Fを押したのに・・・俺はわけがわか
らずにいたが、とりあえず戻ろうと1Fを押した。しかしいくら押
しても反応がない。ボタンはB1点灯のままだ。と、開いたドアの
奥に何かが見えた。
カツーン・・・カツーン・・・カラカラカラ・・・
749 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:16:23 ID:pA5vTJvk0
5/9
誰かがこちらに向かってゆっくりと歩いてきている・・・しかも台車?
を押しながらのようだ・・・俺は恐怖で尻餅を着いてしまうとガタガタと
震え出した。そして目線を壁際に向けてハッとした。そこには「霊安
室→」と書かれているではないか。俺はヤバイと思い、必死で1Fの
ボタンを連打した。
カツーン・・・カツーン・・・カラカラカラ・・・
B1の廊下は消灯されていて暗闇だ。しかも得体の知れない何かが
俺に向かって迫って来ている・・・さっきの救急車といいコレといい、
尋常でない状況は明らかだ。恐怖で泣きながら1Fボタンを連打し
ているとやっと点灯した。すかさず閉ボタンを押すとドアが閉まり
始めた。
ガラガラガラ・・・!!
と、さっきまでゆっくり向かってきていた何かが突然すごい勢いでこ
ちらに迫ってくるではないか。俺は恐ろしさで、ヒイィィィ!と目を
瞑るとバコンという音とともにドアが閉まった。
いや、正確には閉まっていなかった・・・
エレベータのドアは10cmほど開いていた。何かが・・・挟まっている・・・
俺は恐る恐る目を足元へ向けると、白い手がドアの向こうから俺の脚
をしっかりと握っているではないか。
ヒィィぁィcblggw@dふじこ!!
750 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:18:06 ID:pA5vTJvk0
6/9
俺は恐怖で真っ青になりながら夢中でその白い手を蹴りまくっていた。
しかしその手はビクともしない・・・と、ドアが開いてしまった・・・そして
へたり込んでいる俺の上にゆっくりと何かが覆いかぶさった。真っ白な
顔の長い黒髪の女だった・・・
・・・俺はそのまま気を失った・・・
ガチャガチャ・・・シュッシュッ
・・・ん・・・何の音だ・・・?
目が覚めた。暗い夜空が見える。むせ返るような湿気を含んだ森の匂い
が鼻腔に飛び込んできた。体が動かない・・・俺はどこにいるんだ・・・?
目線を足元に向けると、何かが俺の体を縛っている。よく見えない・・・
どうやら台車の上に寝かされているようだ。
ガラガラガラ・・・
台車が動き始めた。その衝撃で目の前に建物が飛び込んできた。病院だ。
そして俺は自分の病室から誰かがこっちを見ているのがハッキリと見え
た。
あの女だ・・・
751 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:19:30 ID:pA5vTJvk0
7/9
それはあの女だった・・・さっきB1で俺の脚をつかんだ女だ・・・俺はこの
ままでは死ぬ、と感じて叫んだ。声にならない声で助けてくれと必死に
叫び、もがいた。台車は病院から遠ざかり橋の上をガラガラと走っている。
おかしなことに誰が押しているのかわからない。よく見えない。
ガラガラガラ!!
俺は恐怖で引きつりながら足掻いたが縛られていて手足が動かない。と、
視界にコンクリートの天井が映った。例のトンネルだ・・・そして俺はこの
トンネルの先が行き止まりで、断崖になっていることを思い出してした。
ヤバイ・・・このままでは落とされる・・・しかし動けない・・・そしてふと目線
を川の対岸の病院に向けた。
なんだ・・・あれは・・・
川からおびただしい数の人が病院に向かって這い上がって行くではないか。
それを見た瞬間、俺は思い出した。かつてあの病院が建っていた場所には
飛行機工場があり、戦時中に強制連行で連れてこられた北朝鮮の人達がB
29の爆撃を受けてたくさん亡くなったことを・・・
ガラガラガラ!!
俺は恐怖と絶望で頭が真っ白になった。断崖はすぐそこまで迫っている。
もうダメだと思い全身の力が抜けた。その瞬間、まぶしい光に俺は照らさ
れ目を閉じた。
752 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:21:25 ID:pA5vTJvk0
8/9
キキィィィ!!
バタン! バタン!
おい、誰かいるぞ!?
大丈夫か!しっかりしろ!
聞き覚えのある声だった。俺は安心するとそのまま意識を失った。
翌朝、俺は病室で目が覚めた。しかしそこはあそこの病院ではなかった。
傍らにはお袋がいた。俺は事の経緯を聞いた。それによると昨夜、あの
病院は火事になったらしい。まさに俺が何者かに病院から台車で運ばれ
た直後、地下のボイラー室から出火しあっという間に病院全体が炎に包
まれたのだという。逃げ遅れて亡くなった方もいると言う。
俺はそれを聞いて愕然とした。
753 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/16(火) 00:22:46 ID:pA5vTJvk0
9/9
俺をこの病院まで運んでくれたのは同じ学校の友達だった。あのトンネ
ルで肝試しをやろうという事になり、仲間達とちょうど来ていたのだと
いう。しかし彼らが来た時、あそこにいたのは台車に乗った俺だけだっ
たとのことだ。俺を助けている最中、ボンッという音とともに目の前の
病院が火事になって大騒ぎだったということを聞いた。
俺は退院後、友達とあの病院まで行き橋の手前に花を供えた。病院は見
るも無残な状態になっていた。あのとき見た女。彼女は俺を引き込もう
としたのか、それとも逆に俺を助けようとしたのか、俺にはわからない。
しかし結果的に俺は助かった。
俺達はしばらく黙祷すると病院を後にした。
その後、俺は病院が益々嫌いになった。
【天狗男シリーズ系】 ネガティブの塊
674 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:06:16 ID:.y8DnQxs0
1/8
あれは俺が専門学校生の頃だったからもう10年近く前になるかな。
その頃にインターネットを通じて巻き込まれた恐怖体験を書いてみる。
当時俺は「チャット」にハマッていた。PCで文字を打ち会話するあれだ。
俺はゲームが好きなのでFF好きが集まるチャット部屋に入り浸っていた。
部屋主の名前は「マサ」。気さくで面倒見がよく皆に慕われていた。俺は
学校が終わり、用を済ますと毎日そこで色々な会話を楽しんでいた。
常連は10人程度。オフ会も何度もやっており俺もよく参加していた。ある
日、俺はいつものようにチャットに入室すると皆の様子がおかしい。俺は
不審に思いながらも挨拶をすると参加者名を見た。すると1人の新規さん
がいるようだ。ハンドル名は「魚女」。
変な名前だなと思いつつ「はつよろ~」と入力していたら「寒い」と言い
その魚女は落ちていった。何が寒いんだ?俺の挨拶か?と思っていると皆
がその魚女について話し始めた。皆の会話を読んでいると、どうもすごく
ネガティブな感じの女らしい。
メンバーがFFの話を振っても「友達がいない」とか「人は信用できない」等
の発言を繰り返していたらしい。常連は皆、大人なので気を使って色々と
話しかけていたようだ。俺はフ~ンと軽く聞き流すとFFの話題で彼女の
ことなどすぐに忘れた。
翌日、夜になりいつものようにFF部屋に入ると例の魚女がいた。
675 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:07:23 ID:.y8DnQxs0
2/8
俺は「こんちゃ~」と入れると「こわい・・・」と言っている。「え、俺?^^;」と
入れても「怖くて眠れない・・・」と言う。俺は何が怖いの?と聞くと夜になる
と何かが襲ってくるそうだ。。。明らかに場違いな発言に、俺はどうしよ
うかと思っていると、部屋主のマサが「電気つけて寝れば?」と言ったが
彼女は「鈴の音が聞こえる・・・」と言い落ちていった。
その後しばらく魚女は来なかった。俺は彼女の事などすっかり忘れていた。
と、ある日マサがおかしな事を言い出した。
「そういえばさ、最近寝るとき鈴の音が聞こえるんだよね・・・」
俺はギョッとし咄嗟に魚女のセリフを思い出した。しかし気のせいだろう
と思い深く考えないでいた。
それから一週間くらい経った頃、俺がいつものようにFF部屋に入ると例
の魚女がいた。と、皆が凍りついている。俺は不振に思い常連のひとりに
ささやきをしてみると、どうやら魚女がリスカをしたと言ったらしい。。。
俺はうつ病なのかな?と思いどうしようか思案してると魚女からささやき
が来た。。。
「一緒に死んで・・・」
俺は、ヒィイィィ!と背筋が寒くなりすぐに部屋から落ちた。何で俺が顔
も知らないやつと死ななきゃならないんだ・・・俺はしばらく部屋に行くこと
が出来なかったが、心配だったのでメールで常連に聞いてみた。すると他
の常連達も同じように言われたらしい。その他、助けて・・・呪ってやる・・・
等をしばらく言い落ちたらしい。
676 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:09:46 ID:.y8DnQxs0
3/8
さすがにこんな女がいたのでは、チャットを楽しむことは出来ない。俺は、
しばらく部屋にいくのをやめようと思った。その夜、夢を見た。
俺は深く暗い森の中を歩いていた。
空は曇り日差しも届かない。うっそうとした森の中を彷徨い歩いていた。
と、遠くで宴のような祭りのような賑やかな声が聞こえてくる。俺は凄く
楽しそうだなと思いそっちに向かって歩き出すのだが、なかなか辿り着か
ない。疲れたので大きな木の根元で休むことにした。と、チリーンと音がする。
俺はなぜか咄嗟に魚女のことを思い出した。辺りをキョロキョロ見ると、大木に
鈴が巻きつけられているではないか。よく見ると、鈴はこの大木だけでは
なくそこら中の木に巻きつけられている。
結界だ・・・
俺は夢の中でこれは夢だと悟った。以前の人形夢事件を思い出し冷や汗が
流れてきた。恐らくこれも結界の外に出ないと夢から抜けられないのだろ
うという事を感じていた。俺は身構えて精神統一をすると念じて刀を出現
させた。じつは人形事件の後、夢の中で武器となるものを出せる訓練をし
ていたのだ。ドクン・・・ドクン・・・鼓動が早くなる。
うぎゃぁぁぁぁぁ・・・
677 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:11:16 ID:.y8DnQxs0
4/8
遠くで悲鳴が聞こえた。聞いたことのあるような声だったが俺は恐ろしさ
で身動きが出来なかった。何かがいる・・・遠くに何か邪悪なものを感じた。
宴の声はいつの間にかヒソヒソ話のようになっている。ヤバイ、とにかくここ
から出なければ・・・と走り始めた途端、目が覚めた。
ハァハァ・・・ハァハァ・・・
ベッドの上で汗だくになりながら起き上がると、嫌な予感がした俺はすぐ
にPCを立ち上げた。と、1通のメールが来ていた。
そんな・・・そんなまさか・・・
マサの訃報を知らせるメールだった。近くに住む常連の一人が連絡がつかな
いことを不審に思い、マサ宅を訪ねると部屋で死亡していたらしい。死因は
急性心不全。明日、密葬を行うから出席できる人は来てくれと書いてあった。
当然、俺は出席した。密葬には親族とFF部屋の常連数人がいた。
俺は変わり果てたマサの姿を真にあたりにして言葉が出なかった。相当苦し
かったのか下唇を噛んだ痕がクッキリと残っていた。恋人は泣き崩れていた。
今年結婚する予定で、先日式場まで一緒に見に行ったらしい。俺は悲しさで
胸が一杯だった。
俺はしばらくの間、ショックで呆けていた。
678 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:12:37 ID:.y8DnQxs0
5/8
信頼できる友を亡くしたショックは大きく、若かった当時の俺にとっては相当
な痛手だった。学校も休み、FF部屋にも行かなかった。そんな俺を見て親父
がこんなことを言った。「おまえ、何か黒いものに憑かれてるな。引き込まれ
ないように注意したほうがいい」と言い、足で結ぶ密印を教えてくれた。
通常、印とは手で結ぶものでこれは特別なのだと言う。
俺はフーンと軽く聞いていたが「黒いもの」と聞いて魚女のことを思い出した。
その後、彼女はどうしただろう。気になった俺は久しぶりにFF部屋に言った。
人数は減ったが常連が数人おり、久々に会話できて俺は少し安心した。そこに
はマサの彼女もおり、マサの追悼の話もしばらくしていた。と、彼女からささ
やきが来た。
「俺クン、この電話番号の人って知ってる?」
「え、何番ですか?」
「080-xxxx-xxxx」
「(調べたが)ん~ちょっと知らないですね」
「そっか・・・」
「その番号がどうかしたんですか?」
マサが亡くなった時、部屋の受話器が外れていたと言う。どうやらマサはこの
番号の人と電話中に亡くなったらしい。しかし誰に聞いてもその番号の相手が
誰なのかわからないという事だった。警察も死因が急性心不全なのでその番号
にはノータッチだったらしい。
679 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:15:04 ID:.y8DnQxs0
6/8
そして彼女さんが試しにその番号にかけても電源が入っておらずつながらない
という。俺は誰あろうと思いながらも、その日はそれで部屋から落ちた。その
晩、またあの夢を見た。
俺はまたあの森の中を彷徨っていた。
遠くから賑やかな声が聞こえる。しかし今度は真っ暗な夜だ。3m先もよく見
えない。と、遠くから鈴の音が聞こえた。
チリーン・・・ チリーン・・・
俺は身構えて刀を出すと、音のする方向を見据えた。どす黒い何かの意思のよ
うなものが近づいてくるのが分かる。と、どうしたことか体が動かない。刀を
構えたまま身動きが取れなくなっている。ヤバイ、逃げるにも逃げられない・・・
黒いものが近づくにつれ、何やらうめき声が聞こえてくる。
コロシテェ・・・シニタィ・・・
1人や2人ではなく、おびただしい数の声だ。それが黒い塊となって徐々に近
づいているらしい。メキメキと木々をなぎ倒しまっすぐこちらに近づいてくる。い
くら夢でも、この闇の集合体に勝てるわけがないと悟った俺は目をつむって起
きようと念じたが、やはり無理だった。そいつは闇よりも深い闇で無数の手が
伸びギラギラとした目がいたるところについていた。
う"お"お"お"お"お"・・・
680 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:18:12 ID:.y8DnQxs0
7/8
すでに目の前まで迫ってきたが体が動かない。もうダメだと思った瞬間、俺は
そいつに飲み込まれた。そして理解した。こいつは物凄いネガティブな意思の
塊だ・・・こいつの中にいるだけで俺も死にたくなってきた。ダメだ思考がまと
まらない。悲しさが止まらない。生きているのがつらい・・・
もうこのまま眠ってしまおう・・・と思った瞬間、声が聞こえた。
「おまえはまだ生きろ」
その瞬間、俺を飲み込んだ真っ黒い塊が2つに裂け、俺は放り出された。
き"え"え"え"ぇ"ぇ"・・・
何が起こったのか分からなかったが、俺は咄嗟に親父に教えてもらった密印を
足で結んだ。その瞬間、まばゆいばかりの光がその塊の中から溢れ森をも包み
込み辺りを飲み込んでいった。。。
夢の中は俺以外、無になっていた。
しばらくして俺はゆっくりと目覚めた。ふと時計代わりにしているケータイを
見て固まった。時刻は夜中の2時。しかも着信があったのだ。例の番号から・・・
もしあのまま闇に包まれていたら、きっと無意識に電話を取っていたのだろう。
そして電話を取ってしまったらきっと・・・そう考えると恐ろしくなった。
681 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:19:33 ID:.y8DnQxs0
8/8
しかし最後に聞こえたあの声。
あれは間違いなくマサのものだった。闇に包まれて命を落としたにも関わらず
俺を助けてくれた。。。俺は声を出して泣いた。
週末、マサの墓参りに行くと彼女さんが来ていたのでそのことを話した。彼女
さんは泣き崩れた。そしてマサの分まで強く生きてください、と俺に言った。
俺も泣きながら頷き、何が何でも生き抜いてみせます、とマサの墓前で誓った。
近年、うつ病の患者が急増しているという。俺が出会ったネガティブの塊は、
そういった生きてる人たちの負の思念が大きなうねりとなって、俺達生きてる
人たちに影響を与えているんだなと、この事件を通して理解した。少なくとも
自分だけはポジティブに生きねばと考えさせられる事件だった。
【天狗男シリーズ系】リスト
450 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:18:48 ID:t+/A2xnX0
1/13
あれは俺が高校生の頃だからもう10年も前の話だ。
以前も書いたが俺はたまに予知夢を見る。年を取った今では見
る頻度も少なくなってきたが、10代の頃は結構よく見ていた。
但し今回の話は予知夢ではなく正夢だ・・・というか半分、夢で
半分現実・・・と言ったほうが正しいかも知れない。うまく説明
できないが今日の話はその正夢を見てしまった時の恐怖体験を
してみようと思う。
その頃の俺は、とある「記憶法」にハマッていた。
TVで見たのがキッカケだったと思うが、ある特別なやり方で
身近なアイテムなどを100個以上、順番通りに記憶できるとい
うものだった。これを読んでる人の中にもやり方を知ってる人
もいると思うが簡単に説明しておこう。
1.まず身近な場所など(自宅等)を思い浮かべる。
2.自宅なら門→玄関→居間→キッチン→寝室→・・・など実際に
頭の中で連想しやすい順番を思い浮かべ、その連想する順番を
決める。1周で10箇所程度がいいだろう。
3.その1箇所1箇所に、覚えたいアイテムを関連付けてゆく。
例えば覚えたいアイテムの1個目がコンビニ袋だったとしたら
門にコンビニ袋が引っかかってる風景を連想する。次のアイテ
ムがミカンだったら、玄関の脇にミカンが置いてある風景を連
想する。
451 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:20:01 ID:t+/A2xnX0
2/13
1周して10個関連付けが完了し、今度は2週目。11個目のアイ
テムがホッチキスだった場合、門のコンビニ袋の中にホッチキ
スが入っている風景を連想し記憶する。といった感じに進めて
ゆく。
上記2~3を繰り返すことによって誰でも少なくとも100個程度
は記憶出来るのではないだろうか。
俺はそのやり方で友達とどっちが多く覚えられるか、などと遊
んだものだ。そして毎日練習することにより、かなりの数を記
憶出来るようになった。関連付けや風景もよりリアルに連想出
来るようになった。
そんなある日、夢を見た。
俺は夢の中で自宅の中をゆっくりと歩いていた。あぁ、また例
の記憶法の練習かな、と夢だが完全に夢と判断できないあやふ
やな状態だった。目に見える自宅の中はリアルで、妙な空気感
で溢れていた。すると俺は居間でアイテムリストを発見した。
夢の中なのだが練習が始まった。俺はリストに書かれた通りに
アイテムを記憶していった。しかしリストには全部で40個ほど
しか書かれておらず、夢の中だが俺は物足りない感じがしてい
た。アイテムもどれも普通のものばかりだった。不思議なこと
に朝起きてからも夢の中の40個はしっかりと覚えていた。
まさか夢にまで見るとはな。。。
452 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:21:43 ID:t+/A2xnX0
3/13
俺は学校で友達にその夢のことを話した。友達はふ~んと聞い
ていたが、こんなことを言った。
「その夢の中のリストに書かれてたものはさ、全部おまえん家
にあったものなのか?」
俺は、ん?何言ってんだこいつ?と思ったが、確かに全部家に
あるものばかりだったので、そうだと答えた。しかしこの時の
友達の質問の意味をよく考えていたら、俺はあんな目に遭わな
かったかも知れない。。。
それから数日後、また夢を見た。例の練習法の夢だ。俺はまた
か、と思いながらも夢の中で居間に向かった。予想通りリスト
が置いてあった。ゆっくりと手に取り眺める。1個目は新聞紙
だった。俺は玄関を出て門に向かった。
と、前の通りに誰かがいる。
よく見ると乳母車を押した老婆だった。腰は曲がり白髪。その
老婆がじっとこちらを見ている。誰だ? 夢の中だったが、俺の
記憶にない老婆だった。俺は無視して門に新聞紙を引っ掛けて
その場面を記憶した。
2個目はバール(釘を抜く道具)だった。面白いことに夢の中では
必要なものが即座に手の中に現れる。新聞紙やバールもすぐに
出てきた。俺はバールを玄関脇に立てかけた。3個目はバットだ
った。俺は玄関内の下駄箱の上に置いた。
453 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:23:36 ID:t+/A2xnX0
4/13
4個目を見てちょっとおかしいな、と思った。「灯油」と書かれて
いたのだ。気がつくと灯油の入ったポリタンクを持っていたので
そのまま居間に置いた。この時点で気づくべきだった。。。
5個目には「包丁」と書かれていた。
おかしい。さっきから何やら危険なものばかりじゃぁないか。。
俺は何か不安になりながらも、キッチンのテーブルの上に包丁を
置いた。6個目を見た。ガムテープだった。なんだ、やっと普通
のものが出たかと俺は安心して脱衣所の洗濯機の上に置いた。
7個目は「セメント」と書かれていた。俺は「はあ?」と思いながら
もセメントの入った袋を風呂場に置いた。やはりおかしい。この
時点でこれは完全に夢だということを理解し、どうするか考えた。
まぁ今のところ危険も無いしとりあえず1周覚えてから考えるか、
と思い次へ向かった。
次は俺の部屋だ。入ると現実と変わらない感じだった。8個目は
ロープだった。俺はベッドの上にポンと投げた。ふと目線がゴミ
箱に向かった。何やら黒い物がたんまりと入っているのが見えた。
何だ?と思い覗いてみると、長い髪の毛だった。俺は驚いてすぐ
に部屋から飛び出した。
廊下で、ハァハァ言いながらいつもと違う夢に違和感を感じていたが、
それまで夢で危険な目に遭ったことはなかったので、そのまま続
けた。8個目はマイナスドライバーだった。俺はそれをトイレの
便座蓋の上に置いた。
454 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:25:42 ID:t+/A2xnX0
5/13
9個目はガスファンヒーターだった。俺は2階の部屋の隅にそれ
を置いた。10個目を見た。ピアノ線だった。9個目まではうちに
あるものばかりだったが、さすがにこんなものはうちに無いと
思った。と、手の中にグニャッという感触があった。見るとピ
アノ線だ。え?こんなものうちにあったっけ?? 不振に思いな
がらも階段の1番下の段にそれを置いた。
よし、とりあえず1周分は記憶した。
おかしな点もあったが、夢だからだろうと思い2周目に進むこと
にした。しかしそれが大きな間違いであったことに、すぐに気が
付くことになる。。。
玄関から出て門に向かった。リストを見るとライターと書いてあ
る。と、何か音が聞こえる。
カチッ カチッ
門の向こうからだ。何だ?と思い見てみると、さっきの老婆が1
周目で門に引っ掛けた新聞紙にライターで火を点けようとしてい
るではないか。俺は慌てて老婆からライターを取り上げ、何して
んだ!?と怒鳴った。幸い火はついておらず無事だったが、俺はあ
きらかにこの夢がおかしいことに気が付いた。
老婆はしばらく黙ってこちらを見ていたが、ほどなくして姿が消
えた。俺は動揺しながらも奪い取ったライターを新聞紙にくるみ
門脇のポストの中に入れて、玄関の前でどうするか考えた。
これって・・・夢だよな?
455 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:27:43 ID:t+/A2xnX0
6/13
妙なリアルさと少し異常な進行具合に、このまま続けてもいいの
だろうかと悩んだ。今まで幾度となく不思議な体験をしてきた俺
の勘が警告を発している気がした。しかし自分では夢だとわかっ
ていたので、いざとなったら目を覚ませばいいか、と安易に考え
ていた。
リストを見た。雪道用のタイヤチェーンと書かれていた。玄関脇
にそれを置くと俺は家の中に入り再びリストを見た。人形と書い
てある。そんなもんあるわけねぇべ!と思ったがさっきのピアノ
線と同様、いつの間にか握っていた。日本人形だった。どこかで
見たことがある気もするが思い出せない。不振に思いながらも俺
はそれを下駄箱の上に置いた。
そしてリストを見て目を疑った。
次のアイテムは「火」だったのである。火?そんなものどうやって・・・
俺は嫌な予感がした。ここは居間である。1周目でここには灯油
の入ったポリタンクが置いてある。まさかこれに火を点けろって
んじゃないだろうな・・・と、その瞬間、玄関からガチャガチャとい
う音が聞こえた。
な、なんだ!?
俺は恐る恐る玄関を覗いた。外に誰かがいる。しかもそいつが、
さっき置いたチェーンを玄関のドアノブに外から巻きつけている
ようだった。
俺を・・・閉じ込める気か・・・?
457 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:30:11 ID:t+/A2xnX0
7/13
俺はヨロヨロと後ずさりをした。瞬間、足にポリタンクが当たっ
て倒れ、中の灯油が勢いよく噴き出した。や、やべぇ・・・!と思う
間もなく灯油は玄関まで流れ出て、地面を伝って玄関のドアの外
まで流れた。
カチッ カチッ
確かに聞こえた。さっき老婆が点けようとしたライターの音だ。
しまった、さっきのライターはポストの中に入れたんだった・・・
きっとそれを取り出して火を点ける気でいるんだ!見ると俺の足
元も灯油で濡れている。瞬間俺は猛ダッシュでキッチンまで逃げ
込んだ。
ボンッ!
という音と共に玄関から居間まで火の手が上がった。焦げ臭い匂
いが部屋中に充満する。おかしい・・・夢なのに熱い!俺はしばらく
キッチンで呆然としていたが、火の手は徐々に迫って来ている。
明らかに普通の夢ではなく、悪意のある意思が介入しているのを
感じてきた。
このままではここで死ぬ。夢で死ぬということは恐らく・・・俺は怖
くなり何か打開策はないかとリストを見た。その瞬間凍りついた。
リストの次のアイテムは「足首」と書かれてあった。うそだろ・・・あ
まりの事にパニック状態だったが、炎が迫ってきてるので脱衣所へ
逃げようとした。
458 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:33:20 ID:t+/A2xnX0
8/13
と、その時何かの音が聞こえた。ゴリゴリゴリ・・・ゴリゴリゴリ・・・何かを
引きずるような音だ。ふと目線を下げると、さっき下駄箱の上に置
いた日本人形が1周目で置いたバットを引きずって歩いてきてるで
はないか。。。
これはヤバイ・・・
明らかに意思を持って動いてる。夢とはいえ尋常ではない。咄嗟に
飛び越えて脱衣所へ向かおうとしたが、怖ろしいほどの速さでバッ
トが足元にHITし俺はその場に倒れた。うぐぅぅ・・・猛烈な痛さ
だった。夢なのにこんなに痛いなんて・・・激痛でのた打ち回る俺に
更なる激痛が走った。
見るとさっきの人形が1周目で置いた包丁を持っているではないか・・・
そして・・・なかった。すでになかったんだ。俺の右足首が。人形は
無表情で俺の足首を拾い、キッチンのテーブルの上に置いた。俺は、
このままでは殺されると思い、這って脱衣所まで行った。幸いさっ
き置いたガムテがあったのでそれで止血をし、頭を整理した。
間違いない、俺は攻撃されている・・・
そしてこれは完全な夢ではない・・・かと言って現実でもない・・・
このままでは死ぬと思い目をつむって起きようと思った。しかし何
度念じても起きられない。おかしい、夢ではないのか・・・しかし現実
ではないのはわかってる。一体どうしたらいいんだ・・・と、目の前に
またあの人形が現れた。俺はギョッとしたが体に力が入らない。そ
していつの間にか両手足がガムテで縛られていた。
459 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:35:50 ID:t+/A2xnX0
9/13
呆気に取られていると風呂場から ジャリ・・・ジャリ・・・と音がする。
う”・・・セ、セメントだ・・・セメントと水を混ぜて固めているような
音が聞こえてきたのだ。咄嗟に俺はリストを見た。次は「手首」と書
いてある。。。その瞬間、物凄い力で風呂場に引き込まれ、左手首
を固まりかけたセメントの中に突っ込まれた。まるで石化の呪文の
ようにピキピキピキと瞬時に固まったかと思うと、また凄い力で引き
離された。
バキャッ
俺の左手首がもげた。一瞬だったが俺にはスローモーションのよう
に感じた。見るともうセメントは消え、人形は俺の左手首を拾って
いた。感覚が麻痺してきたのか痛みを感じなくなってきていた。俺
は這って自分の部屋を目指した。窓から外に逃げようと思ったから
だ。
這いながら考えた。これは一種の呪いの結界ようなもので、その対
象範囲は恐らくこの家の敷地内のみだ。そして一体誰がこんなこと
をしているのか・・・まったく心当たりがない。だからこの結界の外
に出てしまえば、きっとこの「正夢」から出られるだろうと考えた。
グサッ
ぐおお!? トイレの前で背中を刺された。恐らくマイナスドライバー
だ。階段の前を通り過ぎて自分の部屋へ進もうとした瞬間、俺はまた
凄い力で2階へ引っ張り上げられた。2階の廊下に叩きつけられた俺
は、すぐさま異様な匂いに気が付いた。
ガスだ・・・
462 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:43:44 ID:2Yx6JI//O
10/13
よく見るとファンヒーターのケーブルに傷がつけられガスが漏れ出し
ていた。すでに充満している。ここにいたらヤバイ・・・と、またあの
音がした。
カチッ カチッ
誰かがあのライターで火を点けようとしている。俺は咄嗟に階段から
転げ落ちた。ボンッ! 凄い勢いで炎が2階を埋め尽くすのが見えた。
と、同時に1階へ落ちた。
ブツン
うぎゃ!? 右耳が取れた。。。階段に置いてあったピアノ線がなぜ
か両柱に縛られ張られていた。俺の体はすでに痙攣をし始めていた。
心が負ければその時点で死んでしまう。すでに家の半分以上は炎に包
まれていた。俺は最後の力を振り絞って自分の部屋まで這って行った。
ジリジリと炎に焦がされながらも部屋の中へ入った俺は見た。
部屋の天井からさっき置いたロープが垂れていた。まるでここに首を
入れろと言わんばかりに。そしてゴミ箱の中で何かが蠢いている。俺
は無視して窓へ向かった。すりガラスだが薄っすらと外が見える。気
が付くとさっきの人形が窓枠に立ってこっちを見ている。
どうしても俺を外に出さない気か・・・
463 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:45:44 ID:2Yx6JI//O
11/13
途端に後方へ弾き飛ばされた。箪笥にぶち当たると俺は、急激に全身
から血の気が引いていくのがわかった。意識がもうろうとしてきた。
もうダメかも知れない・・・と思ったその時、ヒラヒラとリストが目の前に
落ちてきた。薄れゆく意識の中で俺はリストの最後のアイテムを見た。
鯉のぼり
俺は ハッ!となり、全てを思い出した。
その瞬間、押入れから神々しい光が溢れ出し、もの凄い勢いで炎やア
イテム、俺を襲った人形達を飲み込んでいった。そして聞いた。人形
の断末魔のような声を。。。
う"お”お”お”お”ぉ”ぉ”・・・
しばらくして目が覚めた。
俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。起き上がり手足を見たが何とも
ない。耳も両方付いている。時計を見ると朝の7時だった。お袋が
朝食の用意をしている。俺はキッチンのテーブルに腰掛けるとカレン
ダーを見た。5月5日だった。
「どうしたの?学校休みなのに。もっと寝ててもいいのよ」
「うん・・・」
464 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:47:44 ID:2Yx6JI//O
12/13
お袋はそそくさと俺の前に朝ごはんを並べると、不振そうに俺の顔を
見た。俺はしばらく黙っていたが、さっきの夢の事、そして子供の頃、
買ってもらった五月人形について話し始めた。
俺は小さい頃、2つの五月人形を買ってもらった。1つは金太郎で、
もう1つは源義経だった。俺は金太郎人形が大きくて好きだったんだ
が、義経のほうは地味であまり好きではなかった。毎年5月になると
この2つを出してもらい、部屋に飾った。
ある日、俺はおもちゃの代わりに義経で遊んでみようと思いガラスの
ケースから取り出し、友達の怪獣の人形と戦わせたりした。遊びは次
第にエスカレートし川に流したり、ヒモでつないでぐるぐる回したり
した。そして事もあろうか、爆竹で・・・
すっかり変わり果てた姿になった義経に俺は怖くなり、そのままケー
スにしまうと押入れの奥へと閉まってしまったのだった。確かその時、
母親には邪魔だからしまった、と言った気がする。俺も翌年から丁度
中学生だったので、2体の人形はそのまま出さなくなったのだ。
お袋は黙って聞いていたが、やがてこんなことを言った。
「そっか・・・きっと義経クンは寂しかったんだね」
俺とお袋は朝食を済ますと、押入れから2体の人形を出した。じつに
数年ぶりだ。金太郎のほうは変わらないが、義経のほうは思ってた以
上に変わり果てていた。俺は痛んでいる箇所をプラカラーとパテで補
修し、鎧はお袋が1日かけてミシンできれいに直してくれた。足りな
いパーツは山のように積んであるガンプラから流用した。
465 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/03(水) 19:50:12 ID:2Yx6JI//O
13/13
翌日、以前にも増して勇ましくなった義経人形が出来上がった。
俺は義経に向かって正座し、以前してしまったひどい行為を心から詫
び、これからは大切にすることを誓った。そして人形は5月いっぱい、
部屋に飾っておいた。
今考えるときっとあの夢は、小さい頃から守ってくれた恩も忘れ、痛
んだまま暗闇にしまわれている人形からの「気づかせ」と「戒め」だった
のだと思う。それ以降、俺はあの夢は見ていない。
しかし当時は気が付かなかったのだが、今これを書いていておかしな
点に気が付いてしまった。門の外にいたあの老婆だ。あの夢の結界は
俺の自宅の敷地内だった。しかしあの老婆は完全に門の外、つまり敷
地外および結界外にいたのだ。あれ以来、その老婆には出会っていな
いが、気が付いてしまった今、俺は何か不吉な予感がしている・・・
【天狗男シリーズ系】地獄への門
640 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/06(土) 04:19:41 ID:arBuB0Pc0
1/6
どうも。
今回からこちらに書きます。コテも天狗男にしました。
あれは俺が中学生になったばかりだから、もう15年も前になるかな。
前回の鎧武者の亡霊事件の半年くらい前の話だ。
その日、俺は親父の運転する車で山道を走っていた。お袋も一緒だ。
後にもう2台、母方の婆さん一家(以前書いた蚕屋敷の家族)と叔母
さんの一家が一緒だ。目的地は叔母の旦那さんの実家で呆れるほど
山奥にある村だ。季節は真夏でちょうどお盆の直前だった。
その村へ行くのはこれで2回目。以前訪れた時は幼少の頃で、道は
舗装もされておらず、長時間ガタガタと砂利道を進んだ記憶がある。
「いつの間にか舗装されてたんだな・・・」
とは言え市街地からすでに3時間は山道を走っている。俺は退屈で
時折、あくびをしながら外の風景を眺めていた。と、1台の対向車
とすれ違った。自衛隊のトラックだった。ん?こんな山奥になんで
自衛隊がいるんだ?俺は不審に思ったが、そんなことはすぐに忘れ
早く着かないかなと考えていた。
時計を見ると午後4時半。すでに日は傾き、山に影を落としている。
ふと窓の外を見ると山の向こうに飛行機が見えた。へぇ~こんな山
奥の上を飛んでる飛行機があるんだなとあまり深く考えずにボーッ
と見ていた。ほどなくして親父は車を止めた。そこは寂れた定食屋
のようだった。後の2台も続いて止まった。
641 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/06(土) 04:21:09 ID:arBuB0Pc0
2/6
「ちょっと休憩でもすんべか」
それぞれトイレや自販機でお茶などを買っていた。店の中には愛想
の悪い店主がいた。小腹が空いた俺は、こぶし程もある味噌田楽に
かぶり付きながら外をブラブラしていた。と、またもや自衛隊の車
が通り過ぎてゆく。何か演習でもあるのか?不審に思いながらも食
べ終わる頃には忘れていた。
少し休憩後、村に向けて出発した。ここからは小1時間程で着くら
しい。いい加減早く着いてくれよ・・・さすがに飽きた俺は少しイライラ
していた。と、窓の外を見るとまたもや飛行機が飛んでいる。ん?
また飛行機か?さっき見たばかりじゃん。変なの。確かにこんな山
奥で何度も見るのはちょっとおかしいなと思った。
時計を見ると5時半だ。山は夕焼けで真っ赤に染まっていた。
そろそろ着くかなと思った矢先、いきなり車がガタガタと揺れだし
た。え?ここからは舗装されてないの?不審に思った俺は親父に声
をかけた。しかし反応がない。何か変だなと思い助手席のお袋にも
声をかけたが同じく反応がない。二人とも真正面を向いて無言だ。
おかしいな、耳が遠くなったのか?
俺はふと後を振り返った。さっきまですぐ後をついてきてたはずの
2台がいない。あれ?どこいったんだ?確かにさっきまでいたのに。
この時俺は何か嫌な予感がした。と、親父が急ブレーキを踏んだ。
俺は思わず前のめりになったが、次の瞬間ギョッとした。
642 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/06(土) 04:22:22 ID:arBuB0Pc0
3/6
え・・・
車の目の前をボロボロの服を着た大人が数人、真横を向いて立ち止
まっていたのだ。それを見た瞬間、俺は猛烈な悪寒に襲われた。そ
れは間違いなく「まともじゃない」ものだった。両親はかわらず正面
を見て微動だにしていない。俺は真っ青になりながら固まっていた。
どれくらい時間が経ったのかわからないが、彼らは山の方向に向か
ってゆっくりと歩き始め、そして見えなくなった。すると車が動き
始めた。親父もお袋も無言だ。ヤバイ・・・二人とも何かに取り憑かれ
てるのか?俺はどうしていいかわからず目だけをキョロキョロさせていた。
バタバタバタバタ!
頭上をものすごい爆音を響かせながらヘリが飛んで行った。自衛隊
のヘリのようだった。どこから現れたのかもわからない。さすがに
これはヤバイと思い、後部座席から運転席の親父を揺さぶった。と、
消してあるラジオから何かが聞こえてきた。
ザザッ・・・摩訶般若波羅・・蜜多・・・ガー・・・ピー・・・
643 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/06(土) 04:23:23 ID:arBuB0Pc0
4/6
般若心経だ・・・俺は恐怖で声も出なくなっていた。と、バックミラー
から親父の目が見えた。真っ赤だった。黒目がなかった。俺は腰が
抜け、後部シートで丸く屈み、一心に「助けてくれ!助けてくれ!」
と念じた。
と、物凄い耳鳴りがしたかと思うと地面が揺れるほどの爆発音がし、
その瞬間、車が止まった。俺はガタガタと振るえながら恐る恐る目を
開けた。。。
何だ・・・あれは・・・
見ると目の前の山が燃えていた。
山の至る所から煙が立ち昇り木々は倒れ、何かの残骸が散らばって
いる。しかも俺は近眼なのに、あれだけ距離が離れているにも関わ
らずその様がハッキリと見える。。。そして、そして更に怖ろしい
ことに無数の手が空に向かって伸びている。。。
まさに地獄絵図だった。
俺は頭が真っ白になり、クチを開けてその様子を見ていた。そして
あまりの光景に意識がなくなるのが分かった。俺は聞いた。薄れゆ
く意識の中でハッキリと。。。
ザザッ・・・不明の・・・ガガッ・・・JAL123便・・・ピー・・・
644 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/06(土) 04:24:24 ID:arBuB0Pc0
5/6
「おい、着いたぞ起きろ」
俺は親父の声でハッと起き上がった。
親父とお袋がトランクから荷物を降ろしている。後の2台もすでに
到着して皆、荷物を降ろしていた。俺はボーッとしながら、さっき
の出来事が何なのか整理がつかないでいた。
「何やってんだ?寝ぼけてないで早く降りろ」
俺は夢だったのかな、と思いつつドアを開け車から降りようとして
ふとラジオを見て凍りついた。
ラジオの周波数は123を・・・そして時計は午後6時56分を指していた。
そうか・・・今日は8月12日だったか・・・
俺の到着した所、そこは上野村。今から25年ほど前(1985年8月12日
午後6時56分)日航ジャンボ機が墜落した御巣鷹山の麓の村だ。
俺の叔母の旦那さんの実家はそこで駄菓子屋をやっていた(当時)。
俺は親父に「暗くなる前に先に慰霊碑に行ってくる」と言った。親父
は何かを感じたのか「・・・そうか」と言い一緒に行ってくれた。二人で
慰霊碑に向かい黙祷を捧げた。そして親父がこう言った。
645 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/06(土) 04:25:17 ID:arBuB0Pc0
6/6
「おまえはこれから先、何があってもあの山には入るなよ。あの山は
地獄への門がぽっかりと開いてやがる。怖ろしいほど大きいのがな。
入ったらまず生きて帰ってこれねぇ」
俺はそれ以来、その村へは行っていない。
【天狗男シリーズ系】婆さんを捜して
608 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:28:12 ID:xfptnP3/0
1/11
あれは俺が中学生の頃だったからもう15年も前の話だ。
今夜はまた田舎での恐怖体験の話をしようと思う。
俺の田舎には山がある。平野の真ん中にポツンと出来た山だ。
大きさはまぁまぁで、そこは昔から様々な怪奇現象が起こる事
で地元では有名なスポットだった。山頂には戦国時代の城跡や
墓地があり、昼間は観光客等も来るが夜は誰も近づかない。
俺が中学に上がった頃、例のご意見番の婆さんが倒れ、山の麓
の病院に入院した。婆さんに身寄りは無い。以前は息子がいた
そうだが、若い頃に病気で亡くなったそうだ。婆さんの事を煙
たがってる村人もいたが、ウチは世話になったのでよく家族で
見舞いに行った。
見舞いに行くと婆さんは余程嬉しかったのか、皺くちゃな顔を
丸くしてニッコリと笑って喜んだ。婆さんはかりん糖が好きな
のだが総入れ歯なのでハンマーで砕いてあげては、よく食べさ
せた。そんな状態が1年ほど続いたある日、事件は起こった。
婆さんがいなくなった。元々、認知症のケがあったのだがこの
頃にはだいぶ酷くなっていた。病院や村は大騒ぎで、みんなで
手分けして捜索に当たった。ウチも俺と親父が参加した。病院
の話では、恐らく山頂へ向かったのではないかという話だった。
前にも脱走したことがあり、看護婦も手を焼いているという事
だった。俺と親父は懐中電灯を片手に後を追った。
609 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:30:33 ID:xfptnP3/0
2/11
時計を見ると午前零時だ。山の中なので、もちろん街灯などは
無い。麓で親父は俺に2つのものをくれた。1つはお札。もう
1つは赤い紙を鳥居の形に切ったもの20枚程だ。俺は何これ?
と聞いたが、親父は真剣な顔をしてこう言った。
「いいか、この山は鎧兜を身に付けた昔の亡霊が出よる。お札
は首から下げて絶対になくすな。紙の鳥居は亡霊が現れたら四
方に置き、いなくなるまでやり過ごすんだ」
親父は小さい頃からこの山で遊んでいた。いわば庭みたいなも
のだ。安全な所、危険な場所も熟知している。亡霊や物の怪に
も何度も遭遇したという。もらった鳥居はいわば魔除けのよう
なもので、親父が小さい頃にあの婆さんに教えてもらい使って
いたと言う。
俺はこんな夜中にこの山へ入るのは初めてだ。緊張しながらも
親父についてゆく。時折、夜行性の鳥の鳴き声が聞こえると、
ビクッとする。空は曇り月が隠れている。真の闇だ。俺は怖く
てしょっちゅう後を振り返った。
しばらくして親父が立ち止った。俺は何事かと思ったが、どう
やら婆さんの手拭いが捨ててあったらしい。俺は何だ手拭いか
と安心したが、親父は小さい声で「シーッ」と言うとしゃがむ
ように合図した。
シャン シャン シャン・・・
610 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:32:34 ID:xfptnP3/0
3/11
遠くから鈴の音が聞こえてくる。俺は背筋がゾクゾクし何とも
言えない嫌な感じがしてきた。親父は鳥居を出すように合図し
たので、二人を囲むように鳥居を置いて息を潜めた。と、何か
が揺らめいて見えた。
ボッ ボッ ボッ
鬼火だ。鈴の音の方向に見える。きっと親父の言っていた亡霊
に違いない。時折、鎧がきしむ音や槍がカチャカチャする音ま
で聞こえてくる。恐ろしいのは地面を這うように聞こえてくる
声とも叫びともわからない響きだ。
う"お"お"お"お"ぉ"ぉ"・・・
俺は怖くなり震えていた。明らかにこの世に怨恨を残して死ん
でいった魂達だ。俺達の30mくらい先を、麓から山頂に向けて
行軍していた。どれくらい時が経っただろう、親父が「もうい
いぞ」と言うので目を開けた。やつらはいなくなっていた。鳥
居は真っ黒になり焼け焦げていた。
俺たちは先へと進んだ。
しばらく登ると少し開けた場所に出た。古い石碑があったので、
懐中電灯で照らすと「首切り塚」と書いてある。自殺の名所だ。
俺の友達のお兄さんもここで亡くなった。昔ここで罪人の首を
斬って崖下へ投げ落としたのが名前の由来らしい。途端にゾク
ゾクしてきた。
611 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:34:48 ID:xfptnP3/0
4/11
いいか、ここじゃ何があっても振り向くなよ。何があってもだ。
その瞬間、親父が消えた。いや正確には周りの風景すべてが闇
と同化したと言うべきか。音や親父の声も聞こえない。俺はパ
ニックになりキョロキョロしたが、さっきのおやじの言葉を思
い出し、固まった。
ヒッヒッヒ・・・ヒッヒッヒ・・・
薄気味悪い声が聞こえる。と、背後から何かが近寄ってくる音
がした。
ザッ・・・ ザッ・・・ ザッ・・・ ザッ・・・
シャリシャリシャリ・・・
何か金属質のものを引きずりながら何かが近づいてくる。。。
親父もどこにいるのかわからない。すぐ後でハァハァと声がし、
そいつの息が首の後にかかる。俺の首を斬り落とす気か・・?
俺は恐怖で頭が真っ白になった。
振り向いてはいけない・・・振り向いては・・・
後にいるやつが刀(たぶん)を振りかぶろうとする気配がした。
瞬間、俺は耐え切れず後へジャンプした。途端に視界が戻り俺
は唖然とした。
613 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:37:02 ID:xfptnP3/0
5/11
崖っぷちだ・・・
見るとギリギリ崖っぷちに立っていた。もしもさっき刀をかわ
す為に前へジャンプしてたら・・・俺は腰が抜けその場にしゃ
がみこんだ。親父も無事だったようで、すぐに俺の所へ駆けつ
けた。「あぶなかったな」と言い辺りに塩を撒き始めた。
親父の話では今のは亡霊ではなく物の怪なのだという。亡霊に
化けて人を脅かしたりイタズラをする。もっともこいつらは、
かなりタチが悪い部類らしいが・・・
俺達は少し休んで再び登り始めた。
しばらく進むと何かの鳴き声が聞こえた。聞き耳を立てると何
やら人間の赤ん坊の泣き声のようだ。
オギャー オギャー
親父はボソッと「狢(むじな)だ」と言った。道を迷わせる為に
人の赤ん坊の真似をしているのだという。泣き声のする所へ向
かっても決して辿り着くことはなく、永遠に彷徨い続けるらし
い。ほどなくして俺達は池の脇に出た。ここまで来れば山頂は
近い。
親父が小石を拾えと言うのでいくつか拾った。池を通り過ぎる
まで、水面に小石を投げ続けるのだという。俺は何でだ?と思
って聞いてみた。
614 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:39:22 ID:xfptnP3/0
6/11
「今夜は満月だからな。池に映る月を使って河童が化かしやが
るんだ。あいつらは怪しい術を使うからな」
気が付くとさっきまで雲に隠れていた月が顔を出した。俺はよ
くわからなかったが親父に言われる通り、小石を投げながら池
の脇を通り過ぎようとした。と、急激に気分が悪くなってきた。
体が熱い。目まいがする。
親父は「まずい!」と言って俺を抱え、足早に池の向こうまで
遠ざかると木の陰に隠れ、持ってきたペットボトルの水を俺の
体にかけた。俺はわけが分からず親父に尋ねると、河童に攻撃
されたのだと言う。いつの間にか親父が置いた鳥居がブスブス
と煙を上げ、みるみる焦げてゆく。
「あいつらは遠くからでも人間を殺せるんだ。人の血を沸騰させ
て殺すんだ。あいつらに近寄っちゃなんねぇ」
俺はありったけの水を飲まされると、少しして落ち着いた。そ
して親父と猛ダッシュで山頂へと走り抜けた。ここまで婆さん
の姿は無かった。他の村人達が見つけてくれていればいいが、
安否が不明なので俺達はとりあえず山頂まで行ってみることに
した。
そこは地獄だった。
617 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:42:03 ID:xfptnP3/0
7/11
おびただしい数の亡霊達が蠢き、物凄い瘴気が辺りを包んでい
た。なぜこんなにたくさんいるんだ?とてもじゃないが、俺達
二人でどうにか出来るレベルを超えている。すると親父がこう
言った。
「たぶん婆さんが集めたんだ」
俺はそんな馬鹿な・・・と思ったが確かにそれしか考えられない。
元々、色々と不思議な術を使う人だった。亡霊を集めることな
ど簡単なのかも知れない。普段はそんな事はしないが、認知症
が進行して無意識にそれらのちからが暴走しているのかも・・・
「こりゃぁ無理だ・・・」
親父が諦め気味につぶやいた。俺もそう思った。幸い他の村人
はまだここには来ていない。まぁ来れる人も少ないだろうが・・・
ふと高台に目をやると、白装束の小柄な人間が動いてるのを見
つけた。婆さんだ・・・一心不乱に何かを祈っているようだった。
あの亡霊の群れを突破して婆さんに近づくことは不可能だ。し
かも婆さんは気がふれた状態なので、何をするか分からない。
俺は親父と相談して朝までここで待つことにした。日の出まで
あと1時間程度だった。
と、背後に嫌な気配がした。
619 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:44:35 ID:xfptnP3/0
8/11
う"お"お"お"お"ぉ"ぉ"・・・
しまった!前にばかりいると思っていた亡霊達が後方にもいた
のだ。囲まれているぞ・・・俺と親父は青ざめた。咄嗟に鳥居
を置くが見る見る焦げてゆく。残りは12枚、つまり3回分しか
ない。とてもじゃないが夜明けまでもちそうにない。。。
婆さんは高台の祠に向かって一心不乱に祈祷をしている。誰の
目にもまともな状態ではないのが分かる。鳥居が凄まじい勢い
で火を噴出した。戦国武者の亡霊が目の前を横切ってゆく。触
れただけで魂を抜かれそうだ。。。
いよいよ最後の鳥居が燃え尽きようとしている。空は薄っすら
と明るくなってきてはいるが、とても日の出まではもたない。
親父は自分のお札を俺の首にかけると、鳥居が燃え尽きたら全
力で麓まで走るように指示し、俺の体に塩を塗りたくった。
と、いつの間にか目の前に婆さんが立っていた。
「おやおや、こんな所にも山さん(亡霊のこと)がおったがねぇ」
そう言うと婆さんは何かの印を結んだかと思うと、周囲の亡霊
達が一斉にこちらに向けて歩き出した。「婆さん、俺だよ!わ
からないのかよ!」と怒鳴ったが正気ではないからなのか俺達
を亡霊だと思っている。
620 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:47:27 ID:xfptnP3/0
9/11
そして鳥居が燃え尽きた。親父は逃げろと言ったが恐怖で足が
動かない。婆さんはヒャ~ッヒャッヒャッヒャと笑っている。
その様は完全に人間ではなく、物の怪に取り憑かれているのが
わかる。
婆さん・・・
かつて呪いから俺を助けてくれた婆さん。その姿はもうここに
はなかった。首からかけたお札が2枚とも弾け飛んだ。俺と
親父は地面にしゃがみこんだ。もうダメだ・・・俺は死を覚悟
した。と、その瞬間ポケットから何かが転げ落ちた。
う"っ ぐっ・・・
婆さんの様子がおかしい。足元を見ると、かりん糖が転がって
いた。俺は咄嗟にそれを拾うと婆さんのクチの中へ詰め込んだ。
ん゛ん゛~ん゛~~う゛う゛う゛~゛ん゛
婆さんの中から何かが飛び出した気がした。婆さんは完全に取
り憑かれていたのではなかったのだ。
お"の"れ"ぇ"・・・
622 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:50:17 ID:xfptnP3/0
10/11
婆さんの体から飛び出た、強い怨念の塊のようなものが叫んだ。
瞬間、物凄い突風が渦巻き状に吹いて、亡霊達を吹き飛ばした。
俺は何が起こったのか分からなかった。
怨霊の塊が婆さんのクチを借りて何か言った。
「おのれ口惜しや!こやつには・・・こやつには強いxxxが憑いて
おるから落とせん、口惜しやぁ」(xxxはよく聞こえなかった)
その瞬間、朝日が辺りを照らし始めた。断末魔のようなうねり
が周辺を包み、山頂には静寂さが戻った。俺は婆さんを抱き起
して呼びかけた。婆さん!婆さん!
婆さんはぐったりしていたが、一言だけ「すまなかったね・・・」
と言うと意識を失った。ほどなく村人達が駆け付けた。婆さん
はそのまま病院へ運ばれ集中治療室に入ったが、結局そのまま
亡くなった。
623 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:55:13 ID:iqJ3K7rjO
11/11
葬儀の日、婆さんには身寄りがいないので親父が喪主を務めた。
俺は棺の中にかりん糖をたくさん詰めてあげた。もしこのかり
ん糖がなかったら、俺と親父はどうなっていたか分からない。
ありがとう婆さん。そして助けられなくてゴメン。。。
俺はその後しばらく悲しさで呆けていたが、婆さんを守り切れ
なかった悔しさから単独で深夜の山頂踏破を数回行った。そん
な俺を見て親父が言った。
「いいか、自然ってのはな、人の味方にもなるし敵にもなる。そ
してちからってのはな、他人を守れて初めてちからなんだ。人が
自分のことを守るのは心が弱いからだ。悔しかったら強くなれ」
その言葉がその後の俺の人生の指標となった。俺は他人を守れる
強さを身につけようと心に誓った。
あっちで見ててくれよ、婆さん。
【天狗男シリーズ系】ワンピースの女とBAR
414 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:16:18 ID:5P0FeC7b0
1/12
あれは俺が社会人になりたての頃だからもう8年も前の話だ。
俺の趣味は隠れ家的なBARを探すこと。休日は落ち着く店を
探して最寄り駅周辺を歩き回る。今日はたまたま見つけて入っ
たBARでの恐怖体験を書いてみる。
某ゲーム会社にプランナーとして入社出来た俺は毎晩遅くまで
企画制作に没頭していた。休日も頭の中は企画のことばかり。
いつもノートPCを持ち歩き、面白いアイデアを見つけると即
入力していた。
その日、俺はいつものように駅前のファミレスで夕飯を済ませ
ると、いつものようにブラブラと歩き始めた。ちょうど日が暮
れきる寸前で夜の街灯が眩しく光る。ガード下の喫煙所で一服。
土曜の晩ということもあってか、街は若者でごった返している。
煙草を吸いながらしばらくボーッと夜の街を眺める。と、一人
の女性に目が行った。
季節は初夏。半袖の白いワンピースに白いサンダル。長い黒髪
で駅から繁華街に向かってゆく。パッと見、清楚な美人という
感じで、なんとなく興味を持った俺は煙草の火を消すと、彼女
がどこに向かうのか気になり同じ方向に向かって歩き始めた。
彼女はゆっくりと歩いていたようだったが、なかなか追いつけ
ない。人ごみの中を彼女を見失わないようについて歩く。段々
と裏通りのほうへ向かって進んで行った。と、一件のBARに
入っていくのが見えた。
415 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:17:40 ID:5P0FeC7b0
2/12
そこは雑居ビル。彼女が入っていった店は地下1階の店のようだ。
俺は「ふ~ん、こんな所にBARがあったんだ」と辺りを軽く
見回し中へ入っていった。店には看板が出ていない。俺はこう
いった店が好きでwktkしてきた。重い扉を引き店の中に入る。
暗めの照明にシックな落ち着いたデザインの内装。静かに流れ
ているスタンダードJAZZ。初老のバーテンダー。どれを取
っても俺の琴線に響く感じだった。「これはいい店を見つけた」
と俺は喜んだ。目を輝かせて店内を見回しながら俺は気づいた。
あれ? そういえばさっきの女性がいないな。
オーダーを聞かれたのでジントニックを注文。ワンピースの女性
は違う店に入ったのかな?と思い、深く考えなかった。お酒が入
り気分がよくなった俺はノートPCを出し新規案件用のシナリオ
を書き始めた。驚くほど良いアイデアがバンバン出てくる。
俺は「そうだ、大人向けの推理小説的なゲーム企画を書いてみよ
う」と思い、主人公が通うBARでの出来事や事件を通して謎を
解いていく内容にすることに決めた。BARのモデルはこの店に
することにした。
しばらくの間、俺はこの店に通った。
416 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:18:49 ID:5P0FeC7b0
3/12
シナリオは進んだ。もともと文章いじりが好きだった俺は、この
企画に夢中になった。週末、彼女がうちに遊びに来た。仕事が忙
しかったので会うのは3週間ぶりだ。と、開口一番、彼女が言っ
た。「あれ?顔色悪くない?目の下にクマが出来てるよ?」
え?何言ってんだ? と俺は思ったが鏡を見てみた。確かにクマ
のようなものがあったが特に疲労は感じない。俺は仕事が忙しか
ったからかな、などと言いそのことについてはそれで終わった。
彼女はまだ大学生。久しぶりということもあってかお互い色んな
話をした。
あ、そういえばいい店見つけたんだ。
俺は例のBARの話をした。彼女が行ってみたいというので夕飯
後、連れて行くことにした。駅ビルのレストランで夕飯を済ませ
ると、腹ごなしにゲーセンで遊んだ。彼女はUFOキャッチャー
で縫いぐるみを取ってくれとせがむので頑張ってみた。取れなか
ったorz (ちなみにこの子は以前書いた伊豆事件を一緒に遭遇した
彼女だ)
小1時間ほど遊びBARへ向かうべく、ゲーセンから出て駅前の高
架に出た時、視界に何かが入ったことに気がついた。
あの時の白いワンピースの女だ。
417 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:27:20 ID:5P0FeC7b0
4/12
俺は何故かまたあの女が例のBARへ向かうと確信した。俺が何か
を見ていることに気づいた彼女は「また可愛い子にでも見とれてる
のぉ~?」と冷やかしてきたが、俺は今日こそあの女の行き先を確
かめようと、彼女の手を引き足早に女の後を追った。
しかし途中で彼女が気持ち悪くなってきた、と言う。急いで歩いた
からか?俺は路肩でしゃがみこむ彼女を介抱しながら、完全にワン
ピースの女を見失ってしまっていた。しばらくしたが彼女の具合が
戻らないのでタクシーを拾い、自宅へ帰った。
彼女はしきりにごめんねと謝っていたが、俺は気にせず休んでいろ
と言い、氷を買いに部屋を出て近所のコンビニに向かった。レジで
支払いを済ませている最中、ふと店の外を見て俺は固まった。あの
女が店の外を通り過ぎたのだ。あのワンピースの女が。
えっ!? あの女なんでここにいるんだ??
俺は急いで買ったものを持って店外へ出たが、すでにあの女の姿は
見えなかった。と、俺は急に部屋に残してきた彼女が心配になり、
猛ダッシュで部屋に戻った。駅から俺の自宅までは歩いても30分は
かかる。あの女は確かにBARの方向に歩いて行った。俺の自宅と
は真逆の方向だ。俺は猛烈に嫌な予感がした。
部屋に戻ると彼女の姿がなかった。
419 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:30:13 ID:5P0FeC7b0
5/12
え、どこに行ったんだ?部屋中探したが見つからない。と、そこに
携帯が鳴った。彼女からだった。近くの路地にいるから迎えにきて
と言う。おおよその場所を聞き、即効で向かった。いた。彼女が道
にうずくまっている。俺は抱きかかえ部屋へと連れて行き寝かせた。
俺はどうしてあんな所にいたのか、ワケを聞くと彼女は話し始めた。
俺がコンビニに向かった後、何ともいえない嫌な感じ?がどんどん
近づいてくるのを感じたそうだ。このままでは危ないと思い部屋を
出たと言う。部屋を出た後は彼女を追ってはこなかったので、あそ
こで俺に連絡したらしい。
じつは彼女もある程度、あっち側の事がわかる人だ。但しあくまで
感じるといったレベルだが。彼女曰く、その嫌な感じは俺を狙って
いるわけでもなさそうだと言う。では一体。。。俺はその晩、彼女
を介抱しつつ考えた。
あのワンピースの女はあっち側の人なのか?それならBARで消え
たのも合点がいく。しかし何で俺に付きまとう?あのBARに行っ
たからか?ただの客なのに。。俺は色々と考えたが納得のいく回答
は得られなかった。
翌日、彼女はすっかり元気になり自宅へ帰っていった。彼女は帰り
際に「俺君が言ってたBARには行かないほうがいいみたいだよ」
と言っていた。彼女も何かを感じているらしい。俺は確かにそうか
も知れないと思ったが、折角見つけたお気に入りの店を失いたくな
いという気持ちと、あのワンピースの女の謎をどうしても知りたか
った。
その晩、気がつくと俺はあのBARの前に立っていた。
420 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:31:53 ID:5P0FeC7b0
6/12
すでに日が暮れて真っ暗だ。辺りは人影もなく夏なのに妙にひんや
りとした空気が流れている。いつものように重い扉を引き、店の中
へ入った。と、わが目を疑った。いたのだ。あの女が。カウンター
の1番奥に座っているじゃぁないか。
やっぱり人間だったのか。。。
俺は安心するといつものようにジントニックを頼んだ。きっと自宅
の近くで見たのは別人だったのだろう。俺はそう思い、ノートPC
を開け、今までの出来事を整理した。ついでだからあのワンピース
の女も今回の企画に盛り込もうと、シナリオに追加した。うん、我
ながら面白い作品に仕上がりつつあるぞ。
すっかりご機嫌になった俺はそのまま一気にシナリオを書き上げた。
ふと時計を見ると深夜2時近くなっていた。俺はヤバイ、そろそろ
帰らなきゃ明日の仕事に影響が出ちまう、と思い支払いを済ませた。
ふと目線をカウンターの奥に向けると、あのワンピースの女はまだ
そこにいた。連れもおらず、ずっとひとりで飲んでいたのか?
この時、初めて初老のバーテンダーが自分から口を開いた。
「・・・明日はいらっしゃいますか?」
え?明日?う~ん明日は月曜で忙しいからちょっと無理かな。と言
うとそのバーテンダーは無言で背中を向け、酒瓶を拭き始めた。俺
は何か変だな、と思いながらも時間も遅いしその晩はそのまま店を
後にした。
421 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:33:39 ID:5P0FeC7b0
7/12
翌日、確かに仕事は忙しかった。しかしあの昨夜のあの初老の言葉
がどうしても気になった。俺は仕事を早々に切り上げると、あの店
に向かった。いつもの雑居ビルに着くと、地下への階段を降りて行
った。重い扉を開けようと手を伸ばした瞬間、何かが足元に見えた。
花だった。
BARの扉の脇に透明のビンに入れた花が置いてあったのだ。俺は
なんだこれ?と思いしゃがんで眺めていた。と、誰かが階段を降り
てくるのがわかった。ワンピースの女だった。しかし今日は白いワ
ンピースではなく、黒い喪服?を着ていた。
「あの・・・こちらに何か御用ですか?」
俺は話しかけられたことに驚いて、え!?あ、あの、いつもこのお
店に通ってる者ですけど・・・と言うと喪服の女は「え・・・」と怪訝そ
うな顔をしてこんなことを言った。
「あの・・・こちらは1年前から営業しておりませんよ・・・」
俺は何を言ってんだこの人、と思い「え?ここ数ヶ月、ここに通っ
てたんですけど・・・」と言った。喪服の女はしばらく黙っていたが、
話し始めた。
422 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:35:14 ID:5P0FeC7b0
8/12
この店は1年前に火事で全焼し、従業員と客が全員死亡したと言う。
その後1年経つがテナントの入居者が見つからず、扉は今も閉じら
れたままだと言う。喪服の女は、その時亡くなった客の双子の姉で
今日朝、1周忌法要の前にここに立ち寄り、花を置いたのだと言う。
俺はしばらくポカーンとしていたが、ふと喪服の女に聞いてみた。
「あの・・・その双子のお姉さんって白いワンピースを着てませんで
したか?」
喪服の女はその場で泣き崩れた。
正に火事の日、その服装で出かけたのだと言う。俺はしばらくその
場に立ちつくしていた。重い扉を引いてみた。確かに硬く閉ざされ
ていた。その後、俺は喪服の女に俺が遭遇した事件について語った。
喪服の女は、きっと姉は突然の死が理解出来ず、あの店で諭してく
れる誰かが来るのを待っていたのだろうと言った。
俺は喪服の女からお礼を言われ、彼女の家に寄らせて貰い仏壇に手を
合わせた。俺は彼女の姉と従業員(初老のバーテンダー)が成仏できる
ようにと祈った。何とも言えないモヤモヤとした気持ちに包まれた。
しかし・・・
424 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:45:28 ID:KoE/j8HLO
9/12
この事件はこれで終わりではなかった。
翌日、俺は会社でノートPCを立ち上げた。例の企画のシナリオを
企画書に落とし込む為だ。まだ昨日の出来事で気持ちがブルーだっ
たが、気持ちを切り替えて作業を始めた。と、テキストを見ていて
何かおかしな事に気がついた。
あれ、おかしいな・・・なんか内容が変わってね?
俺が書いたシナリオでは主人公がBARで起こった殺人事件を、そ
の場で解決していくストーリーになっていた。しかしおかしい。読
んでいくと主人公が殺されることになっている。犯人も客の男だった
はずだが、後から追加したワンピースの女になっている。
おかしいな?いつ書き換えたんだっけ?
俺は頭を整理しながら、これじゃダメだよな。と思い、最後に書き
上げた時と同じように一気に書き直した。
きっと疲れてるんだ・・・昨日の今日だし。と、その時彼女からメール
が入った。「今日、帰りに寄るね♪」俺は「了解」と返信しといた。
俺はその後、違う企画の仕事をし帰宅した。家に帰るとすでに彼女が
来ていて夕飯を作ってくれている。気が滅入っていた俺にとっては
すごく救われた気がした。
ほどなくして出来上がり一緒に食べた。美味かった。料理上手な彼女
ほどいいものはない。俺は悦に入っていた。しばらくアレコレおしゃ
べりをしていたが、ふと彼女が仕事のことを聞いてきて、今作ってる
企画の話したらを聞きたいと言った。俺は例のシナリオを見せようと
思いノートPCを取り出した。
425 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:49:12 ID:KoE/j8HLO
10/12
テキストデータを開き、はいコレ。と見せてあげた。最初は楽しそう
に読んでいた彼女だったが、次第に表情が曇ってゆく。不振に思った
俺は、どした?と聞くと「何これ・・・変・・・」と言う。ん?おかしかっ
た箇所は直したのに・・・と思い、読んでみた。
え・・・なんだこれ・・・
物語の舞台はBARではなく主人公の部屋になっていた。。。主人公
が彼女と二人でいるところを暴漢が侵入、二人とも殺されてしまい、
それを白い服と黒い服の姉妹が推理解決していくという内容に変わっ
ていた。なんだこりゃ?職場の誰かが書き換えたのか?イタズラか?
ワケの分からない俺を見て彼女も不安そうだった。と、玄関のチャイ
ムが鳴った。ピンポ~ン・・・咄嗟に俺は何かがヤバイと思い、黙って
聞き耳を立てた。彼女にも指でシーッと合図をした。何度かチャイム
が鳴った後、静かになった。俺はゆっくりと立ち上がり、各窓の鍵を
確認した。
ヤバイ・・・何かがヤバイ・・・
過去、何度か起こったあっち側の出来事がフラッシュバックする。こ
れはいったいどういう事なんだ。どうしてテキストデータのシナリオ
が勝手に書き換わってるんだ・・・しかも主人公って・・・もしかして俺か?
しばらくして今度は玄関をドンドンドン!と叩く音がした。彼女は泣き
出しそうだ。俺もパニクってどうしたらいいか分からない。
426 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:51:46 ID:KoE/j8HLO
11/12
咄嗟に俺はノートPCを抱え、2階の窓を開けた(この頃は2階建のアパ
ートに住んでた)。そして思いっきりそれを1階のコンクリートに向けて
叩きつけた。
バキャッ
ノートPCは文字通り木っ端微塵に吹き飛んだ。途端に玄関を叩く音が
止まった。俺は泣いてる彼女を奥の部屋へと連れて行き、台所から包丁
を持ってくると、恐る恐る玄関のドアを開けた。
誰もいなかった。
俺はゆっくりとドアを閉めるとヘナヘナとその場に座りこんでしまった。
奥から彼女が泣きながら出てきて抱きついてきた。俺は彼女の頭を撫で
ながら、理由はわからないが、もう大丈夫だと思った。
翌日、俺は会社を休み、例のBARの雑居ビルを管理してる不動産屋を
訪れた。そして1年前の事件について聞いてみた。すると確かに1年前に
事件は起こったという。しかしそれは火事ではなく、店にピストル強盗
が入り、店員と客を全員射殺して逃げたという内容だった。
俺はおかしいな・・・あの喪服の女と話しが違うと思い、亡くなった方の
ことを聞いてみた。
427 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/01(月) 07:54:19 ID:KoE/j8HLO
12/12
「はい、そうですね・・・あのとき亡くなったのは初老の店員とお客とし
て来店されてた方2名・・・あ、この二人は姉妹ですね」
え・・・姉妹・・・?
俺はしばらくキョトンとしたが・・・理解した。
あの喪服の女も犠牲者だったのだということを・・・
俺は花屋で仏花を2つ買うと1つは例のBARに、もうひとつは喪服
の女の家の前に置いてきた。あの時俺は喪服の女の家に上がり、仏壇
に手を合わせた。しかし今日きたそこには、ただの空き家しかなかっ
た。きっと半ば強引に人生の幕を下ろされた姉妹の怨念が、今回の事
件を引き起こしたのだろう。
俺は数ヶ月間、あっち側の店に通っていたことにまったく気がつかな
かった。今思い出せば確かにおかしな点もあった。俺以外に客が来な
かったのである。俺はそれをまったく不振に思わなかった。そして、
この悲惨な事件に遭遇した人たちを事もあろうか、知らない事とはい
えゲームにしてしまおうという、アホな企画を進めていたのである。
そんな人間として未熟なところがあの姉妹の怒りに触れ、俺自身に危
険が降りかかったのだろうと思った。
あれから8年。
その後、お気に入りのBARはいくつか見つけたが・・・決してそれらの
店では仕事を持ち込むような真似はしていない。
【天狗男シリーズ系】待つ女
304 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 15:27:06 ID:BgqnUARj0
1/5
あれは俺が前のマンションに住んでた頃だから2年くらい前の話だ。
今日はそのマンションで起きた恐怖体験を書いてみる。今回も都会
編だ。
マンションは6階建てで俺は最上階に住んでいた。見晴らしも良く
最寄駅も近い。その日、俺はいつものように仕事から帰り、1階か
らエレベータに乗った。ちょうど3階を過ぎようとした時、目の前
の部屋の前に女性が背中を向けて立っているのが見えた(エレベ
ータのドアはガラスで内外から見える)。
あの部屋の住人の知り合いかな?
俺はたいして気にも留めず自分の部屋へと帰った。翌日、また仕事
から帰りエレベータに乗り込んだ。そして3階を過ぎようとした時、
今日もあの女性があの部屋の前で立っているのに気がついた。何だ?
今日も来てるのか?なんでずっと外で待ってるんだ?時計を見ると
深夜0時近かった。不審に思ったが自分の部屋の帰るとすぐに忘れた。
そしてその翌日。金曜なので飲んで帰りマンションに着いたのが、
午前1時過ぎだった。いつもにように1階からエレベータに乗り6階
を押そうとした。と、この時酔っていたので間違えて5階を押して
しまった。アチャ~と思ったが、まぁ酔い覚ましに5階から階段を
歩くかと思い6階ボタンは押さなかった。
上機嫌で鼻歌を歌いながら3階に差し掛かった時、その酔いは一気
にさめた。いたのだ、あの女が。今日もあの部屋の前に立っている。
そして通り過ぎようとした瞬間、その女がゆっくりと振り返った。
ギリギリ顔は見えなかったが俺が乗っているのが向こうからも見え
てしまった。
305 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 15:29:38 ID:BgqnUARj0
2/5
なぜか本能的に危険を感じた俺は、5階でエレベータが停まると、
すぐに、足音を立てず6階へと非常階段を上って息を潜めた。エレ
ベータは下がっていったかと思うと3階で停まり、再び上階へ上が
ってくる音がした。心臓がバクバク鳴り始めた。エレベータは5階
で停まり、誰かがウロウロする足音がしている。。。
俺は音を立てずに自分の部屋に入ると、ゆっくりと鍵を締めた。
ストーカーか?異常者か?どうして俺についてエレベータを昇って
きたんだ?見られちゃまずいことでもあるのか?しばらく考えたが
結論が出ないので、しばらく様子を見ることにした。場合によって
は不動産屋に報告しなければならない。女は朝はいない。夜の何時
~何時までいるのか不明だが、もし今度見かけたら警察に電話しよ
うかなどと真剣に考えていた。
ここで一旦整理する。
女が立っているのは3階の302号室だ。1フロアーに部屋は3つ。なの
で302は中央かつエレベータの正面に位置している。そして非常階段
はエレベータの横。なので女に気づかれず階段から3階を突破して
6階に上がるのは非常に困難だ。
しかしよく考えたら、なんで俺がコソコソと悩まなくてはならない
んだ?と思い、だんだんと腹が立ってきた。よし、今度見つけたら
文句を言ってやろうと心に決めた。女は土日には現れなかった。な
んだ、つまんねぇ、折角文句言おうと思ったのに。
306 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 15:31:11 ID:BgqnUARj0
3/5
月曜日。俺は女のことなどすっかり忘れて終電近くまで仕事をして
帰宅した。頭の中にはもう、あの女のことなど微塵もなかった。エレ
ベータが3階を通り過ぎたが、そこには誰もいなかった。その時点で
やっと女のことを思い出し、あ~あのスト-カー女やっと諦めたか!
と、ご機嫌になった。
俺が甘かった・・・
エレベータが5階に差し掛かった時、我が目を疑った。いたのだ、あの
女が。502の前に立っているではないか。俺は硬直した。ヤバイ!女は
こっちを振り返った。またもやギリギリ顔は見えなかったが、俺が6階
に住んでることがバレてしまった。俺はパニクって6階に着くと同時に
すぐに1階のボタンと閉じるボタンを連打した。間違いなく高橋名人の
16SHOTを凌駕したかと思うほどの速さだった。そしてそのまま1階に向
かった。
エレベータが5階を過ぎた時、すでに女はなかった。予想通りというか、
きっと階段から6階に上がるだろうと思ったのが的中したようだった。
1階に着いた俺は壁に沿って外へ出て、非常階段が見える位置まで移動
した。女が6階の踊り場をうろうろしてる姿が見えた。やはりバレてい
たか。。。どうしよう。。。
あの手の異常な女には近づかないに限る。どうする、友達を呼ぶか、
警察を呼ぶか・・・しばらく思案していると女の姿が消えた。おかしいな?
どこかに隠れているのか、帰ったのか・・・しかし帰るなら玄関から出る
しかないので、必ずここから見えるはず。。。
結局30分ほどそこで待ってたが動きがないので、思い切って自分の部屋
へ向かった。非常階段で足音を立てずに上ろうと思った。ドキドキしな
がら進んだが、結局6階まで女の姿は発見できなかった。なんだ、やっぱ
りどこからか帰ったのか。よかった。
307 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 15:33:50 ID:BgqnUARj0
4/5
俺は自分の部屋に入ると、蛍光灯のヒモを引っ張り、電気をつけようと
した。その瞬間、ベランダから何かの気配がして固まった。
・・・何かが・・・いる・・・
俺は蛍光灯のヒモをゆっくり離すと、聞き耳を立てた。よく見るとカー
テン越しに人の影が見える。。。たぶんあの女だ。。。俺は考えた。ど
うやって入った・・・?そして俺は思い出した。隣の部屋が空き部屋だ
ということを。。。
何度か引っ越しをしたことがある人なら知ってるかもだが、物件が専任
ではない場合、鍵が開けっぱなしになっていたり給湯器や水道メーター
の戸の中に鍵が隠してある場合が多い。おそらくそれで中に入り、ベラ
ンダからうちのベランダへと侵入してきたのだ。
さすがにここまできては警察に電話するしかない。
俺は外に聞こえないよう注意し、警察に電話をした。俺はそのまま音を
立てずに部屋から出て、6階の踊り場でパトカーを待った。万が一、女が
出てきた場合は完全な不法侵入なので俺がとっ捕まえればいい。それだ
けの筋力はある。
ほどなく無音でパトカーが到着、お巡りさんが2人、エレベータで昇って
きた。俺は事情を説明し、1人のお巡りさんが空き部屋から、もう一人が
俺の部屋から入り、ベランダで女確保、という作戦でいくことになった。
俺はこの時ほど、お巡りさんが頼もしく思えたことはなかった。
そして作戦決行。ベランダに突入した。
308 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 15:35:21 ID:BgqnUARj0
5/5
・・・誰もいなかった。そう、ベランダには誰もいなかったのである。
そんな馬鹿な! と、俺は自分の部屋(601)と空き部屋(602)も探したが
女の姿はどこにもなかった。一応、その隣の部屋(603)も事情を説明して
お巡りさんが入って行ったが、女の気配はなかった。
おかしい。どう考えても消えるわけがない。俺は狐につままれたような
気がしたが、ふと302号室がどうなっているのか気になり、お巡りさんに
一緒に行ってもらった。
事情が事情だけに不動産屋にも来てもらった。
302号室には確かに人が入居しているという。不動産屋さんが鍵を開けよ
うとしたら、すでに鍵が空いていた。中からは異臭がした。。。ここから
先はあまり書きたくないが・・・
死後1ヵ月ほど経過していたらしい。俺は怖くて中に入らなかった。たく
さんの警官がきた。俺は警察へ呼ばれて事情聴取をされた。しかし完全に
自殺という状況だったので、俺が疑われることはなかった・・・しかし・・・
自殺していたのは男性だった。
では、あの女性はいったい。。。そういえば俺はあの女性の顔を1度も見
ていない・・・結局、それがきっかけで俺は引っ越した。なので、それ以来
あの女を見ることもなくなった。しかし今でもあの女が誰だったのか・・・
謎のままだ。
今でもエレベータに乗ると思い出す。おかげで目標階に着くまで目を閉じる
癖がついてしまった。。。
【天狗男シリーズ系】まだ早い
259 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:01:38 ID:BgqnUARj0
1/7
あれは今から5年くらい前の話だ。
子供の頃の話が続いたんで今日は社会人になってからの
恐怖体験を話そうと思う。田舎には田舎の、都会には都会
の怖さってもんがある。これはその顕著な例だったと思う。
俺は某ゲーム会社で働いている。通勤にはY浜線を使って
いたが、これが結構「飛び込む」ことで有名な路線だ。
しかし俺自身は幸運にもそれらに遭遇することはなかった。
この日までは・・・
その日はいつものようにお昼前に起きて電車に乗った。俺
の会社はフレックスなので何時に出勤してもいいんだ。駅
に着くとちょうど電車がきた。時計を見るとお昼の12時40
分だった。お~空いてる空いてる。電車には誰も乗ってい
なかった。いつものようにi-Podで音楽を聴き始める。
朝はJAZZと決めている。鼻歌まじりで外の風景を眺めてい
たが、何か違和感がある。天気は快晴。春先で穏やかな日
差しに包まれている。しかし動感がない。。。というか止
まってる1枚の写真を見ている感じだった。と、そのとき
電車が駅を通り過ぎた。
え?
260 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:02:53 ID:BgqnUARj0
2/7
この電車は各駅停車だ。なんで通り過ぎたんだ?俺の最寄
り駅は小さいので各駅停車しか止まらない。それが他の駅
を通り過ぎることなどあり得ないのだ。おかしいな、運転
手が間違えたのか?よく考えたら乗ってから車内アナウン
スもなかった気がした。俺はキョロキョロ見回したが電車
は普通に走っている。少し不安になったが、ほどなく次の
駅に電車は停まった。
プッシューーー・・・ッ バタン
コツコツコツ・・・
扉が開き後の車両に人が乗ってきた音がした。俺は思い過
ごしかと安心した。そして電車は次の駅でも停車した。結
構大きな駅だ。しかしおかしなことに扉が開いても誰も乗
ってくる気配がない。ホームには結構な数の人が並んで立
っている。ん?なんでみんな乗ってこないんだ?
おかしなことに皆、電車が来る方向を見ている。まるで早
く電車が来ないかな、といった表情だ。いやいや、来てる
じゃん。みんな早く乗ろうよ。と思っていると誰かが同じ
車両に乗ってきた。うん、そうだよね。みんなも早く乗れ
ばいいのに。しかし結局、同じ車両に乗ったのは一人だけ
で電車は動き始めた。
この駅で降りとけばよかった・・・
261 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:04:06 ID:BgqnUARj0
3/7
多少の違和感はあったが、あまり気にもせず気を取り直し
て音楽を聴いていた。しばらくぼんやりしていたが、ふと
目線を右方向に移すと視界にさっき乗ってきた人が映った。
女子高生かな?黒い制服をきた女の子だった。無言でうつ
むいている。床には大きなバッグを置いているようだった。
あんなに大きな荷物じゃ大変だな、などと思って目線を戻
し外を見ていた。
ボトッ・・・
何か音がした。ん?何の音だ?俺はキョロキョロ見回した。
特に異常はない。気のせいかと思い視線を女子高生に向け
た。あれ?心なしか彼女の荷物が大きくなっている気がし
た。おかしいな、荷物あんなに大きかったっけ。。。しば
らくボーッと見ていたが何か違和感がある。しばらくして
その理由がわかった。
瞬間、全身の毛が逆立った。
262 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:05:08 ID:BgqnUARj0
4/7
俺の人生でこの時ほどヤバイと思ったことはなかった。お
そらく前回の神社事件以上のレベルだった。彼女の大きな
荷物だと思っていたものは、血だった。よく見ると右足が
切断されていて床に転がっている。どす黒い血がじっとり
と流れ出して徐々に広がっているのだ。黒い制服というの
も元は白いらしく、血で黒く見えていたのだった。
俺は後の車両の乗客も見てみた。首がなかった。この時初
めて事態の異常さと相当な危険度を感じた。全身からいや
な汗が噴き出た。とにかく降りなければ!俺は次に停車し
てドアが開いたら即効で逃げようと思った。ほどなくして
電車は次の駅に停まった。
ん?なんだこの駅?
見たこともない駅名だった。というか目の焦点がよく合わ
ず駅名がよく見えない。しかも一向にドアが開く気配がな
い。ほどなくして電車が動き始めた。俺は咄嗟に窓から飛
び出ようと思ったが、窓がビクともしない。しかしよく考
えたら「まともではない場所」で外に出たら逆に危険な気
もした。生きて帰れなくなるからだ。
女子高生を見た。両足ともなかった。血が噴き出ている。
と、後のほうから何やら音が聞こえた。
ガラガラガラ・・・バタン!
263 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:06:47 ID:BgqnUARj0
5/7
車両連結部のドアを開け閉めしているような音だ。その音
がだんだん近づいてきているような気がした。ヤバイ、何
かが来る!言葉では言い表せないような劣悪な波動?を感
じて俺は先頭車両のほうへ移動した。女子高生の前を通り
過ぎた。視線を向けずにいたが、すでにバラバラだったの
がわかった。
そして1番先頭の車両に着いた。空気が異様に冷たい。俺
は運転席のドアを開けようとしたがビクともしない。とい
うか運転手がいない。。。と、電車がトンネルに入った。
外は真っ暗だ。え?トンネル?当然、この路線にはトンネ
ルはおろか高架すら無い。車内の電気が消え非常用の赤色
灯?になった。
バタン!
咄嗟に振り向くと連結部のドアを開け車掌?が入ってきた。
さっきからこっちへ向ってたやつだ。暗くて顔が見えない。
手には金属製の長いアイストングス(氷を挟む道具)のよ
うなものと、黒い大きな布袋を持っている。袋の中では何
かがゴソゴソと動いている。。。
ヤバイ・・・見つかった!
264 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:08:33 ID:BgqnUARj0
6/7
どんどんと車掌がこっちに近づいてくる。本能が逃げろと
言ってるが体が動かない。情けないことに失禁寸前だった。
車掌は無言で接近してくる。もうダメだと思った瞬間、俺
の体を車掌がすり抜けた。
え・・・?
と、同時に強烈な、しかも妙に懐かしい匂いがした。
「まだ早えーよ」
そう聞こえたかと思うと、車掌は運転席に入って行った。
パァァァァ・・・ン
いきなりすごい日差しが車内に入ってきた。眩しくてしば
らく目が開かなかった。
新○浜ぁ~新○浜です。市営地下鉄をご利用の方は・・・
265 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/27(土) 02:09:40 ID:BgqnUARj0
7/7
アナウンスで俺の降りる駅名が流れた。ほどなく駅に着き、
俺は茫然としながらもなんとか降り、ヘナヘナとホームの
ベンチへ座り込んだ。一体今のは何だったのか・・・夢だ
ったのだろうか・・・時計を見ると1時10分だった。電車に
乗ってからちょうど30分。いつも通りだ・・・
数年ぶりに起こった「あっち側の出来事」にヘトヘトになり
ながらも、あの車掌について考えた。乗客はわかる。たぶん
飛び込んだ人達だ。しかしあの車掌だけはどうしても納得が
いかなかった。あの匂い、ふいんき、あれはまさに俺自身だ
ったんだ。
どういうことだ?俺は将来、あっち側の車掌になるのか?そ
れに「まだ早い」と聞こえたが・・いつか俺が飛び込むとい
うことなのか?ふと足元の靴を見たら裏にベットリとドス黒
いものが貼りついていた。すぐに靴屋で新しい靴を買い、そ
れは捨てた。
幸い今は勤務先が変わり、Y浜線は使っていない。しかし今
でも一体あれは何だったんだろうと謎のままだ。
【天狗男シリーズ系】毬
194 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 21:59:42 ID:0/ZxkvvA0
1/7
あれは俺が小学生に上がったばかりだから、もう20年以上昔の話だ。
この前の辻事件を書いてて思い出したが、俺の住んでた村には結構、
そういった怪奇スポットがいくつかあった。今回も少し長めです。
今回は夏に行われたお化け大会の時の恐怖体験ついて書いてみる。
場所は近くの神社。そこはうっそうとした林の中にあり、昼間でも
怖くて一人では近づきたくない場所だった。ルールは簡単。ひとり
ずつ本堂の奥にある祠の前に置いてある箱からゴムボールを1個持
ってくるだけだ。
しかし小さかった俺には死ぬほど怖かった。街灯は無いので真っ暗。
皆、懐中電灯を片手に震えながらボールを取ってきた。奥の方では
悲鳴が聞こえる。上級生がお化けの役になって、下級生を驚かして
いるからだ。中には怖くて途中で引き返してくる子もいた。そうい
う子には上級生が一緒に行ってあげてボールを取ってきた。
いよいよ俺の番だ。
心臓が口から飛び出るくらいバクバクしている。半ばヤケクソ状態
で先へと進んだ。本堂までは50m位だったが本当に真っ暗だった。
緊張で懐中電灯が左右にブレる。と、俺の視界左横に何かが見えた。
人魂だ。ゆらゆらと俺に付いて飛んでいる。俺はまったく気にせず
先へ進んだ。
195 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:01:22 ID:0/ZxkvvA0
2/7
前にもちょっと書いたが小さい頃の俺はそういうものが普通に見え
ていた。なので人魂程度ではたいして驚かなかった。ようやく本堂
に着いた。左の脇道から裏へ回る。と、お化けの格好(狼男?)をし
た上級生が飛び出てきた。ヒィ!あまりに突然だったので悲鳴を上
げた。人魂より人間の方が怖い。俺は先へ進んだ。
次に出てきたのは鹿のお面をかぶった鹿男だった。ヒヒーンと鳴い
ている。俺は無視するように祠へ向かうと箱からボールを取った。
と、頭上から白い服を着た人形が垂れ下がってきた。さすがに、
これには腰を抜かした。ブランブランと揺れている人形をしばらく
見ていたが、ハッと我に返り本堂の逆サイドから帰ろうとした。
あまりの怖さに泣きべそをかきながら走った。そして本堂の脇を抜
ける時、誰かが本堂の外廊下に座っているのが見えた。お化け役の
上級生かと思ったが体は俺と同じくらいの大きさだ。着物を着て、
おかっぱ頭。女の子のようだった。手には赤い毬?を持っていた。
(先に行った子かな?何でこんな所に座ってんだ?)
俺は無視してその子の前を走り抜け、そのままスタート地点まで戻
った。俺はゼェゼェ言いながら係の子にボールを渡した。
あれ?何だこれ? おい、こんなの入れてあったか?
196 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:02:54 ID:0/ZxkvvA0
3/7
俺は何のこっちゃ?と思ったが、渡したボールを見て愕然とした。
それはボールではなく、毬だった。それもあの子が持っていたのと
同じ赤い毬だった。俺は確かにあの時、箱から黄色いゴムボールを
取り出したはずだ。それがいつの間にか毬に替わっていた。。。
俺は訳がわからなかったが係の子達はまぁいいかと言って収まった。
ほどなくして全員の順番が終わり、お化け大会は終わった。もちろん
最後に集合した子供たちの中に、あのおかっぱの子はいなかった。
翌日、あの子がどうしても気になった俺は友達を誘って神社に行って
みた。
今考えれば、やめておけばよかったと後悔してる。
夕方だがまだ明るく友達もいたので全然怖くなかった。本堂の周りを
一周してみたが、これといって変わったものはなかった。付き合って
くれた友達は、ひ~ちゃんというあだ名で彼は昨夜、ここで人魂では
なく大きなUFOが飛んでゆくのを見たそうだ。人魂もUFOも同じ
周波数帯にいるのか?俺は子どもながらに、ふ~んと思った。
二人で神社の周りをアレコレと散策していると、ビシッ!という何か
が突っ張るような音がした。ん?何だ今の?音はひ~ちゃんにも聞こ
えたようだった。視線を回してみるが誰もいない。俺は祠のあたりを
調べたが特に何も異常はなかった。と、本堂の正面を調べに行った
ひ~ちゃんから俺を呼ぶ声がする。正面に行くと彼は本堂の正面の戸
から中を覗いていた。
197 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:04:50 ID:0/ZxkvvA0
4/7
どした?
シーッ・・・あれ見てみろよ。
俺も同じように格子の隙間から中を覗いた。
中には大きな神棚がありご神体祭られている(フタが閉じていたので
ご神体は見えなかったが)。と、その神棚に向かって小さい子供が座っ
ているのが見えた。咄嗟に昨日の子だ!と気がついた。しかし、どう
やって中に入ったのか、鍵は外からかけられているではないか。
何だあの子?どこんちの子だ?
何も知らないひ~ちゃんは、あの子が近所の子だと思ったらしい。
俺は必死に昨日のことを説明しようとしたが、なぜか声が出ない。
それどころか体が思うように動かなくなっていた。つまんないから帰
ろうぜ~と彼は言うと俺を置いてさっさと鳥居(昨日の大会の出発地点)
に向かって歩き始めた。俺は(ま、まってくれよ・・・)と心の中で叫ん
だが、まったく気づく様子もなく行ってしまった。
と、そこにビシィッ!という音が聞こえた。さっきより大きい音だ。
目線を本堂内に戻すと、あの子が両手で何かをしているようだった。
ビシィッ!それは両手で何かを引っ張った際に出る音だと気づいた。
と、その時、おかっぱの子がこっちに振り向いた。
顔がない
198 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:06:45 ID:0/ZxkvvA0
5/7
えっ!?
昨日は暗く、うつむいてたから気がつかなかったのか・・・!?俺は完全に
パニックになりかけていたが、とにかく鳥居のほうへ・・・この神社の敷地
から外に出なくては!と思い、うまく動かなくなった体を引きずるよう
に本堂の階段を降り、庭の石畳を鳥居方向へと進んだ。ひ~ちゃんは
かなり先まで行ってしまっている。。。と、本堂の戸が開く音が聞こえた。
ギィイィィ・・・
俺は振り返らなかった。いや、恐ろしさで振り返れなかったんだと思う。
ズリッ・・・ズリッ・・・重くなった足を引きずりながら、おかぁちゃん、おか
ぁちゃん、と泣きながら叫んだ。
一緒にあそぼ・・・
確かに聞こえた。おかっぱの子が言ったんだと思う。正確には聞こえたと
いうか心に響いたというか。。。しかし恐怖でいっぱいの俺は、とにかく
逃げたい一心で先へ進んだ。いや、これも正確には進んでいなかった。。。
俺は見てしまった。自分の足元を。重いと感じていた原因を見てしまった。
俺の両足には真っ赤な糸?がフォークで絡め取ったパスタのようにぐるん
ぐるんに巻きついていた。えっ!?何これ! その糸はおかっぱの子から
伸びていて俺の足をがんじがらめにしていた。そしてさっきから聞こえてた
ビシッ!という音はその子が赤い糸を引っ張ってる音だったのだ。。。
俺は「もうダメだ・・・」と思い諦めた。明らかに小学1年生に出来る範疇を
越えていた。
ここで一緒にあそぶんだよ・・・ずっと一緒に・・・
199 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:08:26 ID:0/ZxkvvA0
6/7
そう聞こえたと同時に、ズルズルと本堂の中へ引っ張られてゆく感じがした。
俺は仰向けに倒れ、空を見ていた。フフフッ・・・フフフッ・・・というおかっぱの子の笑
い声と引きずられる音だけが響いた。まるでここだけ時間が止まっているか
のようだった。俺は諦めた。怖さより、もうこれで親や友達に会えなくなる
ことが悲しかった。そして本堂の中に体が入る瞬間、何かがひっくり返った。
バサァァァッ
ひっくり返ったのは俺だった。視線が前後上下左右に揺れまくった。一体、
何が起こっているのかわからなかった。気がつけば本堂を上から見下ろして
いる感じだった。えっ!?俺は足が軽くなったのがわかった。何だこれ!?
と思う間もなく、急降下してそのまま鳥居がある入口のほうまで一気に飛ん
でいった。あろうことかすぐ目の前には、ひ~ちゃんの背中が見える。
俺はそのまま映画のスローモーションのようにゆっくりと地面に足をつけた。
瞬間、時間の流れが正常に流れ始めたのがわかった。俺は振り返ろうとした
が、地面の底から響いてくるようなおぞましい声が聞こえたので固まった。
おぉぉのれぇぇぇ・・・邪魔をしおってぇぇぇぇ・・・
何のことかわからなかった。俺は振り返らずそのまま鳥居の外まで出たほう
がいいと思い、ひ~ちゃんと走った。無事、外へ出るとひ~ちゃんはずっと
俺がそばに付いてきてると感じてたと言った。俺は起こった事を彼に話した。
彼はふ~んと鼻くそをほじりながら聞いていたが、こんなことを言った。
じゃぁさ、それって誰かがおまえを助けてくれたのかもな。
え?誰かって誰だ?
200 本当にあった怖い名無し sage 2010/02/25(木) 22:10:20 ID:0/ZxkvvA0
7/7
日が沈みかけていた。俺は泣きべそをかきながら家に帰り、お袋に話した。
お袋は「それは天狗様が守ってくれたんだね」と言い、おかっぱの子につい
ては、あそこの神社の裏には無縁仏のお墓があるから、たぶんそこに埋まっ
とる子なんじゃないかと言っていた。翌日、俺とお袋はお菓子とおもちゃを
持って、その無縁仏のお墓にお供えした。ゴムボールも3個置いてきた。
たぶん鞠遊びがしたかったんだろうな、と思ったからだ。
それ以降、友達とその神社へはたまに遊びに行ったが、何事も起こらなかった。
ただ、たまに近所の人があそこでボールが跳ねる音がした、と言ってることが
何度かあった。
今回の事件では俺は天狗の姿を見ていない。でも俺が3歳くらいの時、じつは
自宅で天狗を見ているんだ。その時は本当に怖かった。3際の頃の記憶で覚え
ているのなんて、その天狗のことと釣堀に落っこちたことだけだ。それは機会
があったらまた書くことにする。