【閲覧注意】怪談の森【洒落コワ】

実話怪談・都市伝説・未解決の闇・古今東西の2ch洒落にならない怖い話。ネットの闇に埋もれた禁忌の話を日々発信中!!

カテゴリ: 稲川淳二



マネージャーが私のところに来て

「稲川さん、どうします?」

明後日の取材ロケなんですけど、先方の都合で撮影の開始が早くなってしまったんですよ。
それで局の方が前乗りしますかと聞いてるんです。
「どうしますか?」と私に言うんです。
この前乗りというのは、撮影の現場が朝早い時には前の晩に現地に入ることを、我々はそう言うんです。

「あー、そっかー、どうしよっかー」と話していると、

「うーん、明日のスタジオのロケですけど、多分夜の11時半を回っちゃいますよ。
 それで朝また出るっていうのはちょっときついですよね」

「うーん、そっかー。
 皆はなんて言ってる?」

「スタッフや皆は当日に東京を出るって言ってます」

「何時頃?」

「それが、朝四時なんです」

「朝四時かー」

「えぇ。ですから11時半を回ってから帰って、朝四時だと、寝る時間無いですよ」

「じゃあ前乗りしようか」

次の日のスタジオの撮りはやっぱり11時半を回ってしまった。
どうにか撮りが終わったんで車に乗って移動を始めた。
マネージャーがハンドルを握り、私は隣で喋っている。
そうしているうちに、いつの間にかウツラウツラと眠ってしまったんです。
フッと目を開けると相変わらずマネージャーが運転をしている。
それでまたこっちは喋るわけだ。
そしてまた寝てしまう。
それを繰り返していた。
そうしているうちに本当に眠りについてしまった。

「着きましたよ」というマネージャーの声でフッと目が覚めた。
見れば辺りは真っ暗なんです。
ところどころに明かりがポツンとあるだけ。
その場所っていうのは伊豆なんですけど、観光地ではないんです。
何だかとっても寂しいんだ。

と、すぐそこに明かりのついた玄関口がある。
そこが我々が泊まる予定のビジネスホテルなんです。
バックを持ってそこに入っていった。
狭いロビーがあって、小さなフロントのカウンターがあって、そこに四十代半ばくらいの男の人が待っていて、ニコニコ笑いながら鍵を渡してくれた。
明日は朝が早いですからね、私達はすぐに別れた。

建物はL字型をしている。
二人共一階なんですが、マネージャーは一方の端、私はもう一方の端なんだ。
鍵を開けてドアを開けると、壁のスイッチを付けた。
と、ふわっと部屋が明るくなる。
その途端に(えっ)と思った。

何だか様子が違うんですよ。
部屋はそこそこ広くて、ベットがあって、テーブルがあって、椅子がある。
引き出しには戸棚が付いている。
壁は柄の壁で、家具はすべてお揃いで、脚が全てカーブしている。
全て白く塗っていて、てっぺんは黄色になっている。
あのロココ調の家具なんです。
天井には小さなシャンデリアがある。
まぁ言い方は悪いですけど、セコいベルサイユ宮殿のような感じなんです。

おかしいなと思ったから、マネージャーの部屋に行って
「あのさ、ちょっと部屋を見せてくれない?」と言った。

「何かあったんですか?」

「うーん、別になんてことはないんだけどさ」

そう言いながら彼の部屋を見ると、普通のビジネスホテルの部屋なんです。

「いやさ、私の部屋ちょっと造りが変わってたから」

「稲川さん、それってVIPルームじゃないですか」

でもビジネスホテルでVIPルームなんて、聴いたことないですよね。
それでまた自分の部屋に戻ったんですよ。

明日は早いからすぐにベットに入ったんだけども、何だか眠れない。
目をつぶるけども何だか息苦しい。
なんというか、空気が薄いんだ。
寝たまま私は荒い息をしている。
と、不意に

ストン

と音がした。
見るとベットの横に引き出しがある。
(今この引き出しが絶対に開いてしまったよな)と思った。
その引き出しをジッと眺めていると、カランカランと音がする。
クローゼットの中でハンガーが鳴っている音なんだ。
勿論ドアも窓も閉まっているのに、ですよ。
風なんか吹いちゃいないんだ。
気持ち悪くなって私は起き上がったんです。
そうしたらビッショリと寝汗をかいている。

(嫌だなぁ、このままじゃ寝れないや。
 一度汗を流して仕切りなおして寝ようかな)

そう思いながらユニットバスに行ったんです。
このユニットバスというのは一メートルくらいの間隔で仕切りの壁があるんです。
普通こんなところに壁は要らないんですがね。
それでその奥、突き当たったところの壁に低い位置に鏡があって、洗面台があって、そうして紫色のカウンターがあって椅子がおいてある。

(あー、きっとここで女の人が化粧をしたりするんだろうな)

と思ったんですが、そして私はユニットバスのドアノブを掴んだんですが、
仕切りの壁が後ろにあるものですから、手前に引くドアではなく、奥に入れる形のドアなんです。
そして私はドアを開けて、中の明かりのスイッチを入れた。
と、目の前には洗面台があって、トイレがあって、そして向こうに浴槽がある。
浴槽に行って生ぬるいシャワーで体を洗い流して、バスタオルで体を拭いて、そのタオルを腰に巻いて、洗面台の前に来たわけだ。
水を出してうがいをして、そしてフッと顔を上げた。
その途端、(あらっ)と思った。
洗面台に、有るはずの鏡が無いんです。

(えっ、ここ鏡無いの?
 じゃあ明日ヒゲを剃るのはあっちの低い方の洗面台なのか?)

そう思いながら眺めていると、壁に穴が四つある。

(なんだ、鏡は初めは有ったんじゃないか。
 きっと割れたか何かして、そのままになっているんだな。
 直しておけばいいものを、随分いい加減だな)

でもそれとなく見ていたら、そうではないんです。
穴が全て埋めてあるんです。

(何でこんなに埋めているんだろう)

そう思っていると後ろで

カチャッ

と音がした。
それで

キィーーーーーーーー

と、独りでにドアが開いてきて、背中の背骨のあたりにドアが当たったので、背中で押し返してやった。
扉は閉まった。
それで今度は私、歯を磨いたんです。
歯を磨いて、うがいをしていた。
と、また後ろで

カチャッ

と音がした。
そしてまたドアが開いてきた。
そしてまた私の背中に当たったんだ。
また押し返してやろうと思って待っていると、その途端に(うっ!)と動きが止まった。

私の背中に当たっているもの、それはドアのヘリではないんです。
人の指なんだ。
人差し指と中指と薬指。
そしてその指がわずかに動いているのが分かるんだ。
もう動けない。
そしてそれがしばらくすると、気配が薄くなって独りでにドアが閉まった。
流石にすぐには私も動けなかった。

少しの間を置いてバンとドアを開けた。
部屋に行くと勿論誰も居ない。
でも眠れなかったなぁ。

朝になって出かけるので、服装を着替えて、そして昨日の鍵を受け取ったフロントまでやってきた。
カウンターの向こうに昨日鍵を渡してくれた四十代半ばの男性がニコニコと笑っていたので鍵を返しながら

「あの、私が昨日泊まったあの部屋というのは、一体どういう部屋なんですか」

「あ、稲川さんのお泊りになられたあの部屋ですか。
 あの部屋はですね、亡くなった先代の女性オーナーがご自分のお部屋として使っていました。
 今は大切なお客様にご利用頂いております」

「洗面台に鏡がありませんよね」

「あ、あの鏡でございますか。
 あれは亡くなった女性オーナーが外させたんです。

(わざわざ鏡を外させた?
 おかしいな・・・)

そう思って考えてみた。

(あぁそうか、そういうことだったのか)

そうなんですよね。
あの洗面台、あそこに鏡があったのならば、キィとドアが開いてきた時にそのドアを開けている相手の正体が分かってしまうわけだ。
だから鏡を外させたんですよね。
ということは、亡くなった女性オーナーはおそらく、そいつの正体をきっと見ているんですよね。

ですよね?



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この話はね、怪談といえば怪談なんですよ。
なんだか妙な話なんです。
ですから、あなたが判断してみてください。

奈良に住んでいる楠本さんという人が友人と二人、和歌山から帰ってきたわけです。
それで家路を急いで運転していた。
と、だいぶ傾いた秋の夕日を帯びて前を一台タクシーが走っている。
なんだかタクシーのスピードが遅い。
多少蛇行もしているので楠本さんが
「なんだあのタクシー、妙な走りをするな?」
と言った。

スピードが緩いからみるみると追いついていく。
そしてタクシーをスッと追い越した。
その瞬間楠本さんは声を上げた。

隣に乗っていた友人が「どうした?」と聞いたんですが、楠本さんが
「おい!今のタクシーさ、空車の赤ランプがついていたんだけど、
 後部座席になんだか気味の悪いものを乗せていたんだよ!」

それで友人がタクシーを見ようとしたので、楠本さんが車の速度を緩めた。
すると後ろのタクシーは追いついてきて、楠本さんの車を追い越すときにタクシーと楠本さんの車が並ぶような形になった。

今度は友人が声を上げた。
「おいなんだ今の!」
というのはこのタクシーの後部座席、そこに頭がぐっしょりと血に濡れた女が座っていた。

その女が血に染まった左手を前に出して前方を指さした。
何かパクパクと言っている。
ところが運転手は前方を黙って見たまま動じる様子がない。

「おい!あの運転手気づいていないんじゃないかな?」
と楠本さんは言った。

すると友人の方は
「あの血だらけの女なんなんだよ!おかしいぜ」

それで楠本さんが
「運転手に教えてやるか」
と言った。

またタクシーを追い抜くと、ちょうど信号があり、赤信号で止まった。
後ろからタクシーがやって来る。
タクシーが止まったら言ってやろうと思っていると、タクシーは速度を緩めない。
そのまま信号を無視して交差点に入っていった。

「あら?」と思った瞬間、走ってきたトラックとぶつかった。

自分たちの車を脇へ寄せて楠本さん達は飛び出した。
そして救急車と警察に通報した。

タクシーに近づいていくとトラックの方から運転手が降りてきた。
タクシーのところへ行ったがドアが開かず、鍵がかかっていた。
エアバックが広がっており、運転手がエアバックに挟まれているような形で俯いていたんだが、顔が見えない。
窓を叩いても反応が無い。
どうやら気を失っているらしい。

楠本さんと友人は後ろの座席を見た。
後部座席に居るはずの血に染まったあの女がいない。
もちろん出てくる姿なんて見ていない。

その時、妙に二人はゾクッとした。

やはりあの女はこの世のものじゃないんだな と感じた。

しばらくして、サイレンが聞こえ救急車がやってきた。
ほとんど同時にパトカーがやってきて警察官が降りてきた。
そして通報者で目撃者でもある楠本さんと友人に事情を聞いた。
でもその時に
「タクシーの後部座席に頭からぐっしょり血に染まった女が居て前方を指さしながら何かを言っていた」
なんて言えない。
そんなことを言おうものなら、何をおかしなことを言っているんだと思われるに決まっている。
ヘタをしたら疑われるので言えなかった。

「自分たちが走っていたら多少蛇行しながら遅いタクシーがいた。
そこで注意してやろうと思って信号で自分たちは止まって待っていたが、タクシーはスピードを緩めないまま交差点へ入り、ぶつかったんです」

そんなふうに話していると、タクシーのドアが開いた。
運転手が運び込まれていく。
その時に救急隊が騒がしくなった。
電気ショックを与えている。
しばらくそれが続き、終わった。

救急隊の人がやってきて、
「運転手を外に出した時には既に心肺停止状態だったんです。蘇生を試みたんですが、無理でした。亡くなりました」
と言ったのでゾクッとした。

見れば大した事故じゃない。
トラックだってゆっくりと走っていたし、タクシーだってスピードは出ていない。
この二台がぶつかっただけで、多少前がへこんだくらい。
おまけにエアバックがあるので間違っても大した怪我はしないはずなのに、死んでいたと伝えられ、二人は驚いた。

いったいどういうことなんだろうと思ったがその日は家に帰った。

それから二日後、楠本さんに警察から連絡があった。
「誠に申し訳ないんですが、先日の事故なんですけども。
 あの事故が起きるまで、どういうことがあったのかをもう少し詳しく聞かせてもらえませんかね?」
と言う。
楠本さんも気になったものなので
「何かありましたか?」
と聞いてみた。
すると警察官が
「実はあの運転手さんなんですが、あの事故に遭う遥か前に・・・既に死んでいたことがわかったんです」

そう言われ、再びゾクッとした。
楠本さんはやはり頭からびっしょり血に濡れた女が前方を指さしていたなんて言えない。
なので前と同じ事を言った。
友人にそのことを話すと
「おいよせよ。なんなんだよ。というかあの女どうなっているんだよ」

結果的にどうなったかというと、
運転手が運転中に心臓発作を起こした。
そしてそのまま運転し、交差点でトラックとぶつかった。
救急隊が来て運転手の蘇生を試みたのだが、既に亡くなっていて助からなかった。

話はそれで合っている。
合ってはいるが肝心なところが違う。
実は既に亡くなっていた。
二人が見かけた、タクシーが蛇行していた時は既に運転手は死んでいた。
話としたら、今話したように交差点に突っ込んでいってトラックとぶつかった。
それで救急車が来て助けだしたら死んでいた。
このほうが辻褄が合う。

それで全ては終わった。
でも考えてみるとこの運転手、多分この事故の前に何か体験しているのだろう。
それもかなり怖いことを。
その恐ろしい体験をしているから、心臓麻痺を起こしたのだ。
何かすごいものを見ているのだ。
でももう死んでしまっているので、それを知る由はない。

何があったのかは、分からない。

そうやって考えるともしかすると世の中で事故や事件があるけども、
それはもしかしたら辻褄は合っていても本当はそうではない、もっと違う何かの力で死んでいることも、あるかもしれない。

こんな出来事ってもっとあちこちで割と起こっているのかもしれない。
後部座席のぐっしょりと血に濡れた女、多分この女は死神なのだろう。




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番組で網走の流氷を撮りにいこうという事になりましてね。
カメラマンとクルーの人は先に現地へ行って、わたしとディレクターは後から夜汽車に乗っていくという事になったんです。
それというのも、わたしが汽車から降りる朝のシーンからはじめたいっていうんです。

それなので、気のあうディレクターと2人で、北海道の夜汽車に揺られて網走へ向かったわけです。
その夜汽車の車両は寝台車になっていて、わたしとディレクターの他には中年の女性と思われる履物が見える位。
3人しかいないんですね。その女性も先におやすみになっている。

それで、眠くはないけどやることもないし、2人でもってチビチビお酒を飲みながら話してたんですよ。

しばらくすると車両のドアが開く音がして、我々のところを若い女の子2人が通りすぎていったんですね。
わたし達の前をすれ違う時に、女の子がヒョイとこっちを向いてわたしと目があったんです。
そしたら、
「あ!稲川さんだー!」っていうんで、
わたしも「こんばんは!」って挨拶をしたんです。

すると、ディレクターが、彼女達に声をかけたんですね。
ディレクター「君らどこに行くの?」
女の子「流氷を見にいくんです。」
ディレクター「あーそうなんだ。俺達も流氷ロケに行くんだよ」なんて話しをして、

ディレクターが、ここに来て一緒に話しでもしていかないか?って声をかけたんです。
こっちも暇ですしね。

そして、その女の子達2人とわたし達2人の4人で話しがはじまったわけですね。

色々と話しているうちに、一人の女の子が、
「稲川さん、実はわたし達4人で来る予定だったんです。
それが、2人が来れなくなっちゃって、わたし達2人で来たんです。」っていうんですよ。

来れなくなっちゃったっていうのはどういう事だろう?って思ったんで、わたし、色々と話しを聞いてみたんですね。

君はどういうグループなんだ?って聞いてみたら、大阪や奈良、京都とか関西の旅行好きな女の子達で、
旅先でそれぞれが知り合って、それでグループが出来たっていうんですね。
それで、4人でよく旅をするようになったそうなんです。

若い子達の間で流行っているらしいんですがね、普通の案内所ではなく、よく観光地に行くと土産物やさんがありますよね?
そこのガリ版刷りの情報を見て旅をするそうなんですね。
どこどこの民宿に行くとこうだったとか、こういうおばあちゃんが居て、こんなのを作って貰ったよとか、
こんな美味しいものがあるんだよとかいう..
それを参考に旅をすると、安くて楽しくて、その土地の人や宿の人と仲良くなれて、楽しく旅が出来るというんですね。
まあ、なかなかツウなんですがね。

ある時仲間内の一人が持ってきたのが、島根県のほうの日本海に面した旅館というか民宿の案内だったそうですよ。
それで行こうっていう話しが4人でまとまったんですが、今回流氷を見に来ていた女の子2人は、会社の都合でどうしても行けなくなっちゃった。
それなら、わたし達2人で行ってくるよ!お土産買ってくるね!なんて話しで2人は出かけたそうなんです。

駅について、タクシーに乗って、ついた場所っていうのが、街から離れた高台で、遠くに海が見える場所だったそうなんです。
宿は自体はドッシリとて、木造で瓦屋の大きな建物で。厚い板の看板もあって。

「あー!歴史があるんだなあ!」なんて思いながら、車を降りて2人は玄関に行ったんですね。
すると、中年の女性2人が待っていてくれて
「ようこそいらっしゃいました。ご苦労様です。」って迎えてくれたそうです。

「お世話になります!」とひと通り挨拶を済ませると、おばさん達が自分達の荷物を持って奥に入っていくので、
自分達もそれに続いたんですね。

「こちらのお部屋です。」と案内された部屋は、和室のゆったりとした部屋だったそうです。

「お疲れでしょうし、汗もかいたでしょうから、よかったらお風呂でもどうぞ。もう準備はできてますから」とおばさんが言うので、
「でわ、早速いただきます」
「わたし先にお風呂入っちゃうよ?」と一人の女の子が、お風呂に入る用意をして、先にお風呂へ向かったんですね。
長い廊下があって、その廊下を渡っていくと風呂場があるんです。

廊下を渡っていると、誰かが自分を見ているような視線を感じたものですから、立ち止まって周りを見ると、
台所にある格子窓の間から、片方の目がジーっと見ているんだそうですよ。


でも田舎の人だから、きっと自分達の行動を見ていて次の準備をしようと思ってるんだろうなあと思った。
なんだろうなあと思いながらも、また風呂場へ向かって歩いて行くと、
「ぎぁああああああ!」という悲鳴がしたんです。
ツレの女の子の声だからびっくりして、部屋に向かって走っていったんですね。

それで部屋に着いて、ツレの女の子に「どうしたの?」と聞くと、
ツレの女の子がガタガタ震えて、
「やめよう、ここやめよう、ねえここやめよう。ねえもう帰ろう。」って言うんですね。

「なにいってるのよ!あんた!」と言っても、
「ここだめ!ここだめだから!帰ろう。ねえ、やめよう」
目に涙を溜めながら、もうここはやめようとツレの女の子は繰り返すばかり。

「なにを言ってるのよ!きたばっかりじゃない!」

すると、
「どうしました?どうかなさいましたか?」と後ろで声がする。
見てみると、おばさんが立っています。

「いえ、すみません。なんもないんです。この子、こんな声あげちゃってすみません。」と取り繕って返事をすると
「そうですか..じゃあどうも」っておばさんは帰っていった。

「ほら、あんたが変な声をあげるもんだから!おばさん心配してきちゃったじゃない!なんだったのよ?」
「わたしが何気なく庭を見ていたら、おばさんが庭を突っ切っていったの。
それで、何の気なしにそれを目で追ってたら、途中でおばちゃんが透けちゃったのよ!それでまた元に戻っていったの..
絶対あの人生きてる人じゃない!あの人この世のもんじゃない!ねえ、絶対違うから!嫌だから帰ろう!
気味悪いし、こわいから帰ろうよ..他に行こう?」

「なーに言ってるのよ!今ここに来たおばちゃん普通のおばちゃんだったじゃないの!ただの見間違いに決まってるじゃない」
と、またお風呂に行っちゃったんですね。


「いいお湯だった~どうする?お風呂入っちゃう?」
「わたしもお風呂入ろうかなあ..」

「それなら、わたしはどうしようかなあ?雑誌もないし、テレビもないし、電話も繋がらないし..
じゃあ、わたしあなたがお風呂に入っている間に街に出て、小さなインスタントカメラと雑誌買ってくるよ!
それで、あなたのお家にも着いたよって変わりに電話しておくよ!」

「うん。それじゃあお願いするねー!」

それで、先にお風呂に入った子は宿の近くのガソリンスタンドでタクシーを呼んでもらって、街に出かけたんですね。
来る時はもっと近いと思ったんですけど、宿から街までは意外と距離があったんですね。

街へついて、あれ欲しいなあこれ欲しいなあ..なんて色々寄り道しながら見てたもんだから結構時間が経ってたんですね。
夏ですから、夕方になっても暗くならないし、時間が経つのが気にならなかったんでしょう。

フッと見上げてみたら、だいぶ日が傾いている。
それで、時間を見ると、もういい時間。

あ!いけない!すっかり長居しちゃったわ..早く帰らなきゃ!

タクシーを停めて、旅館の場所を伝えた。
すると、運転手さんが「あー?そんな旅館あったかなあ..?」って言うんです。

「ありますよ!わたし泊まってますから!」
「うーん..どこだろうな?」
「ここをずっとのぼっていって、ガソリンスタンドのあたりです。」
「あったかなあ..」
「じゃあ、もうわたし案内しますから、連れていってもらってもいいですか?」

それでタクシーに乗せてもらって、タクシーが走りはじめた。
そしてガソリンスタンドが見えてきた。
だいぶ、あたりは暗くなってきている。

「ああ..随分遅くなっちゃったな..悪い事したなあ..」と思っていたら、
車が急に止まったんです。

「おかしいなあ..ここは昔やってたようだけど、今はやってるっては聞いた事ないけどなあ..
親類の人が来て、またやりはじめたのかなあ..」って運転手さんが言うんです。

「なに?運転手さん?」

「あんたのいう旅館はここだよ..」運転手さんが言うのでみてみると、
鬱蒼とした雑草が生い茂ってる。看板は傾いている。随分古い建物がむこうにある。

「違うよ!運転手さん!ここじゃないよ!」

「いや、あんたの言うところはここしかないよ。ここから先には一軒も旅館はないんだよ..
わたしはこの先をずっと行って、Uターンして戻ってくるんだから。」

おかしいなあと思いながら改めて見てみると、確かに看板は間違っていない。
でも自分が宿に着いた時の看板はきちんとくっついていて、しっかりしたものだった。
庭も綺麗だったのに、鬱蒼と草が茂ってっている。
これは気のせいかな..それとも暗くなったから、はっきりみえないせいなんだろうか..
なんて事を女の子は思ってたんですね。

それで草の間を縫うようにして玄関まで行くと、玄関のドアは開いているけど電気もついてなくて真っ暗なんです。
もうそろそろ電気がついてもいい時間だけども電気はついていない。
(いやだ..この中随分暗いなあ..)と思いながらも中へ入って行ったんですよ。

「今帰ったよー!」と友達に呼びかけたんですが、返事はない。
部屋の中にも友達はいない。

あれ?どこに行ったんだろう..今帰ったよー!とまた呼びかけても返事はない。

すると、
「おかえりなさい」という声がした。
ふっと後ろを見ると、宿のおばさんが立っているんです。

「すみません..友達がいないんですけど..どこかわかりますか?」
「あの、お連れ様でしたらお食事であちらにいらしています。」
「ここでご飯を食べるんじゃないんですか?」
「そうです。どうぞ、こちらのほうへ。」
女の子は案内されて、おばさんに着いていった。

案内された部屋に着くと、薄暗い部屋に箱膳がポツンと2つ置かれている。
その片方に友達が座っている。

「今帰ったよ!」と声をかけても、こっちをむこうともしない。
「ねえ!今帰ったよ!ねえ!何怒ってるの?」また声をかけても返事はない。
「やだもお!怒らないでよー!」とポンと友達を押したら、友達がフラーっと動いたんですね..
そして、そのまま倒れた。

「やだ!もうやめてよ!そういうの!」
目をあけたまま、友達は動かない。

「おばちゃん..友達がおかしい..ねえ、おばちゃんおかしい..」
「ちょっとしっかりしてよ!なにしてるの!しっかりしてー!!!!」
「おばちゃん、おかしい友達がおかしい..」

と、言いながらふっと思った。
客が倒れてこんな異常な状態なのに、おばちゃんは普通の状態で、じーっとこちらを見ている。
嘘だ!って思いながらも、「しっかりしてよー!」って友達にまた声をかける。

でも、目は開かれたままで、瞳孔が開いている..

「おばちゃん!この子死んでる..」

するとおばちゃんが全然顔色を変えないまま近づいてきて..
「今度はあんたの番だねえ..」と言った。

【ぎゃあああああああああああああああああああああ!】と叫びながら逃げ出すと、
「待ちなさい。待ちなさい」とおばさんが追いかけてくる。

すると、もうひとりのおばさんもどこからかやってきて、目の前で手を広げたもんで、
どうにかこうにかその間をすり抜けて宿を飛び出したんですね。

そうすると、ちょうど先ほど自分が乗ってきたタクシーが、ライトをつけて戻ってくるのが見えた。
「助けてーおじさん助けてー!」
すると、ポンとドアがあいたんですけど、車は止まらない..

ゆっくり走るんだけど、追いつこうとするとまたスピードをあげる。
それで、どうにかこうにか、ようやくタクシーに乗ると、扉がしまった。

運転手さんは真っ青な顔をしている。
「おじさん、おじさんおじさーん..」女の子はたまらなくなって泣きだした。

すると、運転手さんが
『あんたが走ってくる後ろからなあ、大きな人魂が追ってくるのが見えたんだよ..
おかしいと思ったんだ。あんたを降ろした後、思い出したんだが、あの旅館はとうの昔に廃業しているんだよ。
あそこは、姉妹で旅館をやってたんだけど、そこに強盗か何かが入って姉妹は殺されてしまっているんだよ..』
と言ったそうなんです。

その後警察も捜査に来て、お友達は遺体で発見されたそうです。
死因は突発性の心筋梗塞か何かだったそうなんですが、警察も不思議がっていたそうですよ。
若い女性2人が、なんであんな廃墟の旅館に行ったのか、そこで何があったのかを..

助かった女性も結局精神を病んでしまって、旅行に行くのもやめてしまったそうです。

こんなお話しを夜汽車の中で聞かせて貰いましたよ。







東北地方の大学に入学してた方の、お話なんです。

当時、東京の高校出まして、東北の方にある大学に入ったそうです。

初めの2年位は寮生活をしてたんですが、3年生になって物は増えてくる、自分の生活は忙しくなってくる、部屋も手狭になったってことで、自由のきくアパートにってことになったんだそうです。

学業熱心な人で、一生懸命勉強する。

でも、男のひとり暮らしなもんですから、部屋は散らかる一方なんですね。

(そうだ、ずいぶん掃除してねぇな、掃除しよ)

ってことで、チリトリとホウキ買ってきて、掃除したっていうんですよ。

掃除して、ヒョイと見たらチリトリの中にね、長ーい髪の毛らしきものがあったんですって。

(あれーっ?)

と思ってね

(あっ、そうか。前にここに住んでいた人は、女性なんだ)

と思い、まぁ気にもしなかったそうです。

しばらくして、部屋の中でゴロンと横になっていた時、ふっと見ましたら、また髪の毛が落ちていたんだそうです。

(ああ・・・)

と思い、髪の毛をつまんで、

(なんだよ、あんなに掃除したのに、どこから髪の毛が出てくるんだよ。しょうがねぇなぁ、ずいぶん掃除しねぇ女だったのかなぁ)

と思いながら、その髪の毛を捨てたそうです。

で、また、しばらくして

(掃除でもしようか)

と思いましてね、ある日、掃除していてふっと気がついたそうです。

ヘアピンが落ちてる、ヘアピンが。

髪の毛はまだわかるんですけどね、あんな細いもんですから、どこかの隙間にでも入ってしまっていればねぇ、何かの拍子に出てくることもありえるけど、ヘアピンまでは変ですよ。

(何だ、やだなあ)

と、思ったそうです。

(何で、こんなヘアピンまで落ちてんだよ)

って。

どこかに溜まっていてね、時間ごとに落ちてくるのかと思ったそうです。

自分は、女性と付き合いはないし、服に髪の毛が付くわけでもないし、もちろん部屋に誰も呼んだ覚えはないんですから。

でも、日頃忙しいので、

(おかしいなぁ)

と思っていても、ついつい忘れてしまうんですね。

ある日、大学に行ったら一緒に東京から来た友人に会ったので、

「おい、最近、顔出さねぇな」

と言いましたら、友人も、

「なんだよ、おまえだって、たまには顔出せよ」

って話になったそうです。

そうしましたら、その友人が、

「いやぁ、こないだ俺、おまえの所に行ったんだよ。そりゃあおまえ、俺なんかと遊ぶより、彼女の方がいいだろ」

って言うから、

「何が?」

って聞いたんですって。

すると友人が、

「こないだねぇ、おまえのアパートの下、通ったんだよ。おまえの部屋、角の2階だよな?」

って言うから、

「うん」

と、返事したんだそうです。

そうしたら、また友人が、

「見上げたら、おまえさぁ、女の子の姿見えたから、悪いからやめたよ。ジャマすんのよくないしな」

って言うんですって。

「そんなもん、いないよ」

って言うと、

「何言ってんだよ、俺見たんだよ、かくすなよ」

って言うんだそうです。

まるで信用しないんだそうです。

(あ・・・)

っと思って、

「いやぁ、実はさぁ」

って、思い出したようにね、

「俺の部屋に、よくなぁ、長い女の髪の毛が落ちてんだよ。こないだなんか、ヘアピンが落ちていたんだよ」
って言っても、

「何とぼけてんだ、おまえ」

と、信用してくれないんだそうです。

それで、その友人とは別れて帰ったそうです。

(おかしなこともあるもんだなぁ)

と思いましてね。でも、自分がいない時に誰かが部屋を使っているとも思えない。

しばらく経ったある日、なーんていうこともなく、ただ、ふぁーっと部屋にいて、ヒョイッと見た。

いつ付いたかわからないけど、窓に手形が付いている。
何だか気になるので、見たんだそうです。

(おかしいなぁ、こんなの前にはなかったよなぁ)

と思ってね。

自分の手と比べてみたら、全然小さい、細い。
どーやら女性の手形なんですね、それは。

2階ですしね、外歩いて行く人が付けていくわけないですから。

(何でこんなの付いたんだろうな?)

と思って、窓をガラガラと開けてね、外側から見たんだそうです。

その時、わかったそうです。
その手の跡、外からではなくて、部屋の中から付いたものだったんです。

さすがに(ゾーッ)としたそうです。

で、あわてて友人に連絡してね、

「おまえね、こんなことがあったんだよ」

って言ったそうです。

そうしたら友人が、

「おまえ、それ、もしかすると・・・尋常じゃないぞ。普通じゃないよ。しばらく待ってろ」

と言って、2日ばかりして、たくさんのお札、持って来たって言うんです。20枚近く。

「ま、気持ちの問題かもしれないけど、貼るだけ貼っとけ。玄関でもいい、押し入れでもいい。これ全部、貼っとけ」

って。

「その方が安心だから」

って言ってくれたそうです。

言われた通り、貼ったそうです。
20枚近いお札。

ベタベタと。

その方がよっぽど異様ですけどね。

部屋中、お札だらけ。
戸ですとか、要するに何かが入って来そうな場所、全部貼ってるわけです、窓ですとか。

それからというもの、お札が効いたんでしょうかね、何ということもなかったそうですよ。

そうして日が経ちましてね、ある時たまたま、いつも忙しい彼、時間があいたんだそうです。

アパートに帰って来て、まだ明るいんで、そのままゴロンと横になったと言うんです。
寝ちゃったんですね、いい気持ちで。

“カァー、スゥー”と寝てたんです。

(うーん)

と思って、ヒョイと回りを見たら、真っ暗。
いつの間にか夜になっていたんですね。

(あー、でも、もうちょっと寝ていたかったな)

って、明るいうちに寝ちゃったもんですから、もちろん電気は点けてないわけですよね。
けっこう心地いいわけです。

なんだか、ボーッとして、ウツラウツラとしていたらしいんです。

そうすると、

“ズズズッ”

と、音がしたらしいんですよ。

“ズズズズッ”

と、すぐ近くで何か音がしている。
ずるような音。

(うん?)

と思っていると、また

“ズズズズズズッ”

“ズズズズッズズズッ”

自分のいる部屋の中、誰かずっているって言うんです。

“ズズズズッズズズズ・・・“

(うわっ!)

て思ったそうです。

それが回り込んで来るらしいんです。

“ズズズズッズズズッズズズッ”

て。

そして、自分の回りをクルッと通り過ぎて行くそうです。

その瞬間、かすかにね、

「ヘェヘェーッ、フフフゥー、ハァー、ヘェヘェー」

って、苦しそうな声がしたって言うんですよ。

たぶん、頭の側を通り過ぎて行った時でしょう。

“ズズズッ、ズズズズズッ”

「ヘェー、フッフッ、ヘェー」

“ズズズッズズズズズッ・・・”

誰かいる!

誰かが自分の部屋の中を、自分の回りを回っている。
ずって回っている。

(うわっ!)

と思ったけど、どうしていいかわからなくて、暗闇の中、ただ黙っていたと言うんです。

(うわーっ、助けてくれーっ、助けてくれーっ!)

“ズズズズッズズズズッ”

そのうちにね、

“ビリッビリッ、ベリッ、ビリリッ、ビシッ”

て、何か剥がれるような、破けるような音がしてきたと言うんです。
あっちこっちから。

(うわわーっ!)

と思ったそうですよ。

しばらくして、

“ピチッピチッ、クチッ、クチッ、トーン”

っていう音と同時に、

「ハァーッ、ハァハァ、ハァーッ」

と、息づかいが段々と近づいて来て、

「ハァァァ、ハァァァ、ハァァァ」

と来たので、

(うわっ!)

と思ったら、息づかいが止まってしまった。

(スーッ)と力が抜けた。

(あああ!)

と思ってね、あわてて起き上がって、カチンと電気を点けた。

全然、変わったことがない、自分の普段の部屋。

誰もいない。

もちろん。

汗びっしょりかいている。

(へぇーっ、今のいったい何なんだ?)

って思って、見るとはなくお札の方へ目を向けたら、お札がない。

破けてる。
取られてる。

全部、破かれたり、取られたり、剥がされている。
お札、全部。

それがグシャッと丸まって、部屋の隅に転がっていたって言うんですよ。

誰かがやったんです。

(ううーっ)

と思って、怖くなって友人の所へ行ったんだそうです。

「悪いけどおまえ、しばらくここへ泊めてくれないか?俺、あの部屋にいたくない。あの部屋、解約するから、それまでいさせてくれ!」

って頼んだそうです。

すると友人が、

「何があったんだ?」

と聞くので、

「実はこういうわけで・・・」

って言うと、

「わかった」

って言ってくれたそうです。
解約しても、何日かは部屋は本人のものですよね。
荷物を置いてますから。

友人に、

「昼間、一緒に荷物取りに行ってくれないか?」

と頼んで、友人とふたりでアパートに行ったそうです。

でも、どーもやっぱり怖いんですね。

「じゃあ、昼だから昼メシ食って、元気つけて行こうか」

ってことになったそうです。

たまたま近くにラーメン屋があったので、そこに入ったんです。

入ったら、カウンターの隅の方で、マスターと常連客らしい人が大声でしゃべっているんですって。

で、テーブルについて(何を頼もうかなァ?)と思って、メニューを見ながら、聞くとはなしに聞いたと言うんですね。
カウンターの方で、

「ああ、そうらしいよ。あそこは誰も住まないよ。こないだの人も出て行ったらしいし」

って言ってるんですって。

「やっぱ、出るんだな」

「何人も見てるよ、あそこで女の姿を」

「へぇー、やっぱりな」

って。

友人が、

「すいません、それって、あのー、幽霊の話ですか?」

って聞いたそうです。

そうしたらマスターが注文を取りに来ながら、

「ええ、そこんとこ少し行くとね、白い壁のさ、2階建てのアパートがあるんだよ。屋根がチョコレート色のね」

って言うんですって。

彼、思いましたね。(そこ、自分の所)

「角の2階なんだけどね」(やっぱり自分の所)

「角の2階。なぁ、なんかあのー、あれだろ。恋人に刺されたかなんかだろ、若い女が」

と、常連客としゃべり始めたそうです。

「なんかそのー、恋のもつれかなんか知らないけど、刺されたんだろ?」

「凄かったってなァ」

「凄かったってよー、あれ。だって血だらけだったんだろ」

って言ってるんです。

マスターが、

「ありゃね、今だってね、畳をはいだら、床板、血で染まってますよ」

って。

それを聞いてふたりとも、ガタガタ震えたってことです。

その部屋に住んでるんですよ、女性が。
今でもきっとね。

終わり

稲川淳二の怪談ナイト
https://www.inagawa-kaidan.com/





このお話を話してくれたのは霊能力者の方でしてね。
今は亡くなられていますけど、その昔はマスコミにも時折顔を出していて、その世界でも有名な方でした。

まあ当時は今と違って心霊がそう騒がれるような時代では無かったんですけどもね..

もともと体が丈夫な方ではなかったんですけど、ある時どうしても体の調子が悪くて病院に行ったら、
『すぐに入院しなさい』ってことになって、入院することになったそうですよ。

入院してからも体調は思わしくなくて、いよいよもう今日か明日かって状態になった。
それで、昏睡状態が始まったんですよね。

突然の事ですから、これには奥さんも驚いて部屋に付きっきりで看病していたんです。
あまり他の人には言わなかったもんですから、病室にはあまり見舞い客は来ない。

一日持ち、二日持ち..もしかしたらこのまま治るんじゃないかな?って、
奥さんもうっすらと希望を抱いていたそうです。

夜になりましてね、隣でもって奥さんが横になっている。
流石に日頃の看病でもってつかれていますから、奥さんも寝込んじゃった。

ふと、目を覚ますと
「ンー..ウーン..ウーン...」と旦那さんが、真っ青な顔で呻きながら痙攣を起こしている。
それを見て奥さんはいけないと思った。

今まではそういうことが無かったんで、もしかするとこれはこの世を離れてしまう時の最後の喘ぎなんじゃないかと思ったそうです。
どうしようかと思いながらも、近くにあったタオルで汗を拭いてあげたんですけども、汗はどんどん出てきて相変わらず旦那さんは呻ってる。

とにかく慌てて看護婦さんに連絡して、
声をかけるわけにも行かないから、ただ一心に(どうかお願いします。助けてください助けてください)と祈ってた。

祈りながら、看護婦さん遅いな..早く来てくれないかな?と思って、奥さん入り口のドアの方を見たんです。

病室のドアは閉まっているんですけども、高いところに天窓があるんですよね。
その窓が回転して開くようになっているんですけども、
その隙間から色の白い面長の顔をした女性がジーっとこちらを見ているのが見えた。

あれ?と思ったけれど、どうやら看護婦さんじゃないようだ。でも誰かが見ている。

でもこっちはそれどころじゃないですからね。
(助かってください、どうか助けて下さい。お願いします..)と祈りながら旦那さんの汗を拭いている。

相変わらず本人の方は苦しそうに呻いている。
何が苦しいのかはわからないけども、苦しんでいる。

(これはもうダメかもしれない、お願いですから看護婦さん早く来てください..)と思いながら、
奥さんは一生懸命汗を拭いている。

そしてまた入り口を見てみると、色の白い細面の女性がやっぱりこちらを心配そうに見ている。
何故かその瞬間に、奥さんはほっとしたような気がしたって言うんですよ。

と、旦那さんの呻き声がだんだんと治まってきた。
(あーよかった、もしかしたらおさまるかもしれない、助かるかもしれない。)
と、またひょいっと窓を見るとその女性がスッと消えたって言うんです。

その瞬間、あれ、あの人誰なんだろう?
考えてみたらそんな高いところから覗けるわけがないんですよね。

あの人は何処に?と思いながら、ほんの瞬間のことですけども、慌てて入り口に行ってドアを開けてみた。
でも廊下には誰も居ない..

やがて足音がして看護婦さんが飛んできた。
ところがその瞬間、どんどんどんどん旦那さんの顔色が戻ってきて、旦那さんの呻き声も止んだ。
そして結果的に退院することが出来たんですね。
それでもちろん普通の生活が出来るようになった。

もちろん奥さんもえらく喜んだんですが、
頭の隅に、あの天窓から覗いていた女性の事があったんです。

考えてみると、あの女性が覗いたあの時から段々と容態が良くなってるんですよね。
一体あの人は何なんだろう?と不思議に思って、旦那さんご本人に聞いてみたそうです。

そうしましたら旦那さんが、
「いや待ってくれよ、なるほどなぁ。それはお前ね、私の先妻だよ」って言ったっていうんです。

というのも、今一緒に居る奥さんというのは後妻さんなんですね。
旦那さんは、その前に先妻を亡くされているんですよね。

「紛れもなくそれは私の前の女房だよ。私のことを心配してくれて、きっと様子を見てくれたんだね。」
と言ってましたよ、その先生が。

私は幸せものなんだ、今の家内にも幸せにしてもらっている。
そしてましてや、死んだ家内にも救われたんだからって言ってましたね。

そんなことがあるんですね。








おばあちゃんから聞かせてもらった話です。
おばあちゃんが子供の頃の話なので、相当昔の話です。

おばあちゃんは、新潟の田舎にある小さな村の生まれでした。
その村では年に何回かお祭りがあり、その一番の神事の時には、
村の若者四人が選ばれて、隣村から御神体を借りてきていたそうです。

若い男四人が選ばれて御神体を借りに隣村まで行くのですが、毎年毎年帰ってくると
「また今年も騙されちゃったよ。参ったよ。またムジナにやられた。」と言うそうです。

お祖母ちゃんにムジナってどんなものかと聞いてみると
「そうだなあ..狸みたいなもんかな。ただ狸と違ってムジナは手があるんだよ。」
と言っていました。

毎年毎年何かしらの被害にあっていたようですが、
ある年、一人の若者が
「よし、俺が今度その祭りに選ばれたら、そんなムジナたいてやるわ!」と言ったそうです。

そしてその若者が選ばれる番がきて、若者を含め選ばれた四人は隣村へと出かけていきました。
隣村に御神体を借りに行くのですが、途中の山の神社で一泊するのが慣わしだったそうで、
その年も例年通り山の神社で一泊する事になりました。

夜になって、お社で四人は横になりました。
体が疲れていた事もあり、みんなすぐに眠りにつきました。

夜中に、ヒューヒューと風の吹く音が聞こえます。
若者は風の音と寒気で目が覚めました。

どこからか風が入ってきているのかな?とお社の中を見渡すと、お社の中には
長い女性の髪の毛や白い布が下がっています。それが風のせいか揺れています。

どこから風が入っているんだろう?思い、若者は体を起こし真っ暗闇の中を歩きはじめました。
すると、後ろのほうから
「オブッテクレ」
「オブッテクレ」
そんな声がします。子供のような、そうでないような声。
確認しようとしても真っ暗闇で何も見えません。

「オブッテクレ」声は続きます。
(ははあ..ムジナがでやがったな。よし、退治してやろう)青年は心の中でそう思いました。
「よし、おぶされ!」
そう言った瞬間、青年の背中に何かがポンとおぶさり、ギューッっと首を絞められました。
顔のすぐそばでは「オブッテクレ」と声がしています。

青年は自分の首を締める手を掴み、そのまま後ろへ投げ飛ばしました。
背中の後ろで、「グェエ」と声がします。

(よし!退治したぞ!)
明るくなって見てみると、大きなムジナが倒れていました。

そのまま隣村に行って御神体を借り、青年達は村へと帰りました。
ムジナを退治した青年は自慢気に、
「俺やってやったよ!ムジナを退治したよ!」と村人にムジナ退治の話しをしました。

それを聞いていた村の長老が、
「お前ムジナは何匹やったんだ?」と青年に聞きました。
「一匹だよ」と青年は答えます。

すると長老は、
「おまえまずいぞ。ムジナってのはな、オスメス夫婦でいるもんだから、片方だけ生かしておいたらお前また狙われるぞ!」
と言います。

「なあに、そんなの。また来たら退治してやるわ!」
青年は長老の話しを笑って聞いていたそうです。

そんなある日、とても気持ちのいい日があって、お祖母ちゃんは田んぼで仕事をしていました。
すると田んぼの向こうを見たこともない郵便やさんが当時珍しい自転車に乗って通りすぎていきます。
(あらまあ!珍しいなあ。)とおばあちゃんは見ていたそうです。

行き先を見ていると、例のムジナを退治した青年の家に入っていきます。
(なんの用だろうなあ?)と見ていましたが、しばらくの時間が経って青年の家から自転車が出てきました。
自転車は田んぼの中を突っ切って帰っていきました。

その日の夜、家の中で首を絞められて殺されている青年の死体が見つかったそうです。






最近の話ばかりじゃなくて、ちょっと昔の話で、伝承・伝説の話をしてみましょうかね。
探してみましたら、この話は他の土地でも結構あるんですよ。
それで東京にもあったんです。

もうえらい昔の話になりますよ。
東京と言っても当時はなんて言ってたんでしょうかね。
今で言うなら八王子ですかね。
あの辺りっていうのは昔は機織りで大変有名な街だったんです。
ですから同じ東京、江戸と言ってもまた違う雰囲気を持つ場所だったんですよね。

それで機織りをするためにあちらこちらから若い娘が送られてくるんですよ。
勿論住み込みでもって、そこに住み込んで年がら年中機を織るんです。
ですから当時の機織りの八王子というのは何処へ行ってもキーパタン、キーパタンと機を織る音が聴こえていたそうです。
それで一生懸命働いて、わずかばかりのお金をいただいて、それでやがては国に帰ったりだとか皆するわけですよね。
ただ、働く街ですから、なんの娯楽も無いわけです。
今も八王子という場所は東京の都心と比べると寒いところですが昔はかなり雪も厳しく降ったそうですし、寒かったそうですね。

まぁそんなある日なんですが、外にも出れないし、やることもないし、機織りをする女の子たちが何人か集まってお話をしていたんですね。
それは何かというと、退屈まぎれに皆で肝試しをしてみないかって話だったんです。
誰かがきっと何処かから話を聞いてきたんでしょうね。

自分たちが住んでいる家というか、小屋の場所から少し山に入って行くと谷川のようなところがあって、
そこを過ぎて行くと、小さな沼があって、沼の淵にお地蔵さんが居る。
そのお地蔵さんの前掛けを取ってこないかというんです。
勿論夜中に。

それでもしもそれを取ってこれたら、自分が織った反物をあげようじゃないかと、賭け事のようなことになってきた。
そうなってくると段々皆話に夢中になってくる。
面白い、やろうじゃないかという話になった。

ところがいざ誰が行こうかとなると、誰も手を挙げなかった。
というのは、そこまでの道のりが如何に寂しくて如何に怖いかというのを皆知っていましたから、誰もやろうとしない。
ただ誰か行った人が居るならば、話を聴いてみたい。
でも自分は行きたくない。

「ねぇ、もし行くんだったらさ、私一反あげるよ」

「じゃあ私も一反あげる」

皆が自分が織った反物をあげるあげると言う。
そんな話をしていると、たまたまその土地の農家のカミさんがやってきた。
背中に赤ん坊を背負ってその話を聴いていた。

そして
「今の話だけどね、本当に行ったら反物をくれるのかい?」
と聞いた。

「うん、行くなら上げるよ。
 その代わり、ちゃんとお地蔵さんの前掛けを持ってこないとダメだけどね」

「じゃあ私が行って持ってこようじゃないか。
 持ってきたら本当にくれるんだね」

反物は高いものですからね、そりゃあ欲しいですから。
農家のカミさんは背に腹は代えられないんで、「じゃあ私が行ってくるよ」と言った。

その時に何人かは
「やめた方がいい。
 あそこは怖いっていうよ。
 あそこは祟るっていうから」
とカミさんを止めた。

しかし残りの何人かはやっぱり怖いもの見たさで、無責任な話ですが、本当に祟るのかどうか試してみたかった。
結局そのおカミさんは行くことになった。

子供をねんねこに背負って、顔や首に布切れを巻き付けて、ほっかぶりをして、そうして真夜中の山の道に出てきた。
風が吹いている。
寒い中をただ一人、山を歩いて行く。
鬱蒼たる木々が周りにあって、風が吹く度に揺れている。
石ころを蹴ったりすると、闇の中にコーンと音が響く。
向こうでは風に吹かれて何かがバタンバタンと音がする。
怖いとは思うけども反物がほしい、お金がほしい。

ただひたすら山道を歩いて行く。
しばらくすると、ザーッと流れる滝の音がする。

(あぁ、もうすぐだ。
 もうすぐだから、頑張らなくちゃね)

背中の子供をひょいと持ち上げたりして、語りかけるようにしながら。

(もうすぐだから頑張らないくといけないね。
 さぁもうすぐだよ)

と自分に大丈夫だ大丈夫だと言い聞かせながら滝の傍を通り過ぎた。
また少し行くと景色が開けた。
うっすら明かりの中に沼が見えた。

(あぁついに来たんだ。
 ここが言っていた沼だ)

シーンとした中風に吹かれながら、お地蔵さんのお堂のようなものが見えた。
中にはちょこんとお地蔵さんが居るわけです。

(やった、これさえ持っていけば)

そう思いながらお地蔵さんの前掛けを取った。
それをグッと掴むと、もう怖いですからね、小走りで戻っていく。
風がゴーッと強く吹いている。

そうすると後ろのほうから

「おい、置いていけ」

という声がした。
突然のことで心臓が止まりそうになった。
それでもタッタッタッタと走って行く。

「おい、置いていけ。
 置いてけ」

声が追ってくる。
すごい勢いで走るんだけども、向こうもすごい勢いで追いかけてくる。
転げるように山を降りていくと向こうから

「おーーい、置いていけ」

と声が追いかけてくる。
風はなおもゴーッと強く吹いてくる。
嵐の時のように木々が風に吹かれて大きく唸っている。
何処からか物が倒れるような音がする。
何とか皆が居るところまで戻ってくるとバタンと戸を開けた。

「ほら、持ってきたよ」

お地蔵さんの前掛けを皆の前に差し出した。
皆はそれをジーっと見ていた。

「さぁこれで反物は私のものだね。
 さぁ皆反物をおくれよ」

それで何でか分からないけれども、さっきから首筋を拭いている。
それを見ていた機織りの一人が

「おい、あんた・・・手が赤いよ」

ねんねこの紐を解いて、ねんねこから赤ん坊を抱きかかえようと思った瞬間

「ああぁぁぁぁああああああ!!!」

と悲鳴を上げ、そのまま倒れてしまった。

おぶっていた子供の首が無くなっており、そこから真っ赤な血が広がり、ねんねこを真っ赤に染めていた。

赤い前掛けを盗んだおかげで彼女の手は真っ赤に染まってしまったんですね。
子供の頭を取られてしまったんですね。
そういう伝説があるんですよ。

その場所ですが、私は場所を知っています。
でも行かないほうがいいと思いますよ。
今お地蔵さんはありません。
ただ八王子には首なし地蔵があるんですよ。



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