892: 透明な怪物1 :2009/06/11(木) 01:32:15.22 ID:fMaiu3BW0
1951年の5月、フィリピンのマニラ。
ある裏通りをパトロール中だった警官に、
いきなりある女性が走り寄って来て腕にしがみつき、助けを求めてきた。
「助けて下さい!誰かが私に噛みついてくるんです!」
助けを求めてきたのは18歳の娘で、クラリータという女性だった。
だが警官がよく聞いてみると、噛みついてくるといっても相手の身長も顔も服装も分からない。
男か女かさえ分からない相手が噛みついてくるというのだ。
聞き終わった警官は、クラリータを麻薬中毒患者かいたずらだと思い、まともに相手をしなかった。
だがクラリータは必死で訴え続ける。
「嘘じゃないわ!ほら!この傷を見てよ!8カ所も噛んだ傷があるでしょ!」
クラリータがあんまり熱心に訴えるので、とりあえず警官は警察署へ連行した。
ところが、警察署の一室に入ると、クラリータがまた叫び声を上げた。
「ほら!またあそこにいるわ!
黒い何かが私に噛みつこうと迫ってくる!助けて!助けて下さい!」
言い終わった瞬間、クラリータは床の上につまづいて倒れ、
そして今度は警官の見ている前で、肩と腕に噛み傷がいくつも現れ始めたのである。
その傷からは血がにじみ出て、唾液のようなものがべっとりとついていた。
さすがにこの光景を見ては警官も信じざるを得ない。 その場にいた全員が青ざめて、
すぐに警察署長と検察医が呼ばれた。 署長も検察医も、最初は全く信じなかったが、
クラリータの身体を見てみると全身に10カ所以上の噛み傷があり、
しかもそのそれぞれに血がにじみ、首の後ろにまで噛み傷があったことから、
「これは狂言や芝居ではない。」と悟ったようだ。
事件を目撃した警官たちが熱心に主張することもあって、
クラリータはこの晩、警察署に泊まることになった。
そして翌朝、クラリータはまた悲鳴を上げた。
894: 透明な怪物2 :2009/06/11(木) 01:35:09.55 ID:fMaiu3BW0
「キャー!! またあの怪物が噛みついてくるわ!!」
叫びながら逃げまどうクラリータを警官が飛びついて両側から押さえつけた。
しかし、次の瞬間、クラリータの手に傷跡が現れ、そしてついには、首筋から血がにじみ始めたのだ。
警官達も見えない怪物に挑みかかってみたが、まるで手応えがない。
あちこち噛まれたクラリータは痛さと恐怖のあまり、そのまま気を失ってしまった。
見えない怪物のことは、たちまちマニラ警察署内で大騒ぎとなり、ついにはマニラ市長までが駆けつけて来た。
そして検察医も、一流の検察医が呼ばれ、クラリータの調査に当たった。
全身いたる所にある、赤いアザや青いアザ、血や唾液の跡・・。 これらを丹念に調べたが、
まぎれもなく何かに噛まれたような傷跡であった。 警察はクラリータを独房の中に入れ、完全に一人の状態にした。
しかしこの怪物はまたしても襲って来たのだ。
「キャー!! また黒い怪物が入ってきた!!」
クラリータの叫び声を聞いてすぐに署長や検察医、市長などが駆けつけてきた。
そしてやはり今度も、全員の見ている目の前でクラリータのノドに歯形が食い込んだかと思うと、
次の瞬間、血が流れ始めた。 署長が、クラリータに噛みついているであろう、
透明の怪物を追い払おうとしてクラリータの前で攻撃を加えたが、全く手応えがなかった。
895: 透明な怪物3 :2009/06/11(木) 01:37:19.86 ID:fMaiu3BW0
そしてクラリータの身体には、腕、肩、脚などに次々と歯形が現れ、そして鮮血が吹き出していった。
見えない怪物の攻撃がおさまるまで、5分くらいであったろうか。
その怪物が去った後、署長も市長も全身にびっしょりと汗をかき、脚はガクガクと震えていた。
この攻撃を最後にクラリータは、怪物からは解き放たれたようだ。
その後、クラリータは精神病院に半年ほど入院して何とか全快し、やっと普通の生活に戻ることが出来た。
しかし、あの時の心の傷は癒えることはない。
身体に噛み傷が出来るというのは、ポルターガイスト現象の一種とも考えられるが、
クラリータが見た、「黒い怪物」とは一体どんなものだったのだろうか。
この事件は、当時のマニラ警察署の事件報告書にも、特殊事件簿No.108号として記載されているということである